気付いてよ...バカ -9-

9です。
前回に引き続き、
だいぶ放置してしまいました...
本当に申し訳ありません(>_<)

<登場人物>
*岡野 夢空(おかの むく)
*井上 奏哉(いのうえ そうや)
*井上 奏司(いのうえ そうし)

...その他

沈黙が苦しい...

-9-

私と奏ちゃんは近所の公園に行き、
ベンチに腰掛けた。

「...急にごめんね??」
「うん、平気。」

私は奏ちゃんの目を見れなかった。
見えるのは、自分の靴だけ。

「...」
「...」

また沈黙が続いてしまった。


なんとなく...夢空の言いたいことは分かる。
夢空のことだから
たぶんきっと...今日のことだと思う。
告白したことや、
先に帰ったこととか、
たぶん気にしてるんだと思う。

「...」
「あのさ、夢空。」
「ん??」

沈黙に耐えきれなくて
夢空に声を掛けたは良いけど...

「...」

言葉に詰まってしまった...
何も言われてないのに下手なことは言えないし、
なにより、夢空が俺の目を見なかったのが
少しツラかった。
そして、また沈黙が続いてしまった。
夢空と一緒にいて、
こんなに心苦しかったのは初めてだった。


奏ちゃんに話したいことがある。
なのに...話そうと思っても
何から話せばいいのか分からなかった。

「...そういえば...」
「ん??」
「...今日、奏司さんと一緒だったんだね。」

私は、とりあえず自分を落ち着かせるためと
沈黙を破るために
話したかった内容とは
全く違う話題を切り出した。

「あぁ、うん。
送ってもらったんだ。」
「相変わらず仲良しだね。」
「まぁ、悪くはない方だとは思うけどね。」
「いいな...私もお兄さん欲しかったな。」
「んー...いてもいなくても
そんなに変わらないと思うけど??」
「変わるよ。
あっでも、だったらお姉さんの方が良いかな。」
「夢空、絶対にシスコンになりそう。」
「なるかな??
でも、奏司さんほどにはならないよ。」
「...あれは異常。」
「奏司さん、昔から
奏ちゃん大好きだもんね。」
「...そうだっけ??」


夢空の口から“大好き”という単語が出て
少し動揺した。


“奏ちゃん大好きだもんね”
その一言から
また沈黙が続いてしまった。
私は自分のした発言に後悔した。

でも、いいタイミングだったかもしれない。

「...奏ちゃん。」
「ん??」
「...」
「夢空??」

もう逃げちゃダメだ...

「...今日、突然告白なんてして...
ごめんなさい。」

私は奏ちゃんの目を見て話始めた。
目を見た瞬間、涙が出そうになった。

「...うん。」
「あんなタイミングで
言うつもりなんてなかったんだけど...」
「...うん。」
「でも、伝えたからには
...私の思ってたこと、全部伝えたい。
聞いてくれる??」
「うん。」

奏ちゃんは私が
この話をしようとしてたこと、
分かってたのかな??

少し驚いた顔をしてたけど
落ち着いていて、
嬉しいような、悲しいような...
複雑だった。

「...私ね、
小学生の頃から奏ちゃんが好きなの。」


まさか、そんな前からだったなんて...
予想もしてなかった。

「...そうだったんだ...」

気の利いたことなんて言えなくて...
冷たい一言のようだけど
俺にはこれが精一杯だった。


奏ちゃんが少し悲しそうにしていた。

「そんな顔しないでよ。
勢いで言っちゃったけど
私、後悔はしなくないの。」
「...??」
「いつかは言うつもりだったの。
ただ、今の関係が壊れるのが怖くて
なかなか踏み出せなかった。
...それを、奏ちゃんに直接言えたんだよ??
私の口から言えたの。
だから、後悔はしなくないと言うより
後悔してないの。」
「夢空...」
「だから、もう終わりにする。
ちゃんと終わりにするから、
奏ちゃんには...私を振ってほしいの。」

ちゃんと伝えたいから
ちゃんと振ってほしい...
そして、この初恋を終わりにするんだ。


夢空の話を聞いて、胸がざわついた。

「...」
「迷惑だって分かってる。
分かってるけど...」

目の前にいる夢空は
今にも泣き出しそうな顔をしていた。
でも、強い決意があるんだって
目を見て思った。

「...分かった。」

そんな夢空を見たら
断ることなんて出来なかった。


お互い向き合った。
私は口を開いた。

「ありがとう、奏ちゃん。」
「うん。」
「...」
「奏ちゃん。」
「ん??」
「...小学生の時から今日までずっと、
貴方が好きです。
優しい奏ちゃんも、頭がいい奏ちゃんも、
スポーツが上手な奏ちゃんも、
まだまだ奏ちゃんの好きなとこは
たくさんあるけど、
一番は側にいてくれてた...
ずっとずっと、
隣にいてくれた奏ちゃんが大好きです。」
「...」
「幼なじみでも、
隣にいれるだけで幸せでした。
...ありがとう。」


夢空の目からは今にも涙が落ちそうだった。
俺は夢空の話を
黙って聞くことしか出来なかった。

「...」
「奏ちゃん。」
「ん??」
「...13年間、ずっと好きでした。
私と...付き合って下さい。」

...なんだろう

「...夢空の気持ちは、すごく嬉しいよ。」
「...うん。」

...なんとも言えないが
心の奥底からゾワゾワしたものが湧いてきた。

「...」
「...奏ちゃん??」
「ごめん...
夢空をそういう対象で見たことなかったから...」

夢空を傷つけてしまうのは
分かっているからか、
自分の意思ではないことを
言ってしまったような気がした。


「...ありがとう。」

奏ちゃんの言葉で、
はっきりと告げられて胸が痛くなった。

「...」
「奏ちゃん...
私...ちゃんと終わりにするからね。」
「...」
「今日は...ありがとう。」
「...うん。」
「帰ろっか...」
「...うん。」

お互い動かなかった。
5分くらいして、奏ちゃんが立ち上がった。

「...」
「夢空、帰ろ??」
「うん...」
「...夢空??」

帰ろうと言い出したのは私。
でも…

「奏ちゃん、先に帰っていいよ。」
「えっ??」

一緒にいたくない。
帰り道、お互いが無言になるのなんて
分かりきってる。
その沈黙に耐えられるほど
今の私は強くない。

「私なら、大丈夫だから。」
「でも...」

奏ちゃんはきっと、
私の思ってることを分かってると思う。


夢空が考えてること、
なんとなくは察することが出来る。
でも、もう暗くなってきている。
このまま一人で放っておくのは
少し気が引ける。

「...」
「...夢空。」
「大丈夫だから...
あと5分くらいしたら帰るから。」
「じゃあ、俺も5分いるよ。」
「...頑固」
「夢空も負けてないけど。」

一度立ち上がった奏ちゃんは
また座ってしまった。
空を見上げると
星がはっきりと見え始めていた。

「...あのさ、」
「ん??」

奏ちゃんが何か言おうとしたその時、
私のではない着信音が聞こえた。

「...」
「出ていいよ??」
「いや、出来れば出たくない。」
「えっ??」
「...いや、やっぱ出る。」
「うん。」
「ごめん。...もしもし??
あぁ、うん。まだ一緒にいるけど。」

奏ちゃんがいつもと変わらないトーンで
話してると言うことは
相手はきっと、黄瀬くんか奏司さん。

「...」
「えっ、これから!?
...分かったよ。じゃあ。」
「...??」
「兄貴。
夢空に話があるから家に来てくれって。」
「私??」
「そう。とりあえず、行くよ。」

立ち上がって私の手を引く奏ちゃん。

「奏ちゃん!?
私、一人で歩けるから!!」
「いいよ。
夢空、頑固だから強行手段。」
「...」

奏ちゃんと手を繋ぐ...
嬉しいけど、今の私には少しツラさもあった。

「早い??」
「ううん、平気。」

諦めようとしてるのに、
これ以上優しくしないでほしい。

「ただいま。」
「...お邪魔します。」

奏ちゃんの家に着いた。
私は外で話すと思ってたのに
奏ちゃんに連れられて中に入って、
リビングに通された。

「おかえりなさい。
あら、夢空ちゃん??」
「はい。お久しぶりです。」
「大きくなったわね。」
「はい。」

おばさんは相変わらず優しかった。

「また昔みたいに
遊びに来てちょうだいね。」
「はい、ありがとうございます。」

おばさんと話してると
いつの間にか奏ちゃんはいなくて
しばらくして奏司さんが来た。

「やぁ、夢空ちゃん。」
「奏司さん。」
「急にごめんね。」
「いえ、大丈夫です。」
「あら、今日は奏司に用だったの??」
「俺が夢空ちゃんに用なの。
ちょっと出てくる。」
「ふーん。
ちゃんと送ってあげるのよ。」
「分かってるよ。
じゃあ、夢空ちゃん行こ。」
「...」

奏ちゃんに何も言わなくて大丈夫かな??

「ほら、早く。」
「ちょっと、奏司さん!?」

手は繋いでいないが、
さっきの奏ちゃんのように
私の手を引く奏司さん。
...さすがは兄弟だな。

「あっ、奏哉!!」
「えっ??」

廊下を歩いてると
急に止まった奏司さん。
奏司さんの背が高くて確認は出来ないが、
どうやら目の前に奏ちゃんがいるみたい。

「...なに??」
「ちょっと夢空ちゃん、借りてくね。」
「わっ…」

借りてくねと言ったタイミングで
手を前に出した奏司さん。
その拍子に私は一歩前に出た。

「...」
「心配しなくても
ちゃんと送ってくから。」
「...」
「じゃあ、行ってくるね。」
「...」

また手を引き、歩き出す奏司さん。
すれ違った時の奏ちゃんの顔は
少し不機嫌そうだった。

奏司さんの車に乗って向かった先は、
少し離れた、人気の少ない公園だった。

「夢空ちゃん。」
「はい。」
「...奏哉と、なんかあった??」
「えっ??」

なんで...

「あっ、やっぱり??
奏哉も夢空ちゃんも分かりやすすぎ。」
「...」
「気持ち、伝えたの??」
「...はい。
フラれちゃいましたけど。」
「ふーん。」
「...」
「それで??」
「...えっ??」

それでって...

「俺が聞きたいのは結果じゃないよ。」
「じゃあ...」
「夢空は何を思ってるの??」
「...!?」
「奏哉にフラれたとか...
正直、見てれば分かるよ。
そうじゃなくてさ...何て言うのかな...」
「...」
「たぶん夢空は
奏哉に気遣わせないためにさ、
すぐ諦めるとか言ったんじゃないの??」
「なんで...」
「やっぱな。」
「...」
「本当にそう思ってる??」
「もちろん...だって、」
「すぐに、諦められるの??」
「...」
「夢空ちゃんの思ってること、
全部言ってごらん??
それは俺しか聞いてないし、
誰にも言ったりなんてしないから。」
「...ですよ。」
「ん??」
「...すぐになんか諦められるわけない。
だって、13年ですよ??
こんな...1日で、あぁそうですかって
あっさり諦められるわけ...」
「うん。」
「奏ちゃんには、
告白して後悔してないって言いました。
確かにしてない...してないですけど
でも、心のどこかで
告白なんて...しなきゃ良かったって...
思ってる自分がいるんです...」
「うん。」

私は涙が耐えきれなくて
奏司さんの横で泣いてしまった。
運転席で奏司さんは、何も言わないまま
ただただ時間だけが過ぎていった。

「...っ、ごめんなさい。」
「ううん、大丈夫??」

そう言って
後ろの方からティッシュ箱を差し出してくれた。

「ありがとうございます。」
「...落ち着いた??」
「はい。」
「そっか。じゃあ、帰ろうか。」
「はい。」

奏司さんは、ニコッと微笑んで
私の頭を軽く撫でて車を出した。

普通だったら、
ここでドキドキしたりするのかな??
奏司さんは素敵な人だと思う。
でも昔から、お兄さんみたいに接してから??
私はドキドキしなかった。
その理由はきっと...

少し遠回りをして、私の家の前に着いた。

「はい、着いたよ。」
「ありがとうございます。」
「...夢空ちゃん。」
「はい??」

車から降りようと
シートベルトに手を掛けた瞬間、
奏司さんが申し訳なさそうに声を掛けた。

「...」
「奏司さん??」
「...奏哉のこと、
嫌いにならないでやってよ。」
「えっ??」
「夢空ちゃんにこんなこと言うのは
ちょっと気が引けるけど、
奏哉さ...夢空ちゃんの前だと
優しい顔になるんだよ。
普段は素っ気ない感じのやつだけど
夢空ちゃんといる時は
本当に嬉しそうにしてる。」
「...」
「たぶん本人は無自覚だと思うけど。」
「...」
「奏哉が夢空ちゃんを振ったのは
きっと一緒にいる期間が長すぎたから...」
「やめて下さい...」
「...夢空ちゃん」
「私は奏ちゃんが好きです。
そこは奏司さんに負けないくらいです。」
「俺に??」
「はい。
それに、しばらくは続くと思います。」
「うん。」
「でも...もう期待はしたくないんです。
キレイさっぱり忘れて
明日からは幼なじみになるんだって
私、決めたんです。」
「...」
「...送ってくださって、
本当にありがとうございました。
おやすみなさい。」

そう言って、私は車から降りた。
部屋に戻って一人で泣いた。

思い出すのは奏ちゃんのことばかりで、
この感情をなくして諦めらめる事が
急に怖くなった。

想えば想うほど、
苦しくて、涙が止まらなかった。
私は知らない間に
泣き疲れて寝てしまったみたいだ。

気付いてよ...バカ -9-

お久しぶりです(><;)

今回は初の試みで
奏哉と夢空、両方の視点から書いてみました。

読みにくかったと思いますが
最後まで読んでいただき、
ありがとうございます!!

まだまだ続きます。
今回のように
長期間あけてしまうことが
あるかも知れません。

出来るだけ努力いたしますので
是非、最後まで読んでいただけたら
嬉しく思います。

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気付いてよ...バカ -9-

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-06

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