流星群~不死鳥~

流星群~不死鳥~

懐かしの騎士団

「不死鳥の騎士団自体は、活動再開って形になるけれど…私の知らないメンバーも増えているんでしょうね」

騎士団本部に提供したブラック邸へ向かうブラック夫妻。

「そうみたいだ。私の親戚とかな」

「えっ、ブラック一族の人?その…大丈夫なの?」

危険人物の多い血筋だからだ。

「ブラック家の家系図からは抹消されているよ。私の…従姉の娘になるのか」

「遠いじゃない。それを言うなら、リーマスもジェームズもみんな親戚よ」

「ま、まぁ、そうなんだが。怒るなよ…」

「とりあえず、大丈夫なのね?」

「ああ。騎士団で最年少とはいえ、優秀な闇祓いだ」

「そう、魔法省の…。名前は?」

「ニンファドーラ・トンクス。本人からも言われると思うが、トンクスと呼んだ方が安全だ」

「安全…?女の子なんでしょう?ファーストネームで呼びたいわ、せっかく可愛い名前なんだもの」

「その可愛い名前を気に入っていないそうだ」

(…女好きなシリウスの近くに女の影…)

先程まで本部へ行くのが楽しみだったのに、急に足取りが重くなるミラク。

(シリウスの親戚…騎士団の仲間…極めつけは若さね)

「彼女、ミラクに会いたがっていた。噂を聞いたらしい」

「噂?私、あまりいい噂をされた覚えがないわ」

「子持ちなのに美人で、スタイル抜群。凛々しい中に優しさがあって、素敵な女性だと」

「…それは噂とは言わないわね。単なる事実よ」

君らしい、と苦笑して話を進めた。

「とにかく、君に憧れたようだ。君は変身術が得意だろう?トンクスは先天的な『七変化』なんだ」

「あら、それは興味深いわね」

「性格は不器用で、強気──というか、怖いもの知らずか。思ったことをすぐ口にする」

「正直なのはいいことよ。それに、貴方も人に言えないでしょう?」

「…悪かったな」

「──憧れていても、幻滅すると思うわ。私は普通の魔女だもの。…そう思わない?」

自嘲気味に微笑むと、らしくないとでも言いたげにシリウスが目を見開く。

「…私はわからんよ。噂より先に知り合っただろう。──そうだな、第一印象とは変わったかな」

「どう変わったのかしら?」

「もっとクソ真面目かと思ったら、意外とワルだった」

「…成績には興味なかったんだもの…」

いつの間にか並んで歩くシリウスを上目遣いで睨み、早歩きして追い越した。

「まぁ、私に憧れる人に、悪い人はいないわ」

「褒めたつもりだったんだが…」

頭をかきながら、スタスタと先を行くミラクを追いかける。

(その可愛さは反則だ…)

「──なら、私も行く」

それはハリーを迎えに行くメンバーを決めている時だった。

「な、何を言い出すんだ、シリウス!」

誰もが恐れていた言葉に、リーマスが声を荒げる。

「言うと思ったわ…」

「危険だよ。お父さんはダメ!」

「…ダンブルドアの命令だ、お前さんはここから出るな」

アラスター・ムーディが冷静に説得すると、彼はわざとらしくため息をついてテーブルに頬杖をついた。

(相変わらず子供っぽいのね…)

「私が代わりに行ってくるから、君は我慢してくれ」

「友よ、抜け駆けするつもりか?」

「…わかったよ、一緒に待とう」

「じゃあ私も待たないといけないのね」

面倒くさそうなミラクに、リーマスが苦笑する。

「…とにかく、行ってくるからね?」

「ええ、頼んだわよ。気を付けて」

トンクスとモリーの会話を最後に、先発護衛隊は本部を出ていった。

「…なぁ、ミラク」

「何?ここを出たいって言うなら、力ずくで止めるけど」

ハーマイオニーやウィーズリー兄妹が驚いて固まる。

「…やめておくよ。──そうじゃなくて、例の話なんだが、本当に君の家でいいのか?」

「え?…あぁ!ええ、もちろんよ。どうして?ここに住みたくなった?」

「とんでもない!…そうだな、迷うことはないか」

「でも、学校があるから、ほとんどお父さん一人だけど」

「それは仕方ないさ。私がいない間に、すっかり大きくなったんだからな──ん?ミラクは若返ったのか」

「違うよ、お父さん。若作りの術でしょ」

「変身術の応用、よ」

近くに立っていたミラクとスピカを抱き寄せた。

それを見た他のメンバーは、ひと安心である。

話し合うべきこと。

「さて、今後の会議だ。子供達は二階に行ってなさい」

「…あたしも?」

「スピカはいいさ」

ニッコリ笑ったシリウスからスピカを取り上げた。

「いいえ、例外はないわ。貴女も行って」

「…行っておいで」

「はぁい」

ミラクとリーマスに促されたスピカは、ハーマイオニー、ロン、フレッド、ジョージ、ジニーに続いて二階へ上がる。

「じゃあ、始めましょう」

「…そうだな」

シリウスの両隣にミラクとリーマス、テーブルを挟んでアーサーとモリーが座った。

すると何処からともなくセブルスが現れ、離れた所の壁に、腕を組んで寄りかかる。

「おや、スニベルス、いたのか。いなくて構わんぞ」

「ちょっと、シリウス…。どうしてそこまで嫌うのかしら」

「嫌いならセブルスに関わらなきゃいいのに」

肩を竦めたリーマスに、ミラクが頷いた。

「それは無理だ。思いっきり視界に入ったからな」

「…ふん」

「まぁまぁ、二人共。本題に入るんでしょう?今は時間が惜しいわ」

「そうだな。こうしている間にも、奴は力を増している」

ミラクが諫め、アーサーが話を切り出す。

「そもそも、ファッジが奴の復活を認めないのが問題だ」

「現実を見まいとしている」

「…実際に鉢合わせさせるのが手っ取り早いんだけど」

「それは命がけねぇ」

ミラクの発言に、モリーがのほほんと応えた。

「大臣は、ダンブルドアが大臣の座を狙っていると考えているようだ」

「…ご乱心ですかな」

「確かに。意地になってる感じもするわね」

セブルスに同意すると、シリウスがムッとする。

「…奴は、ある物を欲しがっている」

「…ハリーの予言、か…」

「予言は、関係者しか手にできないのよね」

「我々も気をつけなければ、ということかな?」

「そうね、関係者だもの」

ウィーズリー夫妻の言葉に、シリウスが過敏に反応した。

「一番の関係者は私だがな。家族なのだから」

「ふん…」

「私だって、家族のように思ってるわ」

「それを言うなら私も──」

張り合うリーマスの言葉を遮る。

「もうっ!話が脱線してるわ」

「…私に言わないでくれ」

「いや、負けず嫌いでワガママなシリウスのせいだ」

「ブラックは頭の造りが悪いのだろう。仕方あるまい」

セブルスが鼻で笑って呟いた。

「もう一度言ってみろ」

「短気ねぇ。挑発に乗っちゃダメよ」

「貴様の娘もそうだ。ワガママで、目立ちたがりで、自信家。遺伝とは恐ろしい」

「何ですって…!」

ミラクは思わず、懐の杖に手をかける。

「落ち着け、ミラク。セブルスも、これ以上の脱線は──」

「ハリー…!!」

突然パッと明るくなったシリウスの視線を追うと、廊下にハリーが立っていた。

「まぁ、ハ──」

「ハリー!」

「…ちょっと。何なのかしら、あれ」

ハリーに駆け寄るモリー。

「シリウス!」

しかしハリーはすり抜けて、シリウスに抱きついた。

「ハリー!嬉しいよ…!!」

ぎゅうっと幸せそうに抱き合う。

「シリウス、ハリーが窒息するわ」

「あ、ミラク先生!ルーピン先生も!」

「また会えて嬉しいよ。でも私はもう先生じゃない」

「ちなみに私も校外では先生じゃないわ」

まだシリウスの腕の中にいるハリーの頭を、リーマスがくしゃりと撫でた。

「“おじさん”“おばさん”でいいのよ、ハリー」

「“お父さん”“お母さん”になるかもしれんだろう」

「あんまり言うと、スピカに怒られるよ?」

親世代を見上げて首を傾げる。

「…会議を平気で邪魔するとは、親の顔が見てみたい」

「スネイプ先生っ…?!」

ハリーはびくりと振り向いた。

「…せっかくの幸せな気持ちを、見事にぶち壊されたよ」

「それは結構」

「私達はまだ会議があるから、二階に行っておいで」

「そうね。スピカ達がいるわ」

ハリーが頷いて、シリウスから離れる。

「階段上がって左よ」

「…まるで自分の屋敷のような言い方ですわねぇ、ウィーズリー夫人?」

「いいんだ。もう私の屋敷ではないのだから」

愛されしハリー

二階へ上がったハリーは、左の部屋のドアを開けた。

「ハリーっ!」

開いた隙間からハリーが見え、スピカが勢いよく抱きつく。

「うわっ、スピカ…?」

「ハリー!」

「ハリー、久しぶり」

「ハーマイオニー、ロン、それにスピカも…久しぶり」

ようやく離れてくれたスピカに笑いかけた。

「ディメンターに襲われたんでしょう?」

「そうだった!大丈夫なの?」

「退学なんて不当だわ!」

「あたしが何とかできればいいのに!」

立て続けに喋る天才少女達。

「でも大丈夫よ、ダンブルドアがいるもの!」

「あたしが馬鹿なやつらを呪ってやるから!」

似ているようで、正反対の二人。

「…ここは?」

「『不死鳥の騎士団』の本部だよ。秘密組織さ」

「ダンブルドアが前回、例のあの人と戦ったときにつくったの」

「ちなみにこの家はブラック邸だよ。お父さんが本部に提供したの」

誇らしげに説明した。

「…それ、手紙には書けなかったの?何も知らなかった」

「書きたかったよ!でも…」

「…ダンブルドアが、何も教えるなって…」

「多分、ハリーのためだと思うけど」

スピカの言葉に頷きつつ、でも、と口を開く。

「ヴォルデモートの復活も、セドリックが殺されるところも、見たのは僕だけなんだ…役に立てるのに!」

声を荒げて、ベッドに座る。

「やぁ、ハリー」

「甘ーい声が聞こえたぞ」

「っ?!!」

双子のフレッドとジョージが、ハリーの左右に現れた。

「もっと面白い話──」

「聞きたくないか?」

「…兄貴達、何考えてんだよ?」

双子に続いて部屋を出て、階段の下を覗く。

「…ねぇ、いつからいたんだろう?全く気付かなかった」

「ハリーが来る前からかも」

「私も気付かなかったわ。…油断大敵ね」

双子は、耳の形をしたものをヒモで階下に垂らした。

「盗み聞きは趣味じゃない」

「驚かすのが趣味だ」

「…知ってるよ」

騎士団の話し合いが聞こえてきた。

「――には知る権利がある」

「子供じゃないんだ」

「でもシリウス、大人でもないわ。あの子はジェームズじゃないのよ」

「まぁ。馴れ馴れしい」

夫を呼び捨てたモリーにぼそりと一言。

「君の息子でもない」

「息子同然よ」

「「はぁ?」」

シリウスはもちろん、ミラクとリーマスも思わず声を上げた。

「…お母さんとおじさんまでケンカ腰になってどうすんの…」

「みんながハリーを息子のように思ってるのよ」

呆れたスピカに、ハーマイオニーが笑いながら答える。

「他に誰がいるの?」

「私がいる」

言いきったシリウスに、ミラクとリーマスが嬉しそうに頷いた。

「ポッターは、後見人に似て悪党に育つだろう」

「黙ってろ、スニベルス!」

「落ち着け、シリウス」

「フン、相変わらず夫婦喧嘩のようだな」

「セブルス、それはどういうことかしら?」

変な所に反応して嫉妬するミラク。

「そういえば、スネイプもいたけど…騎士団なの?」

嫌そうに尋ねたハリーに、ロンも嫌そうに何度も頷く。

「あっ!クルックシャンクス?!こら!」

階下で耳型の道具をたまとる猫──クルックシャンクスに、小声で叫ぶハーマイオニー。

「ちょっ、あー…」

ついにくわえて持って行ってしまった。

「…君の猫、最悪」

「猫だから、仕方ないじゃん…」

スピカはそう言いながら、階下を覗きこんだ。

「もうっ…とりあえず休戦しましょう?」

「…そうね。──みんな、ご飯よー!」

ミラクの提案に賛成し、モリーは二階に向かって叫んだ。

「よし、落ち着こうじゃないか」

「…私は落ち着いてるさ」

「はいはい。──ハリー迎え隊も戻ったし、席を移動しましょう」

各々が自由に席を選ぶ。

「シリウスはちゃっかり、上座的な席なんだね」

「それでこそシリウスだ」

アーサーとリーマスが柔らかく笑った。

「どういう意味だ…」

「はーい、ご飯よ」

モリーとミラクが料理をテーブルに並べる。

「では…我輩は、おいとまするとしよう」

「あ、ああ…」

「まだいたのか。勝手に帰れ。そしてできる限り、私の前に現れるな」

「…それはこちらの台詞だ」

吐き捨てるように言って、ローブをばさりと翻した。

「貴方って相変わらず、気持ちいいくらい好き嫌いがハッキリしてるわよね」

「褒めてないだろ、ミラク」

「ええ。大人気ないけど仕方ないと思ってるわ」

子供達がぞろぞろと部屋に入ってきた。

「お父さん、会議は終わったの?」

「一時休戦…のつもりだが、これ以上話し合っても時間の無駄かもしれんな」

「後半は特に脱線してたわね。まるで親権の奪い合いだったもの」

「本人の気持ちを無視した、親権の奪い合いだったね」

リーマスの棘のある言い方に、シリウスだけは余裕の表情。

「…僕の話?」

「そうよ、ハリー。シリウスより、うちの方がいいわよねぇ?」

「えっ!えっと…」

「やめて、ハリーが困ってるでしょう。──というか、シリウスにもハリーにも馴れ馴れしいわ…」

「妬かない、妬かない」

と言いつつ、楽しそうなリーマスである。

「昔も嫉妬してたな」

「あれは貴方が悪いのよ」

「…すまん」

「それに貴方だって。独占欲強いんだから」

「根に持ってるね、ミラク」

もう20年以上前なのに。恐るべし。

先発護衛隊も席に着いた所で、話を元に戻す。

「ハリーは私達が大切にする。家はミラクの方だ」

「じゃあ、先生もシリウスもスピカも一緒なの?すごいや、家族みたい!」

「そうよ」

「私も長期休暇にはお世話になるよ」

リーマスが苦笑して付け加えた。

「…で、でも、スピカと──娘と同じ屋根の下なんて、親としていいの?」

「それはそちらも同じよね?」

ジニーを一瞥して、不敵な笑みを浮かべた。

「…それに、シリウスが一緒だったら、尚更危険だと思うわ」

「我ら──パッドフット、ビクセン、ムーニー──悪戯仕掛人が守る」

頷きかけたリーマスの動きが止まる。

「私に選択肢はないんだね」

「当然だろう、ムーニー」

「じゃあ、プロングズもきっと見守ってるわ」

「うん、父さんも…」

親権争いの方は、決着がついたようだ。

“今”とこれから

「さて、冷めないうちに食べよう。いただきます」

アーサーの提案で、ようやく食事を始め、それぞれ楽しくお喋りしている。

「あ、この唐揚げ、お母さんが作ったでしょ?」

「ええ。私が作ったのは唐揚げと、ロールキャベツと、あとスパゲティサラダね」

「やっぱり。あたしお母さんの唐揚げ結構好きだよ」

長期休暇にしか食べられない味に、スピカは嬉しそうだ。

「デザートにチョコレートケーキもあるわよ」

「それはリーマスおじさんが喜びそう」

「ああ、とても楽しみだね」

そのやりとりを見ていたシリウスが口を開く。

「ロールキャベツは私のためだろう?」

「そうだけど…。シリウスってば、すぐヤキモチ妬く所、どうにかならないの?」

「ミラク先生のこと、本当に好きなんだよ」

ハリーが笑った。

「そう。だから早く一緒に暮らしたいんだが…実は、本部から出るなと、ダンブルドアに命令されていてな」

「えっ、そうなの?ダンブルドアに?」

「…それで、二度と戻らないつもりだった実家に、幽閉されているんだ」

「まぁ、いいじゃない。約20年ぶりに戻ったんでしょう?」

「いいもんか!これでは、騎士団の活動も思うようにできない」

不満に思っているのは明らかだった。

「だってお父さん、指名手配されてるんだよ?もっと自覚して」

「そうだよ。ここにいれば、安全だと思うから」

「わかってる。…秘密の守人か…。嫌なことを思い出した」

「正直な人ね。…この話はおしまい」

不機嫌そうなシリウスを見て、全て察した妻が話を打ち切る。

「…お父さんって、昔からこう?」

「何も変わってないみたい。単純なの」

流星群~不死鳥~

流星群~不死鳥~

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』に二人のオリキャラを加えた二次小説です!! シリウスの奥さん&ブラック夫婦の娘

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-04

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 懐かしの騎士団
  2. 話し合うべきこと。
  3. 愛されしハリー
  4. “今”とこれから