ヒマワリ

ある晴れた日

中学2年の夏
木野果は、生まれて初めて本気で恋をした

音楽室の裏にある、小さな花壇。木野果はそこに咲く花を見るのが大好きだった。
授業が早く終われば、さっそく花壇へ向かう。
夏休み初日、AM9:00からの部活の前に花壇を見ようと、少し急いで学校へ来た。花壇は木野果が登校する道路からも見える。
今は向日葵がぐんぐん伸びている。

その日、木野果は初めて自分以外の人が花壇にいるのを見た。しかも、男子。
よく見ると、それは同じ吹奏楽部の成宮くん。
成宮くんは、小さなジョウロで花壇に水をやっていた。いつもはマジメでおとなしくて、みんなから頼りにされていて、けどいじられキャラの成宮くん。そんな彼が、花壇のまだ咲くには早い向日葵に、ひっそりと水やりをしている。
木野果はなんだかくすぐったい気持ちになって、小さく笑った。

あれ、この気持ち、なんだろう。

よく晴れた日の朝、木野果の心は微かに震えだした。
木野果には、それが何の震えなのか、まだ分からなかった。

友だちに

成宮くんは、それから毎日花壇に水やりをしていた。
もしかしたら、木野果が気づくずっと前から日課にしていたのかもしれない。

5日目、木野果は初めて成宮くんに話しかけた。

「おはよう」

とつぜん話しかけたから、成宮くんは少し驚いたようだったけど、小さく微笑んで返してくれた。

「成宮くん、ずっと前からここのお花に水やりしてるの?」

「あ、うん。去年は枯れちゃったから」

去年から知っていたんだ。
木野果は、この花壇を自分だけの秘密にしようと考えていた。本当は今もそうしたいけれど、成宮くんとなら共有したい、と思えた。

それから2人は部活や花壇の話をたくさんするようになって、2人っきりではないけれど、部活の友だちみんなで遊びにいったりもした。

しかし、向日葵がもうすぐ咲く頃、事は起きた。

ヒマワリ

ヒマワリ

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-08-01

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