サンタマリア

交差点で俺とあの子は待ち合わせをしている。
「遅いな、なにやってんだろ?」
もうすぐ日が暮れる、彼女が来ない事に少し不安がよぎる。
と、突然、携帯が震えた。
彼女からだ、「はい」何故か胸騒ぎがした。
『吉野 愛さんのお知り合いの方ですか?』
「はい、、、」
『福田警察署の者ですが、、、吉野 愛さんが事故に遭われて、お亡くなりになりました』
(嘘だろ、愛が、死んだ!?)
頭の中が真っ白になる。
『沢野総合病院へ搬送されました、、、早急にお越しください。』
そう伝えると、警察官は詳しい場所を言って、電話を切った
サヨナラを告げるように太陽が沈んだ。
俺は足元もおぼつかないまま警察官が教えてくれた病院に行った。

ギギィ、、、

霊安室の重い扉を開けた。中は暗く、ロウソクの明かりだけが頼りに愛が眠る場所へ近づいた。
顔に被せてある布を取る。
確かに、愛だ。
急に足の力が抜けた。
(嫌だ、認めたくない!!愛が、死んだなんて!!)
泣きじゃくる俺の肩を愛の両親がそっと支えてくれた。
「章くん、、、」
俺と愛は、互いの両親も認める仲だった。
このデートも、もう6回目だ、今まで何もなかったのに、何で、何で今日なんだ。
今日は俺と愛が付き合って丁度7年目の日だ。 俺は、今日、プロポーズしようと思いプレゼントも用意していた。
指輪だって買ってあり、婚約届けも出そうと思ってたのに。
何故、何故、愛が死ななければならないのか!!
動揺を隠しきれない俺を横に、一人の警察官が、愛がどんな事故に遭ったのか、説明している。

信号無視の車に跳ねられたらしい、即死だという話だ。 犯人はもう捕まっており、後は事情聴取だけらしい。

ふらふらと部屋を出て、外の空気を、吸いに、、、また涙が止まらない。頼む!何でもする!愛を、もう一度だけ、愛に逢いたい!この命と引き換えでもいい!!
愛を、愛だけは、奪わないでくれ!!
彼女は俺にとってかけがえのない人なんだ!!
神よ、何故、何故、俺から愛という生きがいを奪うのか!!
ほかのヤツでも良かったはずだ、なのになんで、、、

出会いは、大学生になりたての時、俺は愛に一目惚れだった。
愛もそうだと、付き合って半年で話してくれた。
ずっと一緒だった。何をするのも、どこに行くのも。
なのに、何故?愛は俺にとってかけがえのない光なんだ!!俺から光を、奪わないでくれ!!
外で雨が降っている。窓をうつ雨のメロディが俺の心を落ち着かせている。
もう一度部屋に入っていく、愛は穏やかに眠っている、俺は愛の髪をなで、額にキスもした。だが、何も言わない、いつもみたいに、笑ってくれない。
また絶望感に襲われた。
神様、俺は何もいらない!全て捧げる。聞こえているだろう!!俺を愛の元に連れて行ってくれ!それが出来ないなら、俺は自分の胸を刺し無理矢理でも行ってやる!!

あの日から3日が過ぎた。俺の部屋はあれ放題になっていた。
プレゼントも、指輪も、、、。 何処に置くでも無く、ただ荒れていた。
まだ、受け入れられない、愛が死んだ事を、もう何度も考える、愛の元へ行こうか。
本当に、愛は、かけがえのない人なのに、俺はこの先どうすれば良いんだ!!

その時、風が吹いた。
何故か愛が降りて来てくれたような気がした。
ふと窓を見る、鳥たちが仲良く飛んでいた。
ああ、愛はこの鳥たちと共に空を飛んでいるのだろうか? そうなれば、綺麗、だろうな、、、。

俺はまた涙が出そうになるのを必死でこらえた。

なんか、泣いてばっかだな、、、俺。
ダメだな、こんなんじゃ、愛に怒られるな。

よし!!もう泣かない、俺は愛の分まで生きよう!
でも忘れない、こんなに愛した人は人生で、愛だけだ!!

きっと忘れない、優しくて、愛おしくて、可愛い、愛の事を、、、。

サンタマリア

サンタマリア

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-31

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