きれいなこ
思えば私はずっと臆病者だった。
いち
暑い真夏の部屋の中、私はもう逃げられないなと思った。高校3年生の長期の休み、今まで自分で選んできたはずのものが本当は違ったことに気づいた。そのことに気づいたのは勉強に身が入らなくなった時だった。勉強は好きだ、中学まではそう思っていた。高校は第一志望の専門的なことを学べるが都立高校という特殊な学校に入学した。中学までの友達は誰もいかなかった学校。幼馴染が途中まで一緒に目指していたが、気づいた時にはそれぞれ別の道を選んでいた。真ん中より頭のいい学校。そのことと特殊であるということに妙に安心していた私がいた。誰よりも特別できれいなひとになりたい。美人で個性的な魅力的な女の子になりたい。それが私の願いできっといつまでも変わらないだろう。自他ともにそういう風に認められる女の子になるために行動していこう。そんな硬い決意をとともに完璧に傷一つなく高校生活を送るのだと意気込んだ。それはコンプレックスの裏返しでもあった。
きれいなこ