死にたがりの日記<1>

日記帳を持ち帰ってしまった彼…。

手には日記帳・・・。

そのまま、家に帰って来てしまった。

ひとり暮らしの部屋に電気をつけて、ドサリと荷物を適当なところに置く。
スーツから部屋着に着替えると、ベッドの上に座り、日記帳を手に取った。
少しだけ、気が引ける。
でも、あの1ページめを見た後だ。
やはり、中身が気になる。
罪悪感に見舞われながらも、俺は日記帳を開いた。

1ページ目にはやはり・・・

『私が死んだ後、誰かがこれを見るでしょう…。
その時、どう思うのかな…?』

癖のある女性の字。
ゴクリと唾を飲み込んで、2ページ目をめくる。

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7月7日
今日は七夕だと言うのに、天気は曇り。夜には雨。
涼しい風が吹いていた。
七夕の日に晴れていた試しなんてない気がする…。
七夕の願い事なんて…いつからしてないんだろう?
幼稚園にいた時は「お姫様になれますように」とかって、子供向けに書いていたっけ?
私が本当に願いたかったことはなんだったんだろう?
今、短冊を渡されても迷ってしまうかカモ…。
昨日、トウコちゃんから電話があった。
TIAの話を聞いてほしくて、私が連続で電話をしたからだ。
「ごめんね。電話に出れなくて」
話を聞いていると、トウコちゃんは疲れている様子だった。
決まってるよね。仕事が変わって、慣れない状況に身を置いているんだもん。
私もちょっと不安定だし。
アクターって場所が良い場所なだけに、自分が役だってるのか不安。
もっと、機敏に動ければいいのに…デキナイ自分が情けない…。
ダメな私。
そして、トウコちゃんから発される言葉。
「スマイルの公演、当たってた?」
うん。知ってるよ。彼女がスマイルのこといっぱい考えてることくらい。
デビューまで後1カ月だもんね。
「ごめん。まだ、当落聞いてなくて。てか、いつ出たの?」
「昨日だよ」
そんな言葉を交わしながら、TIAの話が頭でちらつく。
TIAを一緒にやっていけば、トウコちゃんとこんな他愛無い話をずっとしてられるだろうに…。
なんだか、余裕がないな。私…。
なんだか、別次元にいるようなトウコちゃんに私は話を切り出した。
「18日。時間あるかなって思って」
「ごめん。ちょっと無理かな…」
どうやら、スマイルのことでいっぱいみたい。
「そっか。前に言ってた仕事の話聞いてほしいなって思って」
「う?ん…今、疲れちゃって、10時には寝てるんだよね。ツアーのこともあるし…」
あぁ…聞く気ないのかな?
5月に話した時は、結構乗り気に聞こえたけど…心の中では違ってたのかな?
なんだか、最近、こんなことばっかり思ってる。
私の発される言葉と相手の心の中が食い違ってるようなそんな感じ…。
楽しみだったハズのコンサートがなんだか憂鬱になってきた。
トウコちゃんと入るなんて決めなければ良かったかな…?
だって…遠征する程、スマイルに熱を上げてる彼女と、1公演でも入れれば良いと思ってる私は、
温度差がありすぎるもん…。
TIAはとても良いと思うのに…どうしてかな?
皆に上手く伝わらない…。
私が少しでも成功したらきっと、一緒にやってくれる子はいるのかもだけど…。
そこに至るまでに一緒に頑張ってくれる人はいないのかな?
中川先生が今、唯一、仲間になってくれそうな感じ。
『資格が取りたい』『勉強がしたい』って思ってるみたい。
あぁやって心に響いてくれれば良いのに…。
そんなことを思ってばっかり…。
先が見えなくて不安で…。
給料も足りない私…。
もう・・・・・・不安しか残らない。
こんなに不安なら、いっそ、死んでしまった方がマシかも…。
あぁ…なんで、こんなに不安なんだろ?
この間の水野先生のことがあったからかな?
全然、TIAの話が入らなかった。
どころか否定された…。
水野先生も余裕なんてないのかもしれないけど…。
水野先生みたいに『ネズミ講』とかって思って、話を打ち切られてしまうことが嫌。
不安でたまらない。
上手くABCができない。
皆、心の中で私のことをどう思ってるの?
怖いよ・・・
私、皆に嫌われてるんじゃない?
上辺だけの付き合いをされてたんじゃない?
そんな風にしか思えない私が・・・一番嫌・・・。
いつまでたってもマイナス思考。
辛いのは、今だけなのかな?
私は、ネットワークビジネスに向いてないのかな?
アポが取れない。ニーズが見えない。
不安がぬぐえない。

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俺は、首をかしげた。
(なんだか良く分からない)
それもそのはず、これは個人的に書かれた日記なのだから。
いったい、これを書いた人がどんな人で、どんなことからこれを書いたのか、まったくと言っていいほど読み取れない。
ただ、この人は何かにおびえている気がした。
俺は、日記帳を閉じると、机に置いた。
そして、ベッドに横になる。
深夜1時を回った時計の秒針がやたらと大きな音を部屋に響かせていた。
重くなってきた瞼。
俺は眠りについた。

この日から俺は、変な現象に見舞われる。
だから、この日記帳を手放せなくなってしまったのだ。

死にたがりの日記<1>

次には日記をかいた人がどんな人なのかが少しずつ明らかになるはず!

死にたがりの日記<1>

持ち帰った日記を読んでしまう主人公。 その日記の内容は・・・理解不能ながらも・・・。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-08-10

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