日食

1.港

 私は港で石を拾った。この石は私を睨んでいるように見えた。10日後もこの港に来た。この石は少し穏やかに見えた。
 私の夢は夢を見ることである。夢を見るなんて簡単なことかと思うかもしれないが、この港周辺では夢を見ることを禁じているのだ。夢を見ることなんて人にバレないだろうと普通思う。夢を見ればその人はこの港からいなくなり、二度と戻って来ないというのだ。
 海風が強くなったと思うと、一羽の鳥が私の肩に乗りつよく上へと引っ張る。この鳥は私をどうしようというのか。夢をみたらどうなるのか。この鳥のように遠くへ行きたいと願ってしまったらそれは夢となって追放されるのだ。私はなぜこの町にいるのか。紛れもなくここは私の故郷だからである。
 私は夢を見た。
 見てしまった。いや、ようやく見れたのだろう。この夢を。
 私の母は泣いた。さようなら。二度と戻って来るなと父は叫んだ。なんだ、それだけじゃないか。港から追放されるようなことはなく、私は家に帰った。父はいない。母もいない。私はこの街を出た。
 そんな夢を見たのだ。夢を見る夢を見た。私はなにがしたいのだろう。それがあって、たくさんの夢を見た。私は両親に別れを告げた。
 10日の人生もまた楽しいものだよな。と呟くのだった。

日食

日食

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-27

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