バース・デイ

バース・デイ

 バース・デイ

そういえば、気が付いたらまたもう一つの誕生日を迎えてしまっていた。夏休みという感覚がなくなって、もう一つの誕生日を実感する機会もなかなかない。

私の戸籍上の誕生日は秋である。夏とは全く関係のない、秋のさなかだ。
しかし、もう一つの誕生日、それがこの真夏にあるのだ。

小学生の夏休みの初め、生死をさまよう交通事故に遭い、関係者や家族の必死の看病や治療の結果、無事に生還することができた。私はその日をもう一つの誕生日として不注意な自分への戒めとしてきた。

とっくにその誕生日も二十回を超えてしまった。その間、たくさんの出来事を経験してきた。むろん、当たり前のことばかりかもしれないが、生きていなければできないことである。
 
「あの時に終わっていればよかった」と思うことも多々ある。ただ生きているだけでは済まされない事情にも何度も直面し、苦悩した時期もあった。まだ抜け出したとは言えないが、ずいぶんと楽にはなった。

考える。あのとき死んでいれば二十三回忌供養をされる年を迎え、生きていてよかったか、それともあのとき死んでいたほうがよかったか。複雑な気持ちではあるが、やはり生きていてよかったと思う。この世にいなければ体験できないことを、体験してきたのだから。

 これからも忘れずにいよう、もう一つの、バース・デイ。

バース・デイ

バース・デイ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-26

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