僕らの変わった夏休み
この話は僕たち七人が経験した夏休みの話だ。
あくまで変わっているだけの夏休みだが、その夏休みが 変わらなかったら、ただ遊んだり勉強したりする長い休みになっていたろう。
言い方では変わってないともいえるかもしれない。
だが、僕らが体験した夏休みを知ってもらいたい。
夏休み初日
夏休み初日。
僕「浅井 研斗」は暑くなり始めている夏の日に、六人の友達に呼び出された。
「研斗遅いぞ!なにやってたんだよ!」
「遅いぞ!浅井」
一番はじめに僕を罵倒したのが「南島 公太」で、次にいったのが「向島 俊介」だ。二人とも、昔からの腐れ縁いつもなにかあると僕を呼ぶ。迷惑な二人組だ。
「別にえーやないか。今呼び出したばっかやしさあ」
「....あんたらアホか」
はじめに怒る二人を宥めたのは「田中 烈也」関西出身の天才だ。二人をアホよばわりしたのは「青野 慶子」無口な 女子だ。
また紹介していないのは、どうしたらいいのかわからず右往左往している「稲垣 新太」と、黙々と日陰で本を読んでい て、僕に気づかない「阿川 日向」気づかないのは僕の陰が薄いからじゃない。勘違いしないでほしい。
「よしみんな集まったな!じゃあ行こう!
南島が言ったが「どこへいくんだよ」と僕が聞くと南島は、
「幽霊屋敷」
と答えた。
幽霊屋敷
町のはずれにある、大きな屋敷だ。人も近寄らなくて、あれ放題の場所だ。
「…何でわざわざそんなとこに」
青野がつぶやいた。確かにそうだ。行く必要がないのになんでそんなとこに行くのだろう。でるとかいう噂があるが、あれはただの噂。わかっているから行かない。別に僕が怖い訳じゃない。
「いや実はな、屋敷にある宝があるって話なんだよ」
「「「嘘つけ!!」」」
みんな南島が言ったことを即答で答えた。クソ!乗り遅れた。
「待ってよ!みんな!話を聞いてくれよ!」
南島が言っても聞く耳を持たなかったが、田中が「聞いてやろうぜ」と言ったことでみんな聞き始めた。スゲー奴だな田中は。僕にとってはうらやましい。
「で、宝って何ですか?」
稲垣が聞く。敬語マン稲垣。やっぱり敬語なんだなぁ。
「ついたら教えるから行こう!」
という訳で、幽霊屋敷についた。町外れなのに案外早くついた。
「案外小さいねーこの町」
「ちょっとびっくりしたわ」
みんな驚きの声をあげているが、実際は僕たち場所が近かっただけなのだ。みんな、頭大丈夫なのか?
「それより早く教えてよ。ついたからさぁ」
僕が聞くと、黙ったまま南島は立っていた。ただ黙ったまま。
南島はただ立っていたことを、ごまかしながら入り口に向かった。
「さぁ!あけるよ」
南島がそういい、ドアノブに手をかける。
「まてよ。宝ってなんや。はよいってな」
田中が聞くと南島ではなく、向島が答えた。
「その宝は『神の力』て、いう噂だ。その名の通りとった者は、神の力がもらえるらしい」
「そんな噂信じるなよ。どうせデマだろ」
疑う僕たち。しかし、向島たちは「それを調べるために行く」という。みんな何となく気になったようで、行くことになってしまった。
そこが僕たちの運命を変えてしまった
南島が勢いよく扉をあけた。
中はカビ臭く、夜中のように真っ暗だった。
「どうしよう。真っ暗だ」
「大丈夫ですよ」
と、みんなが困っていると、稲垣が懐中電灯をもっていった。よく人数分持ってたなぁ。
「よし出発だ!」
南島が言い、みんなが『オー』という声をドアが閉まる音が、かき消した。
みんなシンとした。入り口が勝手にしまってからだ。
「…前に行くしかない」
青野がつぶやいた。確かに進むしかなかった。
幽霊屋敷の探索が始まった。
探索
幽霊屋敷には、部屋が七つあり、一階に三つ。二階に四つあった。
部屋にはそれぞれ番号がドアに書いてあり、今はその一番の部屋にきている。
「広いね、この部屋」
「家一軒分くらいありそうやなぁ」
確かに、この部屋はそれくらいありそうだった。
みんなが、入ってからしばらくすると、
ガシャン
と奥から音がした。
みんなが驚いていると、稲垣がみてくるといい、音の方へ向かっていった。
稲垣がいってから一分後、「うわあああぁぁぁぁぁ……」
という稲垣の悲鳴が聞こえたと思うと、奥から
ドン ドン ドン ドン
という足音が聞こえてきた。
みんなパニックになり、あわててドアに向かった。が、あかない。逃げ場がなくなり、足音が止まった。奥の方にライトを向けると、そこには血だらけの大きな鬼がいた。
鬼は静かにいった。
「いらっしゃい。ようこそ鬼の間へ。あなたたちに恐怖を与えてあげましょう。ウヘヘヘ…」
「あ…あぁ…」
「た…たすけて…」
みんなは力が抜け、なにもできなかったが、田中が一人たっていた。
「鬼の間かぁ。ほかに鬼がいるとやっかいやなぁ」
「…どうした、烈也?」
おかしなことをいう田中に青野がどうしたのかきく。
田中は軽く笑いながら、こたえた。
「僕、霊媒師やから、僕のいうことまもってくれ」
田中は鬼に向かって、いった。
「鬼。あんたを地獄に帰すで」
田中がそういったとき、部屋の空気がかわった。
霊媒師
僕らはその意味がわからなかった。
霊媒師というものは、幽霊や妖怪など実際にいないもの(今は見てしまっているためいないのではないのだが)を、倒したり追い払うというものらしいが、実際にはいないと思っていたものだ。しかし、いるかいないか分からないものだといわれて、信用ができるわけがない。だが鬼は、驚くべき行動をとっていた。
田中におびえていたのだ。
……。
みんなしばらく笑いをこらえながら、黙っていた。
鬼はたくさんの霊媒師を倒してきたらしいが、ある霊媒師に、ここに封印されてから霊媒師が怖くなったらしい。いわゆるトラウマらしい。
「みんな、俺の言うこと聞いてくれ」
みんな戸惑いながらも、聞くことにした。田中はみんなに奥に紙に書いてあるものを書いてきてほしいといい、小さな紙を渡した。しかし、僕にだけ残ってほしいと言われたため、残ることにした。
みんなが奥に行くと(鬼はおびえていて何もしなかった)田中は小さな紙を取り出し、その紙に
「布陣504522を展開」
というと、鬼の足元に布陣が現れ鬼の動きが止まった。
「これで話ができる」
と、田中はいい僕に、
「きみにはすべてを話すよ。君なら分かってくれるはずだから」
といった。
「全てを話す…?」
僕ははじめは、田中がなにいっているのかが、理解できなかった。田中は全ての妖怪のことなどのことといい、話し始めた。
「まず、霊媒師のことからいうぜ。まず霊媒師ってのは…」
長いから略すと、霊媒師っていうのは魔術師に、にているらしい。布陣という丸い円に、いくつか文字や絵などがかかれたもの(みなさんが想像するようなもの)を使うらしい。さっき使ったのがそうみたいだ。
霊媒師と魔術師の違いは、霊を払うか見方につけるかの違いらしい。詳しいことは、頭が痛くなるのでやめる。
「次は、霊について…」
長いためこれも略すと、いろいろな霊がいて、その対処方についてらしい。
「それで今動かない、鬼の対処方やけど、これを首にさせばえぇよ」
田中はそういい、長い牙のようなものを取り出した。
「これは?」
「鬼の牙」
僕が聞くなり即答した。別に急がなくてもいいのに。
「そういえば、何で鬼は動かないの?」
「それはな、鬼の足元に布陣があるやろ?それが、妖怪などを作る霊気などを固めているんや」
へー なるほど。あの下の赤いのは布陣だったのか。
感心していたが、田中はまだ本題に入っていないらしい。
本題とは何なのだろう。
田中はなにを話したかったのかわからない。だが、あのときにいわれた言葉は、心に深く記されていた。
僕はしばらく動くことができなかった。
様々な感情によって、頭が回らなかったのだ。
本題というのは、屋敷の宝についてだった。
「えぇか?よく聞いてくれよ。この屋敷に宝があるのは嘘だ。だけど、確かにあるんや」
「は?」
あるのに、ない。意味がわからない。
「いや、意味がわからなくていいんや。進めばわかるしな」
笑いながら話していたが、急にまじめになって話し始めた。
「それより問題はこれから先に進む時のことや。先にいっておく。この屋敷には、五つ部屋がある。その人部屋ずつに妖怪がいる。そしてその妖怪を倒すのに、必ず一人が死ぬ。この中から一人必ず死ぬ。」
一呼吸おいてからいった。
「君には生きてもらいたい。なにがあろうと。必ず。そして、この屋敷の呪いを解いてほしい」
のろいといわれても何のことかわからなかったが、それより聞きたいことがあった。
「何でそんなこと知ってるんだ?」
田中はうつむいてこう言った。
「ここは元々俺の家やったんや」
秘密
秘密
それは誰もが一つは持っている、知られたくないこと。僕だって、ある。(言わないけど)
田中の秘密は、この屋敷のことだった。
元々はただの家だったそうだが、田中の父がなくなったときに、家をでたらしい。
「ただ、ここをでるときにおかんがなんかいっとったんや」
その会話の内容は、覚えていないらしい。
「でもここに来て、分かったんや」
分かったことそれは、この鬼をみて分かったそうだ。
「ここにいる妖怪。すべて、父上の部下の妖怪なんや」
霊媒師は、部下の妖怪をつけることもあるそうで、つけていたのは、鬼、悪魔、蛇神、狼男の四匹だったらしい。だけど、おかしいことがある。
「一匹足りなくないか?」
「そうなんや。そこがわからんのや」
田中にも分からないらしい。なにがくるのか分からなければ対処がしにくいと思うのだが、これは仕方がないのだ。
「何で僕なの?ほかのみんなでもよかったんじゃないの?」
田中は少し黙ってから、いった。
「君には才能がある。ていうのもあるけど、これが本当の理由」
といい、あるものを取り出した。
「これ。この傷。これが理由」
田中が取り出したのは、写真だった。そこに写っていたのは、胸にある大きな傷と同じ傷だった。
秘密の理由
「その驚き…。あたりやな。これは、お前さんの傷やな」
何でなんだ?何でこいつは知っているんだ?
僕の頭の中は、考えるのが精一杯で田中の話が入ってこなかった。そう。いっぱいだった。
この傷は昔、ある事件の時にできたものだ
今から十年前。僕は普通の暮らしをしていた。父は仕事をしていて、七時にはいつも帰ってきていた。母は、家で内職をやっていた。僕は、来年小学校にあがれるとうきうきしていたと、思う。特に貧しくもなく、裕福でもなく、普通の生活だった。しかしある日、家に怪しい宗教団体がきて、母をみるなり貧乏神がいるだの、霊にとりつかれているだの、変なことをいって無理矢理、その宗教団体に入れさせられた。
その日から母は暗くなり、父は、僕が起きている間には、帰ってこなくなった。僕は悔しかった。あの日に、あの人たちがこなければ、こんなことにはならなかったのに。
その日から、一ヶ月後。
僕は、いつものように部屋で遊んでいた。そこに母がきて、僕にかすれた声で言った。
「早く……にげ…て」
母の方をみると、黒く、まるで鎧のようなものをきていた。髪は、前に垂れれ下がれ、顔かほとんど見えなかった。しかし、泣いているのがわかった。
「どう…したの?かあ…さん」
きくと、すぐに襲いかかってきた。その衝撃でミラクルグレイトタワー(さっきまで遊んでいた積み木のタワー)が、倒れた。
次の瞬間。全身に激痛が走った。なにが起きているのか分からない。しかし、母が危険な状態で、助けなければいけないと言うことが。僕はとにかく周りに手をのばした。何か役にたちそうなものがあるかもしれなかったから。つかんだものは、落書き帳のページだった。目隠しにしてみようと思い、母の顔につける。すると、急にうめきだし倒れてしまった。母の体から、鎧のようなものも落ちて、元に戻っていた。母の近くにいくと、『ごめんね…』といってから、深い眠りについた。
その日は父も早く仕事が終わり、早く帰ってきた。父にすべてはなすと、『つらかったな…もう大丈夫だからな…』といい抱きしめてくれた。そのとき、痛みを感じたのでみてみると、大きな傷かついていた。父にはなすと、それは秘密にしろと言われた。
それから十年。この傷は誰にも言っていない。しかし、田中はなぜか、そのことを知っていた。なぜなのかは、知らない。
意志の受け継ぎ
「なんで、お前はしっていたんだ…?」
僕は、田中に聞いた。田中はゆっくりと答えた。
「その傷は、霊媒師が初めて霊を払ったときにつく傷だよ。霊の強さによって大きさが変わる。霊媒師としての強さがわかるものだよ」
田中は、一呼吸あけてからいった。
「もうわかっただろ。君が選ばれた理由。君は素質があるんだ。知識などで払っている本職の僕らですら太刀打ちできないくらいの素質が!」
僕は田中からの誘いに乗った。その時に、みんなも帰ってきた。
僕はこの後、一生忘れられないことが起きた。
田中は鬼を払うといい、鬼のとこまでいった。その途中で、「みんなを頼む」といわれた。いわれた瞬間その意味がわかった。
鬼の牙を鬼に突き刺すと、白い光とともに、田中は消えていった。無数の光とともに……。
田中は消えていった。僕らを残して消えていった。
みんなは素直に悲しんでいた。涙を流しながら…。
ピピピピ
僕の携帯に電話がかかってきた。誰からかを見ると、『田中 烈也』の文字がでていた。
「田中からだ!」
僕は思わずそういって、電話にでた。
『もしもし?つながってる?つながってるなら返事してや』
「田中?田中なんだな?こっちは聞こえてる。返事をしてくれ」
みんなが聞こうと集まってきたので、携帯をおいてはなすことにした。
『こっちでも聞こえるで。浅井君に話したいことがある』
「なんだはやくいってくれ」
『たぶん入り口付近に俺の荷物があると思う。それを使ってこれからのことを、考えてほしい』
その瞬間、携帯が一瞬で消えた。周りを見ると青野がもって話していた。
「これからのことを考える?やめて、今すぐ帰ってきて。みんなは私が守るから。何で浅井なの?」
初めて青野の、しっかりとした声を聞いたと思う。僕らが少し驚きながらも、田中は話した。
『それは…』
この後に、あのようなことが起こるなんて、僕らは知る訳がなかった。
青野は田中の話を聞くと、携帯をおいた。
『それじゃあ、これからは浅井君に頼んであるから。みんな死なないでくれよ』
僕はその最後の一言が気になった。
「おい!田中!」
しかし携帯からは、ツーツーという音しか聞こえなかった。
僕は携帯をしまうと、青野が僕の近くまできてこういった。
「…服を脱げ」
「………………は?」
それを聞いたみんなも聞き返した。
「いやっ…まてよ。なんで…」
「…早く脱げ」
「私も手伝うよ!」
「…ありがとう阿川」
「じゃあ俺らは…」
「おまえ等待てよって、いなうごぅ…」
そこからは記憶はない
間
ここの話は二つに分かれるため複雑だが、普通に読んでくれ。まずは女子編だ。
「…やっぱりか」
「? なにが?」
僕は今、気を失っている。その間に、女子に服を脱がされている。という、まか不思議なシチュエーションだ。
「…阿川。これから話すことを、誰にも話さないっていうなら、話すけど…」
阿川は少し考えて うん と返事をした。
「じゃあ話すよ。実は……」
男性編
「ふぅ…」
僕が変な体験をしているときに、腐れ縁の幼なじみ。南島と向島は、壁によりかかり休憩をしていた。
「あいつ、おもれー奴だよなぁ」
「あぁ、あんな体験なんてめったにしないもんなぁ」
「ですねー」
!?
バカ二人(南島と向島)は、驚いて声のほうをみた。
「「何でおまえがいるんだ!?」」
そこには稲垣がいた。
「気がついたら、みんながいたので、きたのですが…」
「まぁいいや。俺ら、トイレいってくるから」
「でもトイレ一つだろ」
「待ってりゃいいだろいこうぜ」
「じゃあ、待ってます」
僕らの体験はここからが本編だった。
転章
「あーあー聞こえてるか」
『ハイ聞こえますよ、ご主人様。もしかして、田中をやり損ねた。ってことはないですよね?』
「そんなことはねーよ。それより準備はいいだろうな」
『ハイ大丈夫です。しかし、浅井という奴。あのままでいいのですか?』
「いいよ、別に。あんなカス野郎くらい」
『ですが、あいつは危険ですよ』
「浅井より青野の方が怖いがな」
『では、次の間に仕掛けを』
「いや、3でいい。早いといろいろ面倒だ」
『了解しました』
「たのんだぜ。これは俺の計画道理に進んでるからな」
探索
田中を除いた、僕ら六人は話し合いをしていた。
「だからさー。あいつじゃあさ…」
「でも、田中君からのことですし…」
「困ったなぁ…」
すまない、訂正する。この話し合いに、僕は参加していない。とある本を読んでいるためだ。
なぜ本を読んでいるのかは、少し前にさかのぼる。
「う…うぅん」
「…大丈夫?」
「強く叩きすぎちゃったな」
僕は未知の体験から、目がさめめた。その時はまだ、部屋の中にいた。
「青野とひ…阿川か。大丈夫だ。みんなのところへ…」
「まて」
僕は起き上がり、友に仲間の大切さを教えるために動こうとしたのを、青野が呼び止めて、田中からいわれたことをしろ。と、いわれこの本を渡された。
そして今。
いわれたように、僕は本を読んでいた。
「じゃあそういうことでいくか」
「うん」
向こうが終わったみたいだから、僕はみんなのところへ向かった。
「今の話し合いでは、浅井 カス斗を中心として動くことになりました」
報告は、稲垣がしてくれたが少し変な気がしたが、気のせいとしてながした。
「それじゃあ、次の間へ行こう」
南島がこう呼びかけをした。
みんなはゆっくりとうなずいて、進みはじめた。
その時、僕は気づいていなかった。自分の体に何がおきているのかを…
僕らは今いる部屋は、二階の一番右端の部屋だ。
前にもいったが、この屋敷は二階建てだ。一階に三つ。二階に四つずつ、部屋がある。
しかし、田中は部屋が五つある。と、言っていたから、数があっていないのだ。
僕たちが最初にはいったのは、一階の右・前・左のうちの、右にはいった。次になぜ、二階の部屋にきたのかというと、一階の部屋がすべて入れなかったからだ。
みんな首を傾げながら二つ目の部屋に入る。ギギィとドアがあいた。その瞬間。部屋の左右にあった蝋燭が、いきなり火を灯し、部屋をおくまで照らした。奥には、大きな椅子があり、そこには女性が座っていた。
とてもきれいな人で、ワ○ピースのロ○ンみたいな人だった。
その人は僕たちに気づくと、大きな声で言った。
「ようこそ!我が蛇神の間へ!!」
蛇神
僕はなにもできなかった。蛇神の能力を知っていたのに…。それでもなにもしなかった。その悔しい現実をここではなそう。
蛇神が、いやなウェルカムコールのあと。それはすぐ起きた。南島が石にされたのだ。蛇神はそのまま動きを止めず、僕らに襲いかかってきた。
僕は逃げていた。一人、また一人と、石にされていく仲間を見捨てて…。頭が痛かった。逃げているときに、気づいたことだった。
「さて。後、一人」
蛇神が僕に向かってきた。僕は後ろに逃げようとしたが、後ろは壁だった。僕は逃げ場を失った。頭がカチ割れそうにいたかった。
「これで終わりね…」
蛇神がそういってきた。その瞬間。ブチッ という音が聞こえ、そこからの意識がなくなった。
ブチッ という音と共に、僕の意識はとんだ。
しかし、その音の瞬間、僕は人格が変わっていた。
「…フッ…フフ…フフフ…フハハハハハハハ」
あの不可解の音の瞬間。僕は不気味に笑っていた。蛇神でさえもビビるような、大きな声で。
「なぁ蛇神」
僕が声をかけると、蛇神はビクッと、震えた。
「おまえに十秒くれてやる。逃げたければ逃げろ。”俺”に魔界にかえされたくなければなぁ」
俺はそういって静かに数えはじめた。
「十…九…八…七」
俺が十秒数えても、蛇神は動かなかった。
「文句はねぇよなぁ」
といい、俺はポケットから紙とペンを出すと、その紙に適当な英数字や、絵を書いて蛇神に張り付けた。
蛇神は無数の光と共に消えていった。それから俺の意識もとんだ…。
心の中で…
「起きろ!起きろ!」
誰かが自分に声をかけている。自分はゆっくりと目をあけてみる。すると、そこには向島がいた。
「よかった!大丈夫か、研斗」
向島が話しかけてきた。自分は適当に答えて、立ち上がろうとした。が、立てなかった。立つどころか、指すら動く気配がなかった。
「…どうした?」
青野が聞いてくる。自分は答えることができなかった。
「浅井君。立てないのかい?」
稲垣が聞いてくる。自分はうなずいて答えようとした。が、その瞬間。自分はあることに気づく。自分は誰なのかを。今、自分がなぜこの場にいるのか、さっぱりわからなかった。
「自分はなぜここにいるの?」
自分は質問を無視して聞いた。どうしてもしりたかったからだ。
「なに言ってるんだよ。それに自分のことは、『僕』じゃなかったのか?」
しかし、自分はわからなかった。
「もしかして、覚えてないの?自分が誰で、ここがどこなのかを…」
自分は…いや、俺はゆっくりとうなずいた。
記憶喪失
記憶がなくなる障害のこと。頭を強く打つなどのことや、精神的な苦痛を受けると、なったりする。
しかし、自分はなった理由が不明だ。なぜなのかがわからない。
「記憶喪失なんだね。もう、今までのことを思い出せないんだね…」
「阿川…」
なぜだ、名前はわかるのに、関係がわからない。思い出したい。自分がどういうものなのか、知りたい。
青野が自分の方に来た。その手には、拳銃がにぎられており、そのまま自分に向けて撃った。
バン という衝撃と共に、暗いくらい世界に落とされた。
「うぅん……こ…ここは…」
起きてあたりを見渡すと、ここは草原だった。周りには何もない。
!?
自分はなぜこんなところにいるのだろう。みんなは大丈夫だろうか。
「おい!!」
「うわぁ!!」
いきなり後ろから声がかけられた。"僕は"声をかけられたことに驚いてはいない。その声をかけてきたのが、自分だったことに驚いたのだ。
「お…おまえ誰だよ」
「あ?俺?俺はおまえだよ」
「あーそうか。おまえは僕かぁ……は?」
しばし沈黙
「おまえ、ここがどこかわからないのか?」
僕はうなずいた。相手はため息をついてから言った。
「ここは、俺らの心の世界」
「はぁ?」
目の前にいる自分は意味がわからない。自分のことを僕だと言ったりしているところが特にわからない。
「俺のこと疑ってるだろー。まあ、当たり前だよな。俺自身も、今さっき、聞いた話だからなぁ」
僕は首を傾げながら聞いた。
「その話って、誰から聞いたんだ?」
その質問に、少し戸惑った様子で、答えた。
「もう、言っちゃっていいかな?まぁ、いっか!おいでてこいよ」
相手がそう叫ぶと、どこからともなく人がでてきた。
「全く、役に立たないなぁ『俺』。やっぱり自分がでていくべきだったな」
そういいながらでてきたのは、またもや、僕だった。
「あー。自分をみて固まってるところだなー。自己紹介しましょう。自分は目次。この世のすべての知識を持っています。以後よろしく」
握手を求めているのか、手を出してきた。僕も手を出し、握手を交わした。
「!?」
僕はつかんだ手を思わずはなしてしまった。なぜなのか、握手をした瞬間。何かが流れ込んできた気がした。
「あー、そうだったけなぁ。まぁ、いいや。もう時間がないからはなすよ。自分たち三人の関係を」
「僕たちの関係?」
僕は目次と名乗る奴に、聞いた。
「ああ、そうさ。まぁ、それはいいとして、本題に入らせてもらうよ」
今までは、軽い口調だったが、急に変わり重い口調になって、話始めた。
「手短に話すと、自分達三人は、同じ『浅井 研斗』なんだ。でも、君達と、自分は違うかもしれないけどさ」
そんなことは、どうでもよかった(よくないけど)。それよりも、なぜ自分は、三人になってしまったのか。そこを知りたかった。
「僕の言いたいこともわかるが、今は待っていてくれ。今の状況をはなさせてくれ。今の状況は…」
長いから省略する。簡単に言うと、今の僕はとても危険らしい。今は心の世界にいるから大丈夫らしいが、このままここからでれば、精神崩壊して、死んでしまうらしい。
「次は僕のいっていたことだけど、おっとまてよ。省略はするなよ。いくら書くのがめんどいからって、略すなよ」
チッ まるで僕が手抜きをしているみたいに読めてしまうが、断じてそんなことはない。本当に長いから、少しでも読みやすいようにしているだけなのに…。
「必死に何かいっているが、もう読者は『こいつ、手を抜いているのか』て、思っていると思うが」
えーっと、すみません!思いっきり手を抜いてました!これからはしっかり書きます!絶対です!約束です!
「今更遅い謝罪はほっといて、なぜ三人に別れたかだが、あまりはなしたくないが仕方ないから話す。実は…」
読者の皆さん。「この『…』パターンは!」と、思っているかもしれませんが違いますからね。しっかり読んでくださいね。
「君達も覚えているだろ、あの日のことを」
「あの日のこと?」
僕ではない自分が言った。しかし僕は覚えている。あの僕が持っている、秘密の日のことを。
「俺はまだいなかったから、しらなくて当然か。僕はわかるだろ。まぁ、話を戻すと、あの日のに自分達は、一人から、三人になったんだ」
どういうことかわからなかった。理解が出来なかった。あの日には、何も起こらなかったのに。
「何もわかってない顔だな。いいよ。教えてやる。あっ!今回は略せ。実はな…」
今回は略せといわれているから、略すと、精神的なショックでわかれたらしい。
「まあ、こんなとこか。もう、説明するところはない」
僕は目次に質問をした。
「目次。僕は戻ることができるのか」
目次は、当たり前のように言った。
「何いってるんだよ!」
そのあとに続く言葉は衝撃的だった。
「戻れるわけがないじゃん」
「…は?」
僕は目次の言ったことが信じられなかった。戻れない?冗談じゃない。僕はさっさと戻りたいのに…。
「なぁ、戻る方法は本当にないのか?」
僕がいうのを待っていたかのように、目次は答えた。
「あるよ。ここから戻る方法。まあ、無理だけどね」
「本当か!?」
僕はただ驚くしかなかった。戻る方法がある。それだけでうれしかった。
「人の話を聞いていたか?無理だよ、今から説明をする方法は」
僕はそのセリフが頭に来た。
「やってみなきゃわからないだろ!」
「うるせぇ!何もしらねぇ素人は黙って聞いてろ!!」
僕はしかたなく目次の説明を聞いた。
方法は簡単だった。ただ一つ。この場にいる三人が一人になればいいらしい。簡単そうに思うが、無理なのには理由がある。それは、誰がベースになるかだ。
ベースになるのは僕で決まりだと思うが、何年間も狭い空間に閉じこめられていて、外にででいる人が入ってきて、ここにいてくださいと言われるようなものだ。もし僕が閉じこめられている側なら、外から来たものを閉じこめ、自分が外にでるだろう。
それを起こしたくないから、無理らしい。僕たちはここで暮らすことが定められてしまったのだ。もう二度とみんなのところには戻れない。
悔しい。
とても悔しい。何もできない自分が。ここからみんなのところに戻ることもできない自分が腹立たしい。
でも、本当に戻る方法がないのだろうか。まだ方法があるのではないだろうか。
「無駄だ。お前が戻る方法はない」
俺につっこまれた。しかし僕は無視して考え続ける。
「おい、僕」
僕は俺の方に顔を向ける。
「ついてこい。お前の考えは、無駄だってことを教えてやる」
僕は仕方なくついていくことにした。ついていった先には、白い建物があった。
「ここは…?」
俺に聞くと、入ればわかるといわれ、ドアを開けてはいると、そこには何もない空間だった。
しかし、奥には目次がいた。
目次は何かしているようで、手を動かしていた。
「目次。お前何やってるんだ?」
そういいながら、目次の肩をたたくと、はじめの握手のような感覚がした。
目次はようやく気がついた。
「あぁ、僕か。ようやく連れてきたか。ずいぶんまたされたなぁ」
待たした?何をいっているのだろう?そう言えば、俺も僕の考えを見透かしているようにはなしていたが、何故だろう?だけどそれよりきかなければいけないことがあった。
「言わなくていい、分かっている。何をしていたかだろ?それは今までの君達の記憶を振り返っていたんだ」
「今までの?どういうことだ?」
僕が聞くと目次は、ヤレヤレといった感じで言った。
「君達の脳は記憶を蓄えていない。代わりに、ここに本として保管されるんだ」
「そんなバカな話があるかよ」
目次はため息をしてから、はなしはじめた。
「本当に何も知らねえやつは気楽だなあ。いいよ、自分が教えてやる」
目次は一呼吸おいてから、衝撃のことを言った。
「お前の脳は記憶を蓄えることができない。そして、お前の記憶を蓄えるためにつくられたのが、自分なんだ」
記憶を蓄えられない。
それがどういう意味なのか。
「そう、自分はただの道具さ。君達の記憶を管理するためだけに産み出されたものさ」
衝撃的だった。僕という「浅井 研斗」が三人で、記憶を蓄えられない人間だったのだ。なんだろう、自分が何なのかが、わからない。まるで化け物じゃないか。
「化け物か…。悪くない例えだな」
まただ。なんで僕の考えがわかるんだ。
「僕の考えは読者(女性)と僕しかわからないのにか……………プッ」
「…………………………………………………………………………………………………」
あのやろう。記されていない、僕の気持ちをもてあそびやがって……。
えっと、これはなにかの間違いです。僕はそんなことは考えて…
「いるから、元から少ない読者(女性)が減っちゃう~」
「…………………………………………………………………………………………………」
もう嫌だ。とにかくごめんなさい。もうしませんから読むのやめないでください。
「遊びも終わりにしようかね」
コイツ………!!
「えっと、なんで僕の考えを見透かしているのかだったっけ?そうだよね?」
「そうだよ。はやくはなしてくれ」
「わかったよ。何故わかるのか。その理由は握手にあります」
「握手?」
「そう、握手。はじめに会った時に、したやつだよ」
あぁ、あの握手が理由の訳がわからない。
「あのときの握手が、何も感じなかったことはないよね。それだったら、話す価値がない。やっぱりだよな。あのときの握手に『なにかが流れこんできた』かぁ。やっぱり君はそうだ!………」
読書の方々ここからは大変長くなります。なので省略させていただきます。
「………まあ、余計なことしかしゃべらなかったのは謝る。では、本題にはいろうか」
やっとだ。二時間もよく話していられたな、コイツ。
「自分は握手をしたときになにかをしました。さてなんだ」
「仕掛けをした?」
「ブブー!違います。正解は僕の手を握ったでした~」
「じゃあなんでなんだ?」
「簡単さ。自分たちは同一人物なんだぜ?握手をしたときに自分とシンクロさせればいいんだよ。なっ?簡単だろ?」
そんなことだったのか。なんか深く考えていた僕がバカだった。
「補足だが、お前は俺らの考えをよむことはできないぜ」
俺がきた。変なタイミングで。
「ここからは、俺にやらせろ。目次、お前じゃ時間がかかりすぎる」
「誰かと思えば、俺か。自分に何のようだ」
目次は代われといってきた俺に、イラついているようだ。
「俺は目次では時間がかかりすぎるから、代われといっているんだ。だから、代われ」
「断る」
「そんな権利はないだろ。お前はチェックでもしてろ」
目次は渋々ながら、俺の言うことを聞いて、何かの作業をし始めた。何をしているのだろう。まあ、関係がないからいっか。ということで流しておく。漬け込まれるのは嫌だし。
「あいつは、知識のチェックをしている。その知識が正しいかどうか」
「…………」
「なんだよ。うわぁ、こいつ空気読めねー奴、みたいな目は」
本当にこいつは読めているのか?僕の心を。
「いま、俺のこと疑った『ギクッ!』図星か」
なんだよ、読めてるのかよ。なら、もっと空気よめよ。僕の心なんか読まずに。
「俺はお前の心なんか読んでない『はぁ!?』セリフを途中で切るな」
思わず声が出てしまったんだ。仕方ないだろ?読んでないのに、見透かしたようなこと言うから。
「よく考えてみろ。俺がお前に触れたことがあったか?」
そう言えばないな。目次のいっていることが本当ならそうだな。僕は俺に触れていない。
「触れていないだろ?一人称が『僕』のお子様野郎に!」
「ああ、触れていないよ。一人称が『俺』の格好付けのクソ野郎に!」
これがアニメとかなら、『バチバチ』と僕とあのクソ野郎とのあいだに火花が散るだろう。アイツ、僕をお子様扱いしやがって………。
「お前に説明なんてされたくない!だから、どっか行きやがれ」
「わかった。いいだろう」
交渉成立。もう二度と僕に話しかけるな!
「まあ、あいつがいったことは、全部嘘だけどな」
「………………は?ナンテイイマシタカ?」
「目次がいったことは全部嘘だっていったんだ………。お前、プライドってもんはないのか?」
プライド?何それおいしの?僕、わかんない!
「まあ、いいよ。説明するから土下座をやめろ」
よかった、これでなんとかなりそうだ。
「長くなりそうだが、途中で省略するなよ。じゃあはじめるぜ」
ここからは俺の一人語りになるが、まぁ、いいだろ。ダメといっても語るがな。本題に入るかな。
まず、俺たちの関係を詳しく説明するかな。
俺たちは同じ『浅井 研斗』だ。それは、わかっているだろ。まずは、目次だが、俺らの記憶の管理のために生まれたやつだ。何故か知らないが全ての知識を持っている。だから聞かれてもわからないからな。
目次は人工的なものだから、俺らとは違うみたいだが気にしなくていいだろ。十五・六年一緒だったんだ。別にそれでいいだろ。
次に俺。名前は『斗研 井浅』だ。『アサイ ケント』だぞ。読み方間違えるなよ。まぁ、名前なんてどうでもいいけどな。
俺はお前の裏の顔だ。だけど、お前と同じ瞬間に生まれたわけじゃないがな。
いつ生まれたか。それは、お前が心の奥底にしまってある日だよ。そう、あの日。
なんのためか何て、言わなくてもわかるだろ?お前が霊媒師になるために決まってるだろ。
霊媒師には必ず裏がある。裏がないと、力が出せないんだ。小物程度の霊なら普通に祓えるが、流石にあの屋敷にいる奴らは祓えないんだ。
そういう奴らを祓うためには、大量の霊力が必要なんだ。その、大量の霊力を補うために、霊媒師は裏と言う存在を作り出したんだ。
その裏という存在が『俺』だ。
お前は俺が必要ないくらい霊力を持っているがな。
重要なところに入る前に、霊媒師についてはなそう。
霊媒師とは、人より優れた霊力を持ち、霊を祓う人間のことだ。
祓い方には、三つある。
譜陣系・論語系・戦闘系の三種だ。
譜陣系はわかるな。お前が使う祓い方だ。円の中に記号や英数字をかいて譜陣を作って祓う方法だ。
論語系は、いくつかの言葉を並べて霊を祓う方法だ。文字数や、言葉の言い回しが少しでも違うと祓えないという霊媒師の中でも使える霊媒師は少ないかなり難しい祓い方だ。
戦闘系は、読んで字のごとく霊と戦闘を行い、祓うという祓い方だ。この祓い方は簡単だが、リスクが大きいから使う霊媒師が少なくなってきている。
俺はその少なくなってきている『戦闘系』だがな。
お前。今おかしいと思っただろ。自分は『譜陣系』なのに、なぜ俺は『戦闘系』なのかってな。それはまた説明するとして、そろそろまとめに入るぞ。
そろそろ俺の一人語りも飽きただろ。
霊媒師には三種類の祓い方があり、名前が『譜陣系』・『論語系』・『戦闘系』であること。
俺たちの関係は、同じ『浅井 研斗』であること。以上で終わり。
だが、ひとつ伝えたいことがある。ベースの話だ。楽器じゃないぞ。基本のベースだ。
今のベースは『浅井 研斗』と思っているかもしれないが、違うぞ。今のベースは
目次だ。
「お前、今、なんていった?」
僕はとっさに聞き返した。なぜ『目次』がベースなんだ。まだ『斗研 井浅』ならわかる。あいつは、僕自身だから。
「一回落ち着け。俺は目次がベースだといったが…」
気がつくと、僕は『俺』の胸ぐらをつかんでいた。
「なぜあいつがベースなんだ!ベースになるんだったら、僕か『俺』だろ!
何であいつなんだ!!」
『俺』は僕の手をどかしていった。
「落ち着け、いい加減目をさませ。それをいまから説明するから」
僕はようやく我にかえった。こんなところで暴れている場合ではない。僕はもう一度戻って、約束を果たさなければいけないから。
「約束を果たしたいんだろ?あの頃に交わした、あの約束を」
そうだ。あの時の約束について先に話しておこう。僕の失敗が引き起こし、その時に交わした、あの約束について。
あれは、今から五年くらい前の話だ。
僕はその時小学五年生。その頃の僕はいつも教室で本を読んでいた。人見知りで引っ込み思案な僕は、クラスで浮いた存在だった。
その日の授業が終わり、みんなは一斉に帰り始める。が、僕は一人教室に残っていた。理由は簡単だ。僕は誰にも会いたくなかったのだ。上級生だろうが、下級生だろうが、関係無い。『人』という存在に会いたくなかったのだ。
僕はいつもどうり、本を読み始めた。すると、肩を叩かれた。振り向くとそこには同じクラスの『阿川 日向』がいた。阿川は僕に向かってこういった。
「お願い、助けて」
僕はそれを言われた時、なんといっていいのかわからず困りました。何から助けて欲しいのかを知るために、詳しく話を聞きました。
「えっと、日向さん。何から、助けて、欲しいの、ですか?」
「話すのはいいけど、長くなるわよ。それと、しゃべり方。おかしいわよ」
僕は人と話すのが嫌で、あまりしゃべらなかったからおかしいのかな?でも、どこがおかしいのかな?
「あの、どこがおかしいの?」
「全部」
えっ………!?ちょっとショックだな………。全部おかしいのか………。
「嘘だけどね」
………。嘘だった。嬉しいような、悲しいような。
「あの…話を戻すけど……」
「今夜って私の家にこれる?」
なんだろう。日向さんって、話がコロコロ変わるなぁ。まぁ今夜は父さんは出張だし、いいかな。
「別に、いいけど……」
「じゃあその時に話すわね」
に、してもなんで僕を選んだのだろう。僕、日向さんに何かしたっけ?いや、それはない。僕は学校でもあまりしゃべらなかったし、僕が学校で初めてしゃべったのが、今かもしれない。
じゃあ、何でだ?
「浅井君。ひとつ約束してもらっていい?」
「約束?別に、それくらいなら、いいよ」
「よかった。えっと、約束は『この事は誰にも言わないこと』いいね?」
「うん」
約束って言うからどんなことかなぁ。と、思ったけど簡単なことじゃないか。
「じゃあ、七時に私の家に来てね」
「うん」
よし!今夜七時に日向さんの家へ……………。
僕は日向さんの家の場所を聞いていなかった。気がついた時の時刻は午後四時。僕はそのあと町中を走り回って、日向さんの家を探すはめになった。
「よく来たわね。さあ、入って」
僕のとてつもない苦労を知らない日向さんは僕を家の中に入れた。
家といってもアパートで、『青山荘』という、二階建ての昔懐かしい昭和の面影を残す古きよきアパートだ。
日向さんの部屋は二階で、階段を上ってくるときに、階段がギシギシ音がなり、手すりは持ったら壊れそうなくらいボロボロだった。
はっきりいってボロアパートだ。
しかし、日向さんの部屋にはいると、中はとてもきれいで、高級旅館の部屋のようだった。
「今、『外と中のギャップがありすぎるだろー!』って心の中で突っ込んだでしょ」
あらら、ばれていたか。まあ仕方ないだろ。誰もが思うことだろうから。僕はしっかりとうなずく。
「あれは、大家さんが空き巣防止用にわざとああしてあるの。あれなら、大概の空き巣は来ないからね」
確かに来ないなと思いながら、日向さんとちゃぶだいをはさんで座った。
「それで、何から助けてほしいのですか」
日向さんはゆっくりとはなしはじめた。
「実はこれなんだけど………」
といって取り出したのは、一冊の本だった。外の色は茶色で、辞書くらいの大きさだった。
驚いたのは中が真っ白でなにもかかれていなかったことだ。これはなんだろう。
「これは誕生日にお母さんにもらったものなんだけど、中は真っ白で意味がわからなかったんだ。だけど、この本は読みたいと思った本がこの本に出てきて、読めてしまうの」
日向さんはそういった。しかし、これがどうしたのだろう。僕には何もできそうにないけど。
「なぜ、この事を浅井君にいったのか。理由は簡単よ。あなたも同じものを持っているから」
「同じものを持っているって!?」
僕は驚くしかなかった。そんなものなんて持っていないからだ。しかし、日向さんは持っているといった。
その不思議なものはいつも読んでいる本だった。
僕はそんなことはないと否定したが、実際に自分の本を見ると全く同じ本だった。
「その本の名前は『secret book』秘密の本よ」
「秘密の本?」
「そう、秘密の本」
少し驚きだった。自分の読んでいた本が、普通の本ではなかったことだ。ではなぜ真っ白なページに文字がでてきていたのか。しかし、今重要なのはそこではない。これをどうしてほしいのかだ。
「この本をどうしてほしいの?」
「封印してほしいの」
「ふういん!?」
「ふーいん」
封印なんか僕にできるわけがないのに……。どうやってやるんだろう。
「私のお願いを引き受けてくれる?」
「うーん……。い…いいよ」
なぜだろう。引き受けてしまった。なんでだ?あっ、わかった。僕は寂しかったんだ。自分で壁をつくってしまい、友達ができなかったから、誰かに便りにされるのがうれしいんだ。そういうことにしておこう。
「封印の仕方を説明するわ。まず、封印と言う言葉をイメージして本を開いて」
僕は言われた通りのことをすると、封印の仕方がかかれたページがでていた。
「そこにかかれていることをしてくれればいいよ」
僕はうなずきながら作業に入る。
えーなになに『紙に円をかき、なかに星をかく』か。次は『外側にもうひとつ円をかき、その間に[sjfouv]を星の一番上にかく』ほうほう。次は『星の中に[ahgdx2008]と書き込み、できたものを封印したいものにはる』か。
実際にできたものを本にはると、いきなりその本から人が飛び出してきて、僕にアッパーを食らわせてきた。
「おい、お前!自分に何をする気だ!封印なんかしようとしやがって!ぶっ殺すぞ!!」
そう僕に怒鳴ってきたのは、日向さんそっくりの人だった。
「何するんだよ!まったく」
「…………」
いきなり殴られて話しかけられた。なんか空気読めてないな、この人。ていうか、これ人なの?
「まさかこのタイミングで………」
なんか日向さんが言っているな。聞いてみよう。
「(ねえ、この人はいったい?)」
「(これは『secret book』の人間で『目次』って本人は言ってるけど………)」
なるほど。この人は、本の中の人間か。ならこの人に………。
「何すんじゃボケーーーーーー!」
「ぐあああーーーー」
おもいっきり吹っ飛ばされた。しかもグーで。痛すぎる。
目次(?)さんの方を見ると、日向さんに吹っ飛ばされていた。いや、なんで僕と同じくらい吹っ飛ばされている………。力ありすぎだろこの人……。
ハッ!今のうちに………。
「ペタっと」
布陣を書いた紙を貼った瞬間、シューといって消えていった。
「ナイス!浅井君。本当にありがとう」
そう言いながら、日向さんは僕に抱きついてきた。
「あわわわわわわわわわわわ!なななななななにするのひひ日向さん!はは放してよ」
あわてながら僕は言ったが、放してくれない。
「やめてよお願い!放し……」
日向さんは僕に抱きつきながら泣いていた。
「ありがとう……!本当に……!」
日向さんは僕にこう言ってきた。
「約束をしてくれる?」
「誰と?」
「私とに決まってるでしょ!」
「いってーー」
冗談を言ったら足をふまれた。なんか足の指の感覚がなくなってきたような気が………。
「冗談はほっといて、約束してくれる?」
「いいよ別に」
「一つ目。これから私のことを呼び捨てで呼びなさい」
「えっ!?」
「二つ目。このことは誰にも言わないで」
「うん。分かった」
「三つ目。私と付き合って」
「What!?」
今のは気のせいだ。
「もう一度言ってくれる?」
「私と付き合って」
「気のせいじゃない!!」
おかしい!おかしいよ!日向さん!!
「私だって、恥ずかしいんだかね」
日向さんは顔を赤らめながらいった。
「いやそれは、ちょっと………」
「約束してくれるっていったよね」
「え?」
「いったよね」
「は?」
「いったよ………ね」
日向さんの後ろから何か黒いものが出ている気が………。
「は……はい。言いました」
「じゃあよろしくね。浅井君」
「こちらこそよろしくお願いします。日向さ……」
「約束!」
「日向!」
ああもう!やりにくい!
「あっ!約束の付け足し」
「まだ増えるの!?もう勘弁してよ………」
「敬語禁止。いいね?」
「わかったよ、日向」
時計をみると九時を指していた。
「もう九時だから帰るね」
日向は少し残念そうな顔をしながら、いった。
「わかった。じゃあね!」
「うん、じゃあね」
僕が靴を履き、ドアノブに手をかけた。その時。
「もうひとつ、約束して。これからは、ずっと一緒にいて……くれますか?」
僕はドアをあけ、後ろを向いていった。
「もちろん」
それから今に戻る。中学三年の時に、一度からかわれてからは名字の呼び捨てになり、今ではあまり話さない。
でも、今の日向の気持ちを知りたい。それだけでもいいから、聞きたい。たとえ、その気持ちが向けられているのが僕でなくとも………。
「お前はその約束をまもりたいんだろ?なら、俺の言うこときいて取り替えそうぜ」
僕は迷うことがなかった。その、約束を守るために、僕は動き出した。
「外の世界に戻るには、ベースを目次から奪うしかない。だから、さっきの建物にいくぞ」
「だが、どうやって奪うんだ?」
僕は素直な疑問を聞いた。すると、『斗研』は当たり前のようにこたえた。
「簡単だよ。勝負をして、勝てばいいんだ」
『斗研』は一呼吸おいてから、いった。
「だが、あいつは全ての知識を持っている。譜陣系・論語系・戦闘系の全てがつかえる。手ごわいぞ」
そんなことはわかっていた。そう簡単な訳がない。でも、今はやらなければいけない。外に戻るためにも……。
「俺もなるべく援護はする。だが、戦うのはお前だぞ。忘れるなよ」
「忘れる訳がないだろ。でも、僕は何もわからないから、譜陣系について教えてくれ」
『斗研』はため息をつきながら、説明を始めた。
「いいか、譜陣系には戦闘方法が二つある。召喚法と、接点法だ。接点法はお前が使っている方法だ。召喚法はな………」
召喚法とは、周りの霊力を集め物や魔物を召喚する方法だ。基本的にはこの、召喚法を利用して戦うのがいいが、あいてがどんな状況かをみて接点法を使っていくのがいいらしい。
「接点法は一発の大技だから、使えないと考えた法がいい。あと、省略をするな」
バレた?まさか、そんな省略なんかするわけがないよ!自分に誓って嘘をついていない。
「自分に誓ってどうするんだ。あと、いい加減にしろよ!俺に誓って嘘はついていないな」
人間諦めが肝心。引くときは引く。現実から離れて遠い世界にいきたいな……。
「嘘をつきました」
「なんで?」
なんでか、なんでといったら。
「ごまかすためです」
「ふーん……」
もういいよこの話題は!つぎにいこう!
色々あったりしたが、僕は召喚法の訓練を始めた。訓練といっても何かを召喚できればいいから、すぐ終わった。
僕は『斗研』と共に、目次のいる白い建物に向かった。
入り口の前で、白い剣を召喚した。そして、入り口のドアを開けた。
「いってこい!」
と、斗研に背中を押されながら建物の中に入っていった。
中では目次が準備をして待っていた。剣を使うのを知っていたのだろう。武器をこちらに合わせている。
「君は自分と戦うために来たんだろう?だったら、さっさとかかってこいよ」
もう、僕らは戦うしかない。ドアがバタンと閉まる音を合図に、僕らは走りだした。
中央まできて、「うぉぉぉぉぉ」と「ハァァァァァ」というふたつのかけ声とともに、ふたつの剣が交じりあい、キーンという金属音が建物中に響いた。剣と剣が交じり合ってから、数秒止まってから僕らは互いに剣を振りだした。
しかし、ただ剣を振っている訳ではなかった。僕の体は少しずつダメージをうけていた。理由は簡単だ。目次は戦闘系の体術を使っていたからだ。
それは軽い攻撃だったが、蓄積されればそうはいかない。現に僕の体は悲鳴をあげていた。
「おいおい、そんなもんで大丈夫ですか?そのうち、殺されちゃうよ?いつまでもつか、見ものだね」
今の僕は剣を振る力すらなく、目次の攻撃を止めるのが精一杯だった。
その時だった。僕は目次によって剣を弾き飛ばされた。僕はその場に座り込む。
「勝負あったね、『元』ベース」
目次はそういいながら、僕の方に来た。そして僕に剣の鋒を向けて言った。
「さようなら『浅井 研斗』」
その言葉と同時に、剣が大きく前へでる。赤い液体が飛び散り、剣を赤く染めていく。僕は前に倒れた。真っ白だった床を赤く染めていく。
「は。はは。ははは。はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははなははははははははは」
目次は笑い叫びながら、僕の頭を踏みつけた。何度も、何度も、踏みつけた。
「負けた!負けた!お前は負けた!弱い弱い弱い弱い弱い弱い弱い!だから、何一つ守ることが出来ないんだよ!この、クズが!」
(弱い。そんなのは嫌だ!しかし、そんなのはわがままだってわかっている。現に目次を倒せていないじゃないか。悔しい。僕はこいつに勝たなければいけないんだ!目次を倒して、日向との約束を守らなければいけないんだ!立てよ!こんなところで止まっていてはいけないんだから!)
目次は、僕の頭を踏み続けていた。
「どうだよ?スッキリしたか?このクズ野郎」
目次が足を止める。そして、なんといったのか質問する。
「今、なんつったんだ?」
僕は、両腕に力をこめて、たちあがる。ゴホッと血を吐いたりしたが、いまはどうでもよかった。僕は立ち上がると自信を持っていった。
「“スッキリしたか?クズ野郎„っていったんだよ、クズ野郎」
目次が殴りかかってきたが、それをかわし、目次の腕をつかみ一本背負いをした。バン!という音と共に、ベキ!っと何かが折れる音がした。
僕は小さいナイフを召喚し、倒れている目次の喉にあてた。
「ベースを僕によこせ」
「断れば?」
僕にはもう迷いはなかった。
「殺す」
迷っている暇はない。行く手を阻むものがいるなら、殺す。僕はそう誓っていた。
目次はため息をついて、いった。
「自分の負けだ。ベースはやるよ」
そういって、目次はポケットから小さな紅い玉を取りだし、僕に渡した。
「これは……?」
「ベースだよ。その玉を砕けばベースの権限を手に入れられる」
僕はその玉を砕こうとした。その時に、グサッと言う音がした。背中から、鈍い痛みを感じる。ゴホッと、口から血があふれでる。手にもっていたベースの玉は、奪われた。薄れていく意識の中で、見たものは、
「斗………研」
ここは…どこだろう?そう言えば、なにがあったっけ?
ん?
誰だ?んーーーん!?ぼっ…僕!?
何でだ?もしかして、目次じゃないだろうな?……僕だ………。何でだ?
ん!これは青野か!その奥にいるのはロリコン(※稲垣)と、向島か!
あれ?体が僕の意思で動かない。よく見ると腕が細いな。何でだ?
!?ま…………まさか…………。
!!日向の体だ!!
いやいや、なんで日向の体に僕の意思があるんだ?
まあ、いいか。ここでしばらく様子を見ていよう………。
「なんで………。なんでこうなったの」
私は倒れている友人に向かって泣き叫ぶ。
しかし、友人の体はもう意識もなく、冷たくなっていた。もう、友人は二度と目を開けることはない、眠りについていた。
部屋を照らすろうそくが静かに生き残った私を照らす。
なぜ、このような状況になったのか。説明しよう。まずは、およそ一日前に遡る………。
およそ一日前。その時は私の友人『青野 慶子』が、友人(** **)を銃殺した時だった。
拳銃の銃声が聞こえたとき、私は銃を撃った慶子(以下慶ちゃん)の胸ぐらをつかんでいた。
「………なにをしたの?慶ちゃん。あなたは今、何をしたの!」
私は、大声で聞いた。目からはあつい液体があふれでていた。その液体は止まることはなかった。そのせいで視界がぼやけている。
「………日向。落ち着いて………」
「この状況で落ち着けると思っているの?」
そう叫んだあと、慶ちゃんから手を離し、膝まずいた。それと同時に、手で顔を覆い、小さな声で泣きはじめた。
「なんで………」
私はかすれた声で、聞く。
「………なんで彼を殺したの?」
慶ちゃんからかえってきた言葉は残酷なものだった。
「それが彼のためになるから……」
私はそれを聞くなり、慶ちゃんに殴りかかろうとしたが、向島くんが私の体を押さえていった。
「いい加減、落ち着けよ阿川」
私はその言葉で我に返り、慶ちゃんの話しを聞くことにした。
「これはすべて烈也の指示なの」
烈也。
フルネームでは、田中 烈也。眼鏡をかけていて、背が高い。世界一の天才として、地方のニュースに取り上げられるほどの天才だ。
しかし、この探検で霊媒師ということがわかった。しかも、ただの霊媒師ではなかった。霊媒師の中で有名だったといわれる、霊媒師『田中 月烈』の息子らしい。(私は誰なのかさっぱりわからない)
「それで、どういう指示だったんだ?」
向島君が慶ちゃんにきく。慶ちゃんは軽くうなずきゆっくり話始めた。
「………烈也は全てを見通していたの。浅井が『覚醒』することも」
「覚醒?」
私はとっさに慶ちゃんにきく。慶ちゃんは待っていたように答えようとしたが、一旦少し止まってから話始めた。
「………まずは、あなたたちに霊媒師について教えるから、しっかり覚えて」
まさかウチが一人語りをするとは思っていなかったけど、まぁいいか。
それじゃあ、霊祓師に………ん?なんでウチがこんなにテンションが高いかって?それはウチだからだよ。
わからない?当たり前だよ。今から説明するから安心してよ。
それじゃあ早速、始めますか。
まずは、霊祓師がなぜ霊を祓うのか。から話すかな。いや、それより先に霊祓師が祓う対象の霊について教えるかな。
この世は大きく分けると、二つの世界があるんだ。一つはこの『現実世界』もう一つは『霊世界』なんだ。
現実世界は、今、ウチ達がいる世界で、死ぬとだいたい半年で霊世界にいくんだ。まぁ、地縛霊とかは除くけどね。
霊世界は、簡単にいうと死後の世界なんだ。現実世界で死んだ人間の魂は霊となって半年ほどすると、霊世界にいくんだ。霊世界にくると、五十年後に現実世界にいけるようになっているんだ。それは永遠のローテーションで、両世界の魂の数は、常に均一なんだ。
じゃあ次のなぜ祓うのかを教えるよ。
これは二つの仮説があるんだ。一つは『バランサー説』もう一つは『自守説』なんだ。
あっ!なぜさっき【仮説】といったのかと言うと、ウチら霊祓師でもなぜなのかがわからないからなんだ。だから、仮説をたてて真実を突き止めようとしているんだ。
次は、霊祓師についてかな。
霊祓師っていうは始めからできないことがたくさんあって、経験を積むことで自分を作り出し、霊を祓う時にそのもう一人の自分と共に、霊を祓うんだ。
そのもう一人の自分は『裏』といって、霊祓師には必ずいる意識なんだ。その『裏』は必ず自分の一人称が変化するんだ。
もうわかっているよね。
そう、ウチは青野 慶子の裏『子慶 野青』よ。『アオノ ケイコ』ね。読みは同じだから、いつもお姉さまを呼んでいる呼び方でいいからね。
ん?あぁ!あの蛇神のときの浅井についても説明すると、一人称が【俺】のときは、多分[裏]の浅井だと思う。
だけど、蛇神を祓った後の浅井は【目次】だと思う。
あ!目次って言うのは、霊祓師の中にたまにいる障害のある人が使う人工人格のことなんだ。どういう障害なのかは、またあとで話すけど実はもう、浅井は戻ってこないかもしれないの。
なぜかって?それは、目次が表に出てくることは«絶対に»ないから。
「ちょっと待って。今、何ていった?」
私はいっていることが理解できなかった。彼が戻って来ない……?そんなバカな話があるわけが………。
「あいつはもう……戻って来ない。そういったんだろ?」
「う……うん……」
向島君が確認をすると、慶ちゃんはうなずいた。その瞬間。私のなかの何かが弾けた。気が付けは、私は大声で叫んでいた。
「ねぇ、待ってよ!浅井君が戻って来ない?どういうことよ!目次だったっけ?なんなのよそれは?いい加減にしてよ!そんな訳のわからないものに……。訳のわからないもの……に……」
目から暖かいものが流れてきた。足から力が抜け、立っていることがてかきなくなった。目から流れてきたものを拭い、また立ち上がろうとするが足に力が入らず、たつことができない。叫ぼうとしたが、口から出てくるのは、小さく貧弱な声とは呼びにくいものしか出てこない。
そんな私に後ろから暖かいものが包み込んでいった。見ると、それは慶ちゃんだった。
「いいんだよ。泣きたいときは泣けば。そうすれば楽になれるから」
慶ちゃんは私の耳元で小さくささやいた。それを聞いたのと同時に我慢していたものが溢れ出した。彼が死んだわけではないけど、溢れてくるものは止まらなかった。
それから五分後。私はようやく落ち着きを取り戻し、これからのことについて考えていた。
「彼が戻って来るのを待っていた方がいいかな?だけど、それだと時間がかかるし……。勇気を出して次の部屋……は、ちょっと無理そうだしなぁ……」
私の心は揺れ動いていた。彼はしっかり戻って来るのかどうか。私は彼を諦めるべきなのか、諦めるべきではないのか。そしてこれからどうすればよいのか。そんな悩みが頭の中をグルグル回っていた。
そんな悩みを吹き飛ばす方法が、次へ進むという方法だった。
まだ、私は慶ちゃん達の世界を知らない。だったらそれを知らなければいけない。
「日向。どうするの?進むの?進まないの?」
慶ちゃんが私に聞いてきた。おそらく、私がリーダーなのだろう。
「うん。決まったよ」
「じゃあ、どっち?」
私が答えようとすると、なぜだか知らないが、彼が必死に『進むな!僕が来るまで待っていろ!』と叫んでいる声が聞こえた気がした。しかし、私は彼の意思ではなく、自分の意思を選ぶことにした。
私が答えようとした瞬間、慶ちゃんが「わかった」と言った。私は驚きを隠せなかった。だが、慶ちゃんは何もなかったかのよいに話を進めていった。
「それじゃあ、ウチ達『霊祓師』の世界について、もう少し詳しく教えるよ」
慶ちゃんがそういうと、みんなはうなずき、慶ちゃんの話を聞こうとしていた。
「ちょっと待って!」
「……?どうかした?」
私があわてて止めると、みんなはキョトンとしていた。
「何でみんな私の考えていることがわかるの?」
みんなは顔を見合わせてから、大きな声で笑いだした。
「何でって、お前。行動を見てればわかるって、そのくらい」
「もう、五年以上一緒にいるんだからわかるよ。ねぇ、稲垣」
「ふぇ?う、うん……」
そうだよね。五年も一緒にいるんだもん。わかるよね、それくらい。稲垣君はなんでわからないんだろう?
「じゃあ、ウチの話を聞いてね。あなたたちも霊祓師の世界を知ることになるから」
私は大きくうなずき、彼を信じて彼らのいる世界を知ることにした。
「畜生………」
僕は日向の心の中で、こんな弱々しい声を出すことしかできなかった。
予想では、次は『狼男』だろう。はっきり言って無理だ。いくら青野が論語系霊祓師でも、素人三人を巨大な霊から守ることなんて無理だ。
だが、青野が守ることができるから進むことを選んだのだろう。友がいうなら、それを信じるしかないだろう。
僕は、友が無事でいれることを祈りつつ、友に友を護ってもられることを祈った。
「青野。みんなを頼む」
「それじゃあ……ん?」
慶ちゃんが説明を始めようとしたが、止まった。どうしたんだろう?
「どうしたん「どうしたんだ、青野」
少し間があいた。理由は、恐らく稲垣君が言おうとしたことを、あとから向島君が被せるように言ってしまったからだ。そのせいで、稲垣君の顔が顔文字のような驚いた表情になっている。
「実はさ、………」
しかし、慶ちゃんはそんな稲垣君を無視して話を続けた。
そのせいだろうか。稲垣君は、この大きな部屋の隅で小さくなっていた。元々、小柄な体型が余計に小さく見せている。
こう見ていると、少し稲垣君がかわいそうに思える。
慶ちゃんが話を止めたのは、彼が話しかけてきたような気がしたかららしい。
「それじゃあ、気を取り直していきますか」
慶ちゃんが、稲垣君が小さくなっているのに気がつかず、はなしを進め出してしまった。稲垣君はビクッと震えた後、さらに小さくなってしまった。
それでも、慶ちゃんは気がつかずにすすめていった。
またウチが一人語りをするとは思っていなかったけど、進めるよ。
今回は霊祓師の祓い方についてだよ。
霊祓師には、祓い方が三つあるの。
ひとつ目は『譜陣系』という祓い方で、円の中に記号や、英数字を書き、それに霊力を注ぎ込んで霊を祓う、という方法なんだ。霊祓師としては、一番オーソドックスな祓い方だね。
二つ目は『論語系』という祓い方で、言葉を使って空気中に存在する霊力を自由自在に操り、霊を祓う方法なんだ。これは、霊祓師の祓い方の中で、最も難易度の高い祓い方なんだ。
三つ目は『戦闘系』という祓い方で、読んで時のごとく霊と戦って祓う方法なんだ。霊祓師の中で、一番簡単な祓い方だよ。
あっ!忘れていたけど、霊祓師の祓い方には分け方があるんだ。『~系』・『~法』・『~術』の順番に分けられているんだ。まぁ、『~術』といっても『戦闘系』以外にしかないからね。
話を戻して、次は『~法』・『~術』について話すよ。
まず、『譜陣系』について。
『譜陣系』は、『接点法』と『召喚法』の二つでできているんだ。
『接点法』は、あまり使う人はいない方法なんだ。理由は簡単で、成功しても失敗してもリスクが大きいからなんだ。まぁ、どんな感じなのかわからないから、リスクといってもわからないよね。
方法は簡単で、紙に譜陣を書いて霊に貼る。もしくは、霊に刻み混む。終了。って感じだね。
これでわかったでしょ。リスクが大きい理由。
それじゃあ、次。『召喚法』は、霊祓師の祓い方の中で一番オーソドックスな祓い方のものなんだ。理由は楽だからかな。
方法は譜陣から様々なものを召喚し、祓うという方法なんだ。
『召喚法』は、『架空召喚術』と『現実召喚術』の二つに、また分かれているんだ。
『架空召喚術』は、自分の霊力などを使い、召喚する術で、『現実召喚術』は、物が元々持っている霊力を使って召喚する術なんだ。
次に『論語系』について。
『論語系』は『源法』と『混合法』の二つなんだ。
『源法』は、空気中の霊力を言葉で操り、霊を祓う方法なんだ。これは、霊祓師の中で最も難しい祓い方なんだ。
『混合法』は、譜陣系と掛け合わせて祓う方法で、『譜陣展開術』と『譜陣強化術』の二つの術式がある。
『譜陣強化術』は味方や自分の譜陣を強化する術式なんだ。
この祓い方は難しいから利用者がいないのが問題点なんだ。
最後は『戦闘系』について。
『戦闘系』は『壺斬法』と『譜陣召喚法』の二つなんだ。
『壺斬法』は霊の弱点をついて祓う方法で、『譜陣召喚法』は、武器などを召喚し、それで祓う方法なんだ。戦闘系では、この方法が普通かな。
「みんな覚えた?」
慶ちゃんは話終わり、聞いていたかどうかききにきた。
「「「もちろん」」」
私達は口を揃えていった。聞いていないわけがない。それが普通だし。
「それじゃあ、ここから先は私の考えた作戦を聞いてね」
慶ちゃんは胸を張っていった。
「「「合同詠唱!?」」」
慶ちゃんは、私達が驚いているのを見てニコニコ笑っている。向島君が意見をいったりしても、慶ちゃんはニコニコ笑っていたまんまだった。
少し作戦の内容を説明しよう。
まず、私達はそれぞれ違う音階とリズムで歌というか音を造り、それを奏でる。この一連の流れのことを合同詠唱と言う。もちろん、音階やリズムには決まりがあり、それに沿って奏でる。
その『合同詠唱』をしている間は、基本的には動くことができないため、私達は無防備になる。それを防ぐために、慶ちゃんは単独で霊と戦う。という作戦だ。
「ほんじゃあ、いこっか!」
「待てよ慶子!」
ほわほわした感じのままいこうとしている慶ちゃんを、向島君が止めた。
慶ちゃんは気分を害したらしく、少し不機嫌そうにしながら向島君の方を向いた。
「オマエ、正気か?そんな軽い気持ちで行って大丈夫なのか?」
「………」
向島君の質問に慶ちゃんは、答えられなかった。
向島君の質問から五分間、沈黙が、続いた。慶ちゃんは、ようやく口をひらき驚きのことをいった。
「……私は死者を最小限に押さえたいの。それだから、もう少しでこの世界と……みんなと別れるのだから……。最後くらいは明るくいこうと思って……。でも、みんなが嫌ならそれでもいいよ」
向島君と私は何もいえなかった。しかし、稲垣君はそれからちょっとたってから、慶ちゃんに向けていった。
「次は誰も死者を出さない。そう決めたのではないのですか?青野さんが守れないなら、僕が守ります。だから、なかないでください」
稲垣君のいったことが、一瞬理解できなかったが、すぐに理解することができ、あわてて慶ちゃんの方を見ると、そこでは慶ちゃんが大粒の涙を流していた。
私はそれを見て、何か言わなければいけない気がしたので、あわてて大きな声でいった。
「次は、死者をゼロにしよう!」
みんなは私のあとに、『オー!』と叫んでいた。
私達は、はじめてそこで知った。現実はそんなに甘くないことを………
私は、第三の間の扉を開ける直前にあることを疑問に思い、手を止めた。
「どうしたんですか、阿川さん?」
手を止めた私を不思議がるように、稲垣君は質問してきた。私はクルリと回り、稲垣君の方を向いてたずねた。
「さっきなんかかっこいいセリフをいっていたけど、君に何か力があるの?」
「………」
私がきくと、稲垣君は黙ってしまった。その答えは、稲垣君からではなく、慶ちゃんから返ってきた。
「稲垣は狼男なんだ。しかも、王族の子孫なんだよな、稲垣」
「「新太(稲垣君)が王族の狼男だと(だって)!?」」
私と向島君は驚きを隠せなかった。
「狼男って、あの満月みるとガオーってなるやつ?」
私は慌てすぎて言葉が変になりながらも慶ちゃんにきいた。慶ちゃんは笑いながら「そうだよ」とうなずいた。
稲垣君の方を見ると下を向いて黙っていた。
「お前はどうなんだ。答えろ、新太!」
向島君が少し強い口調で言った。しかし、稲垣君は黙ったままだった。
「答えろってンだろ!」
向島君は稲垣君の胸ぐらをつかみ殴りかかろうとした。が、急に「後方移動、四肢封じ」と聞こえたかと思うと、向島君は後ろに吹き飛び、うつ伏せになって倒れていた。
「何すんだ!慶子!」
「黙れ!悪魔の手!」
向島君はうつ伏せになった状態で慶ちゃんに向かって怒鳴ったが、慶ちゃんは怒鳴り返した。恐らく、さっきのも含めて『論語系』の霊祓法を使ったのだろう。
「稲垣。勝手にいって悪かった。だが、もう独りで抱え込まなくても……」
「もう結構です」
稲垣君は慶ちゃんのことばを途中で止めるような形で口をひらいた。それからは、まるで吹っ切れたかのような勢いで叫んだ。
「あぁそうだよ。僕は王族の子孫の狼男だよ!」
そう言ったかと思うと、稲垣君は狼男になっていた。全身が毛むくじゃらで、服がビリビリに破れて床に落ちていた。普段は小柄な体で、私より身長が小さかったのに、(ちなみに私の身長は、だいたい165センチ)狼男の稲垣君は2メートルはあるのではないかと思うくらいの身長だった。
「これでいいだろ?阿川さん……」
狼男になったせいなのか(もしかしたら、さっき叫んだせいなのか)ガラガラの声で私に尋ねた。恐らく、力があるのか、という質問についてこれでいいのか。と聞いているのだろう。もちろん私はいいとこたえた。
それをきくと、稲垣君は毛むくじゃらの狼男から、もとの人間へと戻っていった。
しかし、私達は重大なことに気がついた。足元に散らばっているのは、ビリビリに破れた布。多分この布を全部繋ぎあわせると、服とズボンとあと下着が完成するだろう。これが意味することはひとつしかなかった。
私の目の前にいる人間に戻った稲垣君は全裸だった。
私はその時、人はこれほどまで大きい声を出すことができるのかというのと、人は殴られると20メートルもとぶということがわかった。
「まあ色々あったけど、そろそろ先へ進もう!」
慶ちゃんは顔をひきつらせながら空元気でみんなをまとめようとした。だが、誰一人として慶ちゃんの話を聞いていなかった。
「………ブツブツ………ブツブツ………」
「コッチコナイデ、ヘンタイ」
「……?ふふぇ?変態って僕のことですか!?」
「ワタシカラハンケイジュウオクキロメートルニハイラナイデ」
「いや、地球外宣告されても無理ですよ!」
「ナニイッテルノカシラ。コノ、チキュウガイブッシツ」
「いやいや……せめて、生き物にしてくださいよ……」
こんな状況では第三の間どころではない(私も含めて)。そこで慶ちゃんがとった行動はこれだった。
「地に伏し四肢を封じ口封じ」
「………っ!?」
私・向島君・変態(※稲垣)の三人は、慶ちゃんに反撃することができず、呪文の通りの状態になっていた。
「……いい加減にしなよ。こんな状況で勝てると思ってるの?甘ったれんなよ………甘ったれんなよ!!」
慶ちゃんの言葉の直後。急に押さえつけていた力が強くなった。今では息を吸うのさえ苦しくなるくらいの力で押さえつけられていた。
「私はあいつのために頑張ったんだよ……。少しでもあいつへの負担を減らせるように……」
えっ……?
声が出せたのなら、恐らく声が出ていただろう。彼のためだって?そうなのかな?私はそうは思わないけど……。それに、戦う理由がないし……。
「あいつは多分、心の中でかなりの負担を背負って戻ってくる。そんなやつに連戦なんてさせられないよ………!!」
なんだ。あるじゃないか。戦う理由が。
私は冷たい床に手をついて立ち上がる。それと同時に、身体中の間接がギシギシなった。体重の約三倍の重さが体にかかっているし、女性のか弱い身体では支えられるはずがないはずなのに、私は立ち上がった。
二本の足で踏ん張ってたっていたが、身体がギシギシ音をたて今にも倒れそうだった。
「慶ちゃん……」
私は全身全霊で言った。
「もう少し早くいってほしかったよ。その言葉」
その瞬間、私は身体から何かが出てくるような感じがし、バキッ!という音と共に慶ちゃんの術式(?)の効果がなくなった。多分、術式を砕いたのだろう。
「いこう!慶ちゃん。第三の間へ!」
私はそれをいったのと同時に第三の間の扉をあけた。
部屋は相変わらずの広さだが、明かりはつかず暗いまんまだった。
「今回の霊はなんなのかな……」
私が呟くと稲垣君が顔だけ狼にしていった。
「恐らく狼男です。僕の同じ匂いがあるのでまちがいないでしょう」
稲垣君がそういったのと同時にガサガサという音がした。
「誰だ!」
向島君が叫んで音のした方を向いたが誰もおらず、あるのは丈の高い草だけだった。
………草?
私はあわてて天井を見ると、そこにはきれいな満月と、きらめく星が瞬き、幻想的な世界を作っていた。
周りを見ると草原が広がっており、草が月の光をうけて輝いていた。
「まさか、ここは………」
「そうだよ。ここは夜の草原だ」
慶ちゃんの言葉を低い声が遮った。その声は聞いたことのない声だった。
聞いたことのない声。それは狼男の出現を意味していた。
「ようこそ、第三の間へ」
狼男の声を合図に、私たちの戦闘が始まった。
私たちの戦闘は始めにたてたものとは全く違う作戦になっていた。
私は後方で巨大霊術の詠唱を。慶ちゃんは私の援護をしつつ、後方支援を。稲垣君と向島君は狼男と接近戦を。という風な戦闘をしていた。
なぜ、向島君は接近戦ができるのか。
理由は、彼の手が悪魔の手だから。
悪魔の手とは、すべてのものを消し去る。もしくは、打ち消す効果を持つ手のことである。この手はあまり空気に触れるとよくないので、グローブを常にはめていなければいけない手である。
向島君はその手を左手に持っている。その為、消し去るとまではいかないが、狼男の攻撃や毛での防御などを打ち消すことができる。それに武術も少しはできるので(少しどころではなくかなり)敵の攻撃も多少だが(これも多少ではなく全て)、見切って交わしたり読んで受け止めたりすることができる。
これを利用して、稲垣君と連携し、狼男同士では互角の勝負をこちらが優勢な状況にしている。
「どうしたんだ、狼さ~ん。最初の威勢はどうしたの?」
向島君が狼男に話しかけた。しかし、狼男は黙ったままだった。その時、狼男が稲垣君の攻撃でバランスを崩した。最大のチャンスを逃すわけにはいかなかった。向島君が左手をのばす。だが、その手は狼男には届かなかった。向島君の左手が触れる直前、狼男は腕を横に振り、稲垣君と向島君を振り払った。その攻撃が放たれた時は、一瞬だが時間が止まったかのような錯覚さえした。稲垣君はかろうじてとどまったが、向島君は吹き飛ばされてしまった。
「向島!」
稲垣君が叫ぶが、向島君は動かなかった。
「テメェ……!」
稲垣君が襲いかかろうとしたが、途中で動きを止める。稲垣君の足元には譜陣があった。
「これは霊的存在の動きを止める譜陣だ。お前はもう指一本動かせないぞ」
狼男はそういいながら私の方へ来た。狼男の右手には鋭く尖った爪が月な光を浴びて輝いている。狼男は私の前へ来て、右腕を大きく挙げて呟いた。
「死ね」
それは私への死刑宣告……のはずだった。狼男は腕を振り下ろした。紅い液体が飛び散るが、それは私のものではなかった。
私の前には狼男しかいないはずだった。
だが、そこにいたのは慶ちゃんだった。
「苦しかったですよね。辛かったですよね。もう楽になりましょうよ。月烈さん……」
月……烈……?
私が疑問を抱いた時には遅かった。
狼男はもうそこにはおらず、血だらけの慶ちゃんがたっているだけだった。
慶ちゃんには、もうほとんど意識がなかった。
私は落ち着いて周りを見ると、そこは、もう夜の草原ではなく火のついたろうそくが私たちを照らす部屋だった。
慶ちゃんはもう二度と目を開けることはなかった。
私はゆっくりと床に寝かした。そして、『青野 慶子』に祈りを捧げた。
隣を見ると、同じく祈りを捧げていた。
私たちはとりあえず、部屋を出ることにした。部屋を出たあと、第二の間へいき、私は扉を開け中に入った。もう一人は気を使ってくれたのか、外で待っていた。
扉を閉めれば私一人だった。だが、部屋の奥には彼がいる。
心の中で一人、戦っている。その戦いが終わらない限り彼は戻ってこない。
私はもう彼に頼るしかないのだ。泣きながら声と呼びにくい音で叫んだ。
「研斗…………助けて」
日向がなき叫ぶ姿が最後に見たものだった。
誰かに呼ばれているような気がした。僕は意識という名の糸をたぐり寄せていく。ゆっくり目を開けるとそこには『田中 烈也』という、天才霊祓師がいた。
「ようやく起きたか。待ちくたびれたぜ!」
・・・?
「なんでお前がここにいるんだ?」
僕はあり得ない状況を理解しよいとするが、途中であきらめた。どうせまともな答えは帰ってこないのだから。
僕は立ち上がり、一本の剣を召喚する。その剣はすべてが白で統一されている剣だった。
僕はその剣を握りしめて真っ白な建物を出ていく。
田中が追いかけて来るのを無視して進む。
僕にはやらなければいけないかとが山ほどあるのだから。
僕が白い建物をでてから十分後。
僕は田中に追いかけられていた。僕は五分前から走って逃げているが、相手とはいっこうに差がつかない。
また、それから十分後。僕は田中(?)に捕まって説教をされていた。
「あのなぁ。なんで、俺から逃げたん?教えてくれんかなぁ、浅井君」
「そ…それは……その………キャハ☆」
田中は僕の反応に怒って地面を殴った。それを見た僕は即、謝った。
僕が田中から逃げた理由。それは、目次が田中のマネをしているだけだと思ったからだ(姿などを変えられる術などがある«とおもう»から)。だが、これを見て本当に田中だということが確信できた。
「浅井君。教えてくれへん?逃げた理由」
「だったら前文見てくれよ」
「?? 何いっとんの?」
「………何いってんだろう。僕」
なんかおかしいぞ?なんか変なこと言いだしてるぞ?大丈夫かなぁ?
「そう言えば、なんで田中がここにいるんだ?」
僕はさっきから気になっていたことを聞いた。すると田中は少し怒った口調で話してくれた。
「俺は『目次リンク』ちゅうもんでこっちに来とるんや。あ、先にいっておくが、俺も目次使用者だぜ」
「目次リンクねぇ………って、田中も目次使用者!?」
僕は耳をうかがった。田中も目次使用者だったとは思わなかった。
だが、少し引っ掛かることがあった。
「お前、『目次』ってことは記憶を……」
田中は少し黙ってから「蓄えることができない」といった。
「そういえば、浅井君。『目次リンク』ってわかってる?」
「全然!」
「ちと、ぶんなぐってもエエか?」
田中はたぶん説明がほしいか要らないかを聞いたのだろう。だが、僕がいろんな意味で清々しくなるような感じで答えたため、田中はぶんなぐりたくなったのだろう。
田中は僕の考えを察したのか、目次リンクについて説明をしてくれた。
「目次リンクってのはな、その名のとおり目次同士がリンク。つまり、繋がるということや」
へー、なるほどね。目次同士が繋がっていれば『目次リンク』になるのか。えっ?でも、どちらかの意識が移動するってことか?
「あとは、自分でみろ」
はぁ!?
「最後まで説明しろよ!」
「なにいっとんねん!自分、絶対ハショるやろ!」
うっ!そこをつかれるといたいな。仕方がない。あとでじぶんで調べるか。
「んで?用はこんだけ?用がないなら僕いくけど」
「あぁ、ないんやけどさ。お前、どこいくん?」
「裏のとこ」
僕は答えるのと同時に、手に握っていた剣を、さらに強く握りしめた。
「だけど、お前建物『世界図書館』から出とらんぜ」
……?らっらいぶらりい?まさか白い建物……?
田中はため息をつきながら言った。
「そう、白い建物は『世界図書館』って言うんや。それとマジで出とらんでな」
「……マジ?」
「マジや、ゆうとるやろ」
僕が回りを見ると、そこは草原ではなく白い建物のなかだった。
「全くオッセーなぁ。待ちくたびれたぜ」
声の主は僕の『裏』だった。僕から『ベース』を奪った裏だった。
「何しに来た……?」
裏は調子に乗ったまま答えた。
「君があんまり遅いから見に来たんだよ。オモテサン!ん?いや、ウラサン」
それから少し間があいてから僕は言った。
「ベースは取り返す」
その言葉を合図に戦闘が始まった。
戦闘には音が存在しなかった。剣と剣が交わっても音が出なかった。なぜなら、あたり一帯の空気がなくなっていたからだ。音を伝える空気がないなら音は聞こえない。
なぜこうなったのかはわからないが、恐らく僕らから出てくる霊力が干渉しているからだろう。
僕は『裏』に吹き飛ばされた。足でブレーキをかけようとするが止まる気配はなかった。
僕は壁にぶつかり止まる。だが、体には大きなダメージを受けた。
間を開けることなく『裏』はとびかかってきた。
僕はそれを紙一重で弾き、体勢を立て直す。たったときには、足全体に激痛が走った。
その激痛をはねとばして、『裏』に追い討ちをかけて行く。だが、そう簡単に倒される相手ではない。
『裏』は体勢をとりなおして
剣を降り下ろす。それを僕が止めるような形で唾競り合いがはじまる。だが、唾競り合いは長くは続かなかった。
『僕』が飛ばされたからだ。
体勢を建て直そうとするが、間髪入れずに『裏』が突っ込んでくる。
そして、勝負がついた。
僕の敗けだ。
「なんだよ。よわっちぃなぁ、まったく」
そんなことをいいながら、『裏』は立ち去って行く。
(これが、実力の………差)
僕は倒れたまま、実力の差を実感した。どうやれば勝てるか何てわからなかった。
(ダメだ。逃げるな!あいつの……日向のことを忘れたのか!!)
やるしかない。その言葉意外何も頭の中にはなかった。
僕は剣を強く握りしめ、『裏』にとびかかる。
その剣は、『裏』のからだを
きれいに切り裂いた。
『裏』は僕の予想外の行動に対処できていなかった。だが、そのチャンスを捨てることができなかった。
僕の連撃が決まっていく。そして『裏』のからだが消えていった。
その直後、体の中になにかが入っていく感覚がした。
後ろから拍手が聞こえたので、振り返ってみると、田中が一人で拍手をしていた。
「ベース奪還おめでとう!浅井君」
そんな田中に僕は膝を床につけてあるお願いをした。
「僕に修行をつけてくれ」
田中はさっきまで笑っていた顔を真面目な顔にして言った。
「修行といっても僕が教えられるのは基礎中の基礎。しかも、ものすごくきついぞ。それでもいいのか?」
僕の答えはひとつしかなかった。
「よろしくお願いします」
場所は[心]から[現実]にもどる。
少女がある少年に助けをもとめてから一週間後、その少年が目を開けた。
「浅井、君……?浅井君?」
僕はゆっくりと目を開けた。しばらくのあいだ、光が当たっていなかった目に光があたり、目が眩む。
しばらく動かしていなかった体は、まるで全身に鉛をのせられているようだった。
「浅井君?浅井君なの?ねぇ、答えてよ」
横で日向が少し泣き目で問いかけていた。僕は日向を抱き締めてささやいた。
「僕は『浅井 研斗』だ。辛かったのによく頑張ったな。あとは僕が、守ってあげるからな」
日向はそのまま泣き始めた。僕はそのまま泣き続ける日向を強く、抱き締めた。
それから十分後。稲垣とも合流した。
「じゃあ、第四の間へいくか」
「待ってください!」
僕の話に稲垣がわりこんできた。
「なんだよ。いってくれ」
「少し……少し、休息をとった方がいいんじゃないですか?僕たち、戦いっぱなしですので……」
僕は少し考えてからいった。
「そうだな。少し休むか。風呂もあるしな」
「ふっ……風呂!?本当に!?」
「あぁ、本当だ。めちゃくちゃ広いらしいぞ」
「それじゃあ私
、入ってもいい?」
僕は驚きを隠せなかった。女性ってこんなにお風呂に執着があるのか。
稲垣の方を見て確認をとると、どうやら良さそうだった。
「あぁ、いいぜ」
「やった~~♪それじゃあ、入ってくるね~~♪」
日向はスキップをしながらいったが、途中で止まり後ろを向いて笑顔でいった。
「のぞいたら、八つ裂きにするからね♪」
ゾクッという感覚と共に、日向はスキップをしていった。
「それじゃあ、僕トイレにいってきますね」
「あぁ、いってら。俺は寝てるわ」
「……俺?」
僕はあわてて訂正した。
「もう戦闘前だからな。意識を高めてたから……」
稲垣は軽く笑いながら、わかっていますよ、といって行った。
それから二時間後。日向がようやく風呂からあがり、全員集まった。
「それじゃあ、いくか!」
その声と共に第四の間へと入っていった。
転章2
「ふう、疲れた」
『大丈夫ですか?ゴシュジンサマ』
「まあな。それより、計画は大丈夫化?」
『ハイ、超大丈夫ですが、まさか……』
「そうだ、最終シフトまでもっていけ、いいな」
『ハイハイ、わかりました。計画«エンジェル»最終シフトにいこう』
「もうすぐで……もうすぐで計画が完成するぞ……」
第四の間は『悪魔』だった。
「ようこそ、第四の間へ。あなたたちの人生はここで終わりです」
その台詞が言い終わるのと同時に、僕は悪魔に剣を降りかざす。だが、悪魔は何もないかのように受け止めて、こう呟いた。
「なんだ。この程度か」
稲垣が背後から攻撃を繰り出すが、軽々弾き返される。
「王族も落ちぶれたな、狼男。しかも、なんなんだよ。この手応えの無さ。マジ、ありえねェ」
悪魔はそんなことをいいながら、僕を弾き飛ばす。
(ただただ攻撃を繰り出すだけでは、ダメだ。いろいろと考えてやらないと……)
「戦闘中に考え事をしていていいのかい?」
僕は思考を強制的に中断させられた。それだけではなく、悪魔の腕の攻撃で思いっきり吹き飛ばされた。
息をはくたびに赤いものが、共に出てくる。
(くそっ!このままじゃ負ける!)
そんなときだった。悪魔が恐ろしいことを言い出した。
「ねェ、知ってる?他対一の時の戦い方」
僕はゾッとした。恐らく、あいつは日向を狙う。日向は、小規模な譜陣をいくつも書いて、僕と稲垣の援護をおこなっているが、戦闘に使えるようなことは教えていなかった。
必死に体制を建て直そうとするが、悪魔の腕の攻撃が効いていて立ち上がることができなかった。
「死ねェ!女ァ!」
悪魔の槍が降り被られる。
「やめろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
僕は瞬間的に回復譜陣を使ったが、間に合うことはなかった。
槍が降り下ろされ、鮮血が舞う。だが、それは日向のものではなかった。
稲垣が日向の前に両手を広げる形でたっていた。口からは大量の血が溢れだしていたが、倒れることはなかった。
「約…束……だ……から。約束だから。青野さんとの約束だから。阿川さんを……守るっ………て」
稲垣はそう言い残すと、そのまま先方に倒れた。指一本も動かすことなく。
「いな……がき……稲垣いいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
僕はそう叫ぶと、『悪魔の槍』という霊器を召喚し、悪魔に突き刺した。
悪魔は煙のように消えていったが、心の傷は消えていかなかった。
僕は日向のそばに駆け寄った。日向は稲垣の前で泣いていた。すると、日向があることをいった。
「……らせよう。おわらせようよ。こんなの、嫌だよ……」
これは心からの声だろう。僕は「あぁ」と答えた。そして、日向だけでも、生きていて欲しい。ぼくは心からそう思っていた。
僕と日向は第五の間へと進む。
だが、第五の間で自分の甘さを思い知ることになるとは知らずに……。
第五の間の第一印象は
「…きれい………」
だった。
奥には純白の服を着て、純白の翼を持ち、頭の上には黄色い輪が浮いていた。
相手は深く頭を下げて挨拶をした。
「私の名は«rod igg pfa 208»。あなた方からすると『天使』という存在になります。以後お見知りおきを」
そしてまた深く頭を下げた。そして手を前に出していった。
「これはあいさつがわりです。受け取ってください」
その瞬間、日向が何もうけていないはずなのに体がボロボロになり倒れた。
「日向!大丈夫か日向 !日向!日向!日向!!」
その時、日向の唇が動き、ある言葉を表した。
『ご・め・ん・ね あ・り・が・と・う さ・よ・な・ら』
その言葉のあと、日向は人としての活動をとめた。
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
僕はただ叫ぶしかなかった。何もできない自分が悔しかった。悔しいだけではなく、そんなことをいっている自分が惨めで仕方がなかった。
「いったじゃないか。これは挨拶がわりだと。まさか、もうギブアップかい?」
僕はそんな天使の言葉のを無視して、ある術の詠唱に入った。
「右、それは天使の存在を表す。左、それは悪魔の存在を表す。神、それは天使の上に存在する。その神の力を我が右手に集めよ!形は剣。色は白。神の剣を召喚せよ!『聖剣 アスタム』!!」
その言葉の通り、僕の手には聖剣と呼ばれる剣が存在した。
「なんで……なんで………人間がそれを召喚できる?何故だ! !!」
天使は気がついたのだろう。僕の頭の上に
黄色い輪があることに
「嘘だろ?人間が、天界に近づくことなんて不可能なはず……なのにな……」
「うるせぇ」
天使が思考を整理しようとしているのを剣で凪ぎ払う。天使はそのまま消えていった。
これで終わったわけではない。最後までしっかりけりをつける。そうきめていたではないか。
「みてんだろ、向島!出てこい」
そうさけぶと、向島が無傷で現れた。
「いつから気づいていた」
「んなこと、しってどうする?俺たちはもう、戦ういがいないだろ?」
向島が訪ねてきたことをすぐさま返す。もう、とっとと決着をつけたい。みんなのためにも。
「それじゃあ始めますか」
合図は要らなかった。体が自然に動いていった。
相手も白い刀を使い攻撃をして来た。向島は左手は手袋をしていた。どうやら、左手の能力は使わないようだ。
ギン!ギン!と金属同士がぶつかるおとが響いていた。たが、勝負はあっという間に着いた。
僕の勝ちだ。
向島は仰向けになってたおれており、向島の腹に足をおきを、首もとに剣を当てていった。
「死ね」
「「「やめろ!」」」
剣が向島の首を切る直前で止めた。声の主は、田中を含めたこの屋敷で死んだ友だった。
「もう、俺たちは生き返った。だから殺さなくてもいいだろ!」
「んな甘ェこといってるからこうなるんだろ!!」
南島の意思も僕には通じなかった。
こいつはみんなに、日向に死を与えた。それではみんながかわいそうじゃないか。
「なぁ、研斗。こんな案はどうや?」
烈也の案は記憶を焼き殺すというものだった。
僕はそれで了承し、戦いは終結した。
エピローグ
僕ら七人は始めに入ってきた大扉の前で話していた。
「ずいぶんと長い時間いたなぁ」
「約一年?そのくらいだよね」
「親とかが探しているんじゃないですか」
「学校とかやばそうやなぁ」
「……死とかも経験したけど、たのしかった」
「腹減った~~!メロンパンくいて~~!」
「「「なぜメロンパン?」」」
なぜ、こうやって話しているのか。理由は『楽しい時間を終わらせたくないから』である。外に出れば普段の現実に戻されてしまう。それが嫌なのだ。
「向島。大丈夫かなぁ?」
「大丈夫だよ。あいつなら」
記憶を焼き殺した向島は気を失ったままだった。いまおもうと、本当に向島を殺すことができたのだろうか。今までずっと腐れ縁で一緒にいた友を、きることなどできていなかっただろう。
「それじゃあ、そろそろいきますか」
「あぁ、そうだな」
「……一年ぶりの日光が楽しみ」
「学校が心配ですね……」
「親の方が心配やろ」
「メロンパン~~~」
「「「だから何故メロンパン?」」」
ぼくが扉をゆっくり開けていく。光が隙間からさしこんできて眩しい。
扉が全開になり、外へ出ていく。外はセミの鳴き声が響いており、日差しも強くまるで、夏休み初日のようだった。
「あっ!」
稲垣が大きな声を出した。みんなが稲垣に集まって時計を見た。
その時計は突入から一分前の時間を指していた。
「お前の時計こわれてるんとちゃう?」
「電波時計なので、ずれるこっはありません」
結局原因はわからずそのまま解散になった。
僕らにとってはこれが夏休みのエピローグだとはだれもおもっていなかった。
「日向~~!」
ぼくは日向に大事なことをいうのを忘れていた。
「日向。僕は………」
僕ら七人の変わった夏休みはまだまだ続く
僕らの変わった夏休み
はじめまして!akkiyです。
まず、こんな駄作を読んでいただき誠にありがとうございます。
この作品は、本文にあるようにプロローグのつもり(?)で書いた作品です。つぎに書く続きの作品も読んでいただけると嬉しいです(居ませんよね。そんな人)。
では、少し短いですが、この辺で筆を置きたいとおもいます。
次の作品も読んでいただけるように頑張りたいと思っています。
それではさようなら!