屋上はかくも素晴らしき

屋上はかくも素晴らしき

アイツが居なくなったのを知ったのは、梅雨なのに嫌に晴れた日の事だった。
梅雨前線とその兄弟分のような雨雲の合間。
縫うようにやってきた初夏のような暑い日。

アイツが居なくなったのを知ったとき、アイツはもうこの田舎町を出た後だった。
アイツと私が嫌った町。アイツは私を置いて出て行った。
私がアイツを置いて出て行くはずだったのに。

日が高かった。梅雨時期とは思えない。
肌にまとわりつく汗と不快度指数、自転車を押す度に背中からこぼれる熱。
首からぶら下がるAKGの黒いヘッドホン。季節違いのマフラーのようだ。

アベフトシのカッティングからミッシェルガンエレファントの世界の終わりが流れる。
太陽が町を照らす音と混ざり、それは少し心地よい暑さに変わる。

山と山と山と山に囲まれ、道路が中央に一本。
その横を田んぼと家屋が向かい合うように並んでいる。
これがメインストリート。電信棒と老人以外にこのメインストリートを謳歌するモノは何も無い。

駅前のヤマザキストアでアイスを買おう。
買わなければ学校に着く前に本当に世界の終わりを迎えてしまいそう。

町に一つしかない駅は8時以降無人駅。
近所の悪ガキやそれを怒れない会社員や酔っ払いは無銭乗車の常習で
それを笑って済ます町人の気風が特にこの町の空気を象徴づけている。

屋上はかくも素晴らしき

鋭意執筆中。

私を囲う小さな町。
町が囲う小さな私。

意味は同じだ。夏の暑さと一緒にやってきて、べたつくみたいな閉塞感。

屋上はかくも素晴らしき

仮にクラスの一人が居なくなったとしたら。
学校という分母の中のクラスという単位での社会構造。

そういったものをバックに書いてみました。
音楽の話がたくさん出てくるのは仕様です。

皆様の暇潰しにでもなれば幸いです。
転校した彼、彼女は今何をしているのでしょうね。

屋上はかくも素晴らしき

アイツが居なくなった。 だだっ広い屋上がもっと広くなって、楽しくなくなった。 要らなくなった合鍵。 屋上から見える。幸せそうに白球を追いかける田舎の高校生。 クラスの奴らが話す音楽は耳に馴染まない。 コメカミが何かに押さえつけられてるようだ。 箱庭のような田舎の古校舎。 無人駅、田んぼ、山、山。廃棄タワー。黒煙。 屋上から殆ど見える。この町の殆ど。 この町を憎んで、嫌ったアイツが居なくなった。 私がアイツを置いていくつもりだったのに。

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-22

CC BY-NC
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