プレゼント
小学校最後の、大寺愛利の誕生日、俺は覚悟を決めて、図書カードをプレゼントすることにした。
家まで行ったけど、インターホンを押す気になれず、郵便受けに放り込んでみた――ら、「ぼわん」と、思ったより大きな音がした。
そこでびっくりして走ったりすると見付かるのだ、と自分に言い聞かせて、そろそろと歩き出したのに、
「ちょっと、小田!」
あっさり見付かって呼び止められた。
「今何か入れたやろ」
「おう……なんで分かってん?」
「家ん中で犬が吠えたから」
……俺には犬の声なんて聞こえていなかった。そう言われてみれば、きゃんきゃん言っている。
「何入れてん」
「見てみろや」
大寺は郵便受けから取り出した封筒を乱暴に開けた。
「は? 図書カード?」
「お前、今日誕生日やろ。やから」
要らんわ! と言われるかと思って一瞬身構えたが、返ってきた言葉は
「ありがとう」
だった。ここで遊園地の券なんかにしたら、はあ? なんであんたと行かなあかんねん! となったかも知れない。
「じゃあ」
と言って帰ろうとしたら、腕を掴まれて、びっくりした。
「料理クラブのタルトまだ余ってるから食べへん? ちゃんと紅茶も淹れたるから」
「……食べる」
俺は素直に従って、家に入って、タルトを食べて、紅茶を飲んだ。
それだけだった。
プレゼント