30歳、独身、彼氏なし

セフレ

「やっぱりだれでもいいんだ」
少しほろ酔いの頭でそんな事を考えていた。

隣の部屋からは親友のヒナの甘い喘ぎ声が聞こえてくる。

悲しいような虚しいような気分を消したくて必死に
眠ろうと努力してみたがヒナの大きな声が耳障りで
なかなか眠れなかった。

元カレ、親友、アタシ。
ここ何年か月1で集まる3人だ。

翔は高校の時から26歳まで付き合っていた。
26歳の時に結婚したくてしょうがなかったアタシと
まだ結婚したくない翔とのアタシとの間には
溝ができて別れるという決断にいたった。

嫌いで別れたわけじゃなかったから
別れてからも会うことは辞めなかった。

会えば恋人ごっこみたいな感じで
世間的に言えばセフレのような関係だ。

翔との体の相性はすごくよかったし、
彼氏がいないアタシには翔を拒む理由がなかった。

ただ元々女好きな翔は更に磨きがかかり、
アタシ以外にもそういう風な関係の子がいるようだった。

アタシと翔はただのセフレだし、気にならないといえば
嘘になるかもしれないが一切翔の恋愛事情を話題にする
事はなかった。

それに最近のアタシは世の中の男に冷めていたし、
結婚したくてしょうがなかったアタシはいつの間にか
消えていた。

ヒナはアタシと同じ会社で働いていて
翔と付き合っている時からよく3人でご飯を
食べに行ったりしていた。

ヒナは翔の事を好きだ。

この事でアタシとヒナが揉めた時期もあったが
アタシと翔が別れてから、また3人で集まることが
多くなった。

ヒナは可愛くて明るくて一緒にいると楽しくて
やっぱり親友には変わりなかった。
翔の事でヒナを失う事は何か違うなと思っていた。

3人で集まる時にヒナが翔をまだ好きなのは明らかだった。

明くる日

「飲んだ後アタシの部屋で飲みなおすのは失敗だったな。」
翔とヒナが男と女の関係になった事にアタシは必死で理由を探していた。

いや、遅かれ早かれ2人はそうなる気はしていた。
または既に昨日が初めての関係ではなかったのかも・・

アタシがこう考える事は無意味だ。
元カレという存在がそう考えさせるのか、
翔に未練があるのか・・

自分の気持ちがわからない。
結婚をしたかった自分。
ただ愛されたかったのだ。結婚をしてもいいと決意される女になりたかったのだ。
最愛の人に。

別れてから4年。好きな人ができなかったわけじゃない。
好意を寄せてくれる人もいた。

しかし歳を重ねるに連れて求める事が多くなっていた。
心より先に頭で恋をしようとしていた。

周りの友人や知人はほとんど結婚していた。
友人が旦那の愚痴をいう度に、結婚してないアタシを羨ましがる度に
「まだ結婚してなくてよかった」と思ったり、
子供の成長を幸せそうに話す友人や、独りでいると時々襲いかかる不安が
「結婚したいなあ」という願望を心の奥から引っ張りだす。

アタシは最近つくづくこう思う。
人間はないものねだりだ。
欲が本当に尽きないものだと。
自分が愛する人に同じように愛される。
本当に奇跡みたいな事だ。
世の中のカップルはそれがどんなに幸せなことか
理解出来ている人はどれだけいるのだろう。
また自分も相思相愛の人がいた事を
今では幻だったかのように遠い過去に思える。

アタシはこの先どう生きていくのだろう。

30歳、独身、彼氏なし

30歳、独身、彼氏なし

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-07-21

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  1. セフレ
  2. 明くる日