稀によくある日

 唐突に甘いものが食べたくなったので、駅を出てすぐのコンビニでイチゴと生クリームの入ったサンドとお茶を購入した。
それからコンビニを出て五分ほど歩いた所に公園を見つけ、そこのベンチで早速食すことにする。
袋からお茶とサンドイッチを取り出して、太ももに乗せた。袋は風で飛んでいかないように尻に敷いておく。

ピリピリと、サンドイッチの入ったビニールの背中を説明通りに裂くと、そこから甘い匂いがふわっと香る。思わず待ちきれなくなって、裂いた狭い入り口から指を差し込み右のサンドイッチを取り出すとパクッと頬張った。
歯に押されて舌に飛び出した生クリームの甘みとイチゴの酸味が口の中に広がる。
生クリームの甘さの安っぽさが、昔、母がスーパーで買ってきた半額の菓子パンを思い出して懐かしい気持ちになる。
あっという間に一つ目のサンドイッチを胃におさめた私は、ペットボトルのキャップを捻った。
渋みの強いそのお茶を口に含むと、舌にこびりついた甘みが洗われるようでスッキリとする。
するとまたその安い甘さが恋しくなって、私は二つ目のフルーツサンドに手を伸ばした。

うん、うん。特別おいしいわけではないが懐かしくてたまに食べたくなる味だなぁ。

二個目は三口目ほどで甘さが辛くなって、早めにお茶に助けを求めた。
渋みの強いお茶の手助けもあって、そのあとは無事完食することができた。

たった二つのフルーツサンドだけで充分な非甘党の私でも、また何年か後、この安っぽい甘さのフルーツサンドが不意に食べたくなるんだろうな。
そんなことを考えながら残ったお茶を胃に流し込んだ私は、停車時刻の迫る最寄りのバス停へと小走りで向かった。

稀によくある日

稀によくある日

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-20

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