Aーアルダー
ーシスルウンメイー
「ディーン」
「お前…」
彼女は、口だけを動かして何か俺に言っている。
その少女は泣いている。
「なんで、泣いてんだよ」
ギュッと拳を作った彼女
少し俯いて涙が一気に滴る
そして、クルッと俺に背を向けてしまった。
あの背中は…
*
「チェルー、おいっ」
頭上からいい声が聞こえてくる
どおりで頭がズキズキするはずだ。
そして、自分は身体を揺さぶられている。
とても不愉快だが我慢我慢…
「あ…ぁ…ハース…か」
朝、小鳥が美しい声音で鳴いている
ここは、王宮。
(夢…だったのか)
兵が寝泊まりする寮である。
「今日は、俺らが見張り担当だ。」
「はぁ!?そんなの俺聞いてないぞッッ!」
青年は勢いよく起きた。
さっきまで夢の中だったのにと心の中で思う。
しかし、何故いきなりそんなことを言われなくてはならないのだ
今日は、せっかくの休日なのに…
「すまんな、昨日突然決まったことでな、なんか、南の方で戦をしているらしい
案の定、兵が足りなくて配属されたらしい。」
「はぁーたくっ!!…で担当場所は??」
深くため息をつき
着替えようとして、服を脱ぎ始めた。
「王室」
「ぶっ!!!ま、マジかよッ!!?」
青年は驚き思わず吹いてしまった。
(王室は、面倒だ…。)
「早くしたくして来い、4番隊副隊長」
「うっせー、言われなくたってわぁーってんだよっ!」
ディーン・B・チェルハ
17歳、代々王家に仕えてきた騎士の子息である。
顔は童顔ぽく、甘い感じの容姿だとよく言われている。
服を着替え、廊下にいる同期のカール・O・ハースに声をかける
「行くぞ」
「寝坊したくせに」
「うるせーな」
ここから、王室までの距離はすごく遠い
(本当にこんな無駄に広い城って必要なのか??)
二人は、とぼとぼと王室に向かった。
*
あと少しで王室に着くところの角を曲がろうとしたら
ドンっ
赤黒いマントとぶつかった。
しかし
「すまんっ…あれ…?」
「今確かに、ぶつかったよな??」
確かに、誰かとぶつかった感覚があったのだ。
しかし、そこにはネズミ1匹もいなかった
「あぁ…なんだったんだ…」
遠くの方で視線を感じた
「っ…!」
そのほうを向いても、誰もいない。
彼らは諦めて王室に向かった
王室の大きな扉をノックする。
「どうぞ」
美しい通った声が聞こえた。
「おはようございます、女王陛下」
「おはよう、ディーン、カール」
女王陛下は凄い暗記力で、兵士1人1人をしっかり名前で呼ぶ。
だからみんな慕うのだと思う。
「今日は、陛下の護衛をさせていただきます」
「あらぁ?今日はお願いしてなかったはずなんだけどね?
ルーミニア許してくれなかったのかしら??うふふ」
そう言って、かけていた眼鏡を外す。
女王は柔らかい物腰で、俺たちに接してくださる。
「ですが、護衛は必要ですッ!!」
「今日は外してもらえる?大事な私の部下が来ているの
ま、あなたたちも大事な部下ですけどね」
女王は優しく微笑みかける
「しかしっ…女「ねぇ、そこまであたし貴方に慕われてんの?」
後ろから聞こえた声に2人は驚いた。
(ドアの音は一切しなかったぞ!!!?)
「あら、もう来ていたの…早いわね?」
「そうやって、愛想振りまいてんだろ…まぁ、いい
そこをどけ。貴様ら」
ヒールを鳴らして俺の目の前にやって来た赤黒いマントの人物は
女王に向かって、同等に様にそう言った。
「おい、なんだその口のきき方
女王陛下と我らが王宮の兵であることを知ってのもの言いか」
俺は許せなかった
女王は、…俺の恩師だから。
「…ッチ…いちいち面倒なだけだ。早くそこをどけ」
気だるそうな声は早くそこを通せとばかりに
イラついた口調で言葉を放つ。
「嫌だと言ったら」
マントを着た者は、はぁとため息をついて女王に言った。
「あのぉー、こいつら下げていただけませんか?」
「うふふ、無理みたいね。」
楽しそうに笑う女王。
そして、マントの人物はさっきよりイラついた口調で
「笑い事じゃないんだけど」
「そうね~」
そんな会話をつづけて
マントの人物は、青い瞳で俺を睨んだ
「おい、いい加減どけよ」
と言った。俺は頭にきて剣を出した。
(ッ!!!!どれだけ、俺らを侮辱すれば気がすむんだ!!!!!)
「へぇ?プライド、結構高いんだー
王宮の兵士だっけ?どれだけの腕か見せてもらいましょうか」
少し、構えて唇を薄気味笑く横に広げた。
「っ…!!!」
振りかざした瞬間。
マントが少し切れて剣は天上に刺さってしまった
「弱っ」
そこで、股間を蹴られた
「あ゙ーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!」
「あ~あ…破れちゃった…せっかく新調したマントだったのにぃー」
「大丈夫か!!?」
カールが近づいてディーンを支えるが
ディーンはすでにカンカンになっていた。
そして…
「お前っ!!」
マントの帽子を脱いだ
プラチナブロンドが美しいポニーテールの少女がそこにいた。
「……」
ゆっくりと、よみがえった。
(あの背中は…)
「何?」
「アイツは…そんな…!!」
「あぁ、エレナ・ベルティのこと??」
「…なんで、いるんだ…」
その少女は、ディーンがかつて愛した
婚約者の姿をしていた。
「ま、アンタのことはどうでもいいけれど
報告に来た」
カツっと女王の前に立ち
「月下の人々、天中重なり合う影導かれん。永久とは飛天の如く神風は止んだ
安楽の民に告げる、漆黒は近づく、暗黒は翼になり我らを覆う
美しきものは宝を目指せ、死と生を求めよ」
女は言葉を淡々と唱えた
「…ふふ、そうですか
キングも意地悪ですね」
女王は頬杖をついてクスクスと笑っていた。
(な、なんなんだ…
この暗号…)
「知らないわよ。それじゃ、帰るわね」
そう言って、女は振りかえって帰ろうとした。
しかし、俺はそれを止めた。
「おい…お前…」
「お前じゃなくてさ、あたしはK。アルファベッドのK」
アルファベッド…聞いたことがある
王宮騎士と敵対している26人組みの組織
(なんでそんな奴がいるんだッッ!!)
「だから、護衛はいらないと言ったんです」
女王は呆れたように二人に言った
がしかし、ディーンにはその声は届いていないようだった。
「ここで、お前を殺す」
「おいっ!!!チェル!!!」
短刀を出して彼女に剥ける
(エレナ…)
「無理むりっ!あっはは、すんげー面白いね?」
「っ!!」
彼女に向かって走って行った
しかし、手首を掴まれて
折れるくらいに曲げられた。
「無理って、言ったじゃん?」
そう言って後ろ向きに歩き出した
壁に吸い込まれるように彼女は消えた。
ディーンは床に倒れ涙していた。
*
ある塔の上でKは日向ぼっこをしていた。
横たわる彼女に風がさっーと吹き彼女の髪を揺らす。
「K様お疲れ様です。」
「あぁ…お前は否のファルスか?」
メイド服の様な格好をしたツインテールの少女が
拳銃を所持していた。
「はい、今回より貴方様とご同行することなりました
以後お見知り置きを」
赤い瞳で少女はKを見つめた。
「本館に戻る…面倒だけど。」
起き上がったKは髪を掻きあげて
顔をかしめながら呟いた。
「戻ったらお召変えですよね?
今夜は、ボレル侯爵の館でパーティーが行われる予定ですものね」
「あぁーマジ面倒。」
クスクスとファルスは笑う。
そして、ファルスは屋根に銃口を向けた。
「扉召喚っ」
銃声とともに、大きな扉が姿を現した
「へぇー…召喚拳銃ねぇー。
聞いたことはあったけど…まさか、否にいたとは…ね」
感嘆をあげながらKはファルスの召喚銃を見た。
「私は、アルファベッドから落とされた者です」
「そ…でも、選考に落ちたんでしょ?
普通に、あの世に逝った奴らよりマシだと思うけど??」
Kは立ち上がって扉を押した。
「あたし達は、みんな願いなんてなくただ
生かされてるだけだし…生きる意味なんてないよ。」
そう言って、光の中に入って行った。
*
「…だから下がって欲しかったのよね…」
女王は崩れるディーンを頬杖を付きながら
呆れたような眼差しで見ていた。
「女王…これは…一体!?」
「治安維持のために、アルファベッドの力を借りているの
…まぁ、多少は力にはなっていますが…
ないに越したことはありませんよ。」
にっこりとほほ笑む女王
しわがよって、優しい笑顔になる。
「でも、あなたが聞きたいことはそんなことではないでしょう?
まぁ、教えることはできませんが…」
「っ…!」
「ルーには私が言っておきますだから、ディーン貴方は医務室に行きなさい
彼女は、とっても器用だからそこまで痛めつけていないはずよ」
にこやかに言う姿はさっきまで何もなかったかのよう
(なんで、親しそうにエレナ…いいや
アルファベッドのことを言うんだよ)
「…はい」
「カールも付き添ってあげてください」
「はい」
*
「ようっ、K」
「…何か用?C」
大きな白の前の噴水に腰をかけていた。
そして、この男に出会ってしまった…
こいつは厄介なのだ
いつも、女を見れば口説く口説く…
本当にあきれる男だ。
「今日は、ボレル伯爵んところだろ?
今回は簡単にはいかないぜ」
自信ありげに言うコイツ…
こいつは、アルファベッドの序列では上で
序列第3位の実力者。
「なんでよ…」
「今回は王室関係者も来てるらしい
だから、この間Eも手を出せなかったらしい
でもな…ジーマン・ウィルソンが来てるって言う」
(っ…面倒な仕事だ。でも…しょうがない)
「出来るわよ、私なら」
「ふっ…頑張るんだな」
私はそう言って立ち上がって、城内に入って行った。
*
(はぁ…父の代わりとはいえ、パーティーなんて何年振りだろう…
ずっと警備だったし…)
ヨーゼフ=ルッツ・ボレル伯爵
結構、闇市場とかの話しをよく聞く…
周りをうろついていると
「アレ…?ウィルソン兄さん?」
「ん?…え、もしかして……ディーンかい??」
昔、夏休みにいつも遊んでくれた父の友人の息子の
兄さんがいた。
「お久しぶりです!兄さんっ」
「おぉ…大きくなったなディーン…」
「兄さんこそ、すごくカッコいいですっ」
「あっははは、それはこっちのセリフだぞ?
女の子のこと一杯泣かせてるんだって??」
う…付かれると痛いところを付かれた。
「そ、それは…」
「エレナちゃんだっけ?…早くいい人探して
結婚しなさい」
兄さんは俺の頭を優しく撫でた。
俺はまだまだ子供だな…って思った
「別に…ただの遊びですよ」
「だが、ほどほどにな」
「はい…」
兄さんはそういってどこかへ去ってしまった。
少したってから、会場内がざわついた。
何だろうと思って、みんなの目線を探る
そこには…美しい黒髪の美少女がいた。
淡い赤のドレスを身にまとって、佇んでいた。
おろおろするように、周りを見る。
(可愛いな…)
自然に俺の足は動いていた
「迷子ですか?」
「えっ…ま、迷子なんじゃ…」
真っ赤になって少し頬を膨らます仕草をする。
ますます可愛い
「ふふ…からかっただけですよ?」
「っ!!!…」
「私は、ディーン・ブラント・チェルハと申します」
「わ、私は…マノン・ブーケと申します…」
少し俯いた少女は、モジモジしたままこちらを向こうとはしない
(面白い…な)
「Msブーケ、私と一曲踊っていいただけませんか?」
少し、紳士っぽく演出してみた
たいていの子は笑顔で“えぇ”って言うはず
「あ、あの…先に、ベランダで少しお話…しませんか??」
スルーされた…あ、案外手ごわいかもっ…
うぅ…
「そのあと、踊っていただけませんか??」
「…えぇ」
…優しく笑った笑顔に罪悪感を感じたのは
とても、久々だった。
*
「はぁ…」
彼女は、出るとすぐにため息を漏らした。
(…?)
「どうしたの?」
「うざ」
即答で…
「つーか、邪魔なんだけど。
あたし任務なんだよね…だから、邪魔しないでくれる??」
黒髪を髪でいじりながら彼女は気だるそうに言った。
そして、瞳の色がスッと変わった
今朝みた…美しい蒼い瞳だった。
「…エレナ…」
「その名で呼ぶな」
真っ直ぐに俺を見る
凄く、胸が締め付けられたのは何故だろう…
「出て行けよ」
「なんで?あたしには、ちゃんと任務があるの
仕事なの。わかる??」
「だったら、違うところでやれ」
「何の権限があってあたしにモノを言ってるの?」
一歩近づいて、彼女は必死なんだと分かった
だって、影になっているところから
ナイフを突き刺されている。
「死ぬのは、恐ろしく怖いのよ」
ナイフを、グイッと刺された
腕がキリキリと痛みを告げている
「だ、黙れ…ッ」
「どっちの…セリフよ」
ナイフを仕舞った。
そして…
「踊りましょう?…ディーンさん」
「え」
「丁度次はワルツですよ」
無邪気に笑う顔は…エレナでは、なかったような
エレナだったよな…。
不思議な表情だった
俺の手を強引に引っ張って楽しそうに踊っていた。
なんで、俺を…殺そうとした癖にっ
「そ、その…ありがとうございました」
頬を真っ赤に染めて
“マノン”という仮面の少女は俺に向かってお辞儀をしていた
傍(はた)からみれば馬鹿らしい仕草なのに…
それも、演技なのだろうか…?
「やぁ、ディーン」
「兄さんっ…」
兄さんが、近づいてきた
きっとこの少女目当てなんだろう。
「そちらの麗しきレディもこんばんわ」
「ここここんばんわっ…」
おろおろおどけたようにしているのも演技
………だと信じたい。
「クス、このようなパーティーは初めてなのかな?」
「あ、はぃ…母様が行けなくなってしまって
父様は今、他国にいるので私が…」
「そうか、それは気の毒だった
よかったら、一曲踊らないかい?」
兄さん…
一瞬コイツの顔がKに戻った。
ニヤリ、口元が薄く開いた
「…あ、ありがとうございます…こ、ここんな田舎者に…」
そう言って、手を取って二人で踊って
どこかに消えた。
*
「ぁっ…」
「そんなに、締めないで…っ」
くだらん。
快感??何も感じないのに…人間ってやっぱりおかしいんじゃないの
ほんと、こんな行為してどうなるんだろう。
思ってない癖に
「マノン…マ、ノンっ…君に、一目見たときから好きだった」
ホント、馬鹿な男
本当に…単純過ぎて
面白味にかけるのよ
「わ、わたし、もぉ…ひゃっ…だ、…めぇ…っ」
あの時、死ねたら…
でも、戻れないから薄い快感と言う渦に溺れよう。
面倒だけれど…
*
「ねぇ、ウィルソンさん?」
「なんだい?マノン」
「ファルス」
「え?」
バンッ…
銃声が響いた。
「リストにあなたの名前が載っていたから
優先的に死んでもらいますわ…あぁ、あと、マノン・ブーケという名の女性は
すでに死んでおりますので…クスクス、おやすみなさい」
「な、ぁ…ん…でだ」
裸の少女は後ろを向いてベッドから降りた
「なんで、ねぇ…さぁ?知らないわ。
でも、邪魔だからじゃないの?最後にメモリー回収だけしていきますか」
「はい」
彼女は、しゃがんで何かを取り出すと
男の顔面めがけて銃を撃った。
「……また、汚れた」
「お着替えは準備しております。
戻りましょう」
「…そうね」
ドンドンドンと扉を叩く音が響く
「おぃッッ!!!!!!!!!
………エレナ…」
「っ!?」
…
「そこに、…居るんだろう…?」
「K様、早くいかないと」
Kは銃口を扉に向けた。
わざと外れた位置に撃った
「ciao」
*
「クスクスッ…あのウィルソンを最初に殺すなんてねぇ~
でも、よく近づけたね??フフっ…アイツ中々手ごわいんだよねぇ~」
マロンブロンドの二つ結びの少女はニヤニヤしながらティーカップを見つめていた。
大きな白の庭園で3人は紅茶を啜りながら
世間話をしていた。
「D…貴方は、この計画に対して反対的だったのではありませんか…?」
「そんなことないよぉ~…真面目君なAとは違ってさぁ~あっはははっ」
「おぃ、Dうるせーぞ…一旦黙れガキ」
「フフ…クールな振りして、本当は嫉妬心で一杯なんでしょ?
リスト殺しは、5人で終わらせるつもりだったのにね…?
Kは、まぁ、上位に入る能力は持ってるけどさぁー」
ティーカップを揺らしながら口元を薄く動かすD
(幼い癖に、妙に鋭いから手ごわいのよ、ね)
「遅れてすまないな」
鍛えたような身体が分かるような巨体の青年が現れた。
「おせぇー…B」
不機嫌そうにCは呟く
「すみませんね、途中で厄介なやつに出会ってしまったもので」
後ろから美しいプラチナブロンドが現れた。
彼女は、妙に嫌味っぽいような表情でこちらを見ていた。
「ごきげんよう、みなさん」
「…昨日は、お疲れ様…」
「K昇格するんじゃないの??ウフフ」
「まさか、マジでやるなんて思ってはなかったけれど」
3人は内心嫉妬やら憎悪で心を一杯しながら
それを隠して、彼女に目を向けた。
「D言っておくけど序列は変わんないし、リスト殺しはアルファベッド全員の任務だ。
5人でやろうって思ってる時点でアウトなんだよ」
顎を突き出して買ったかのような勝ち誇った顔をするK
「言ってくれんじゃん…後輩の癖に…っ」
Dの両方で結ばれた髪が揺れた。
何かに気が付いたAは立ちあがった
「何か、用事があってここにいらしたんでしょう?」
「あ、そうそう。これ」
そう言って、チケットを出した。
フフンと誇ったような顔でテーブルに投げた。
「この日に、大量虐殺があるってさ
女王から…いいえ、キングからの命令だってさ
さっき、ファルスから渡された。」
「で、誰が行くの…?」
あくまで落ち着いてDが言った
「ここにいるメンツだってさ」
「ッッ!!!?」
「ざ、ざけんなッ!!!Eは!!!?アイツはどうすんだよッッ!!!」
すると、庭からファルスが現れた。
「キングの直々の命令です。
お従いください。…あー、あとE様は裏切り者の類に入りましたゆえ
見つけ次第、殺せとのご命令も…」
「…何があったんだ…」
「そう、じゃ、しょうがないわね」
AやBは冷静に話を流した。
しかし、
「ッッ!!!?お…おいッッ
おめェー!!…俺らは5人で…アルファベッドだったじゃないかッッ!!!!!!!!
な、なのに…ッッ!!!!
ふざけんなッッ!!!!!!!!!!!!!」
ガシャンとティーカップが
無残な姿で、割れた
「これが、運命の導きです。」
淡々とCに告げるファルス
そこには、感情はなかった。
「俺らは、死んだ。けど、これも…くっ
運命なのかよッ…」
「えぇ、だって
死ぬことには逃れられないのだから」
ーセイシノヤクソクー
「ルーミニア」
「はい、何でしょう。女王陛下」
書斎でサインを書き終えた女王は
妙な目つきで、少し老けた紳士を見つめた。
「先日、アルファベッド…いえ、彼女が来るの知っていて
彼らを配属させましたね?」
「はっははっ…気が付かれてしまいましたか。」
「まぁ、いいでしょう。
まさか、とは思いませんが…何を狙っているの?
ルー…」
「いえ、何も…ただ、私は女王を守りたい次第であります」
そう言って、頭を下げる紳士。
「ふ…戯言を…昔はよく、私の背中に隠れていたくせに」
「昔の話ですよ」
「キングは言っていた…幼い記憶は美化されると
そして、可憐に…貪られてしまうと…」
悲しそうに話す女王
「まぁ、いいのです。ルーミニア」
「アネッテ…」
「…ここで、そのように、呼ばないでくださる…?」
「…すまん」
*
「やぁ、ファルス」
「ごきげんよう、麗しの我が君」
目の前には、黒いドレスを着た少女がいる。
そして、大きな椅子に座って私を見ている。
(コイツが、ラスボスだとは誰も思っていないんでしょうね)
「ねぇ、私も外へ出た~いっ!」
「それは、無理なお願いです」
「むぅ~っアンタそれでも、否のファルスなの!!?」
(否のファルスでも無理なことはあるのに…)
「無理ですね。貴方が行くと騒がれるのが落ちですよ」
「はぁ~~~つまんなぁーいっ
せっかくEと鬼ごっこやってるのに…クスクス」
E様…は確かに裏切った
だけれど、そこまで悪いことをしたわけではなかったけれど
キング…彼女?の気まぐれで死刑の命が下ったわけで…
本当に、恐ろしい…
「ねぇ、いつアイツ死ぬかな~?」
「さぁ…我が君が本気を出せばすぐにでも死ぬのでは?」
「面倒だなー」
「なら、殺せませんよ?」
「別に殺したいわけでもないんだなぁ…フフ」
いつもお傍にいるけれど
何を考えているのか分からない人だ…
「僕ね」
(僕…?)
「Kのこと好きなんだよ。」
「そうですか」
「だからね、あの招待状渡したんだよ?」
「…?」
「大量虐殺ってさぁー、普通の人間が出来ることじゃないんだよね…」
足を組み直して、薄気味悪く笑う少女。
「!!…か、幹部のほとんどが死ぬ確率とか考えて派遣したのですか!!!?」
「そんなに取り乱すなんてさぁ~
ファルスらしくないよ~~」
ッチ…このクソがきッッ
「外見だけ見れば、可愛いのに。中身はなんと残酷な
な~んて思ってるんでしょ??」
「っ…そ、そんな…めっそうもない…」
「言えよ」
「!!?」
「言わないのは、その唇か…」
(な、何をする気っ…!!?)
指をパチンと鳴らしてナイフを出すキング
「さぁーて、どうしようかなぁ~~」
さっきとは違う可愛らしい声で
迷った少女のようにつぶやく。
「な、…にを、なさる…ぉつもり、でっ」
「何って…唇をぶった切ってやろうかなぁーって!」
笑顔で…こんなところで、…負けてられない。
「さぁ、口をひら―――――んんっ」
美しいツインテールは解けて
黒髪の少女と重なった。
「ふ…んっ…あ」
「キング、私はあなたのモノです
この唇がなければ、あなたに愛を囁くことも
あなたと口づけさえも、できないのです」
「ふっ…いいだろう、来いよ
僕が、抱いてあげる」
(こんな、ところで負けてられないんですよ、私は…。)
*
「おい、はぁはぁ…ッ!!…お前、本気で…くっ」
「あぁ、本気だ。こんなんでへこたれてると思うなっ…」
「あぁぁぁッ!!!!もう、二人ともストップですッッ!!!」
剣の練習をしていたディーンとハース
そして、その練習を止めた少女
「ルーミニア様から言われているでしょうッ!!
あなた方は、二人でやられると本当に困るんですっ」
彼女は、アレシア・ダリ
薄い緑色の髪は、彼女の象徴と言える
アレシアは、弓兵2番隊の副組長…
若いのにすごいなと思う。
幼い時から弓を引いて
弓殺しと言われるくらいには強い少女なのだ。
しかし、技術はあっても…
現場を知らない彼女は1番隊に上がれないでいる。
「あと、セッテさんが…あ」
「やぁ、チェルハ君にハース君」
「カザリーニ騎手…隊長…」
長髪のがっつりした男がそこにた
一番たちの悪い、人。
「カザリーニ隊長、今日は隣国に御出立なされたのでは??」
「まぁ、色々とあってなぁ~
それより、アシー…一緒にお茶をしないかね?」
そう、色んな意味でたちが悪い
「え、遠慮いたしますっ。そ!それより、この方々と手合わせでも」
「えぇ~~~、アシーつまんないよぉ~~
だってこいつら弱いし~~」
((はぁ!!?ふざけんなこのクソじじぃッッ!!!!))
「そこ、通していただける?」
「あ、すみません」
金髪の短髪の少年の様なもの腰で
正装をしている…
コイツ一体…?
「あぁ、すいません。貴方はどちら様でしょうか?」
「…何故名乗る必要が?」
「いえいえ、少々気になって」
「そうですか」
眼鏡の奥の瞳はブルー
・・・
「お前…」
「それでは」
「おいっ」
「ディーンッ!!」
(あの子は…ッ!!)
*
「今回の任務、武器持ってけないからね」
Bは唐突的に全員に告げた。
「えぇーマジで?」
最悪と最後に付けてバツが悪そうに拗ねるD
「でも、Aはいけるんじゃないの?」
「しかし、今回は私の出番ではないでしょう。」
「確かに、大量虐殺ってなるとね~…
でも、一番使えないのって…」
全員の視線がCに行く。
「…悪いな、俺は武器専門なんだよ」
「C、しょうがないですよ。Kだって真剣でしょうから持ち込みは難しいでしょう?」
テラスで、ABCDKはまたしてもお茶をしていた。
「まぁね」
そう言って、コインを親指で弾くK
コインは高く上がって、Cに取られた。
「あんまし困った顔してねぇーな…お前」
「ファルスが拳銃持っていくっぽいんだよー…
私にバレてないとでも思ってのかな??クスス」
「何それぇー!!気になる!!」
「あの子、なんかすごい気になるよね」
テラスの壁に寄り掛かってBは言う。
そして、紅茶を口に含んだ
「否のファルスにしては…力が強い気がする。召喚拳銃なんて
アルファベッドにも2,3人しかいないわよ」
「でも、剣術使いも魔導師も少ないよ~ふっふふ」
「キモい」
横目でCは言うが
「うっさい、ジジっ!!」
そう言われて、グサッと心臓を刺された様な気分になった
「そーゆーとこでは、AとKは優れているのかもね?」
優しく微笑むがBの腹黒さは見ていれば分かった。
「つかさ、Dお前王宮に自分の使いやってるでしょ?」
あは、バレてたかと舌を出して可愛らしく言うD
しかし他は
「「「え」」」
「やっぱり、アンタだったの…D」
「KとAは分かるかなぁーって思ってた、よ?」
「あなたに魔力があるとは…思ってもいませんでしたけど」
淡々と答える二人。
Aは姿勢をただしたまま
「どうするのです?バレますよ?…
少年一人ついてきてますよ」
「うお~~~さすがA!!、透視能力もあるんだっけ?
私、全然…操作するだけで疲れる~~~」
「ちょっ!!…Dお前何のためにッ!!!??」
「偵察、ではなさそうですね」
「どーせ、見にいってるだけでしょ??」
「さぁ…でもさ…なんか変な感じするんだけど」
「たぶん、それあたしがいてるからだと思う」
「「「「はぁ!?」」」」
「はぁ~…気が付きませんでした、ここにいるのは分身でしたか」
「んじゃ、コイツ撃っても別に大丈夫ってこと??」
そう言って、拳銃を取り出すC
「撃ったらどうなるんでしょうね…?私にも分かりませんよ?」
不敵に笑うKは異様な違和感を出していた。
「おい、コイツ…誰だよ」
「私は、K様の使い…辜のデュースであります」
*
「おいっ!!」
「しつこいですよ」
「やっぱり…っ!!」
「お久しぶりですね、ディーン兄さん」
「ミーナ…、ベルティ…」
そこにいたのは、エレナの妹の
ミーナ・ベルティが正装をして佇んでいた。
「ウィルソン様がお亡くなりになって私ども
ベルティ家は大助かりですわ。」
「お前も、変わったな」
「あの日、あなたが来てくれていたら姉は…あんなことにはならなかったでしょうね?クスクス」
薄気味悪い笑みを浮かべながら俺を睨む姿は
Kの姿にそっくり
「そのせいで、母はうつになり、父は女に走り
兄は家を出て行き…私が当主の座に就き…
もう…何もかもグチャグチャですよ~あっははは」
笑いながら言う笑みには嫌味以上に
憎悪が醸し出ている。
「すまない…」
「謝るという選択があるのが不思議でなりませんね?クスクス
まぁ…私は、姉が死んでよかったと思うこともありますよ」
「…っ!!」
「でも、そんなの…紙一重でしたわ」
機嫌悪そうな顔を前に向け
そして
「失礼しました」
「あぁ…元気でな」
「えぇ、そちらも」
「あぁ、」
そう言って、カツカツと行ってしまった。
「あの子も、生意気になったわねー」
「!!!!!?」
気配を感じなかったから腰を抜かしてしまった。
「え、エレナッ!!!?」
「おい、次そう言ったら首ぶった切るぞ」
「…なんで、ウィルソン兄さんを殺したお前がここにいる…っ!!」
「別にいいでしょ…で、アンタの目にはミーはどう映ったの?」
「はぁ!!!?」
「だーかーらっ、美人になったと思うかって!!」
「…まぁ、フツーに美人なんじゃね?」
「あの子、ブスになったわ」
「…お前、妹に対してな…」
「本当の話よ、まぁ、いいわ…」
そう言って、マントを靡かせてミーナとは反対方向に消えた。
「?…アイツ何しに来たんだ??」
*
俺は、アイツのナイトに…騎士になりたかった。
アイツを守る者はいるけれど
アイツだけの騎士になりたかった。
とある教会で俺とアイツは二人でそこにいた。
「交わらない運命の中、君との永遠の誓いを立てるよ」
しかし、アイツは首を横に振って静かに笑って
耳元で美しい声音で俺に囁いたんだ。
「あなたとわたしの運命は繋がっております
だから、そんなこと言わないで」
あまりにも意外な言葉に俺は言葉を失って
ただただ、彼女を見つめていた。
「それに、永遠なんてありませんのよ?
いつかは、わたくしの身は燃え、そして灰になるのです
その灰は新たな大地を恵み育むのですよ」
よしよしと頭を撫でられ
俺はなんだか、悔しいような泣きたいような気持ちに駆られた。
「俺は…お前を…守りたいんだ」
「無理ですわ。あなたには出来ませんのよ?
大丈夫私は一人で平気ですから」
「…っ!!!お前は…アネッテ!!!んっ…」
不意に近づいてきた唇は
教会の鐘とともに降り注ぐ。
「ふふっ、ルーのファーストキス貰った」
そう笑う少女は、この国とともに死するつもりの少女には見えなかった。
ルーミニアの心にはもう、何も
ただ、愛おしいという気持ちでいっぱいだった。
「愛してるんだ…アネッテ」
熱を帯びた声は寒々しい教会に
まるで息のように消えた。
「我が故郷に滴る水よ、彼が生き死にを彷徨う前に
その強(したた)かさで彼を正しき道に導きたまえ」
「え…おい、アネッテ…」
「おまじない、キングに教えていただいたの…でもっ…」
「そ、そのまじないって…!!!」
「そう、あなたと私の運命は絡まるのです
絡まり交わることで、あなたは私の…永遠となる」
彼女は、ぐったりと倒れこみ
弱弱しく告げる。
「きっと…次会った時には…何もかも、忘れています
それが、代償なのです…いいですか…私は、あなたへの想いを消します。
そして…その想いは予言するでしょう…んっ…あ…くッッ
はぁ、はぁ…いいですか。私の目的はその、予言なのです
再び私があなたに想いを寄せても…予言を実行してください…。
…ルーミニア・チーマ…我が…ごっほ…っ…アネッテ・デリア・シェイリーに…」
「誓います。貴方への忠実を」
そう言って、横たわっている彼女の手を握り
彼はナイフを出し、唇を切った
とろんと流れる血をアネッテは弱弱しく見つめ
二人は唇と唇を重ねた。
そう、これは…呪いの契りなのだ。
アレから48年…
君は、何もかも忘れてしまって
今君は少しばかりしか僕に想いを寄せてはくれないよね。
でも、いいんだ。
この予言は僕が…
絶対に実行するから
あの日の君を愛してるから。
もし、あの日君が愛してると言ってくれたら
僕は死んでいてかもしれないね
だけど、守るよ
もしも、
君が気が付かなくても、
思い出さなくとも
交 わ り
絡 み
解 け な い く ら い
結 び つ い た
運 命 に
僕 は 誓 う よ。
君 と の 約 束 を…
「ふぅ…カザリーニくん」
「なんですか?ルーミニア様」
「アルヴェーンの本家でパーティーがあると聞いた。
是非、女王も参加されたいと申している、話をつけてくれ」
「え…ちょ、そ、それだけのことで…出立を許されなかったのですか!!!?」
とても怒った表情の彼は傍から見ればとても恐ろしく見えただろう
しかし、彼は自分のプライドをズタズタに切られたような気持だった。
「…教えようか」
怪しく俯くルーミニアは、ひどくガザリーニとって鳥肌をも立たせるような
勢いで、威圧感を醸し出していた。
「面白いことがあるるからさ、君は英雄になれるのさ」
不気味だった
いつものルーミニアではなかった。
「わ、分かりました…では」
そう言ってカザリーニは部屋を出て行った。
まだ鳥肌は治まらなかった。
ーアタマトカラダー
好きだった人が私にはいた。
その人は、あと数年したら離れ離れになると
母から聞いた。
あと数年…幼い私には長く思えた。
というか、実感がなかったのかもしれない。
当たり前に、そこ居て、一緒にしゃべっていることが日常だった
お姉様と私とその人
楽しくお茶をしたりするのが楽しかった。
でも、私は、お姉様が大嫌いだった。
末っ子の私は、父親の単なる策略結婚という奴の道具にされることが分かっていた。
それでも、その人のことが好きだった。
しかし、お姉様は父親が溺愛するほどの美少女だった。
3人兄妹で唯一の赤い瞳をしていた、紅い瞳は父親と同じ色で自分に似た
美しい娘を持つことが父親の夢だったと
昔、母が話していた。
それゆえに、私は父親には好かれてはいなかった。
兄は、次期当主として、父親に厳しくされていたが私のように
話さないようなことはなかった。
「ディーン…いつ、行くの?」
いつものように、お茶をしていた時
お姉様が寂しそうに呟いた。
「ん~…2ヶ月後には出立かな」
…幼いながらにそれがあと少しであることは分かっていた。
「そう…」
沈黙が続いた。
二人は、想い合っていた
お互いを尊重し、深く子供ながらに愛を知っていた。
私は、そんな二人の絆を見て
もう…自分には居場所がないのだと
悟った。
アレから、何年か経って
ベルティ家は私のモノになった。
おかしくなった父様にベルティ家は任せられない
兄さんは押しつけられた家督を一時は受け持った。
しかし、兄は出て行ってしまった。
おかしくなった父様と病気な母…
家の者たちは私に土下座してきた。
「もう、あなた様しかおりませぬっ!!」
と言ってきた。
私は、引き受けた。
僅か、13歳の頃だった…姉がなくなって半年経った頃だった。
だから、一番最初にしたことは
父親をこの家から追い出すことだった。
復讐とばかりに、執事やメイド父の助手や秘書
全員に呼び掛けて1年と少し
完全に私はベルティ家を手に入れた。
欲は満たした。
けど、けれど…
私の心は、ずっと
姉さんとディーンが想い合っている頃から
虚しさで、ズタズタに割かれてしまったままなのだ。
*
「ねぇ、ブラント…もう、行っちゃうの?」
女はベットで横になりながら着替える青年を見ていた。
青年は、何事もなかったように
「あぁ、明日は早くてさ」
「王宮騎士とか言ってたけ?マジなの??」
「マジじゃなかったら何なんだよ」
「あたし、みたいな女を抱きたいって思ってる奴らなんて大勢いるのよ~?
だから、そう言って来たのかな~と」
「大丈夫、俺あんまし嘘は付かない主義でね?」
「へぇ…初耳ね?」
「うん、初めて言ったしね」
そう言って彼女の額にキスをする、青年。
「ふふ、ブラントぉーアンタ、昔の女が忘れられないとか
そういう理由で遊んでるんでしょ?」
ベッドサイドに置いてあったシャンパンに口を付ける女
それを、無表情に見つめる青年。
「……」
「リーナが泣いてたよ」
「そんな女知らないけど」
「とぼけんな」
女はグラスを置いて青年を軽く睨んだ。
しかし、青年は軽くあしらって微笑を浮かべていた。
「とぼけてないよ…覚えてないだけ」
「覚えてんじゃん…」
「おぼろけにね」
「今の人を大切にしなさいよ」
「…うん、ありがとう。セリア」
「…覚えてたんだ、名前」
「今さっきベッドで一緒だった子の名前くらいはね」
「ふ…んじゃ、ね」
そう言って、女はベットの中に潜り込んでしまった。
エレナのことが忘れられなくて
あの日を思い出すと、胸が苦しくなる
どんな訓練よりも
どんな怪我よりも
苦しくて痛い
辛い、記憶だ。
箱にしまったはずなのに
去ってゆく金髪の美しい髪を追いかけたいのに
箱の中身を思い出して
足を止めるのだ。
「はぁ…」
部屋から出ると、急に変な力が抜けて足が
がくがくと震え始める。
「何やってんだよ…俺は…」
「ほんと、何やってるんだよ」
「!!??」
「よっ、チェル!」
「はぁ…ビックリして心臓止まるかと思った…」
「あはっはは!!エリミーナが怒っちゃってさ~出て行けってあははっは」
結構オシャレな格好のハースがそこにいた。
コイツは能天気と言うか…
正直、部隊だけでの付き合いだったからあんまりプライベートなことは知らない。
なんか、見たところそんなに知らなくてもいい様な気がしてきたけど…
「お前は、また遊び?」
「…だったら悪いかよ…」
「別に、俺はエリミーナ一筋だし」
目がハートになっている。
コイツ完全にヘタレとか馬鹿とかいうポジションだよな…
「エリミーナが18になったら結婚って約束なんだけどさ」
「は、はぁ!!??お前より結構年下じゃん!!??今、そいついくつなんだよ!!??」
「ん?えっと…14歳!」
「…今度からお前のことロリコンって呼んでいいか…?」
「えぇー…でも、まだそんな関係じゃないし」
「…じゃあなんでここにいるんだよ…」
「エリミーナが来てみたいって言うから、まぁ、自分も来てみたかったからいいんだけど」
そう言って照れるハース
なんか、悔しい気持ちなのは…何なんだろ…
この敗北したような…感じ。
「でも、喧嘩しちゃってさー俺、18でエリミーナが14でしょ?
4歳差って結構あるもんでさ…まぁ、しょうがないんだけど…
俺が王宮騎士になるのも最後まで反対してたし
でも、俺エリーのこと好きなんだよな…なんでだろう…へっへ」
「もう、俺行くわ」
聞いてらんない
こんな話
俺は、エレナを…
「愛してたのか…?」
*
「デュースを出したのはダメだったかな?」
「さぁ?あなたの遣いなのですからあなたがご自由にお使いになられたら?」
「まぁ、そうなんだけどさ」
赤いサファイアを装飾したイヤリングに
胸元に光るパール
エメラルドグリーンに染められた髪
そして、エレガントな濁青のドレス。
「んま、こんなもんでしょっ!」
「今日は、例の…大虐殺でしたか?」
「そうそう、こんなに着飾ったことは…久々、だけど…ファルスは?」
「武器の調達と申しておりました」
「ふぅん…デュース、ファルス調べてくれない?」
最後の仕上げの化粧をしながらいう主のK
「しかし、私はあの方より位が下です」
「だから何?」
そっけなく答える彼女は、鏡越しに少し睨んでいるように見えた。
「分かりました…」
「今日の大虐殺でミッションコンプリートするのは私なんだから」
「その自信はどこから来るんですか?」
本心からの質問だった。
「さぁね」
そう言って、ヒールを履いて部屋を出て行った。
*
昔のことは思い出したくはなかった。
思い出すと、辛くなるから
キングに捧げる志が消えてしまいそうだったから。
たまに、そう、突然と言わんばかりにやってくる記憶
大嫌いな思い出と大切だった思い出がいっぺんにやってくる。
後悔とあの嬉しさとぐちゃぐちゃになった想いが再び来るから
頭がおかしくなりそうになる。
思い出すときは、かならず
殺めたときだ。
死体を見てると思い出す、なんて可笑しな頭なんだろう
って思う。
「ねぇ、Kってミテリア・ゼシス??」
「え、えぇ…たしか、そのはずだったと思う」
「でAがセリーヌ・ポレであたしがオティート・ヘレメ」
「俺が、リアム・アーサーか」
馬車の中、4人は着飾って乗っていた。
もう一人のBは先に行っているとのことだった。
ミテリアという名前のKはやはり3人の少女の中で一番美しかった。
思わず、見てしまうCのリアム。
「何よ、リアムったらミテリアに見惚れちゃってんの??クスクス」
からかうオティー、髪の毛はベリーショートになっていて
淡い黄色と白のドレスを身にまとっていた。
「こういうときだけ美人なのは気が引けるなって思ってただけだ!」
「まぁ、確かに…Kは元がいいですからね。
いつもの金髪よりずっとこっちにしていた方がいいんじゃないんですか?」
少し俯きながら同感しつつ、疑問を投げかけるセリーヌ。
セリーヌは茶髪に髪を上げて、セクシーな感じの紺のドレスをまとっていた。
「私は、殺すときだけは金髪にしたくないんだよ」
「へぇー血が付くのいやなんだぁ…意外かも」
「そんなこだわりがあるとは…ホント、分かりませんね」
そんな会話をしていたら、今日のパーティー会場になる
アルヴェーンの邸宅に着いた。
邸宅は、そこまで大きくはなくて、クラシカルなイメージの会場だった。
「招待券を」
馬車をおりると言われた。
使いに頼んで、招待券を渡す。
めんどくさい、な。
「どうぞ」
拳銃は持ち込めない
けど、Aの能力でなんとかしてくれるらしいから
って話しだったんだけれども、信用できなかったから
一応拳銃と剣は持ってきた。
「なんか…思ったより人多いね」
「騎士がいる…女王でも来るのかしら?」
そう言うと、後ろがざわめいた。
セリーヌの言葉が本当になりそうだ。
Aーアルダー
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2012.03.03更新
やっと本編動き出しました。
訳の分からん方も多いと思います。
それは後ほど編集かけますので、それまで辛抱してください><
本当に本編が動き出し始めます。
少しKの過去のことを話せてよかったです☆
改めて見ると、ディーンと同じ気持ちだったんですね…
切ないですなぁ…。。
そして、やっとここまで来たか…とため息交じりに嬉しい気持ちです。
ここまで、長く続けられたことに感激です!
この原作を作って4、3年が経ちましてww
自分にも文章力と言うものが次第についてきたのではとも思っています。
次回は、思いっきり全員投入で行かせていただきますっ!!w
分からなくなっても分かってくださいっ!!
それでは、御観覧ありがとうございます。
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