game life in Real
最近オンラインゲームにはまっています。
やっていて思いついたのが、この小説です。
ご意見、ご感想いただけると嬉しいです。
俺のためにゲームはある。
ゲームは好きかい?
俺はゲームが好きだ。
FPS、TPS、RPG、SLG、アクション、アドベンチャーにトレーディングカードゲームまで。
いや、もうゲームがないと生きていけない。
ゲームのない生活なんて考えることができないだろう。
そんな、ゲームが大好きな僕は求めていたのかもしれない。
生涯をかけてでもクリアしたい、本当のゲームってやつを。
*
薄暗い部屋の中。
煌々と光るディスプレイを、矢崎恭介は鋭い目で見つめていた。
ディスプレイの中、無限に広がる荒野には、神々しい装備を全身に身に着けた少女が、荒々しく焔を吹きだすドラゴンとの激しい戦闘を行っていた。
少女の右上に機械的なステータスバーが並び、そこには「アイリス」と表示されている。
それは恭介のゲーム内での名前。
すでにステータスバーのライフ表示はフルを表す青から、危険状態を表す赤になっている。
あと一発でも攻撃を受ければライフは底をついてしまう。
危機的状況にありながら、アイリスは勇猛果敢にドラゴンへと走る。
ドラゴンはそれに反応するように息を大きく吸い込み、火炎器官に火を起こしてブレスのモーションに入る。
人間の反射速度では対応することのできない至近距離からのブレス。それをアイリスは紙一重で躱し、ただ前へと突き進む。
そして、掛け声とともに最後の力を込めた剣の一撃をドラゴンの体へと叩きこむ。
アイリスの手に握られた剣は、まさに聖剣と呼ぶにふさわしい業物。
溶岩の熱でも溶かすことのできない分厚く堅牢な鱗を、アイリスの剣は容易く切り裂き両断した。
一瞬の静寂ののち、ドラゴンは地面へと倒れこみ、その巨躯は光の粒子となって砕け散る。
光の粒子は天空に昇っていく。
先程まで分厚い雲に覆われていた空から一筋の光が差し込み、地上をその 輝かしい勝利を称えるが如く照らし出した。
その先に佇むアイリスの顔は、今まで見たこともないほどの、笑顔だった。
その口が「ありがとう」と呟いたように見えたのはおそらく恭介の見間違いだろう。
ゲームの終わり
ディスプレイに「GAME CLEAR」の文字が浮かびあがりエンドロールが開始。
恭介の目から、先程までの鋭さが消え、落胆の溜息をつく。
「はー……。このゲームも終わっちゃったか」
恭介の手元からゲーム機のコントローラーが放りだされ、机の上に転がる。
「今回のは期待してたんだけどな。最新のコンピューターグラフィックを用いて、最高のシナリオライターがシナリオを担当、しかも超高難易度。ってのが売りだったんだけどねー」
そう、この「ドラゴンネクスト」の売りはグラフィックの美麗さと、高難易度。
開発会社の想定クリア時間は500時間を超える。ゲームに不慣れであれば クリア不可能とされる、理不尽ゲーとして名を轟かせている。
「結局、24時間しかかからなかったな」
クリア困難とされていた理不尽の塊のようなゲームを恭介はわずか24時間足らずでクリアしてしまったのだ。
弱冠17歳でありながら恭介はゲーム界で神の名で知られる、最強のゲーマー。
彼にクリアできないゲームは存在しないとされており、ゲーム会社は躍起になってクリアできないゲームを作ろうとしていた。
製作者側でもクリア不可能なほどの難易度のゲームを、恭介は製作者も考え付かなかった方法で次々にクリアしていく。
故に恭介はゲーム好きでありながら、ゲームに失望していた。
そして真摯に願う。
自分が本当に楽しいと思えるゲームがしたいと。
旅の始まり
カーテンの隙間から光が差し込み、暗い部屋を照らす。
「もう朝になってたんだ、結構集中してたみたいだな。そろそろあいつが来るころか」
眠気はあまり感じていないようで、部屋着から学校指定の制服に着替え始める。
「恭介!いるんでしょ、入るわよ」
階段を勢いよく駆け上がる音がして、ドアの向こうから幼馴染の滝沢華の声が聞こえてくる。
それと同時に、ドアが開けられた。
「なんだ起きてたんだ、起きてるんなら返事くらい……」
「着替え中だろ、入ってくるなよ」
部屋に入ってきた華は部屋の中の状態に気付く。
部屋着を脱いで制服を着ようとしていた恭介は、半裸の状態であった。
着替え中の恭介をを見つめたまま、華は顔を真っ赤にして固まる。
「俺の裸をいつまで見つめてるつもりだよ。変態」
茶化して言う恭介に罵声と腰の入った平手が飛んでくる。
「変態はあんたでしょーが‼」
恭介の部屋には、ゲームの駆動音を掻き消す乾いた音が響いた。
居間に降りると、味噌汁のおいしそうな匂いが漂ってきて食欲を刺激する。
「いつもご飯作ってもらって悪いねー」
エプロンをつけた華が照れた様子でご飯の入った茶碗を渡す。
「いーわよ、好きでやってるんだから。それにあんたの両親からも息子を頼むって言われてるし。ほっとくとインスタントばっかりになるでしょ」
「インスタント美味しいじゃん」
「体に悪いでしょ、栄養が偏るし」
「バランスよく食べてるよ。醤油でしょ、味噌でしょ、塩にカレー、最近だったらトマトなんてのもあるんだって」
「それ全部カップラーメンじゃない!だから栄養が偏るって言ってるの」
華は恭介の母親ポジションを獲得していた。
食事を終えた二人がのんびりテレビを見ていると、玄関からチャイムの音が響いてきた。
「俺が出るよ」
そう告げて玄関へ向かう。
「どちら様ですかー?」
インターホンから男性の声が返ってくる。
「宅配です。矢崎さんのお宅でよろしかったでしょうか?」
玄関の扉を開け、荷物を受け取る。
荷物は大きな段ボール箱に入っていて結構な重さがあった。
おそらくゲーム機か何かだろうと恭介は判断した。
居間に段ボール箱を持っていきさっそく開封してみる。
「それ何なの?新しいパソコン?」
華が不思議そうに箱の中を覗き込む。
「いや、多分ゲーム機だと思うよ。でも、見たことない機種だな。作ってる会社も聞いたことないし」
ゲーム機本体のほかにもヘッドギアのようなパーツがあるが、コントローラーが見当たらない。
「説明書も無いみたいだし、取り合えず起動してみようか」
「学校行かないの⁉」
「そんなの後回しだよ、学校なんていつでも行けるんだし」
華は反論しようとしたが、恭介があまりにも嬉しそうに笑うので、その笑顔に負けてしまっていた。
「これが惚れた弱みかな……」
「何か言った?」
「何でもないよ」
ゲームを起動してみると、操作チュートリアルが始まった。
このゲームはどうやらVR(仮想現実)技術を用いたゲームでフルダイブを可能にした世界初のゲームハード「リンクゲート」らしい。
リンクゲートのテスターに選ばれたのが、恭介らしい。
「すごいよ華!ダイブ型ゲームなんて初めてだ‼」
「理論的には可能だって言われてきてたけど、まさかもう出来ていたなんて!」
「う、うん」
華はそのことを理解できていない様子で、曖昧な返事しかできない。
「とりあえずやってみよう。話はそれからだ」
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