天才と馬鹿

馬鹿が天才に聞いた。
「天才君。君はいつも人々に尊敬されるね。
僕なんかいつも人々に馬鹿にされてばかりだよ。
君と僕との違いはなんだろうね。」

天才は馬鹿に言った。
「おい、馬鹿。お前はいつも道を歩くときは花を踏まないようにしている。
他の人が君に花をあげようとすると、もらっていない他の人がかわいそうだと言って、もらおうとしない。
いっつもそうやって、自分以外のためのことばかり考えている。
それはそれでいいと思う。
素晴らしいと思う。
でも、お前は今俺に対してこう質問をしている。
何故自分は馬鹿にされなきゃいけないのか。
なんでこんな苦しい思いをしなきゃいけないのか。
そこが馬鹿なんだよ。
じゃあそんな事止めればいいじゃんって事だよ。
欲しい物を得る為に花を踏んで行き、
花をもらっていない人と差をつける為に花をもらう。
そしたらすぐ人の尊敬なんてもらうよ。

というか、
お前は自分の弱さを認めていないだけだと思う。
人はそんなに強くなれないよ。
そんな苦しみを死ぬまで純粋に受け止めて生きる事なんてできないよ。」

馬鹿はしばらく黙り込んだ。
そして、また天才君に聞いた。
「そうか。なるほどね、、。
そういえば天才君は最近何かに没頭していたね。
何をそんなに一生懸命にしているんだい?」
天才は言った。
「ミサイル作ってるんだ。」
「は?」
「これの爆撃にやられると脳みそがいかれてみんな馬鹿になってしまうんだ。」
「、、、。そんな事したら駄目だよ。」
「そうだよ。俺は今ものすごく馬鹿な事をしようとしているんだ。」
そう言って天才は振り返ってまた作業を始めた。

しばらくして馬鹿は気がついた。
天才の肩が震えている。
天才は泣きながら、何やらぼそぼそと言っていた。
「じゃあ、どうしろってんだよ。
どうすればいいんだよ、、。
人はどこに行けばいいんだよ。」

天才と馬鹿

天才と馬鹿

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-17

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted