鬼がベランダの外に立っている。
実際見てみると彼は結構怖い顔をしていた。
子ども用の童話で出ていたかわいい感じじゃない。
今更言うのもあれだが子ども用の童話はいろんな事を騙して表現する。
残酷なほど。

とりあえずそれは置いといて、
彼もせっかく立っている事だし話しかけてみる事にした。

俺: 何してるんですか?
鬼:、、、。まず人に会ったら挨拶をするべきではないだろうか。
俺:、、、。こんにちは。

初対面からムカつく。
しかも怖い顔してるからなんかムカつく。
でも相手は鬼だからかなう訳がない。
第一、筋肉がすごすぎる。
んぱない。
しかも、武器(黄色いでっかい棒)もぶら下げている。
勝ち目が無い。困った時には警察だな。

俺: こんにちは。というかなんでそんな所に立っているんですか?
鬼: 悪いかよ!

いや!悪過ぎだよ!達悪過ぎだよ!
何考えてるのかわかんね。
筋肉ありゃいいのかよ。
皮膚赤くてなんかかっこいいならいいのかよ。
死んで欲しい…。
このベランダ以外の所で。

俺: なんか飲みます?コーラありますけど…

なんで俺はこんなに親切なんだろう?

鬼: …。ペプシ?
俺: ま、、はい。
鬼: …。よかろう。

で、5分後。

俺: 鬼って普段何やってるんですか?
鬼: 我々の仕事はとにかく世の全ての物に恐怖感を与える事。素晴らしき事業であると我思うのみ!
俺:…。ごめんなさい、ちょっと声おっきいので静かにしてもらいませんか?近所の人にこの光景見られたら、なんて説明すればいいのかわからないので。
鬼: 汝。我が怖くないのか?

確かに。なんで俺はビビっていないんだろう。心のどこかでこれは夢なんじゃないのかと思っているのか?夢だとしたら非常に面白い夢だ。現実感が半端ない。

俺:  で、今日は何しに来たんですか?こんな所に。ちなみに恐怖感を与えるつもりで来たのならもう失敗していますよ。だって実際、僕も不思議に思うほどビビっていませんし。
鬼: 最近の人間はみんな驚かなくなった。500年程前は足がすくむ程、皆びっくりしていたのに。
俺: …。鬼さん、さっきから話し方コロコロかわってますね。標準語になったり、汝とか言ったり。なんかかわいい。
鬼: かわいいか…。もう鬼もダメになってきたな。では、汝は何を最も恐れるのじゃ?
俺: そうですね。…。自分が何を恐れているのかすらわかっていないこの状況とか。なんか現実味が無いんですよ。これが夢だとしたらそのせいというのもあると思うんですけど、でも普段生活していてもあまり変わらない気持ちですね。生きてる感じがない。ありきたりな話ですけど。
鬼: 生きてる感じがないか…。私は何度も死んだ事がある。殺されて地獄でまた蘇って、殺されてまた地獄で蘇って…。でも、生き返る度思う事なんだけどやっぱ生き返ると嬉しいよ。
俺: まあ、そりゃあ死んでるよりも生きてる方が楽しいとは思うんですけど。死ぬとどんな気分なんですか。
鬼: なにも感じない。意識がない。生き返る時は地獄の底に壺があって、その中で目覚める。上の管理している方が俺を必要とする度に蘇らせるんだ。
俺: へえ、そうなんだ。ちなみに人間は死んだらどうなるんですか。
鬼: ただ無くなる。蘇る事もない。
俺: そっか。じゃあ、天国と地獄には人間はいないんですか。
鬼: いないね。一人も。天国には神ばかりだし、地獄は俺らみたいのばかりだよ。もし人間が行けたとしても仲間外れにされるだけだよ。それだったら普通に死んで消滅した方が楽だよ。
俺: そっか。…。なんか今生きてる実感が少し湧きました。少なくとも今僕は消滅せずに存在していますからね。…。俺もなんか飲もうかな。

で、俺もコーラを飲んだ。
いいな。夏にベランダで鬼と生死の話をしながら涼しくコーラを飲んでいる。
楽しい。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-17

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