情熱失踪:探索不可
なまぬるい環境だと、そう思われているのだろう。
なまぬるい環境だと、そう思われているのだろう。
それに慣れた僕をみて、彼は彼の周りから叩き突き立てらえれてきた言葉を僕に刺しはじめた。
焦れったいのだろう。
環境の違いを無視しているあたり、僕のためではなく彼は彼自身の情緒整理のために僕を使うのだ。
逆さにした箱から散りばめられた言葉は、意図とは違いながらも僕にその痕をつける。
「オマエガンバッタコトナイダロ」
がむしゃらに働く俺は偉い。そう肯定しろよ、と聞こえる。
それはいい。それくらいはしてやってもどうもおもわない。
がむしゃらに、熱意も持って、持続する。
暴走列車のような生き方は、さも当たり前であると彼はいう。
その情熱はどこからくるのだろう?
金も、プライドも、制作意欲も。原理となる感情が僕には足りない。
刹那刹那、雨粒のように、わき溢れてはとどまらず落ち潰れる。
人として求める平穏に、情熱は必要がなかった。
…オクビョウナボクハー…ユウキ…ヒカリ…
ぼろ雑巾を顔に塗りつけるように、聞き飽きたうすっぺらい自覚の言葉が頭をよぎる。
不愉快だ。そうやって違った成分でできただけのクソがクソをなじるのか。
そうやってあたかも自分が聖人のごとく正論を吐き、飽きがくれば手の平を返す。
情がどうだと言う気はない。そんな憎しみを押し込めてでも離れられない事こそが、何より羞恥心を際立たせる。
人というものを恐れ、人というものに焦がれる。このジレンマがなにより憎い。
根源がどちらも恐怖であるということが、まるで自分というものの根源であるような。
そう理解させる。
そう理解せざる負えない。
きっとそうなんだろう。
「モットアセッタホウガイインジャナイノ?」
はやく俺と同じところへ来い。
その想いに、歯がゆさを感じる。
「今」に。「自分」に、「理由」に、「言葉」に。
微かな希望を追いかけることも、気力の打算で躊躇する。
そこへは行きたい。
行きたい。
認めたい。
渦のように蠢き、轟きをやまない「感情」で構成された僕の世界は、この肉体から追い出せない。
ならばせめて、せめて一度。
この肉体ごと跳びだして、現実に触れて安心したい。
傷つくことになれることはない。
傷つく場所は構わない。
手の平に染み伝わるコンクリートの体温に、心をなじませ呟きたい。
僕の答えを、
僕の想いを。
情熱失踪:探索不可