クリトリス

クリトリスが落ちている。新宿駅の東南口のスープストックの前に唐突に落ちている。豆みたいなそれには、汚い字で「クリトリス→」と書かれた紙が近くに置いてあって、僕はそれによって、その豆みたいなものをクリトリスだと認識した。
クリトリスは拾ってほしそうに僕を見ていた。なんとなくだけど、なんとなくだけど情が移って僕を見上げるクリトリスと見つめあう。それでも、これを拾うのは馬鹿だろう。と僕の心の中の何かが訴えたのでぼくはその場からそそくさと去ろうとした。
歩いて、後ろを振り返ると、僕について来るクリトリス。ころころと転がってくるクリトリスのその健気な姿!
僕はいたたまれなくなってその豆を拾って帰った。
なんとなくポケットに押し込んだそれをくるくる弄ってみるけどあんまり楽しくなく期待はずれだったから駅のゴミ箱に投げ捨てて、僕は帰った。

クリトリス

クリトリス

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-11

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