ノンケのごとく!
序文
やあやあ。はじめましてだ、諸君。いやさ読者の皆さま。いやさ暇人の皆さま。
唐突だが暇人の諸君は……訂正、読者の諸君は、青春してる?
あの夕日を目指し走り続ける青春。
思春期の衝動を抑え、勉学に明け暮れる青春。
はたまた、社会の荒波に揉まれながらも、自らの役割を見据えてこなしていく青春。
十人十色。ひとには、さまざまな形の蒼い春があると思うんだ。
そして貴様らが……訂正、読者らが"青春"の二文字を聞いて、なにより先に思い浮かべるのは――
"恋愛"
――の二文字ではないだろうか。
恋文に書いた待ち合わせの桜の木の下で、打ち明けられる愛。ただのクラスメートが、学生生活の共同体となり生まれる恋。
教師の目を盗み、放課後の教室に鍵をかけ、初めて交わすふたりの性春……おっとそこまでだ。
規律を守らない不良に口うるさく当たる委員長。ある雨の日、不良がダンボールの子犬に傘を掲げているのを見て生まれた委員長の恋。
教師の目を盗み、放課後の教室に鍵をかけ、あられもない姿でドッグフードを与える委員長と一匹の性春……おっとそこまでだ。
恋愛だって同じ。これもまた十人十色。
さまざまな形がある。クラスメートのロマンスがあるなら、子犬と委員長のロマンスもあっていいじゃないか。
そう、これから俺が暇人のみんなたちに聞かせる……訂正、読者のみんなたちに聞かせるお話だって、そんなありふれた青春のありふれたロマンスに過ぎないんだ。
ありふれているけど、ちょっとだけ変わった二人がちょっとだけ変わった環境で出会い、ちょっとだけ変わった恋をする物語。
では。看板まで、ごゆるりと。
体育館の中心でゲイを叫んだ漢
陽彦「……一年生になった~ら、一年生になった~ら」
陽彦「“ホモ“だち百人、でっきるっかな♪」
漢(おとこって読んでね)は独特な緊張感ただよう体育館で、独特な光景を目の前に、独特な鼻歌を口ずさんでいた!
黒、黒! 視界を埋め尽くす学ランの黒! この、松崎しげるですら白く見えてしまいそうな黒一色の世界に佇んでるは、色とりどりのダンジたち!
美形ダンジに、可愛い系ダンジ…… スポーツ系ダンジに、草食系ダンジ……不良系ダンジに、マッチョ系ダンジ!
陽彦「…グへヘ…」
夢にまでみた光景を前に漢(おとこさ♂)は、下衆な笑いを止められそうにない。
校長『ええ新入生の皆さん、我が薔薇色学園へのご入学、おめでとうございますーー』
可愛いお尻が……いち、にー、ダン、ジー! 校長の話には耳を貸さず、周囲を(周囲のお尻を)舐め回すような目で視男していた!
ダンジたちの食べちゃいたくなるようなお尻、通称ダンジリ! 可愛らしいなあ! ひとりひとりのダンジリに××して回りたいなあ! お尻ほじり虫~♪なんちて!
可愛らしいなあ! お尻とお尻のお尻愛でこの体育館を埋め尽くしたいなあ! We "ass" the world! We "ass" the children!
陽彦「…グッヘッヘ…」
淫夢にまでみた光景をまえに漢(otoko♂)は、ゲイな欲求を抑えきれそうにない。
校長『そして皆さんには、三つの気をもってもらいたいのです』
校長『やる気、元気、根気…ーー』
陽彦「ーー否! もつべくは掘る気、ゲイ気、男根気! あと勃★起だ!」
高らかに叫ぶと、体育館中のダンジたち視線が一斉に漢(男色系ダンジ)のほうを向いた…!!
あのスポーツ系のダンジ、いい…! ムキムキな身体がワイルドー…! なんだあいつやべえぞ、みたいな目がたまらないいー…!
あっちの草食系ダンジも、いいなあ…! しなやかでセクシーだ…! このひと怖いよ恐ろしいよ、みたいな表情が可愛いすぎるううー…!
陽彦「ダンジ、最高ぉぉぉぉーーーーう!!!!」
教師「そこの君、ちょっと、きなさい」
漢(いい加減おぼえたかい?)は体育館の後ろのほうでちょっとした注意を受けた。
屈辱だ! この漢が、ウホッいい男♂探しを邪魔されただとう!
屈辱だ! しかも男性教師にでなく、女教師に諭されてしまった! この学園に、あの憎き恨むべきビッチなど要らん。ピーピーと甲高い声で鳴き喚くセキセイ×ンコ(マ)など必要ないのだ!
要るのはダンジのみ! 力強くそれでいて賢さも兼ね備えたチン×ンジー(コ)のみを必要としているのだ!
陽彦「ケツ辱だあーっ」
そこら辺にいたダンジ「…ちょ!?」「…なにっ?!」「…うわあ!!」
体育館の後ろから戻る途中、腹いせに数名のダンジたちのお尻を触っておいた。漢は精力を+5ゲイ復した。
校長『ええ何故わたしの話が長いのかと言いますと、それは校長の威厳=話の長さなのでありーー』
ったく、しばらく注意を受けてから戻ってきたというのに。壇上の木偶の坊ときたら、未だ代わり映えのしないスタンダップコメディを続けてるではないか。
陽彦「グッヘッヘへへッ…」
お前の話きいてるくらいなら壇上の下の●くの棒たち(ダンジたち)にちょっかいだしてた方が、よっぽどゲイの肥やしになるわ!
陽彦「だよねえ~? 校長より、カンチョーだよねえ~?」
前に並んでるダンジA「えっ、なに……」
さりげなく声を欠けながら、さりげなく彼に接近し、両手で作った拳銃を彼のお尻に突きつけた!
陽彦「動くな」
Aくん「ひぃ…!」
悲鳴を上げたAくんの身体がタチに睨まれたノンケのように硬直する! グヘヘ、可愛いなあ、たまらんなあ! 漢は理性という名の安全装置を外し銃口を(指先を)急所に(お尻の真ん中に)向けて、狙いを定めた!
陽彦「さあ命ゲイはもう済んだかい」
Aくん 「も、目的は、なにっ? 君は一体なにがしたいのさっ」
陽彦「フフ“知りたい“のなら教えてあげよう。漢の目的はねえ……」
銃弾の代わりに性欲とゲイ欲を込めたお手製マグナムを振り上げると、Aくんのアソコ目掛けて、
陽彦「君に″尻痛い″ことを教えてあげることさっ」
一気に降り下ろす!
Aくん「いやああああアッー」
陽彦「そうれ、漢チョー発射!! 標的は、君のアナーー」
?『この度、僕たち新入生を迎えてくれた薔薇色学園に心より感謝を申し上げたいと思います』
陽彦「ーール!?」
Aくんのお尻の真ん中に突き刺さる寸前で、指先が止まる。気が付くと校長の話は終わっていたらしく、壇上では本年度の首席に選ばれたダンジによる挨拶が行われていた。
悠『首席の和泉谷 悠(いずみや ゆう)と申します。よろしくお願いします』
ななな、なんだあの美しいダンジは……!?
悠『僕たち新入生は、薔薇色学園に入学できたことを誇りに思っています』
陽彦「もはははは…! 美しいなあ、あのダンジ。あんな美しいダンジに巡りあえて漢謝漢動だよねえ、Aくん…!」
Aくん「そ、そうだね、確かに綺麗だね。あのひとーー」
陽彦「是非、いっしょに掘るトンパーティーしてみたいよねえ。彼のトンネルを突貫肛事で開発してあげたいよねえ…! グッヘッヘ…!」
Aくん「ひいっ!!」
卑猥なゲイが、卑猥な会を立案し、卑猥な笑みを浮かべると目の前のAくんが悲鳴をあげた!
陽彦「でもさ、ホモだちから始めるのもありだよねっ。毎日いっしょに連れションしてさっ…!」
Aくん「そ、そ、そうだね、友達になってみたいねーー」
陽彦「用を足してる彼の後ろから連れハッテンまでしちゃってさっ…! そしたらそこのトイレが学園のハッテン場になってさっ…! 皆が、ためしてハッテンって具合に押し掛けてさっ…! 最終的には里見ハッテン伝っていう伝書になるかもしれないよねえ…?!」
Aくん「ひぃっ!!」
淫猥なゲイが、淫猥なゲイ画を練り、淫猥な笑みを浮かべると目の前のノンケが悲鳴をあげた!
陽彦「グッフッフッフ! ……フゥ~っ」
Aくん「いやあっ!!」
ついでに耳に息を吹き掛けておいた!
悠『そして、この学園の校訓に則った学園生活をおくることを誓いたいと思います』
壇上の彼は、とにかく美しい。端正な顔立ち。透き通るような肌。髪質の綺麗な短めのストレートヘアでいて前髪は少し長く、睫毛にかかった髪の合間から、クリっとした大きな瞳を覗かせている。
少し声が高く、少し小柄な彼。しかし採寸を間違えたのか、身体のサイズより一回りも大きい学ランを着ていた。ぶかぶかの松崎しげる色を纏っていて尚、栄える真っ白く綺麗な頬。まさに、おどろきの白さ。
前髪が目にかかっていたりサイズ違いの制服を着てしまっていたり、首席にしては少し威厳の足りない部分も垣間見える彼だが、それを思わせない芯の通った真っ直ぐな姿勢で体育館中に熱弁を振るう。その姿は、どこか他のダンジとは違う美しさがあった。
陽彦「…………」
俺は、しばし時間を忘れて彼に見入ってしまう。
悠『ありがとうございました』
パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ!
陽彦「んっ」
場内に沸き起こる拍手の音をもって、現実に引き戻された。そして俺のなかに沸き起こってくるは、ある表現のし難い高揚感。ああ、困ったな。小田和正じゃないのに言葉にできないや。
強いて言うならーーもう二度と感じることのできないと思っていた高揚感。こんなところか。
陽彦「ふ、ふふ……」
陽彦「ふははははっ!!」
素晴らしいじゃないか薔薇色学園ッ! この陽彦さまを、こんなにも掻き乱してくれるとは思いもしなかったぞッ! 恐れ入ったわ、グッヘッヘッヘ!!
俺さま、いやさ漢は決めたッ! この薔薇色学園で、まさしく薔薇色の生活をおくってやることをなあッ!
陽彦「漢、最高ぉぉぉぉーーーーう!!!!」
Aくん「痛痛痛たたたた痛アッーーーー♂」
おっと。テンションが高ぶりすぎて、Aくんのお尻目前でストップさせていたピストル型の両手を見事に彼のトンネルに突き刺してしまった。
教師「そこのお前達、騒々しいぞ。ちょっと、こっちへ来い」
そのあと漢とAくん(とばっちりごめんね♂)は体育館の後ろのほうで、お説教を食らった。
ノンケのごとく!