心の病

心の病

誰もがかかると言われている。

誰もがかかると言われている。
それが心の病だ。


僕は昔から真面目で非行はしたことも無く、平凡にそして利口に社会を渡ってきた。
なにも苦労という苦労は思い当たらない。
勉強もそこそこ運動もそこそこ。
友達もいた。
親友もいた。

でも全て失った。


就職して二年目で僕の平凡な日常は変化していた。
日夜仕事に追われている。

日夜は言いすぎだろうか?
いや、家に帰っても仕事の内容が頭から離れない。
そして仕事が気になって眠れない。

あの案件は明日レビューだ。
ああ、あれは納期が明後日だ。

そんな毎日だった。


それはいきなりだった。
二回目の盆休で体がすごく重いことに気付く。
実家に帰ろうにも意欲が出ない。
さらに食欲さえ無い。

おかしい。

そう感じてもベッドと体が離れる事は無かった。
そんな日々が二日ほど続き僕は意を決して病院へ行った。

「鬱ですね」

医者の一言が全てだった。
僕は鬱病になっていたのだ。
「治りますか?」
「大丈夫ですよ」

医者の言葉通りに毎日薬を飲むようになった。
休み明けにはまだ一週間ある。
大丈夫だ。
自分のペースで治していけばいいんだ。

だがそんな期待も打ち消される。
休み明けの出社日でも体が動かない。
無理だ。
会社への電話も怖くて出来ない。
「欝になりました」
なんて言ったら首になるかもしれない。

もし首になったら、両親は心配するだろう。
何よりも家族に迷惑をかけるのが一番怖かった。

それから僕は一ヶ月家で寝ていた。

何も出来ない。
何も無い。

不安と怖さそして自分が誰なのかも分からなくなるような感覚が毎日僕を襲った。



気づいた時僕は病院のベッドの上だった。
目の前には両親の泣き顔だった。
ああそうか、心配かけちゃったんだ。
ごめんね。

携帯に目をやると電話やメールが沢山きていた事に気付く。

そうか僕は一人じゃないんだ。
よかった……。

心の病

心の病

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-07

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