まりこ

嫌な事にフタをする。

いつ、生まれたかは不明です。
とにかく、わたしは今生まれてしまったのです。
これからどうなるのかわからないままに。


『よく、ボーっとしてるんですよ。』


ハッキリ言って記憶があるのはこの歳から幼稚園の年中さん(今この言い方で伝わるのかどうか‥)担任の先生と母親の会話です。
わたしは少し周りの子より頭の成長が遅い気がします、電池のきれそうな時計の針がカチカチ同じ時刻をさしているような、とても残念な子供だったような気がします。
わたしの幼稚園では外で元気よく遊ぶ、というよりも、漢字の読み書き、読書(ヘレンケラーを読まされた)勉強を沢山やらせてもらった気がします。おかげで、わたしは漢字が今でも書けません(もちろん読みも)。
ある日海に浮かぶ船の絵を教室皆で描いた事があります。
わたしは見たままに、空も青いし、海も青いし、と船の背景全てを青いクレヨンで塗っていた途中、『なんで、海が空まできてんだよ、変だろ』と周りからそれはそれは盛大に笑われてしまいました。
その時わたしは必死に訴えていた気がします。空も青い、海も青い。

皆が描いた絵は壁に貼られました。
皆素晴らしく同じ構図で海は青。空は白。

海から青が空に中途半端に右側だけ塗られているのは、わたしでした。

わたしの中途半端な人生はすでにはじまっていたような気がします。

まりこ

まりこ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-06

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