花戦-なっちゃん-

春が来ました 御爺ちゃんが一粒の種を持ってきました。

花戦 -なっちゃん-
なっちゃんは御爺ちゃん子

春が来ました

御爺ちゃんが一粒の種を持ってきました。
御爺ちゃんから見ると小さな種、でもなっちゃんから見ると大きな種
それは、ひまわりの種でした。
「これはねひまわりといってとてもとても大きく育つんだよ」
と、御爺ちゃん
「ふーん」
と、なっちゃん
「私よりも大きくなるの」
「もちろん、なっちゃんよりうーんと大きくなるよ」
そして二人でひまわりの種を庭に植えました

春が過ぎ初夏が訪れました
ひまわりは芽を出しぐんぐんと成長していきました

「まだ私より小さいね」
となっちゃん
「まだまだこれからどんどん大きくなるんだよ、ゴホンゴホン」
と御爺ちゃん
御爺ちゃんは最近体調が優れませんでした

なっちゃんと御爺ちゃんは、毎日ひまわりに水をあげました
でも、御爺ちゃんが床につく日が増え、
なっちゃんが一人で水をあげる日が増えました

「御爺ちゃん、からだ大丈夫?」
「ああ、今日は気分がいい、ところでひまわりはどのくらい育った?」
「もう私と同じくらい大きくなったよ」
「そうかそうか」
と御爺ちゃんは大きく微笑みました

夏が来ました
ひまわりはなっちゃんの背丈を遥かに越え
おおきく、とても大きく育ちました

しかし、御爺ちゃんはそのひまわりの姿を見ることなく
永い眠りにつきました
でも、なっちゃんは御爺ちゃんが亡くなったことが理解できませんでした
そうです、人の死を理解できなかったのです

「ねえ、御爺ちゃんはどこにいっちゃったの?」
なっっちゃんは泣きべそをかきながら、お父さんに聞きました。
「御爺ちゃんはねお星様になったんだよ」
「もう会えないの」
「ああ、もう会えないんだ」
「じゃあ、ひまわりももう見れないの?私よりうーんと大きくなったんだよ」
「御爺ちゃんはね、空のかなたからなっちゃんとひまわりを眺めているよ」
「お星様になったから?」
「そう、お星様になったから」
こうして、泣きべそをかきながらも、なんとなく納得したなっちゃんでした。

夏は盛りを向かえ、ひまわりは大きな花を空に向け咲かせ続けました
「御爺ちゃん喜んでるかな」
と、なっちゃんは得意そうに夜空の星を見上げました

夏は終わりを迎え、青々と勢いよく咲き誇っていたひまわりも
夏の草花と同じように茶色くしぼんでいきました

「たいへん、たいへん、ひまわりが茶色くなっちゃった」
なっちゃんは考えました
「そうだ、もっと水をあげればいいんだ」
なっちゃんはどんどん水をあげました、毎日毎日今まで以上に
でも、ひまわりはどんどんと茶色くなっていきました

やがて秋が来ました
ひまわりはすっかり枯れたくさんの種を残しました

なっちゃんはそれでも毎日水をあげました
ある日お父さんが言いました
「なっちゃん、ひまわりはね、枯れたんだ」
「枯れるって何」
「枯れるってのはね、ひまわりは一生を終えたんだ」
「一生を終えるって何」
「ひまわりはね、芽を出し、茎を伸ばし、葉を生い茂らせ、花を咲かせた」
「ひまわりの花立派だったろ」
「うん」
「ひまわりはねその役目を終えたんだ」
「そうなんだ」
「でもその代わり見てごらん、たくさんの種を残したんだよ」

なっちゃんは今までのことを思い出しました
御爺ちゃんの手のひらに乗っていた大きな種
毎日の水遣り
すくすくと大きくなっていくひまわり

やがて

枯れたひまわりを見上げながらなっちゃんは思いました
「御爺ちゃん、死んじゃったんだ」

なっちゃんが人の死を理解した瞬間でした

でも、なっちゃんは寂しくありませんでした
だって、なっちゃんの小さな手の上には
たくさんの大きなひまわりの種があったのですから。

「さようなら、お爺ちゃん。今度は私の番、私がんばるね。」
ひとしずくの涙が地面をぬらしました。

花戦-なっちゃん-

花戦-なっちゃん-

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-07-03

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