夢とあなたと(1)
学校生活の合間に細々と書いて更新します。
ちょっぴり厨二病で友達のいない新村くんが主人公の学園もの(?)です。
序
「またな」って言えない。
何故だろう。
いつからだろう。
俺のなかからその言葉が消えてしまったのは。
昔は…、そう、時間の止まったような日々を過ごしていたあの頃はあんなにも淀みなく湧き出てきた言葉だというのに。
壱
俺、新村葵には高校二年生現在において"彼女"がいない。それどころか巷で言われる"親友"と呼べる存在すらいない。
いるのは所謂"うわべだけの友達"と、そしてもうひとり…
「あーおーい~~!」
もうひとり、この愚かなる…
「ちょっと!私が愚かってどーゆーこと!!」
……読まれた。
「お、お前いつからそんなファンタスティックな能力を…」
「はぁ?なに言ってん……ってそんなことより昨日のメール!なーにが『お前のような愚かな人間に教える事などない』よ!!」
……。
なんだそのことか。まったく紛らわしいことをいう女だ。
改めて、こいつがそのもうひとり、俺の愚かなる|僮≪しもべ≫である桐島萌香だ。
「ちょっと葵ー。今私にすっごく失礼な事考えてたでしょ。」
……。
「お前やっぱりファンタスティックな能力を…」
「あーもう違うって。今まで十七年も一緒に育ってきたんだから、そんな事ぐらい葵の顔見てれば一発で分かりますー!」
くっ…。
完全に見透かされている。流石だぜ萌香。
ポンッと萌香の頭を軽く叩く。
「そーゆーとこが愚かだってんだよ。」
「なっ!そーゆーとこってどーゆ… 」
「よーし帰るか。早くしねーと置いてくぞ萌香。」
「ちょっ!葵、待ちなさいよ!!」
慌てて帰り支度を始める萌香。どうやら俺の細やかな反撃は意外と効いたようだ。
そんな幼なじみをさらに焦らせたくなった俺は本当に帰る振りをして教室の戸に手を掛ける。
ガラガラッ!
俺が力を入れる前に勢いよく扉が開く。
「うわっ!」
胸の辺りの鈍い衝撃と共に尻もちをつく。
「…って~。あ、悪い大丈夫…か……」
蒼い瞳。
尻もちをついた俺が見上げた先に立っていたのは、真夏の空のようにどこまでも透き通った蒼い瞳の少女だった。
夢とあなたと(1)