湿った空気が頬に触れる。触れたところからあの特徴的な生温かさが広がる。下からは、土と落ち葉の香りが吹き抜け、鼻孔をくすぐる。上からは、「パチパチ」と軽快に布をはじく音が耳に届き、他の音が遠くなっていくのを感じる。一人でその場に立ち尽くしていると、どこか別の世界に一人取り残されてしまったような感覚に囚われ、寂しさと少しの興奮を覚える。エフェクト光のように、目の前をいくつもの線が通り抜け、地面にぶつかって消えていく。
 私は、その億千もの光の線を潜り抜け、かかとでしぶきを上げながら、いつもの道を歩くのだ。
 
 音が止み、静けさを取り戻した空を見上げると、そこには七色の橋が綺麗な弧を描いていて、私はそこに美しい未来を見るのだった。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-29

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