夕暮れ14歳

夕暮れ14歳

大事な時に大事なことが言える勇気を教えてくれた

そんな君に感謝

7月の初め、定期テストを終えた俺、笹原幸助14歳はテストのせいでたまりにたまった疲労感を癒すため騒がしい教室で一人机に突っ伏していた。顔を机から少しあげ外を見る。俺の席は窓に一番近い列の一番後ろ。その為外を眺めるには最高のポジションだった。7月なのに今日はあまり暑くもなく、そよ風が少し吹いていた。そのたびに木の葉っぱが揺れ太陽にあたってキラキラと輝く。そんな風景は俺の眠気を誘うには十分すぎた。瞼がだんだん重くなり俺は瞼を閉じる。意識が徐々に薄れていく。やっと熟睡できる。そう思ったんだ。
「こーすっけくーん♪」

そう、こいつがいなければ。
まるで酔っぱらいのリーマンみたいなテンションで俺にちかよってくる幼なじみ、成実碧がいなければ。毎回俺が疲労感MAXなときに限りこんなうざいテンションで寄ってくる碧に、俺は正直なところイラっとする反面狙っているのかとさえ最近は思うようになってきた。まぁ、なんにせよこういう時は狸寝入りにかぎる。

「あれ?まさかのまさかの就寝パターン?」
碧が俺の正面にまわりじーーっと此方を見ている。女子みたいに恥ずかしい!等はミリ単位ほどないが何故だろう。こいつがやると無性にイライラする。だが、これを耐えれば俺の夢(熟睡)が叶うんだ!此処は我慢・・・・・・
「あ!もしかして眠り姫の如くちゅーしなきゃかな?」
「無視してサーセン!!あと、苛つくから離れろや。」

無理でした!!
なんとなくわかってはいたんだよ?でも、付け足しで言ったセリフは俺の中では頑張った方だと思う。キャラ変わってね?って思う人たちこれがほんとの俺です。内心ただのチキンやろーなんだよ。うん。
そんなことより
「何かようがあんの?」
「あぁ、そうそう。はい、これ。」
碧が今思い出した様に手に持っていた色紙を俺にわたす。
「なにこれ。」
「色紙だけど。」
そんなんわかるが
「誰か、転校でもすんの?」
たいてい、一人で行動している俺はそういう情報等全くわからない。
まぁ、知ろうともしないが。
「違う。ってか、あんた知らなかったの?」
碧が少し驚いて言った。
「体育の篠崎先生結婚するんだって。」
だから、はい。とでも言うように俺に色紙をわたそうとする。

篠崎嘉穂
26歳。
男以上に活発的な体育の先生。
先生、生徒からの評判もわりといい。
そして――――



俺の好きな人。



「へ・・・・へぇー。そうなんだ!碧。悪いがまだ書くことが決まってないからさ、最後の余ったとこにかくから」
そう、一方的に言い席を立つ。
「は?まぁ、分かったよ。じゃ、次はちゃんと書いてよね。」
碧は、呆れたような声でそういい俺から離れ違うクラスメイトの元へ行った。
はぁ、なんて厄日なんだ。俺は、誰にも気づかれないように教室を出た。




あれから、数時間。
俺は屋上に居た。
屋上の入口の裏。
ここが、俺のすきな場所だった。ここからは、グランドがよく見える。俺は、放課後いつもここに通っていた。理由は簡単だ、ここからならば誰にも気づかれずにあの人を、先生を見れるから。気持ち悪いと自分でも自覚している。
でも、臆病者なチキンの俺にはこんな方法しか思いつかなかった。ただ、彼女を見てるだけで幸せだったんだ。叶わない恋だとはわかってはいたんだ。分かっていたんだけど…
「どうして涙がでんだよッ…!!」
とまれ、とまれ。
その言葉を脳内で何度も唱える。
しかし、涙はとまることなく流れつづける。

ギィ

ふと、扉が開く音が聞こえた。
ヤバい、人がきた。
思わず息をのみこむ。
早くどっか行け。そんな、幸助の願いとは逆に人は此方に近づいてきた。あぁ、こんな姿を、知られたら恥ずかしすぎる。人が影ですぐそこにいることが分かる。せめて、顔を見られないよう顔を伏せる。
「なーに、落ち込んでんだよ。」
その声に、反応し顔をあげる。
碧だった。
碧は俺の隣に腰を下ろす。
「何で、此処が分かったんだよ。」
そう聞くと、
「秘密だ。馬鹿が。」
碧が俺の額に強烈なデコピンをおもいっきりはなつ。
思わず顔が歪む。
碧が、少し空を見上げ言った。
「幸助って、篠原せんせのこと好きだよね。」
いきなりのことに 俺は驚いた。今まで、誰にも言ったことなかったのに。
碧はクスクスと笑う。
「私が、気づかないとでも思ってたわけ?」
思わずため息をはく。
「いつからだよ。気づいたのは。」
「ん~と、去年の秋頃かな。」
思いっきり最初からじゃねーかよ。
碧が少し俺の方に顔を傾ける。
「幸助ってさー。」
「ん?」
「先生にコクったの?」
「はぁああ!!!!??????」
碧のいきなりの発言に 顔が熱くなるのが自分でも分かった。
「いきなり大きな声ださないでよ。」
「あ、いや、ごめん。」
「その様子じゃまだみたいね。」
碧は、ため息をつくと、俺の手を引っ張り(強制的に)立たせる。
「じゃ、いっちょいきますか。」
「え、何処へ・・・・・」
嫌な予感がする。
「せんせーのとこ」
「な、何しに」
「そんなん、告白に決まって」
「無理!!今さらそんなん無駄だって・・・・」
その場にしゃがみ顔を伏せる。
「知ってる。」
碧の力強い発言に顔をあげる。
「だからこそ、なんだよ。」
碧も同じようにしゃがみこみ俺を見る。
「なにもしないで失恋するよりさー、告白して振られたほうがさカッコいいじゃないか。」
そういい碧は笑う。
やっぱりこいつは凄い。
ふと、笑いが溢れる。

「それもそうだな。」
ゆっくりと立ち上がる。臆病者+チキンな俺だけど
「たまには、カッコずけたっていいよな」
碧は少し驚いたようだが、また笑顔になった。
すっと立ち上がり、
「当たり前だ。」
俺をドンと押す。その勢いで転びそうになる。
「かっこ良く振られてきな!」
碧の言葉に苦笑いし、俺は屋上を飛び出した。


****

俺は、先生を探しに体育館に来ていた。運動部の人たちはもう帰っていたためとても静かだった。職員室に居なかったから他にいるとしたらここしか思いつかなかった。
体育館の戸を開ける。いた。
先生は、一人でバスケをしていた。
「先生。」
「お、笹原。どうしたんだ?」
今更ながら緊張する。手を思いっきり握る。
「も、もう部活は終わったんですか?」
「ああ、そうなんだ。テストがあったしな。」
先生は、額のあせを拭く。
もう、いましかない。口のなかの唾を飲み込む。
「先生。大事な話があります。」
「ん、なんだ?」
「まぁ、先ずはご結婚おめでとうございます。」
先生は、照れて顔を赤くしありがとうと言った。
「それと、実は俺…俺は」
深く息をすう。
「ずっと・・・ずっと先生の事が好きでした。」
ああ、言ってしまった。
先生は、目を見開き驚いていたが次第に笑顔になり、ごめん。そして好きになってくれてありがとう。そう言って先生は、俺の頭を撫でた。その時、自然と涙が頬を伝った。

****



俺は、家に帰るため玄関を目指し歩いていた。
玄関に着くと碧が居た。碧は、俺に気づきジュースを投げる。
「お疲れ様。」
「何かいろいろとありがとな。」
そう言いながら靴を履き替える。
「どういたしまして。」
碧は、スキップして学校を出る。
俺は、ゆっくりと追いかける。
急に碧が止まりくるッと回りこっちを見る。
「アイス食べに行かない?」
俺は、思わず笑う。
「あ、もちろん幸助の奢りで。」
「はぁぁぁ!!??」
夕暮れに照らされた校庭に幸助の声が響いた。

夕暮れ14歳

完成しました!!
長かったです。
そして初の作品です。
ぐだっとしてますがそこは生暖かい視点で見てくれたら嬉しいです。

そんな祇恩をこれからも宜しくお願いしますm(__)m

夕暮れ14歳

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-29

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