ケダモノはちょこれゐとがお好き。
「恋ってワカンナイ。」
恋に疎く、初恋も知らない純情カノジョ
杉海 杏菜
そんな彼女が初めての恋をした相手は・・・
なんと超が付くほどのプレイボーイ!?
「俺のこと好きなら・・・なんでもしてくれるよね?」
黒髪俺様系イケメン
藤井 真人
正反対の二人が恋に落ちた時、何が起こるのか!?
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6/29~ ゲーム開始!
転校
――ここ・・・か。
私は、威厳あふれる大きな正門の前で一人胸を高鳴らせた。
・・・今日から、ここで高校生活を送るのか。
異常な程にでかいメインの玄関。
綺麗な花壇には植物が太陽に向かって伸びている。
それになんといっても・・・他とは違うスケール。
グラウンドも以上に広いみたいだし。
一周回ったけれど、とんでもなく時間かかったし・・・。
ここ、ほんとに私みたいな馬鹿が入れる高校…?
私立のお嬢様高校とか、そういうんじゃないよね…?
表札を改めてみると、大きな文字で『城籐高校』と彫ってある。
間違っては・・・いない。
――入ってみよう。
半分わくわくした気分と半分やっていけるのかなという不安な気持ちが混ざって重い胸を抱えながら、一歩高校へと近づける。
・・・あと三歩。
・・・後二歩・・・
「・・・・っ」
入ってしまったっ・・・・!!!
「今日からここの一員か・・・」
嬉しいやら、不安やら。
「とりあえず、回ってみよう。」
そう。そもそもここに来たのは、校舎を回るためだ。
もう6月を過ぎているため、みんなはもうグループを作って仲良くしているはずだろう。それを邪魔して案内してとはさすがに言えまい。
わざわざ土曜日にしたのも迷惑になりたくなかったから。
・・・と。紹介するのが遅れましたね、皆さん。
私は杉海杏菜。両親が交通事故で死んでしまったため、親戚に預けられることになった私は今日からこの高校に通うことになったのです。
というわけで、偵察に来て、いろいろ校舎を回っているが・・・
「校舎ありすぎ!!!」
無理もない。馬鹿でかい建物が3棟も並んであり、まるで大学みたい。
「メモ帳もってきて正解だった・・・」
これはかなり時間がかかりそう。
半分落胆しながらも、校舎の中へと入ることにした杏菜だった。
―――――
「だ、だいぶ回った・・・」
メモ帳も隙間なくびっしりと書き込まれていて、一通りは回ったはずだ。
腕時計を見ると、もう午後5時。
ここに来たのは2時ぐらいだったから・・・かれこれ3時間は回った。
「・・・ヘトヘト」
どこか休めるところないかな・・・
探していると、一つの教室を見つけた。
「・・・?」
クラスを示すカードがない。
どうやら空き教室みたい。
「借りよう・・・」
鍵がかかっているか開けてみると、簡単に開いた。鍵は閉められてないみたい。
「失礼します・・・・・・あれ?」
なぜか風に運ばれたのかはわからないが、甘いいい香りがした。
しかも、空き教室には、ソファーや棚。
ピアノまで置いてある。
「・・・変だな。」
埃っぽくないし。
棚の上にはなぜか紙袋が所狭しと並べられている。
しかも、ソファーには男物の服がまたぐちゃぐちゃに置いてあった。
「誰かいるのかな・・・」
足が疲れてきたので、しょうがなくソファーに座る。
すると、不意にガラッと教室の扉があいた。
「え・・・」
「・・・誰」
驚いた。
どうしてって?
上半身裸で、なぜか濡れているんだもん・・・しかも美少年。
あまりの美しさに少し見惚れているところに。
「誰って聞いてんだけど。」
と、雷が落ちてきた。
言い方がどこか冷たくて俺様口調なのがムカッときたけど、一応名乗っておいた。
「・・・杉海杏菜です」
「知らねぇ名前だな。あ、制服違うから転校生か?・・・セーラー服可愛いな」
そういいながら彼は私に近づき、リボンをつかんだ。
「ちょ・・・っ」
つかんでいる手をほどこうとしたがあっけなくくるりと回され。
気付いた時にはソファーに押し倒されていた。
「・・・何?俺に見惚れてたんでしょ?」
口角を上げてにやっと笑う彼は、どこか黒い。
「・・・・・・・・・・」
「・・・アレ。もしかしてこういうの初めて?」
「・・・・・い」
「は?」
「変態っ!!!!!!!!!」
そういって私は彼の拘束を振りほどき、無我夢中で逃げた。
何なのよっ!あいつっ!!あったばっかの人に抱き着くはないでしょ!
いくらなんでも・・・イタリア人かっつーの!
あいつと同じクラスじゃなきゃいいな。
そう思いながら校舎を出た。
――――人生そんなに甘くない。
どこかで声が聞こえた。
その言葉が耳に残ったまま、離れなかった。
「まさか、そんな・・・まさか、ね」
この学校にあいつがいるわけない。
あいつから逃げるためにも、わざわざここまで来たんだから。
変な胸騒ぎを覚えたので、家に帰ることにした。
「っていうか・・・・帰れないんですが・・・・」
杉海杏菜17歳。今日から城籐高校に通う高2の女。
早速・・・迷いました・・・
「ここ・・・どこ・・・・」
地図作ったのになんで迷ってんの、どんだけよ。
メモ帳を見ても何もわからない。
というか、現在地がどこすらもわからない。
同じ校舎が並んである中、その隙間のホールみたいなところの前にあるベンチに腰かけた。
「・・・暗くなってきた・・・」
嫌な胸騒ぎを覚えた。
どうしよう。何か来るのかな。
いや、まさか。
泣きそうになっていた時だった。
不意に頭上から声がした。
「っはぁ・・・なんで泣いてんのっ・・・」
息が乱れ、かろうじて服は着てるけどボタンは全開。
キラキラ輝いてるのは汗だった。
そこには。
「え!」
どっかで見たイケメン。
おもいだせないけど・・・
でも、雰囲気はどこかで会ったような感じがする。
なんていうか・・・何か暗いものを持っているような感じ。
「・・・俺のせい・・・?」
悲痛な顔をしたこっちを見てくる兄ちゃん。
「・・・・何が?」
何?俺のせいって。
なんかされたっけ?
「・・・・なんだ。違うのかよ・・・しかも眼中にも置かれてないって・・・どんだけ・・・」
少し安堵の顔になったけど、次に見せた顔は半分ショックが混ざったような顔。
「兄ちゃん、なんかあったの?」
名前知らないから、一応兄ちゃんと呼んでおこう。
「・・・名前知らないのか。俺はもうお前の名前覚えたってのに・・・」
「知らないよ。
てゆか、名乗った覚えないけど?」
うーん・・・今日そんな人にあったっけ・・・
「は・・・お前、・・・変わってんな・・・普通みんな顔ぐらい覚えてくれてるぞ?」
「他の女子と比べないでくれる?私は私なの。」
そういうと、びっくりした顔でこっちを見てきた。
すると、笑い出した。
「っく・・・アハハハハ!!!も・・・も、無理だって!!!こいつまじ・・・ハハハハ!」
なぜか無性に腹が立つのは気のせいだろうか。
「・・・最低」
「・・・っく・・・悪かったって!ごめんごめん!」
まだ笑いをこらえているのが手に取るようにわかる。
「・・・・で、名前なんて言うのよ?」
「・・・っく・・・・・・っ・・・・お、俺か?俺は・・・・・・いや、いいよ。」
何がいいのよ!こいつわけわかんない。
「また月曜日。あ、迷ってんだろ?お前の後ろにあるメインホールの校舎を右に曲がってまっすぐ行ったら正門。」
・・・でも、道を教えてくれたのは、感謝するわ。
「ありがと。」
「ん。じゃな」
なんだ。案外いいやつじゃん。
友達になれそう!
そう思いながら教えられた道を通って学校を後にした。
ケダモノはちょこれゐとがお好き。