正義の味方
少年は、父親を撃った。
少年は、義母を撃った。
そして、少年は青年になり、妻と子を持った。
しかし、青年は妻を撃ち、子も撃った。
そして、街は火に包まれた。
青年は、炎の中から少年を見つけ出す。
少年は、青年の笑顔に魅入られる。
青年は年を取り老人に、少年も成年へと成長した。
そして、老人は青年に自分の夢を託してこの世を去った。
少年の父親は、悪魔に魅入られていた。
少年の義母は、悪魔を運ぶ者だった。
青年の妻は、悪魔そのものであり、子もまた悪魔であった。
悪魔は、死と引き換えに街の崩壊をもたらし、殺した者には呪いを残した。
老人は、死の間際に思い出す。幼き日の思い出を…
「君は、どんな大人になるのかな。」
少女は、少年に尋ねる。
「僕はね、僕は…」
少年は、言葉を詰まらせる。
「言えないや。」
少年は、笑ってごまかすことしかできなかった。
走馬灯のように、数々の景色が、人間が、写真のように映し出され頭の中を駆け巡る。
父親、義母、妻、子、少年、少女
みんな幸せそうに笑っていた。
こんな時があったのか、と老人はおぼろげに思う。
ああ、うらやましい。
僕もこんな風に笑うことができたのだろうか。
いつか叶うと願い続けた人生の夢は、ついに叶わなかったけれど、きっと青年が叶えてくれるだろう。
あんな笑顔で笑えるのだから、きっと…
「僕はね、僕は、正義の味方になりたかったんだよ。」
正義の味方