僕とお父さんとの約束

約束

《僕ねパパみたいな男の人になりたい!!》
《そーかそーか、期待してるぞ悠李!》
4歳の誕生日、僕はパパと約束をした。
“この家族を守る。”
パパはこう言った。“約束は守るからこそ約束なんだ”
パパ……絶対約束守るね。

キィーーーーーーー
救急車の音と警察のサイレンが鳴り響く。
目の前には血に染まったパパがいた。
「パ………パ?」
ただ呆然と倒れているパパを見ていた。
4歳の誕生日の日。
パパが買い物に行くといって出かけた数分後。
ねぇパパは何をしているの?
演技だよね……ははっ、そうだよね。
呼んだらきっと笑って答えてくれる。
僕は言い続けた。
「パパ〜起きてよ〜っ……グズっ。早く家帰ろうよ〜。」
僕は声が枯れるくらい大声えで呼んだ。
でもパパはピクリとも動かない。
『ゆうちゃんごめんね。パパは……………死んじゃったの。』
ママは溢れる涙を抑えていた。
「返して!。パパを……パパを返して!!!」
パパは死んじゃったの?



「返せ………パパを……『悠李!早く起きて!学校遅刻するよ?』。」
んー、夢か。変な夢。
それより何年前だよ。今16だから………12年前か。
『それより悠李〜今日○○いかない?』
あれ、そこどっかで。
「あぁ、いいけど。」
この子は俺の恋人、佐藤香菜。俺の運命の人かな。
風が気持ちいい季節になった。
確かあの頃もこんな感じだったな。
「ほらあんまはしんなって。……!?香菜!!!。」
どうしよう香菜が引かれる。
俺はあの頃の言葉を思い出した。
“家族を守る”
香菜はいつか俺の家族になる。守らなきゃ。
俺の体は無意識に動いて香菜を押した。
その瞬間。
バーーーーーーン。
俺は引かれた。俺の体が血に染まっていく。
あぁ、俺死んだら香菜と家族になれないじゃん。
嫌だ。
俺が今引かれた日。お父さんが引かれた日。
「助けて、死にたく……ない。」
俺の目から涙が溢れ出した。
ごめん香菜。
俺は意識を失った。


白い霧の中。
「あれ、生きてる?」
でも服血まみれだし。もしかして天国?
「嘘だろ。」
俺の後ろから白い人が通り過ぎて行く。
あっ、隣の叔母さん。
叔母さん死んじゃったんだ。
でも幸せそう。俺も。
『悠李。』
「えっ?………………お父さん?。」
その顔はあきらかにお父さんだった。
あ、そっかお父さん死んでるもんな。
『悠李、どうやら約束は守ってるみたいだな。それより、
大きくなったな。昔はあんなに小さかったのに。』
会えた、やっと。
俺は涙を流していた。するとお父さんはかすかに消えかかった。
『もう心配ないな。悠李、これからお前は泣いたり、喜んだり、怒ったり、
悔しがったりするだろう。でもどんな時でも笑顔でいろ。』
お父さん……やっと会えたのにもう消えちゃうの?
12年ぶりに会えたのに。
『お前が笑顔なだけで周りは幸せになる。だから自信をもて。
あと香菜ちゃん大切にな。絶対守り抜け。いいな?』
お父さんはそう言って微笑んだ。
伝えなきゃ。
お父さんに伝えられなかったこと全部。
「お父さん!俺お父さんのこと大好きだよ。いつも励ましてくれて、
優しく微笑んでくれて。大好きだった。ありがとう…………パパ。」
俺の目の前が真っ暗になった。
最後に見せてくれた笑顔。忘れない。
お父さん、今度は俺が家族を守るばんだ。
『ゆう……り?……!?悠李!今先生呼ぶね。』
俺はとっさに香菜の手を掴んだ。
守る、俺が、みんなのことを。
「俺はお前らを守り抜く。だから俺についてきてくんないかな。」
『クスッ。そんなの当たり前でしょ!悠李は未来の旦那なんなんだから!」


この世界には不幸な人がたくさんいるだろう。
もしかしたら幸福な人なんていないかもしれない。
でも“幸せ”はたくさんある。
ただ普通に会話して、笑いあって。時には喧嘩もして。
そうすることで“幸せ”は生まれてくるんだとおもう。
泣きたい時は人に頼って。大切なひとは命をかけて守る。
俺はそれが“幸せ”だと思う。
だよね。お父さん。
『頑張れよ、悠李。』
そんなお父さんの声が聞こえたきがした。


〜10年後〜
『悠李!千智!いくよ。』
26歳。俺は香菜と結婚して千智を産んだ。
毎日が幸せな日々。
それがなくなるまで俺は家族を守る。
「今いくよ。」
暖かい風が吹く。
そしてまた俺らは笑いあった。

僕とお父さんとの約束

僕とお父さんとの約束

  • 小説
  • 掌編
  • 児童向け
更新日
登録日
2013-06-26

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