虫取菫
気持ち悪いものができてしまった。
虫取菫
遠い記憶。
現実か夢の中かもわからない。
ただ映像だけが脳裏にこびりついている。
鼓動が煩いほどに全身を震わせる。
僕は滴る汗もそのままに、目の前の光景に夢中になる。
僕は森というか、山にいた。
見たことのない生物や植物が青々しい匂いを放ち、さらに奥へと僕を誘う。
なにか目的があるわけでもないのに、僕は実にしっかりと歩いていた。
ふと、強烈な甘い香りを感じた。
それは僕の左手側、大木の足元に据えていた。
ロゼット状に敷かれた葉の内側は、なにか粘着質な液体で鈍い光を放っている。
一目見た瞬間に、それが食虫植物であるとわかった。
額から顎へと止むことなく流れる汗も気ならないくらい、僕はその"悪食"に見入った。
肉厚な葉、ぎらぎらと光る粘液、ひっそりと広がるロゼットの波紋。
この世のどんな宝石でも敵うことのない「生命の輝き」。
僕は、このあざとい少女のような食虫植物の虜になっていた。
ちょうど、彼女に惑わされて粘着液に踏み込んでしまった哀れな虻のように―。
彼女に捕えられた"餌"は、ゆっくりと長い時間をかけて緩やかに消化される。
踠くほどに彼女に深く溺れ、長く暗い苦痛の末、この美しき悪食の一部になることに悦びさえ見出す。
僕にはわかる。
なぜなら、僕もまた、こうしてこの悪食の少女に捕えられた哀れな餌だから―。
虫取菫
青年の恋をぼーーーんやり隠喩してる雰囲気.............?
感想、アドバイス等々いただけたら嬉しいです。(twitterなどで)