虫取菫

気持ち悪いものができてしまった。

虫取菫

遠い記憶。

現実か夢の中かもわからない。

ただ映像だけが脳裏にこびりついている。

鼓動が煩いほどに全身を震わせる。

僕は滴る汗もそのままに、目の前の光景に夢中になる。

僕は森というか、山にいた。

見たことのない生物や植物が青々しい匂いを放ち、さらに奥へと僕を誘う。

なにか目的があるわけでもないのに、僕は実にしっかりと歩いていた。

ふと、強烈な甘い香りを感じた。

それは僕の左手側、大木の足元に据えていた。

ロゼット状に敷かれた葉の内側は、なにか粘着質な液体で鈍い光を放っている。

一目見た瞬間に、それが食虫植物であるとわかった。

額から顎へと止むことなく流れる汗も気ならないくらい、僕はその"悪食"に見入った。

肉厚な葉、ぎらぎらと光る粘液、ひっそりと広がるロゼットの波紋。

この世のどんな宝石でも敵うことのない「生命の輝き」。

僕は、このあざとい少女のような食虫植物の虜になっていた。

ちょうど、彼女に惑わされて粘着液に踏み込んでしまった哀れな虻のように―。

彼女に捕えられた"餌"は、ゆっくりと長い時間をかけて緩やかに消化される。

踠くほどに彼女に深く溺れ、長く暗い苦痛の末、この美しき悪食の一部になることに悦びさえ見出す。

僕にはわかる。

なぜなら、僕もまた、こうしてこの悪食の少女に捕えられた哀れな餌だから―。

虫取菫

青年の恋をぼーーーんやり隠喩してる雰囲気.............?

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虫取菫

食虫植物って、かわいいよね。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-25

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