朝のジョギング
一ページの習作です。
僕の場合に限ってかはわかりませんが、
掲載作品は、完成している作品でありながらすべて習作でもあります。
ケータイ小説のサイトに載せていたことがあり、
行間が多く隙間が目立ちます。
今後直していく予定です。
習作です。まだまだですが頑張ります。
朝のジョギング
朝日の射す高層ビル群のあいだを縫うように、丸山は青いジャージを纏って、ジョギングをしていた。
「十キロは痩せたいな」
丸山は走りながら、飛び出た自分の腹を見下ろした。
「この有様じゃ、好きな人にも嫌われちまうよなあ」
「丸山くん、おはよ!」
不意に背後から声をかけられた。丸山は振り向き、また今日もいつもどおりのジョギングが始まったと思った。
「やあ、宇佐美さん。今朝も調子いいみたいだね」
「あたしも少しは痩せないと。健康に響いたらやだし」
宇佐美のポニーテールが、走るたびに飛び跳ねる。何か小動物のようなものがしがみついているように思えて、丸山は少量の笑みをこぼした。
「そんな、宇佐美さん全然太ってないじゃん。そんなんで痩せたいなんて言ったら、全国のぽっちゃり女子から袋だたきにされるよ?」
「そう? まあいいじゃない。こうして朝、誰かと走ってるだけでも気分がいいんだから」
そうかもね、と丸山は相槌を打った。
しばらく走って、丸山は腕時計を見やった。走り出してから十五分くらいは経過している。程よい疲労感を得た丸山は、宇佐美に申し出た。
「ねえ、宇佐美さん。そろそろイレブンに着く頃だから、少しだけ休まない?」
「ああ、いつものね。今日はアイスクリーム食べちゃダメだからね?」
「だ、大丈夫だよ。この間は前日の夜に飯食い忘れてたから、その分仕事中に腹減ったら嫌だなあと思って食べただけだよ」
「ふうん」と、宇佐美は気のない返事をして、
「大層な言い訳ですこと」
二人はコンビニに到着し、丸山は水、宇佐美はチョコレートアイスを買った。コンビニの外に設置してあるゴミ箱のところで立ちながら、購入した商品の味を堪能した。
ちびちびと水を飲みながら、丸山は羨ましそうに宇佐美を眺めた。
「な、何よ」
「いや、大層なもの食べてるなあと思ってね」
「食べる?」
「宇佐美さん、それさっき言ってたのと全然違うじゃん。僕を罠にはめる気?」
「あはは。まあそうね。ちょっとしたトラップだったりして」
丸山は嘆息をついて、味気ない飲料水を飲みほした。
丸山は飲み終えたペットボトルをゴミ箱へ捨てると、空を仰いだ。今朝の天候は曇りだった。雲の厚みは薄く、薄い雲の中で空の彼方に煌く太陽が淡い光を滲ませている。
それでも眩しさを感じた丸山は、片手を額のところに持ってきて眩しさをしのいだ。
宇佐美は丸山の顔をじっと見ていた。
「どう? 丸山くん。ダイエットの調子は?」
「うんまあ、順調かな」
「目標は十キロだったよね?」
「そう、十キロ。でも思ったより辛くないよ。こうして走るのも、気分転換になるし」
「あたしも丸山くんと走ってるから、全然退屈じゃないよ」
丸山は一瞬ドキっとした。慌てて宇佐美の顔に目を向けるとアイスを食べ終えており、彼女はアイスのついていた棒をゴミ箱へ捨てた。
「さあ、あとは家に帰るだけだね。帰りもがんばろう」
丸山は宇佐美のいつもの張り切り具合に、口を緩ませて、彼女に聞こえないように言うのだった。
「痩せたら、想い伝たえるからね。宇佐美さん」
「今何か言った?」
宇佐美が丸山の顔を覗き込んできた。
「いや、いつかチョコアイス食いまくってやるぞってね」
「それじゃあ、リバウンドしちゃうよ」
二人は笑いあった。そして再び走り始めた。
丸山は意気込んだ。
――毎日宇佐美さんと一緒に走れるから、仕事も頑張れるんだ。
雲間から強い日差しが差し込んできた。
温かな日当たりが、走る二人を見守るかのように優しく包んだ。
完
朝のジョギング