最後のコール

最後のコール

球児たちと私との短編ストーリー


「ゲームセット!」

非情なコールが初夏の空に響いた。
皆が帰りの支度を始めても、
彼はまだベンチから動くことができない。
椅子に座りただ呆然と虚空を見つめていた。
彼の高校生活は、まさに部活一筋だった。
朝起きたらまず投げ込み。
そして授業後は厳しい練習。
それを耐え抜きやっと手にしたエースナンバーも…
今はもう彼のものではない。
明日からは、彼。いや彼らは、もう野球部にはいないのだ。
昨日までの当たり前の練習風景をみることもできない。
こんなことを言っている私ももう引退なのだが…
しかしこの三年間、苦楽を共にした仲間との友情や、
辛いことにも耐えぬく力は、きっと今後も役に立つだろう。


この数日後、私はこの世を去った。
夏の大会前から病と闘っていたのだ。

私の病室に選手たちからの別れのコールが響く。
「今まで本当にありがとうございました!」
そのコールは穏やかに眠る私に確かに届いていた。

最後のコール

初投稿です

最後のコール

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-23

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