yard box

起承転結っておいしいの?な小説。気まぐれに書いてるのでツナガリがものすごく怪しいです。
ジャンルもよく

僕は一人だった。

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透き通る水に生命なんて少しも感じない。

どうしてこんなに静かなのだろうか。都会のざわめきなんてここにはどこにもない

空も青いがよく見かける飛行機雲なんてどこにも見当たらない

一人なのだろうか・・・。

でも、僕は少しも寂しくなかった。

なぜだかわからないが、いつものことのような気がする。

ふっ、と風が僕の頬を撫でる。

一人になって何日たったかなんてわからないけど、どうにかなる、そんな核心が僕の中にある。

それに、人がいない方がこんな綺麗な世界を保てるのだ。だから、ここがいいのだ。

生命を感じないこの世界に、僕は暖かい温もりをどこかで感じた。

いつものように僕は一人だった。

最近新しい植物の芽を見つけた。それはなんだか僕にはわからないけど、

何かいいことがあるのかなぁって変に期待してる。

立ち並ぶビルには人の影なんてなく、道路に車などない。

これはこれで幻想的だ。でも、なにかものたらない気もする。

最近雨が降る。梅雨に入ったのだろうか。だから僕は、傘をさして、図書館へと向かう

あそこの雰囲気はとても気持ちがいい。古びた本、少したまった埃、人気もない

前から僕はその雰囲気が大好きだった。

今日も一冊手に取る。今日はSFかな。時間なんて有り余るほどある僕には、密かな目標がある。

この図書館にある本を片っ端から読破する、そう決めたのだった。限りの時間じゃできない。

しかし僕には有り余るほどの時間がある。

そして、僕は今日もページをめくる。水が地面に当たる音を聞きながら。

新しい世界を見るために。

 最近暑くなってきた。梅雨も明け、おそらく夏になったのだろう。雨が降っている時のあま音が懐

かしい。

僕は水辺に本を持ってきて夕暮れまで過ごすのが習慣になってきた。

そういえばこの前見つけた芽はりんごの芽だった。普通ならありえないんだろうけど、

ここならなんでもアリらしい。スクスクと育っているので、とても微笑ましい。水辺に来る前にきちん

と、水をあげに行くようにもなった。

とても暑いので、夜も水辺で寝るようになるかもしれないな、テントでも持ってこようか、と読書を中

断して思い耽る。

思い切って、水に入ってしまうのも手だろうか。暑くて暑くて仕方がない。

緑がキラキラして、水がキラキラして、僕はなんだか場違いな気がするから、ちょっと我慢。

木陰にいるからか、風が少しひんやりして気持ちがいい。前は外で読書なんてできなかったから、

やっぱり、いいなぁっておもう。

今日は童話を読んでる。絵本とかそういうのじゃなくて、

まぁ、直接的に言えばえぐくて、いろいろあるそんな童話。

あの有名作はこんな裏話が・・・なんてね。

柄にもなくはしゃいでる僕は一人でちょっと恥ずかしい。少し落ち着きたいな

今日はすこし長居して、夜の星空でも見ていこうかな。

道の脇にたっている木が赤や黄色、茶色に染まってきた。

最近は水辺も少し寒い。もうそろそろ、水辺からもう少し暖かいとこに移動しよう。

木下で本を読みながら思った。ふと、気がつけば一枚の葉が栞のように落ちていた。

涼しげな風に吹かれ、僕は空を見上げる。月が明るく、水辺は綺麗に輝いていて、読書をするに

はいい雰囲気だ。秋の夜長にピッタリな推理モノをよんでいる。

それにしても、僕はこの小説の犯人には共感ができない。どうして人を殺すのか。

きっと僕にはずっと理解できないんだろうと、漠然と、しかしはっきりとわかった。

月を見上げる。澄んでいる空にある月はとても美しい。

そんな感傷に浸っている時だった。

ー ドボーン ー

なんとまぁ、間抜けな音なんだ・・・。

気をつけていたのに、本でも落としたのだろうか・・・。

訝しげに水を覗き込む。すると、ヒトがいた。

・・・

人?!

助けなくては、と僕は慌ててしまった。そのヒトがいるのは、中心部。

助けるには水に入るしかない。僕は水に飛び込んだ。

しかし、そのヒトは僕が助けるまもなく、浮かび上がってきた。

「プハァ」

その光景は神秘的で、さっきまでの風景もだが、さらにこの世のものとは思えないモノだった。


そのヒトは言った。

「おう、少年。助けようとしてくれたのか?」

僕は答えなかった。ちょっとばかし、すねている僕である。僕はそのヒトにタオルを手渡す。

「お、気がきくねぇ。サンクー」

そのヒトはわしゃわしゃと髪を拭く。寒いけど、着替えは今持ってないし、僕もびしょ濡れなので我

慢してもらおう。僕は心の中でそう決めた。

しばらくの沈黙。青白い月の光がボクらを照らす。髪は黒く、肌は白い、そのヒトはとても幻想的に

見えた。

「で、少年。名前は?」

僕の・・・名前?

「あぁ、俺の自己紹介がまだだったな。俺は或斗だ。」

そのヒト、或斗は僕が警戒してるのかと思ったのかそういった。しかし。

『僕は・・・誰?』

新事実発覚。僕、自分の名前が思い出せない。

「は?」

『あ、いや、ごっごめんなさいっ』

誤ってしまう。でも忘れてしまうのも無理ないんじゃないだろうか。誰もいなくなっておそらく6ヶ月

以上。誰にも呼ばれない名前は、風化され、砂となり、記憶の波に飲まれたのだ。

「なんだよ、わけありか?話してみろよ」

そう微笑む或斗はやっぱりキレイだった。


僕は話した。今までの約6ヶ月のことを。とはいえ、ほとんど内容がないので、

すぐに話し終わった。

「へー、ここ人がいないのか。なに?俺、少年とふたりボッチか」

或斗は楽観的だなぁ、いや僕も最初から驚かなったけど・・・。

「で、少年は名前がない、と」

『え、まぁ』

きらきらと或斗の顔がきらめく

「じゃぁ、俺が付ける」

そう、いった或斗は名前を挙げていく。

タマ、ポチ、タロウ、ミケ、コロにシロ・・・。

僕はペットなのか・・・。その僕の心のつぶやきは口に出ていたらしい。

「ん、あぁ。確かにな、わりぃわりぃ」

ーじゃぁ、ちさとでどうだ?ー

『ちさと?』

「おう、物事を明らかにするっていう意味の智と、聖。」

『智聖・・・。』


「だめか?」

『ううん、すっごくいいよ!』

ありがとう、或斗

そうして僕、智聖と或斗がふたりぼっちになった

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-22

Copyrighted
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