しりとり

『超短編シリーズ』第二回。

「ではこれから、“しりとり刑”を行う。ルールは分かってるな?お前はこのパソコンとしりとりをしてもらう。もし制限時間三秒以内に答えられなければ、お前をそこで処刑する。いいな?」
「はい」
“しりとり刑”…去年、国会でこの刑に関する法律が可決された。滑稽な内容だと世間では話題になったが、今年に入り、この法律が施行された。今回で、二度目の事例となる。
刑務官は俺の後頭部に銃口を向けた。そばにはパソコンと椅子が置いてあった。俺が椅子に座ると、刑務官はパソコンのEnterキーを押した。すると、デスクトップ上に「リンゴ」と表示されるのが分かった。
「しりとりの“り”からスタートだ」
刑務官はそう言うと、俺はすかさず「胡麻」と言ってみた。すると、画面上に「鞠」と表示された。俺は「リンス」と答えた。画面上に「スリ」の文字が出た。
(また“り”か…)俺はしりとりは好きだが、ら行から始まる言葉は苦手だった。俺はとりあえず「リス」と言った。次は「推理」、俺は「理解」、囲炉裏、リンパ節、釣り、リスク、栗、リスト、鳥、リーダー、蟻、リコール、瑠璃、リーマンショック、薬、リタイア、灯、リズム、無理、リメイク、曇り、理科、狩り、陸、鎖、リマスター、炙り、リサーチ、地理、力士、仕切り、……………………
…恐らく俺は二時間以上もしりとりをしていたのだろう。漸くこの刑の怖さが分かった。全部最後が“り”で終わるのだ。俺は焦った。もうネタがないのだ。仕方なく、俺は最後まで取っておいた、ガールフレンドの名前「理央」を言った。すると、パソコンの画面上に“CLEAR”という文字が出てきた。
「お前、もう出所していいぞ」
刑務官のその言葉に、俺は一瞬耳を疑った。俺は過去に連続殺人犯として逮捕されたやつだ。なのに、この刑は軽すぎるのではないか?だが仕方なく、俺は刑務官の指示に従うようにし、手早く出所の準備をし終えた。すると、刑務官は…俺に銃を向け、言った。
「さぁ、裏門から出るぞ」
「えっ⁉何でですか?」
「お前やっぱり知らないのか?“しりとり刑”はな、一番ひどい刑なんだぞ」
俺は怖くなった。まだ銃を向けられているということは、しりとりはまだ…終わっていない……
やがて俺は裏門に出た。そこには一人の女性が俺を迎えに来ていた。理央だった。数年ぶりに見るその姿は、俺にはとても輝かしく見えた。俺が“お”から始まる言葉で話しかけようとすると、彼女は、すかさず、言った。
「おかえ“り”」

しりとり

文章がちょっと変です。

しりとり

『超短編シリーズ』第二回です。 ある被告人に執行された刑は、あの有名な…

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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-21

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