ある、想い人を殺すことを愛する男の話。

 僕は今日人を殺した。これで10人目だ。なぜ殺したのかって言うと、単純な話さ。恋しいからだ。
初めて誰かを殺したのは9歳のとき。初めて告白をした日でもある。そのお相手は僕の初恋の人、小林鳴。黒髪で目がくりくりしてて可愛い子だったのを今でも覚えてる。で、僕はその日に告白した、彼女にね。でも、悲しいことに俺のことを嫌いだというんだ。どんなに言っても
、「嫌」「こないで」「嫌いよ」の一点張り。でも僕はどうしてもあの子を僕のものにしたかったんだ。だから、ちょうど持っていたはさみで(そこは図工室で、図工の居残りをしていた)グサッと目に刺したんだ。はさみをね。はさみの刃が見えなくなるまでずぶりずぶりと押し込んでやったよ。あのときの感覚は今でも鮮明に覚えてる、そうだなちょうどプチトマトに針を刺すように柔らかかったな。ま、汁はトマトほど出はしなかったけど。でも、そんな死ぬときでさえも可愛かったなぁ、あの子。はさみの刃がちょうど見えなくなったときに、ぱっと手をはなしたら、カクンとひざをついて前に倒れちゃった。ぴくんぴくんて体がしばらく震えて、血が流れて「あ、ああ、」って小さく呻いていたよ。そして、すぐ動かなくなったんだ。
 でも困ったのはその後さ。図工室は血で真っ赤だし。僕にも飛んでたしね。それに死んでしまったあの子をどうするのかという問題があったが、まあ、それは容易にすんだよ。その日は、遅くまで居残りをしていたせいで窓の外は真っ暗だし、学校にも先生しかいなかった。で、どうしたのかというとね、食べたんだよあの子を。美味しかったなあ。お尻とか、胸のお肉はとろとろ口の中で溶けちゃうし、手とかは歯ごたえがあって、食べ応えがあったよ。でもさすがに全部は無理だったし、顔なんかは食べるのもったいなくて。しょうがないから、図工室からビニール袋を数枚拝借して、残りの身体をつめて、僕のリュックにつめたんだ。で、学校を出た。もちろん血の後始末はしっかりつけたさ。先生に見つからないように裏口を通ったから、僕がいたことも忘れたか、気づかなかったんじゃないかな。
 それで、その残った部分をどうしたかというと、ホルマリン漬けにしたんだ。今も部屋にあるよ。なんでホルマリン漬けにできたのかというとね、僕の父さん医者でね、家にホルマリンの液体も容器もごろごろ落ちてたから使ったのはばれてないと思うよ。ホントはホルマリン漬けなんかしたくなかったんだけど、ほら、そのままにしちゃうと腐っちゃうじゃん?だから、ね。
その後も、二十歳になるまで三人も殺したんだ。みんなホルマリン漬けさ。でも、大学で解剖学を詳しく習ったから、それ以降は僕が考案した技術をつかって、生きていたときと変わらず僕の部屋に並んでるんだ。バイト先のあの子も、海であったあの子も、あの子もあの子もみーんな、ね。
 さて、そういうわけだから。今日も家に帰ったら、寝ないで加工しなきゃね、今日の子を。
でも、今回は少し変なんだ。斧でのどをちょん切ったときに、いつもはあんなに気持ちいのにむかむかし始めるし、目から水が流れ出てくる。胸が締めつけられてるみたいに、苦しい。なぜだ?風邪、かな。まあいい、帰って、作業を終えて、いつもみたいに薬を飲めば治るさ。
でも、帰り道。やっぱり、目から水が止まらなかった。拭いても擦ってもとまらない。目が痛い、擦りすぎて。でもそんな時ふと思い出した。僕が告白をして、優しく「私もあなたのことが好きよ」と言ったのはあの子が最初だったなあ。今日5回目のデートだったんだっけ。
 あれ?じゃあ、殺す必要なんて無かったんじゃないか。すでに僕のものだったじゃないか。あの子は生きていてよかったんじゃないのか?そしてやっぱり目から水が止まらなかった。
 
さようなら、愛しい人よ、そしてこれからも...

しょっぱなから、こんなんかいてていーのか?と思いましたね。グロテスクでひん曲がった愛の形。悲しいけれども、それもまた愛。なのかもしれませんね。こんな人は実際はいないでしょうし、いたらこまるんですが、こう考えの方はいらっしゃるのではないでしょうか。ほら、あなたの恋人も、いつ首をちょん切るか、目を突き刺してやろうかなんて考えて、そのあなたの骸を妄想しているかもしれません。

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  • ホラー
  • 成人向け
  • 強い暴力的表現
更新日
登録日
2013-06-20

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