蒲生四丁目殺人事件

 六年二組の教室に、体操服姿の児童達が駆け込む。
 雨に濡れて入って来た者達を、教室の隅の方で制服姿の一団が見ている。女子達の話し声が聞こえる。
「こんな天気やのに運動会ある思てる奴居ってんなあ」
「阿呆ちゃう」
 体育が好きな鶴岡佳男は、
「うるさいわ」
 と独り言のように呟きながら、自分の席へと向かった。
 栗原舞花は、そんな鶴岡を冷めた目で一瞥し、机の上に絵の具箱を出す。
「はいはい、残念やけど、運動会は火曜日に延期です。みんな座ってー。図工の用意してや。こないだの絵の続きするでー」
 担任の海老名教諭は、騒ぐ児童達に向かって大声で言いながら、教室に入って来た。がたがたと音を立てて、児童達は席に着く。
 色を塗りかけた状態で一旦提出した絵を銘々受け取ると、パレットに絵の具を出したり、水入れの水を汲みに行ったりし始め、ざわめきは廊下にまで広がって行った。
 鶴岡が友人達と手洗い場から教室に戻ると、隣席の栗原は、既にパレットの上で赤と黒を混ぜていた。そして、それを林檎に塗り始める。
「うわっ、めっちゃえぐい色! 血やんけ、そんなん!」
 と鶴岡は言ったが、栗原は黙ったままで筆を動かす。
 鶴岡は、栗原によって塗られていく林檎を、暫く観察した。パレットの上で血のように見えたその色は、画用紙の上では鮮やかに輝く林檎の色に変化するのだった。
 不思議な現象だ、と感心しながら眺める鶴岡に、栗原は厳しい調子で言う。
「人のん見てんとはよしいや」
 その一言で、絵が上手いことを褒め称えたい気持ちを、鶴岡は打ち消した。そして、なんとか攻撃したいと思った。
 栗原の弱点は、すぐに思い付いた。体育が非常に苦手なのだ。走るのは遅いし、ドッジボールでは開始後間もなく当てられる。
「お前、今日運動会中止んなって嬉しいやろ」
 なるべく嫌味たらしく聞こえるように鶴岡は言った。
 が、栗原は何も反応を見せない。横に居る鶴岡という人間の存在をも抹消しているかのように、静かに一人の世界で色を混ぜていた。今度は少し明るめの赤を作っている。
 鶴岡は、一瞬脱力し掛けたが、ここで怯んではいけない、と自分に言い聞かせる。
「今日なくなっても火曜日に延期んなるだけやから嬉しないな。どうせなくなれへんねんしなあ」
 しかしそれでも栗原は怒り出さない。
 栗原の頭頂辺りで蝶結びにされた薄い桃色のリボンが、長い髪と一緒に緩やかになびいている様子を見ていると、鶴岡は苛立ちを覚えずにはいられなかった。
「何やねん、お嬢ぶりやがって」
 苦し紛れにそんなことを言ってみても、やはり状況に変化はなかった。
 言ってみてから、ふと、いつも栗原は本当に令嬢のような雰囲気であることに気付いた。
(こういう奴って、古臭い少女漫画の中とかやったら子分みたいなん何人も従えたりしてそうよな。……ん? ほんまにそんな奴ら居るぞ)
 鶴岡は、そんなことを考えながら、栗原と仲の良い女子達に目をやった。
 鶴岡の右斜め前に居る、結城灯は、大柄で力も強い。
 それから二列右に居る川越通代は、よく喋る。
 その二つ前に居る羽島由紀子は、小柄で大変すばしっこい。
 三人共、栗原に負けないくらい気が強そうだ、と、鶴岡は思う。
 そして、栗原に変なことを言ったと三人に知れたら、復讐されるのではないか、と怖くなった。羽島に追われて捕まって、川越に罵倒されて、結城に投げ飛ばされる……と想像すると、不安が募ってくるのであった。
 栗原は、そんな鶴岡の心情を見透かしているかの如く、鶴岡の顔を見て笑った。
 鶴岡は、「なんやねん」と言いたかったが、言えなかった。言う機会を逃してから、鶴岡は、自分に加勢してくれそうな友人が三人居ることを思い出した。
 もう一度、周囲を見渡してみる。
 鶴岡の列の一番前の遠野卓生は、珠算が得意である。
 その隣の列の一番後ろの豊橋敬二は、縄跳び大会で学校一になった。
 羽島の隣の新井良平は、食べるのが異様に早い。
 ……だから何だというのだ。
 味方があまりにも力強さに欠けていることを確認してしまい、溜め息をついた。
「鶴岡君、何をきょろきょろしてる」
 歩み寄ってきた海老名教諭はそう言った。鶴岡は、首を竦めて筆を動かし始めた。
 だが、栗原の芸術的な絵の隣で拙い絵を描く自分が惨めに思われて、なかなか塗る色を決断出来ない。
 ああでもないこうでもないと色々と混ぜている内に、林檎の色には程遠い、小豆のような色が出来てしまった。しかも、いつの間にか、パレットの一面がその色で埋まっている。
 もうどうしようもなくなり、鶴岡は自棄になってそれを塗った。

 一時間目の途中から授業が始まったので、すぐに終わりのチャイムは鳴った。
 鶴岡は、筆を水入れに投げ込み、その場で伸びをする。
 間もなく、隣の栗原のもとに、結城と川越と羽島がやって来た。三人は、休み時間になっても筆を動かし続けている栗原の絵を眺め、「上手いなあ」と頻りに褒める。
 それが一々嫌味に聞こえて仕方がないので、鶴岡は自分の席から逃れ、新井のところまでスキップして行った。
 新井は、雑巾を忘れたらしく、机の上にはティッシュがあった。林檎を塗っているから、当然赤い色が付いている。それを見る鶴岡の首を突如捕まえた新井は、そのティッシュを摘んで走り出した。
「おいおい、いてて、離せよう」
 新井は、鶴岡の席に辿り着くと、そのティッシュを栗原の机の上に置いて、こう言った。
「生理生理ー!」
 結城と川越と羽島は、「キャー」と叫んで跳び退いたが、栗原だけは全く驚きもしないだけでなく、完全に軽蔑し切った目で新井と鶴岡を見た。
 鶴岡は大慌てで、
「俺ちゃうで、新っちや、俺は関係ないで!」
 と言ったが、新井に捕まえられたままで、逃れられない。
「何考えてんねんあんたら、女子を馬鹿にしてるやろ、ほんまに最悪」
 川越は、聞き取れないほどの早口でまくし立てた。
 呆気に取られていると、結城が新井を突き飛ばした。新井は、転んで床に尻餅をついたものの、すぐに立ち上がり、逃げ出した。
「待てー!」
 甲高い声を上げ、羽島が新井を追いかけ始めた。小柄な羽島は、机と机の間を素早く擦り抜け、新井をあっという間に捕まえた。
 そこへ結城がやって来て、新井を羽交い締めにし、栗原の前まで連れて行った。
「舞花ちゃんに謝れ!」
 結城はそう言って、新井の尻を膝蹴りする。
「鶴ちゃん、助けてくれ!」
 新井は、鶴岡に嘆願した。結城は、更にもう一蹴りしようとしたが、栗原が筆を持った手でそれを制した。
「もういいよ、私別に怒ってないし」
 と栗原は言って、「ふふふ」と笑った。新井と鶴岡は、何も言えずに、ただ栗原の顔を見ていた。
 栗原は、不意に筆を二人の顔に近付けたかと思うと、鼻を赤で塗ってしまった。
 新井と鶴岡は、顔を見合わせる。周囲ではくすくす笑いが起こり、次第に笑い声は大きくなっていった。
 新井は、鶴岡の腕を引っ張って立ち上がる。
「顔洗いに行こ……」
 チャイムが鳴り響く廊下を、二人はとぼとぼと歩いて行く。
 手洗い場で、鶴岡は、蛇口に結び付けてある網の袋に入ったレモン石鹸を鼻に擦り付けてみた。それから水で洗い、新井に顔を向けると、新井は「とれてる」と言った。そして新井も同じようにして洗った。
「新っち、ハンカチ持ってるか?」
「ない。忘れた」
 濡れた顔のまま教室に戻ると、クラスのほぼ全員に笑い声で迎えられた。
 事情を知らないのは海老名教諭のみであった。
「なんや二人とも。顔洗いに行っとったんか」
「先生、ハンカチ貸してハンカチ」
「ハンカチぐらいちゃんと持って来とかなあかんやないか。はい」
 二人は、海老名教諭に借りたハンカチで顔を拭いてから、席に戻った。
 まだ笑いは止んでいなかった。げらげらと笑う児童達の中で、栗原は一人、「ふふふ」と笑っていた。
 鶴岡は、栗原に嘲笑されている自分を、なんと情けない奴なのだろう、と嘆かわしく思った。仕返しをしようという勇気も湧いてこないのだ。
 それ以前に、栗原への腹立たしさ自体すっかり消滅してしまっていた。
 しかし、鶴岡はほとんど無意識の内に、こんなことを口にした。
「お前ら、覚えとけよ」
 栗原は、暫く笑っていたが、一瞬真顔になり、
「覚えとくわ」
 と言った。
 鶴岡は、言い知れぬ不安を感じた。
 そして、雨風が徐々に強くなっていきつつある窓の外を眺めながら、何もかも全部雨のせいだと思った。雨さえ降らなければ、今頃は頭の中を空っぽにして走っているはずなのに、と。

                    θ

 蒲生四丁目交差点北東で、鶴岡佳男と新井良平は、遠野卓夫と豊橋敬二がやって来るのを、自転車に跨ったままで待っていた。
 遠野と豊橋は、手を振りながら交差点に近付いて来た。鶴岡と新井は、それを確認すると、信号が青になった横断歩道を、交差点南東へと渡り始めた。
 半分ほど渡ったところで、新井が「あっ」と声を上げた。
「そこに居んの、栗原らやで」
 新井は、指差して言う。
「げ。ほんまや」
 その時鶴岡は、サイクリングを楽しむはずの代休が無茶苦茶になってしまうような予感すら覚えた。
 そこへ、遠野と豊橋が追い付いて来た。
「どうしてん?」
 豊橋は尋ねる。新井と鶴岡は、無言で指差す。豊橋と遠野は、女子四人の姿を発見するなり、笑い始めた。
「昨日めっちゃ阿呆やったなあ、新っち」
「鶴ちゃんまで鼻塗られとおんねんな、情けなー」
 豊橋と遠野も、新井がティッシュを置く以前に、鶴岡が栗原に色々と言ったことを知らないのであった。
 豊橋と遠野は、散々笑っておきながら、女子達がそれに気付いて歩いて来始めた途端に、笑うのをやめて静かになってしまった。
 結城灯を先頭に、四人は男子達に歩み寄る。
「何やねんあんたら」
 結城はそう言って、新井の前に立ちはだかった。鶴岡は、その結城の後ろに目をやった。桃色のワンピースを纏った栗原舞花が、口だけで笑っているのが見えた。
「何あんたら私らのあとつけて来てんのよ」
 と、川越通代は言いながら、一歩前へ踏み出す。
「誰がお前らのあとなんかつけるか。俺らもあっちへ用あるんじゃ」
 豊橋は、顎を突き出して言う。すると、羽島由紀子が栗原の手を引いて、
「きっしょー。きしょい顔近付けて来んな」
 と言って退いた。そこで鶴岡は、
「お前らの方がきしょいわ」
 と言って、自転車ごとにじり寄ってみた。女子達は下がる。新井は、右足の靴を脱いで手で持ち、
「これ、うんこ踏んでんぞー、顔くっ付けたろか!」
 と言うと、結城と川越と羽島は、それまでの態度に似つかわしくない「キャー」という甲高い悲鳴を上げて、跳び退いた。そこへ通り掛かった初老の男性に、
「こら! 男のくせに女の子いじめるな!」
 と叱責されて男子達が怯んでいる間に、女子達は叫びながらスーパーの中へ駆け込んで行った。
(どっちがいじめられてんねや)
 鶴岡は、遠ざかって行く初老の男性に、文句を言いたかった。
「あーびっくりしたなー。さて、あいつらも訳分からんおっさんも消えたし、出発しょうか」
 後ろに引っ込んでいた遠野が、ようやくそう言って意思を示した。三人は頷き、四人で自転車を漕ぎ出した。
 スーパーの中で何かが動いている気がして、鶴岡は何気なく店の方へ目を向けた。ガラス越しに女子達が「阿呆――」と言っているのが、口の動きで分かった。しかし、そう言っているのは栗原以外の三人だけで、栗原は、また口だけで笑っている。「ふふふ」という声が聞こえてきそうな気がして、鶴岡は寒気を覚えた。
 鶴岡の前を走る遠野は女子達の姿にも気付かなかったのか、通過してからも何も言わなかったが、鶴岡の後ろの豊橋と新井は、女子達に向かって阿呆だの馬鹿だのと罵声を浴びせるのであった。

 一行は、運河に突き当たると、それに沿って南へ向きを変えた。運河が川から分岐する地点を目指したのであるが、あっという間に到着してしまい、四人は大いに拍子抜けした。
 そこからその川に沿って東へ行ってみようという案も出はしたが、走る気の失せてしまった四人は、その場から動こうとしなかった。
 不透明な緑色の水を湛えて淀んでいる川を見下ろし、四人は、あそこに浮いているのは何だとか、ここに魚は住んでいるのだろうかとか、特に関心を持っているわけでもないことについて、少しの間喋った。
 秋とは思えないほど強い日差しが照り付けてき始めた頃に、四人は来た道と違う道を通って帰るべく、その場を後にした。
 細い道を通り、何度も曲がって走ってみたが、案外早く蒲生四丁目交差点に辿り着いた。
 それですぐに解散、というのもつまらなさ過ぎる。
「公園でも行くか」
 と、交差点南東で豊橋が提案した。三人が頷く。
 信号が青に変わり、四人は交差点北東へと横断歩道を渡る。
 渡り終えたところで、先頭の豊橋が地面を見て停止した。
「どうしてん?」
 と聞くと同時に、地面を見た鶴岡の目には、血の色のような赤が映った。地面にべとりと付着しているのだ。それは、前日に栗原がパレットの上で作っていた最初の色によく似ている、と鶴岡は思ったが、
「血! 血!」
 と他の三人は騒ぐのであった。
「絵の具やろ」
 鶴岡は冷静に言ったが、三人はそれを否定する。
「こんな色絶対売ってへんって!」
「混ぜ色にしては上手いこと混ざり過ぎてるしな!」
「行く時はなかったし、こんな人の通るとこで誰が絵の具なんか垂らすねん!」
 それもそうだ、と鶴岡は納得してしまった。そこは銀行の前なのだ。確かに人はよく通る。
「交通事故とか!」
 と、新井は目を輝かせて言った。
「それはちゃうな。ぶつかったりしたら、何か破片落ちてたりするはずやのに、何もないやろ。それに、警察が地面に印付けたりするんちゃうんか」
 豊橋はそう推理する。
 暫く考えた後で、遠野が叫んだ。
「じゃあ、殺人しかないな!」
 銀行から出て来た初老の女性が、四人の方をじろりと見た。
「阿呆! でかい声出すなよ!」
 と言って、豊橋は新井の頭をはたいた。鶴岡は笑う。
「殺人なんか出来るわけないやろ、こんな目立つとこで」
 しかし、遠野は首を横に振り、声を潜めて喋る。
「そんなん分からんで。さっきのおばちゃんかってこっち見てここに血みたいなんあっても何も言わんかったやろ? まさか血やなんて思わへんねん。そやからな、ここで人が刺されてもな、まさか殺人事件が起こってるなんて誰も思わんねや。あまりにも人通りが多過ぎて。こんな目立つとこで人殺しするなんて考えられへんやろ? その盲点をついた殺人事件なんや、これはきっと」
「モーテン? 何?」
 新井は首を傾げる。鶴岡には、「盲点」という漢字は分からなかったが、遠野の言わんとしている主旨はつかめた。
 そして、本当にここで人が殺されたのだとしたら、その殺された人はなんと可哀相なのだろう、と考えた。こんなにも人の多いところで、誰にも気付かれず死んでいく寂しさを思うと、自分のことでもないのに涙が出そうになった。
「でも、死体はどこ行ったんや?」
 と言いながら、鶴岡はなんとなく地面に目をやった。同じように他の三人も見る。
 それから四人の顔は東向きに固定された。注意して見なければ分からない程の小さな赤い滴が、そこから約二メートル東に落ちていたのだ。
 四人は、顔を見合わせる。
 そうして、追跡が始まったのであった。

 赤い滴は、ほぼ二メートル間隔で続いていた。四人は、自転車を押してそれを辿って行く。
 その滴の軌跡が左折している辺りで一瞬見失ったものの、なんとか再び続きを見付けることが出来た。
 小学校の前を通過し、右左折を繰り返しながら、公園の外を回り、更に東へ行き、バス通りを渡って、ある大きな工場の門の前に到った。
 どうやら、滴は工場の中へと続いているようであった。三つ四つ、敷地内に赤い点が見える。
 四人は、また顔を見合わせる。
「どうする? 入ったら怒らえるよなあ」
 新井が無声音で言った。豊橋は、無声音ではあるが強い調子で、
「怖がってどうすんねん。ここまで来たからには、行くぞ!」
 と宣言し、先に立って侵入して行った。
 鶴岡と新井は、渋々後に続いた。
 最後尾の新井が三歩入ったところで、突如「ウ――――!」と、けたたましくサイレンが鳴り響き、四人は絶句したまま一目散に逃げた。
 そして再度、運河に突き当たった。
 近くの階段から運河のコンクリート畔に駆け降り、身を隠す。
「ふう、危ないとこやった。もう大丈夫やろ」
 と豊橋が言い終わらないうちに、遠野が「あっ!」と声を上げ、運河の方を指差した。
 その方向を見て、豊橋と新井と鶴岡も、思わず叫んだ。
 蒲生四丁目交差点北東で見たのと同じ赤い色が、べとりと水際のコンクリートの地面に付着しているのだ。よく見ると、赤い点々も存在していた。
「ここに……死体捨てられてんねや!」
 新井は立ち上がると同時に言った。
 豊橋と新井も立って、「わー」と喚きながら逃げる。鶴岡は、恐怖を覚えながらも、川に少し近付いてみた。
 こんなに汚い水の中に自分が沈められたら、どんなに辛いだろう、誰にも見付けられなかったら……などと考えつつ、緑色の川面を見る鶴岡を、上の道から豊橋が呼んだ。
「何やってんねん、はよ来いや!」
 鶴岡は我に返る。

                    θ

 火曜の朝、早めに登校した鶴岡佳男は、誰も居ない教室で、自分の机の中に淡い桃色の封筒が入っているのを発見した。
 手に取ろうとしたところで、教室に新井良平が入って来た。
 新井は、その封筒を見ると、目を大きく見開き、鶴岡に駆け寄る。そして、嬉しそうに言うのだった。
「何それ何それ! ひょっとして、ラブレターとか?」
 鶴岡は、前日に血痕(?)追跡の結果、死体遺棄現場(?)を発見した際の恐怖をもはや忘れ去っている様子の新井を見て、なんと気楽な奴なのだ、と感心してしまった。
 新井は、呆然としている鶴岡を差し置いて、鶴岡の机の中の封筒を取り出し、封を破った。
 が、手紙を開くまで嬉々としていた新井の顔が、急に曇った。
 鶴岡は、手紙を覗き込む。

  キミタチハ、ガモウヨンチョウメサツジンジケンノハンニンヲ、ツキトメテシマッタヨウダネ。
  シタイガドコニステラレテイルカトイウコトモ、シッテシマッタヨウダネ。
  オメデトウ。

 白い紙にそう印字されていた。差出人の名前はない。
「どうする、鶴ちゃん……何されんねやろ」
 新井は怯えていた。鶴岡は、そんな新井を見て、運動会が始まってしまえばこいつはこの恐怖を忘れ切ってしまうのではないのか、と思った。そう思うことによって、冷静さを保てた。
「誰がこれを入れたか、や」
 鶴岡は、封筒を眺め回しながらそう言い、椅子に座った。
 新井は、鶴岡の机の傍に蹲んだ。 重苦しい空気が流れる。
「やっぱり、あの工場で働いてる人が犯人なんちゃうん?」
 新井は小さな声で言った。
 鶴岡は、それに対して何も言えなかった。犯人を突き止めたも何も、ただ赤い滴の点々を追って行っただけで、特定の人物を疑う段階に到ってもいないのだ。死体を見てもいない。それなのに、何故このような手紙が来るのだ? それに、「おめでとう」とは一体何が言いたいのだろうか。
 そもそも、差出人は犯人なのか?
「どうしょう、何かされるんやろか」
 と言う新井の声を遮って、鶴岡は言った。
「新っちの机には何も入ってへんのか?」
 新井は、鶴岡を怯えた目で見、慌てて立って自分の机の方へ走って行った。
 鶴岡は、遠野卓生と豊橋敬二の机を見てみたが、何もない。新井も、首を横に振りながら戻って来た。
 二人は、窓際へ歩いて行った。外を見ながらぶつぶつ言う。
「何かされるとしたら、俺一人が狙われるいうことやな」
「なんでえや、そんなん限らんやん。代表として一人に出したんかも知れんねんし」
「ということは、代表として一人だけ何かされるんや!」
「えええ?」
 暫くすると、豊橋と遠野の姿が見えてきた。
「お――い!! 豊はっちゃ――ん!! 遠野――!! 走って来てくれ――!!」
 鶴岡は叫ぶように二人を呼んだ。辺り一帯に響き渡る大声に、登校してきた児童達は皆顔を上げた。構わず、新井が続ける。
「めっちゃ大変やねん! はよ、はよ――!」
 豊橋と遠野は、不思議そうな顔をしながらも、走り出した。
 二人の姿はやがて鶴岡と新井の居る教室の真下の正門内に消え、そのうちに階段を駆け上がって来る音が近付いてくる。
「何ごとや?」
 と言いながら教室に入って来た豊橋らに、新井はせわしなく手招きをした。
 四人は、教室の隅のテレビの台の後ろに、こそこそと集合した。
「びっくりすんでこれ読んだら」
 と、新井は無声音で言い、豊橋に封筒を差し出した。
 豊橋は手紙を受け取り、広げる。遠野が覗き込む。
「……」
 豊橋と遠野は、その片仮名だけの文章を読んで、絶句した。
「これが、俺の机ん中にだけ入ってたんや」
 鶴岡はそう告げた。
 暫くその手紙を眺めた遠野は
「こんなん、あいつらのいたずらちゃうんか」
 と、教室後方の給食配膳台の辺りに屯している栗原舞花ら四人を指差して、言った。
「なんで?」
 新井は訊いた。遠野が、
「だって、よその人がこんなところ入って来れる訳ないし」
 というところまで喋ったその時に、担任の海老名教諭が入って来た。
「おい、四人どこへ入っとんねや。コード引っ掛けんといてや、もう」
 四人は解散した。
 その手紙は、鶴岡が自分の机の中に戻した。
 海老名教諭が、教卓の所に立って、色々と運動会の説明をし始めたが、鶴岡の耳には入ってこない。
 鶴岡は、その手紙を持った不審な男が柵を乗り越えて真夜中の小学校に忍び込んでいるのを想像してしまったが、そんなことがあるものか、と打ち消した。
「帽子に名前書かなあかんやん」
 と、不意に隣の栗原に話し掛けられ、鶴岡は心底驚き、びくっとしてしまった。
「なんや鶴岡君、まだ書いてないんか。書いときや言うてたのに。……はい、ペン貸したるから今書き」
 鶴岡は、海老名教諭に名前ペンを手渡された。
 “6年2組 鶴岡佳男”と書く間、隣の席の栗原にじっと見られているような気がしたせいか、字の大きさが不揃いになってしまった。

 それからは何もかもがちぐはぐだった。
 まず、最初の行進の時には、手と足が一緒に出た。
 校歌斉唱の時には、出だしの一音を外してしまったし、合同体操では、隣の女子と手がぶつかった。
 自分の競技がなく暇な間に、運動場の端のジャングルジムに登っていて、足を踏み外した。
 リレーでは、きっちりと次の走者に渡したはずのバトンが、地に落ちた。
 昼までにそれだけの失敗をしてしまったのである。

 昼休みの教室で、児童達は机を全部後ろに下げて、床にレジャーシートを敷き詰め、弁当を食べ始めた。
 鶴岡は、新井、豊橋、遠野と集まった。
 水筒を開けて、蓋に茶を注ぎながら、鶴岡は大きく溜息をついた。
「あーあ、なんか今日は散々やわ」
「手紙のこと気になるからか?」
 新井は、ウインナーを頬張りながら言った。鶴岡は、静かに頷く。
 隣の豊橋が高らかに笑いながら、鶴岡の肩をぽんと叩いた。
「絶対あいつらの仕業やって。怖がるだけ損やろ」
 全く恐れていない様子でそう言うのだった。
 遠野は、朝に言い掛けたことと、その続きを言う。
「よその人がこんなとこ入って来れる訳ないねんから。よう考えたらな、全部あいつらの仕組んだことちゃうかと思うねん。あの赤い点々も、あいつらが絵の具で付けた奴で……それをあいつらがどっかで見張ってたんや、きっと」
 豊橋と遠野は、嬉しそうにさえ見えた。鶴岡は、そんな二人に呆れてしまった。
 蒲生四丁目の交差点で、地面に付着した赤い色を見て、血だ、殺人事件だ、と決め付けたのは、豊橋と遠野なのである。それなのに二人は、もう恐ろしがってはいない。
 最初から、本気であれを血だとは思っていなかったのだろうか、いや、二人はあれが本当に血であったとしても、あの場所で実際に殺人事件が起きたのだとしても、それをドラマの撮影などと同じように、ただの「興味深いこと」としか捉えられない人間なのかも知れない……などと考えると、鶴岡の食欲は減退した。
 なかなか食べ終わらない鶴岡を見捨てて、豊橋と遠野は教室から出て行った。
 ふと顔を上げると、新井の神妙な顔があった。新井も、既に食べ終えているのであった。
「新っちも済んだんやったら外行けば」
 と鶴岡が口を尖らせて言うと、新井は首を横に振った。
「拗ねるなよ鶴ちゃん。今日は一日気付けなあかんわ。最後の組体操なんか特にな」
 ぼそぼそと新井にそう言われると、鶴岡は余計不安になった。鶴岡は、三段円塔の一番上に登ることになっているからである。新井がその下だ。

 午後の部が始まってから、鶴岡は、何度も自分が三段円塔から落ちる場面を想像してしまった。
 そうこうしているうちに、ついに組体操の本番の時がやってきた。
 鶴岡は、最初の「水平バランス」から慎重だった。
 「扇」ではいつも手が離れるので、特に注意した。注意し過ぎて、動きが少し遅鈍になりもした。
 ……「ピラミッド」の後、
「三段円塔!」
 という海老名教諭の声が聞こえ、笛がぴっと鳴る。
 鶴岡の目の前で、土台の者達が肩を組んで蹲む。その上に新井らが乗り、同じように肩を組んで蹲んだ。
 そうしていよいよ鶴岡が乗る。
 一つめの笛で一番下が立ち、二つめの笛で真ん中が立つ。
 三つめの笛が聞こえると、鶴岡は息を止めてゆっくりと立ち上がった。脚が震えていたが、ふらつきはしなかった。
 大丈夫だ、と思った鶴岡は、姿勢を正した。
 ところが、次の瞬間に新井が「痛て」と言ったかと思うと、突然三段円塔はあっという間に崩壊した。
 鶴岡は、土台の豊橋の上に転落したので、豊橋がクッションになって、怪我をせずに済んだ。
 大柄な豊橋は、大して痛がりもせず、
「新っち何してんねん! ちゃんと足乗せろよ!」
 と、尻餅をついて呆然としている新井に言った。新井は、暫しの沈黙の後で呟いた。
「やっぱり呪われてる。あの手紙……」
「何がやねん! 自分が失敗したくせに、手紙のせいにしやがって!」
 と豊橋は怒鳴り、新井につかみ掛かった。鶴岡と遠野は、豊橋を必死に止めようとしたが――もはや修復は不可能であった。
 そうして、鶴岡の楽しみにしていた運動会は、大混乱のうちに幕を閉じることとなった。

                    θ

 燃え上がる焚火の炎は、空に向かって伸びていた。
 放課後の校庭で、古くなったためにその年で役目を終えた運動会の入退場門が焼かれていたのである。 
 下校しようとしていた鶴岡佳男は、門のところからその火を目にし、足を止めた。
 なんとなくそちらへ向きを変えると、担任の海老名教諭が手招きしているのが見えたので、てくてくと歩いて行った。
 火の傍には、海老名教諭の他に、新井良平、豊橋敬二、遠野卓生が居た。新井と豊橋は談笑していた。前日にもめごとがあったのが嘘のようである。
 鶴岡は、その話の輪に加わりたいと思い、やや浮かれ気味でスキップなどしてみたが、火を囲んでいる者達の中に栗原舞花の姿を見付けた途端に、沈鬱な気分になってしまった。
(うわっ、なんで居んねん、もう)
 しかし、突然スキップを止める訳にも行かぬので、そのまま同じ調子で進んで行った。「えらい御機嫌やな」
 と、鶴岡を見た海老名教諭は言った。
 栗原も、鶴岡の方に顔を向けた。目を合わせてしまった鶴岡は、その瞬間に栗原が見せた口だけの笑みに、不気味さを感じた。

 火の傍に寄ると非常に暑かった。少し当たっただけで顔が火照るのが分かった。
「もっと寒なってから焼いたら良かったなあ」
 海老名教諭は呟いた。
「また寒なってから何か燃やしたらいいやん」
 と豊橋が言うと、
「そんな簡単に言われてもなあ。燃やすもんなんかそうそうないで」
 海老名教諭は苦笑し、
「焚火なんか何年ぶりやろ」
 と続けた。すると、隣で当たっていた栗原が口を開いた。
「うちでは時々焚火しますよ」
「へえ、いいなあ」
「おじいちゃんが、お芋焼いたりしてくれるんです」
「焼き芋か、美味しいやろなあ」
 栗原と海老名教諭の会話に耳を傾ける鶴岡のランドセルを、遠野が引っ張った。
「何?」
 と問うても、遠野は引っ張るばかりで答えない。
  どんどん引っ張られ、ネズミモチの木の下に辿り着いてしまった。
「もう、何やねん」
「なあ……ひょっとしてあいつん家、焚火してるとか言って、実は、死体焼いたんちゃうか!」
 遠野は、半分笑って半分怖がっているような、引き攣った表情でそう言うのだった。
「なんで死体なんか」
 という鶴岡の言葉を遮るかのように、遠野は鶴岡の腕を手の甲で叩いた。
「一昨日のあの血や! それを見られたから栗原は鶴ちゃんのとこに手紙入れたんや、やっぱり! いや、その前にな、死体は一旦運河に捨てたけど、人があんまり居てない朝の暗い内にやっぱり引き上げて、家へ持って帰って焼いたとか……その持って帰る時に、血が垂れたんやで、きっと! で、焚火したふりして燃やしてんけど、それが不自然でばれたらやばいから、時々焚火してる、って先生に言うてカモフラージュしてるんや!」
 一気に捲し立てた遠野は、満足そうだった。
「かもふらーじゅ?」
 いつの間にか鶴岡の背後に来ていた新井が、首を傾げる。
「あいつらのいたずらかと思ったけど、やっぱりちゃうんちゃうか。栗原以外は全然知らんっぽいぞ」
 豊橋もそこに居たのだった。
「……」
 鶴岡は、何も言えずに居た。唯々、遠野の想像力の逞しさに感心していたのである。
「あいつの家、入ってみいへんか?」
 豊橋が言った。
「どうやって?」
 すぐさま鶴岡は尋ねる。
「ええ方法があんねん」
 豊橋は自信たっぷりにそう言い、ポケットから庭球を取り出し、二、三度投げて受けてして見せた。
「死体とかあったらどうする」
「もう焼いたんちゃうかとか言ってたやん」
「いや、次の死体や」
「俺らが次の死体になるのだけは勘弁やぞ」
 などとこそこそ言いながら、四人は静かな細い道を歩いて行った。
 やがて見えてくる、長い長い土塀――それが、栗原邸である。
 四人は、角で立ち止まった。
「これを放り込んで、取りに入る、と」
 豊橋が言うと、三人は頷いた。
 そして、庭球は豊橋の手を離れ、弧を描き、壁を飛び越えて、敷地内へ……
「うわっ! こらー!」
 という女性の怒声がした途端に、鶴岡と新井は逃走しようとしたが、豊橋と遠野が引き止める。
「すいませーん」
 遠野が間延びした声でそう言うのとほぼ同時に、勝手口が開いた。四人とも、そちらを見た。
 その時、四人が目にしたのは……血塗れの若い女だった。
「うわ――!」
「こら待て!」
 真っ赤な手を前に突き出し、四人を捕まえるべくスタートを切るその女。
 四人は、くるりと向きを変えて走り出そうとした。が、瞬発力で負けた。
 一瞬にして、遠野が、腕をつかまれた。その腕に、赤い液がべとりと付着する。
「ぎゃ――!」
 他の三人も、驚愕のあまり動けなくなった。
「血、血!」
「血がそんなに怖いか。あはははは」
 女は天を仰いで豪快に笑ってから、おもむろに手招きをした。
「ちょっとおいで。そこの三人も」
(もう終わりや。どうなるんやろ俺ら……)
 鶴岡は、恐る恐る歩を進めた。
 初めて足を踏み入れる栗原邸。拷問でも行われていそうな大きな蔵があり、そこへ連れ込まれるのかと思いきや、遠野の腕をつかんだ女は、庭の隅にある鳥居へ歩み寄って行く。
 そこへ、長い髪の少女が近付いて来た――栗原だ。
「お姉ちゃん」
 栗原は女に言った。女――栗原の姉は、言う。
「この子らか? 例の」
「そう」
 栗原は口だけで笑った。
 ようやく栗原の姉は遠野の腕を離した。
「血ちゃう、ペンキやで」
 と言いながら指差すその先には、赤い血――ではなくペンキが入ったバケツがあった。そこに庭球らしき球体が浮いている。周りには赤い点々が飛び散っている。
「このボールがここへちょうどはまってんで! お蔭でもうペンキ塗れや。どないしてくれる?」
 四人は、全身の力が抜けていくのを感じた。
「あんたら、舞花に『生理生理ー』言うたらしいな。血怖い癖に。女はな、これからずーっと血見て生きていかなあかんのや。赤ちゃん生むために、そうなってんねん。大変なことなんやで、分かるか? 罰として、全員で鳥居塗り!」
 栗原の姉は、厳しく、しかし少し笑いながらそう言って、遠野に刷毛を手渡したのだった。
「ペンキやったんや……」
 遠野は、力なく呟き、地面にへたり込んだ。
 栗原は、鶴岡のすぐ傍に蹲んで、鶴岡の顔を見上げていた。鶴岡が見下ろすと、栗原はいつもの口だけの笑みを浮かべた。
 ふと、鶴岡は尋ねてみる。
「じゃあ、あの赤い点々も、ひょっとして」
「そう。うちのペンキ。自転車で走りながら垂らして来てん。ちょっとやり過ぎたわ、ごめん」
 栗原はそう喋って立ち上がり、家の縁側に腰掛ける姉の方へ向かって歩き出した。
 他の三人は、すっかり安堵した様子で鳥居やペンキの観察などし始めたが、鶴岡は未だ納得出来ずに一人佇んでいた。
「なあ、俺だけに手紙入れたんは、なんで?」
 鶴岡が背後からそう尋ねると、栗原は前を向いたまま「さあね」と言い、更に五歩ほど進んで立ち止まり、ゆっくりと振り返った。
「今度嫌なこと言ったら……殺すから」
 栗原に真っ直ぐ見据えられ、鶴岡は、体が凍り付いてしまったかのように動けなくなる。
 栗原は下を向いて「ふふふ」と笑ってから、顔を上げた。その時には、鶴岡が見たことのない笑みを浮かべていた。
(なんやねん……)
 再び向きを変えて走り出した栗原を、鶴岡はただぼんやりと目で追った。
「なあ、鶴ちゃん、そろそろ替わってくれよう」
 という遠野の声がして、鶴岡は我に返った。鳥居の前で胡坐をかいている遠野は、ほんの少し塗っただけでやる気を失っているようだった。豊橋と新井は、祀ってある稲荷像を撫でたりつついたりしながら騒いでいた。
 仕方なく鶴岡は鳥居の元へと歩いて行く。
「もう交替すんのか、根性ないなあ! ちゃんと全部塗ったら焼き芋食べさしたるから、頑張りや!」
 栗原の姉の大きな声が響く。縁側に目をやると、姉妹が手を――さつま芋を持った両手を振っていた。姉は未だ赤いペンキ塗れで、不気味な姿だった。その隣で
「頑張ってー!」
 と叫ぶ栗原は、長い髪と赤いリボンを風になびかせ、満面に笑みを浮かべていた。
 労働の後で栗原から焼き芋を受け取りたい、と考えた鶴岡は、一人俯き、遠野から受け取った刷毛でペンキを意味もなく混ぜるのだった。

蒲生四丁目殺人事件

蒲生四丁目殺人事件

設定:1996年

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-07-31

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted