LILY

LILY-1

とあるヨーロッパのある国の大きくない街に、元はマンションだった廃ビルがあり、暫く人気も無かった建物が小奇麗になったと思ったらそこは【LILY】という名の娼館になっていた。

 どんな娼婦がいるのか。好みの女はいるのか。
 そんな疑問と興味で入ったその娼館には、手足が無かったり目が一つしか無かったりする女ばかりで、気味が悪いと言い二度と近寄らない人もいれば、逆にそういった体が好みだったりする[変わり者]が通い詰める、一部では人気の店となった。

 事故で体の一部を失ったり、生まれつき有る筈の物が無かったり、そう言った女性は働き手にもならず結婚も出来ずただ死ぬだけだったのが、『あめ』という名の女に拾われ娼婦になった。
拾われた女はまず身なりを綺麗にされ、欠損部位を飾り立てられ店に出された。
LILYが欠損娼婦の店だと、皆知っているので客も『そういった』娼婦を見定めに来る。

あめという女はここら辺では見ない衣服を身に纏い、少女の様な外見で、数年経っても老いる気配も見せず、真黒く長い髪はどこかで聞いた東洋の島国の人形の様だった。本人に聞けば、その東洋の小さな島国の生まれだと言う。
全盲である彼女は、それ故に他の感覚は常人の倍以上あるらしく生活に支障はなく、また他人をよく理解出来た。
常に扇で口元を隠し話す言葉も流暢で、オリエンタルで年齢も把握出来ない外見を持ったあめを、周囲の人間は可愛がりまたは対等な人間として扱った。

少しずつ増える娼婦達もまた同じく、あめを慕った。

娼館なのだから客は男だけ、という訳でも無くLILYでは男女問わず客と娼婦が合意すれば同性でも客として楽しむ事が出来、好事家も多く集まる頃には街で知らぬ人はいない、上層部にも少なからず管を持つ様になった。



そして今日も、LILYでは客と娼婦の話声や嬌声が響く。

LILY

LILY

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-06-18

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