覚醒

 覚醒した。
 俺はとある種族の末裔であり、詳しくは言えないが、隔世遺伝で覚醒したのだ。しゃれじゃなく、だ。
 覚醒はいい、努力もいらないし、誰の助けもいらない、全て俺のものだ。
 俺の俺による俺のための覚醒なのだ。
 ただ、使い方は注意しないとな。もし覚醒したとばれたら、誰かのために使わされるかもしれない。それは面倒だからな。
 まずは、密かに練習だ。

 もう練習にも飽きた、練習を始めて2日目だけど、もう飽き飽きだ。このワンパターンが! と、言いたい。
 だいたい覚醒したこの俺が、なんでこんなに地味なことを一人暮らしの8畳間で繰り広げなければならないのか。ちょっと考えればわかるだろう、この不条理が、まったく。
 しかも練習したところで、うまくなるわけでもなかった。というより最初から自由自在であって、練習の必要性なんてなかったんだ。なにぶん覚醒だからな。
 だからもうやめやめ、使い方を考える方がよほど有意義じゃないか。

 使い方を考えていたら、あっという間に一日が過ぎた。
 ああでもないこうでもない、あちらを立てればこちらが立たず。いやはや世の中とは複雑怪奇なものよのう、おかげで会議も上の空だった。
 なまじ覚醒してしまったがために、こんなにも悩まなければならないとは。こんなことなら200円のコンビニ弁当で満足していた方が幸せだったのかもしれない。
 だが多少なりともよさげな案はある。やはり覚醒は使ってなんぼのものだろう、さっそく明日から実行だ。

 実行した。
 いやあ、緊張したよ。誰かに見られてないか冷や冷やものだった。
 会社のトイレで実行したんだけど、見られたら通報されかねないからね。個室の中で唸りながら実行したよ。
 だけどこれで感触はつかんだ、おまけにお腹の調子もすっきりよくなったし、覚醒さまさまだよ。
 これから徐々に大きなことをしていこう。小さなことからコツコツと始め、やがて大きな実を結ぶ。それが覚醒した俺の明るい未来像なのだ。

 もうすっかり慣れてきた、覚醒した自分自身に。
 いままではちょっとくらい覚醒したからって、いい気になり過ぎていたかもしれない。調子に乗っていた、軽くだけど。
 だから同僚の見る目が微妙に厳しくなった気がしてた。具体的に何か言われたりはしていないけど、なんとなくわかる。これも覚醒したからなのかもしれない。
 でももう慣れた、覚醒前の自分を取り戻したと思う。だから今日なんかも「おはようございます」の声がどことなく友好的だった。大丈夫、ばれていないさ。

 ああ、なんだかだんだん不安になってきた。
 俺は覚醒して結構覚醒した力を使っているけど、ひょっとしたらこれは世界を救うために使わなければならないんじゃあないだろうか? 先祖代々の言い伝えとかあって、覚醒したらどこかに集まって魔王を倒しに行くとか。
 でもまったく知らない、実家に電話してみようか。いや、それでは元も子もない、俺は自分のためだけに使うと決めたんだ。
 今日は3回使ったぞ。

 でも確かにそれは言える。
 それというのは、俺の覚醒した力は日常生活をちょっと良くするために使うには、強力すぎるということだ。
 おそらく簡単に世界を救えてしまうだろう。
 なんなら今すぐ政情不安な国に行って、ちょっと武器弾薬を片づけて、問題のありそうな人をどこかに閉じ込める、なんていうことも2カ月もあればできるだろう。
 そして一気に産業を興し、先進国の仲間入りさせることもできるだろう、半年もあれば。
 だが、だがっ、俺はそうしない、目先の幸せにこだわるのだ、それが俺だ。

 覚醒覚醒、うるさいんだよ!
 今、俺の脳内には覚醒という言葉が5秒に1回の割合でこだましている。
 ある時は野太いおっさんの声で、かと思えば元気な女の子の声で、あるいは軽妙なリズムに乗ったコーラスのように響いている。もう、もう、ご勘弁を。
 ああ、使ったさ、今日は20回は使ったさ、いや、30回かも、わからないくらいさ、ああそうさ。
 もう寝る。寝てる間も使っているかもしれない。寝覚醒だ。それがどうしたというのか?

 覚醒してない。
 俺は覚醒してなかったんだ、そんな気がしてきた。
 その証拠に、かれこれ1ヵ月位なんの力も使っていない。一般人だ、一般的な人間という意味だ。
 覚醒なんて言葉は一切聞く機会はない。だいたい一般人の日常生活には縁のないものだ。
 最近は体調もいいよ。通勤の足取りも以前より軽やかになった気がする。もしかしたら少し早く会社に着いてしまっているかもしれない。
 ほんの少しだけど。

 あああ、やっぱり覚醒していた、ああ、あああ。
 どどどどど、どうしよう、うっかり使ってた。今日何気なく朝の天気予報を見ていたら使っていた。最初気がつかなかったけど、よくよく確認したら使っていたんだ。ひょっとして今までも気がつかなかっただけなのかも。
 だとするとやはり、もう後には退けないのかもしれない。覚悟を決めなければいけないのかも、覚醒した者としての宿命を受け入れるしかないのかも。
 残念だ!

 観念した俺は、会社から帰宅後、実家に電話した。
「ああ、俺だけど、あのさ、あの、俺さ、覚醒したんだけど、え、うん、覚醒、覚醒剤じゃなくて覚醒、普通の、薬じゃない方の、うん、そうそう、ほら末裔でしょ俺、ああ、そうなんだ、うん、わかった、ありがと、うん、元気だけど、うん、わかってるって、うん、また電話するから、うん、じゃあ」
 特に何もないらしい、好きにしていいとのことだった。あと米を送ってくるとのことだった。
 なんだ、安心だ。

 まあ覚醒覚醒って大騒ぎしたけど、別に大したことじゃあないんだな。誰だって末裔なんだよ、言ってみりゃさ、覚醒なんてよくあることなんだよ。
 ちょっと友達に電話してみるか、おまえ覚醒した? って、きっとしたって言うよ。5人に1人は言うね、あえて周りに言わないだけなんだ。
 言わない方が何かと頼まれずに済むし、みんなそうしてたんだ。だから俺もそうする。普通のことなんだ、これは。

 昨日酔った勢いで、会社の後輩に「覚醒した? おいしてんだろ実は、おいぃ」と言ったら、「いえ、そういう趣味はありませんから。いえ、ノーマルですから」と言われた。
 まあそうだろう、まだ若いからな、ってそういう意味じゃないだろ! と突っ込みたかったが、じゃあどういう意味なのかと聞かれたら困るので、「ああ、すまんすまん、軽いジョークだよ」と言ったが、目線の泳ぎっぷりを誤魔化せたかは定かではない。
 そして家に帰った後、何となく1回使ってしまった。ついうっかり。

 夕暮れ時に繁華街を歩いていたら、「俺は覚醒したぞーっ! 覚醒だーっ!」と叫んでいる人がいた。
 やばいやばい、覚醒したからって、ああはなりたくないものだな。人知れずこっそり覚醒していたい、そう思った。
 でも、まあ言いたくなる気持ちも分からなくはない。自らのポテンシャルに耐えきれなくなる、そんな感覚、覚醒していない人にはなかなかわかってもらえないだろう。
 俺も覚醒しているぞ、と心の中で思いつつ、目を合わさないようにその場を後にした。

 なんかそろそろいいことがしたくなってきた。
 いや、覚醒したわけじゃん。もう大体やりたこともやったし、なんかもったいないっていうかさ、俺自身がさ、いや別にかっこいいこと思ってるわけじゃなくてさ、なんとなくね。
 そう思って、会社帰りに暴漢に襲われている女子高生がいないか、ちょっと路地裏を覗いてみたりした。
 いやいや、別にやましい考えがあるわけじゃなくてね、襲われてるのがおっさんでも助けるよ、もちろん、ほんと、ちょっと遅れるかもしれないけど、うん。

 夕食の買い物をしてスーパーを出ると、主婦らしき女性が、しつこい勧誘を受けていた。
 ううむ、これくらいは、これくらいはセーフの範囲内じゃないのかな。よくあることだし、別に俺が何とかしなくてもとくに問題はないと思うんだよ、向こうも商売なわけだと思うし。
 と思っていたら、つむじ風が巻き起こり、勧誘している人がよろけた隙に主婦は自転車で去って行った。
 むむ、今のは、覚醒!
 誰だ、一体、と周りを見回したが、わからなかった。覚醒した俺にすらわからないとは、相当の使い手だな。
「フン、バレバレなんだよ、おっさんが覚醒しているってことは」
 はっ!!!
 振り向くと、ひと目でモテモテとわかる、男子高校生風のイケメンが立っていた。
「ったくよ、何のための覚醒か考えろってんだよ、クソが」
 そう言い残し、颯爽とガードレールを飛び越えて去っていった。
 俺は、ただ呆然とそれを見ているしかなかった。
 ああ、言われてしまった、いままでバレてなかったからよかったものの、いつかは言われると思っていた、でも本当に言われるとは、しかもこんなにはっきり、ああ、あああ、ああ、うう。

 俺は、お、お、俺は、お、俺は。
 精神的ショックを抱えながらも、どうにかこうにか日々を過ごし、1週間が経とうとしていた。
 あれから、あのイケメン高校生には会っていない。スーパーにも行くことはあったけど、出会いはしなかった。
 立ち直るには、立ち直るにはやはり、そんなことはわかっていた。だが、俺は、お、お、俺は、答えは出ないままだ。
 それでも覚醒した力は使ってしまっている。だめだ、だめなんだ、俺は。

 そんなある日、通勤途中にある民家の壁を見ると、1枚の貼り紙がしてあった。

 覚醒者求ム。
 待遇応相談。

 なんだろう、ちょっと著作権的にやばそうな絵が描いてあるけど、募集の内容とは何の関係もなさそうだ。
 昨日は無かったと思う、多分だが。ともかく関わらない方がいいだろう、何をさせられるかわかったもんじゃない。
「そうかな?」
 はっと振り返ると、背後に小さな老人が立っていた。
「あ、いや、何のことでしょうか?」
 俺は平静を装って答えた、何も口には出していないはずだ、表情にも。
「わかってるよ、それを読んで興味を持ったんだろ」
「ああ、いや、覚醒、ですか、いったいどういう……」
「無駄だよ、読んでしまったからにはね。それは覚醒していなければ読めはしない」
「あぁ、俺としたことが……不覚……。いやむしろ俺らしいというべきか、今の俺は……」
「だからこそだよ、キミ」
「だからこそ……」

 俺は、会員になった。
 会員番号9番だ。急になったからじゃなく、順番ということだ。
 結構いるんだな。いや、いるいるとは思ってたけどね、覚醒なんてさ、よくあるって。まあその意味では少ないくらいかもしれないな。
「彼が川崎君、会員番号4番だ」
「よろしく」
「彼女は、市川さん、会員番号5番だ」
「よろ」
 老人に中にいた2人を紹介された。
 2人はできているのだろうか、しかしすぐには聞けなかった。覚醒している人を敵に回したら大変なことになるからね。

 何はともあれ、俺はとりあえず出社した。
 会員になったからといって、すぐ会社をやめるというわけにもいかない。収入があるのかどうかもわからないし。
 ギリギリセーフで朝礼には間に合った、ダッシュしたからね、全力で。
 朝礼中は朦朧としていたけど、覚醒した力は使っていないはずだ。使っていたらやばいからね、多分使ってない、確認してないけど。
 そんな感じで、俺は社員と会員の2重生活を余儀なくされたのだ。

 俺は毎週土曜の7時に、老人宅へ通うことになった。
 ちなみに老人は本名を明かさない。「会長と呼んでくれたまえ」とのことだった。
 そして何をやるのかというと、覚醒した能力を使っていろいろと世の中のためになることをするのだ。
 具体的には近所の清掃から、紛争の解決まで幅広くこなす。
 まあ、ボランティア活動といったところだろうか。先日は難民キャンプを大農園に変えてきた。会員総出で土日まるまるかかったけど、どうにか終わらせたよ。
 まあ、なかなか悪くない感じだ。
 会社との両立は大変だけど、なにせ覚醒しているからね。いざとなったらどうにでもなるよ。
 それに会員番号7番の御厨さんとちょっといい感じなっているから、いやまいったな、へへ。
 彼女は女子大生で、剣道五段なんだそうだ。それに英文科で3ヶ国語がそこそこだ、ペラペラでないあたりが、またいいじゃないか。
 もう、ついつい力を使う時に気合が入ってしまうよ。まあ気合を入れても入れなくても結果は変わらないけど、気持ちの問題だ。
 他の会員は、1番が会長、2番が理髪師の土田さん、3番が主婦の六日市さん、4番5番がフリーターの川崎君と市川さん、6番がOLの園部さん、8番が小学5年生の吉岡君だ。
 まあ、そこそこ仲はいいよ。覚醒仲間ってことでね「いやあ、覚醒も楽じゃないですよねー」と言ったら「そうなのよ、うちの亭主は覚醒に理解がなくてねぇ」とかそんな感じで。
 基本的に参加は自由だから、普通は4~5人ってとこかな、大きな仕事の時は集まる感じで。
 これが正しい覚醒ライフなのかもしれない、そう思えてきた。

 俺はいつものようにコンビニでコーヒーを選んでいた。
 2リットルか1リットルか、悩む、ああ、悩むなあ。
 そして意を決し、1リットルのパックをレジに持ち込んだ。そのレジに、

 イケメン高校生!

 バイトをしていた。そうか、夏休み、夏休みにバイト、夏、夏、そうか夏だったのか。
 しかし俺のことは覚えていないようだ。まあ確かにな、そりゃそうだろう。仮に覚えてても特に言うこともないだろうし。
 その時だった。
「かっかかっ金を出せっ、金っ、金だって、金っ、カネッ!」
 白目をむいた黒いコートの男が、包丁を持って走り込んできたのだ。
 しかしもうあの時の俺じゃあない。すぐさま戦闘態勢に入り、相手の包丁を破壊。
 その瞬間、イケメン高校生は目にもとまらぬ素早さで、男を取り押さえたのだ。
「お客様、110番を」
「あ、ああ、110番ね。ええと携帯携帯、おっ、おまっ、おまわりさーん」
 110番なんてかけたことないもんだから、緊張してしまった。でもまあ一件落着だな。

 警察の事情聴取を受けた後、イケメン高校生を会に誘ってみた。
「いえ、もう入ってますから」
「そうか、別の会所属か。でも、お互い頑張ろう」
 ということで、熱い友情を誓いあってはいないが、まあ良好な関係ということになった。
 でも他にも会があったんだな。ということは覚醒はかなり一般的ということか。
 事情聴取では、「包丁が破壊されたのはポルターガイストかなんかでしょうか」と適当にごまかしたが、もうごまかす必要はないのかもしれない、そんな気がした。

 その日、俺達は全員会長に呼び出された。
「覚醒者諸君、我々は、遂に最終局面を迎えた」
 えっ、最終? まだいろいろやることは残ってると思うけど――花壇の手入れとか。
 と思ったが、口をはさめる雰囲気ではないと感じた、他の人も同様なようだ。
「我々の最終目的、それは全世界の覚醒であるわけだが……」
 初耳だ、でもまあそれはそれで悪いことじゃあないのかもしれない、目的として、と思った。
「遂にこの日が訪れたのだ。これを見てほしい」
 会長はリビングにある26インチテレビのスイッチを入れた。
「ふふ、ふふふふふ、久しぶりだな、本橋よ」
 画面の中で、長いあごひげを生やした老人が話し始めた。
「ああ、ちなみに本橋っていうのはボクのことね」
 会長は事もなげに言った。今まで秘密にしてたのはなんだったんだ。まあ表札に書いてあったけど。
「さあ、今こそ共に立ち上がろうではないか」

「覚醒バンザーイ!
 はい、みなさんご一緒に!
 覚醒バンザーイ!」

「と、いうわけだよ」
「そ、そそ、そういうわけだったのか!!!」
 俺たちは覚醒した存在。故にこれだけでわかる、充分過ぎるほどにわかるのだ。
 よし! 立ち上がるぞ! とみんな心の中で思ったはずだ。
 たぶん、な。

 その日から、俺たちは立ち上がった。
 今までは覚醒した能力を使用する時に、人目を避けたり、覆面をかぶっていたけど、もうやめたのだ。
 するとどうだろうか、世の中は覚醒で溢れていた。
 やっぱり、やっぱり俺の推測は間違っていなかったのだ。しかも5人に1人どころか、3人に1人は覚醒していた。実は両親も覚醒していた。会社の後輩も覚醒していたのだ。
 してない感じだったのに!
 やっぱり、ばれたらめんどくさいからか!?
 そして覚醒が覚醒を呼び、覚醒する人は瞬く間に増えていった。
 これはっ、これは簡単に最終目的を達成できるのでは?
 そんな気がした。
 しかし、まあ、そう世の中甘くない。覚醒を拒む人たちが当然のように現れるものだ。
 その人々はネット上で、反覚醒集団・凡人連盟を結成し、広くメンバーを募った。
 だが、メンバーの中から次々に覚醒者が現れ、運営は安定しないようだった。
 覚醒は我慢して防げるものではないのだ。

 やがて覚醒者は多数派となり、覚醒していない人々は世の中の片隅へと追いやられ始めていた。
 だがそんな中、一人の男が凡人連盟を瞬く間に牛耳っていった。
 彼は類まれな指導力と、抜群のルックスで瞬く間に世間の耳目を集め始めたのである。
 その彼とは……、イケメン高校生! こと、ミスター一般人である。
 自らをミスター一般人と名乗り、覚醒しているにも関わらず、覚醒していない者の救済に乗り出したのだ。
「俺は覚醒をやめる、これが、これが覚醒なら、俺はっ!」
 と叫ぶ動画は、大量のアクセスを集めていた。
 そして世界は世界覚醒者協会率いる覚醒肯定派と、凡人連盟率いる覚醒否定派に2分されていったのである。
 といっても、協会側が連盟側に「いやあ申し訳ない、覚醒してない人にも配慮しますから」と申し入れ、連盟側も「まあそれなら覚醒していても」といった感じで丸く収まっている。
 そんな中、俺たちは世界覚醒者協会傘下となり、黙々と社会奉仕を続けていた。
 俺はまだ覚醒した力を使う時は、なるべく目立たないようにしてしまう、何となくだが。
 ま、まあ、覚醒してますけど、一応は、ええ、まあいいじゃないですか、という感じだ。
 ちなみに、川崎君と市川さんは結婚した。
 やっぱり付き合っていたのだ。川崎君は大手出版社に、市川さんは大手化粧品会社に就職し、一緒に暮らしている。順風満帆だ。
 俺はというと、御厨さんが海外留学し、乗り換えようと画策した園部さんは婚約していることが判明、仕方なく一緒に遊ぼうと思った吉岡君は、中学受験で忙しいということで、あとの4人で麻雀をするのが唯一の楽しみだ。
「ああ、それ、当たりです、一盃口ドラ一、2600」
 大量覚醒で世の中はよくなるかと思えば、覚醒犯罪なども発生し、そうでもない状況だ。
 かといって、覚醒テロで滅亡寸前かといえばそうでもなく、よくなっているところもある。つくづく世の中は複雑である。
「会長、うちは新しい人入れないんですか? なんか参加率下がってますけど」
「ああ、それなんだけどさ、もう最終目的達成したし、解散しようかと思ってね」
「ええっ、じゃ、じゃあこれから、麻雀は……」
「それは、別途連絡するよ」
「ああ、なら、いいですよ」
 ということで、覚醒した新たな世界で俺たちはそれぞれの道を歩みだしたのだった。

終わり。

覚醒

覚醒

俺は覚醒した。ど、どどどどどどど、どうしよう。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-18

CC BY-NC
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