鉄道LOVE
もうそろそろ貨物列車がやって来る。夕暮れの蒲生踏切で、僕はカメラを構えた。
警報機が鳴り出しても、次々と自転車が目の前を通り過ぎる。夏の制服を着た女子高生が、五人くらい連続で駆け抜けて行った。それはさながら爽やかな青い風。自分が高校の頃には余り目にしたことのないスカート丈の短さに、時代の流れを感じる。
と、その時、通過した女子高生の一群の中から二人、歩み寄って来た。
「ちょっと、今うちら撮ったやろ」
「へ?」
DD51 837が近づいて来る! 先頭を撮らねばならない! だが、目の前に女子高生が立ちはだかっているので、無理だ……嗚呼、無情にも、僕の横を通り過ぎて行く……
「フィルムよこせ!」
列車の音に負けないくらいの大声を出して、一人が僕のカメラを奪い取ろうとする。
「違う、鉄道の写真しか撮らへんねんから、僕は」
「はあ? 鉄道? こんなんしか走ってへんのに、何言うてんねん」
こんなん、と女子高生はコンテナを指差す。いや、それではない、僕は機関車を撮りたかったのだ。カメラの引っ張り合いをしていると、踏切の傍のバイク屋の小父さんが出て来た。
「どないしたんや」
まだまだ終わらない貨物通過の轟音の中、女子高生と僕は銘々に主張していた。
と、そこへ、一人の女性が現れた。サークルの後輩の住江だ! 住江は、小父さんと心安そうに言葉を交わす。知り合いなのか。なんとかしてくれ、と心の中で助けを求める。
そんな思いが通じたのか、住江はこう言って事を治めた。
「先輩、誤解を招くようなことしたら駄目じゃないですか。……あのねえ、この人は、女の人には全然興味がなくて、鉄道一筋の、変わった人やねん。やから、女子高生の写真なんか撮る訳ないの!」
……感謝、して良いのだろうか?
鉄道LOVE