どちらかが彼女を殺した
どちらかが彼女を殺した
1996年東野圭吾著
久々に加賀シリーズを読むことにしました。
前作の「眠りの森」もなかなかでしたが、今作はよりおもしろくなってます。
まず構成が特殊です。
最初に殺される被害者の女性視点で描かれ、次に被害者の兄の視点に切り替わります。
この兄が警察ということもあり、自分で犯人を追いつめる役回りです。
そして犯人は最初から明白です。
被害者の女友達か、直前までつきあっていた彼氏かのどちらかなのです。
だからこのタイトルなんですね。
本編はどんどん進みますが、遅々として犯人はわかりません。
どちらも動機があって、犯行もどちらでもできたのです。
動機は最後に明かされます。
それまでは、なんで殺したのかが全く不明でした。
そもそも、恋人を奪った側が殺されるならまだわかりますが、奪われた側が殺されるのが不自然なのです。
加害者が被害者になるのは世の常ですが、被害者がまた被害者にってのが納得いきませんでした。
それが最後にわかるので、なんとなくすっきりしました。
そして肝心の犯人は…。
私は最後の付録を読むまでわかりませんでした。
睡眠薬の袋が怪しいとは思ってましたが、康正が犯人に気付いたときは完全に置いてかれてました。
後から読み返して、なるほどなって感じです。
ネタバレですが、犯人は右利きの人物なのですね。
この作品は謎解きの理由を解説していないので、ここで解説すると、佳世子は実は左利きで、睡眠薬の袋を開けたときに、袋の破り方が現場にあった睡眠薬の袋の破り方と違ってたんですね。
それで、佳代子は犯人ではないと気付いたというわけ。
つまり、犯人は右利きの佃です。
これを読みながらリアルタイムで推理するとなると、相当の推理ファンでしょうね。
気をつけて読んではいましたが、やはりどちらも犯人という感じがしました。
決定的な証拠に気付いてなかったんですね。
睡眠薬の袋に。
それを知らずに読み流してると、全然犯人が分からないと思います。
私が気付いたのは、最後まで一旦読み終わって、付録を読む前に少し考えようと思って考え、思いついたので。
それさえも袋の破り方がというだけで、犯人はわかりませんでした。
付録を読むとヒントが書いてあったのですぐにわかりましたけど。
なかなかおもしろい推理劇でした。
加賀が少ししか出てこないのにすっかり主役ですね。
頭の鋭さが感じられます。
康正も良かったです。
犯人というか、二人ともに憤りをおぼえますが、まぁ、警察に捕まったのでよしとしましょう。
どちらかが彼女を殺した