召喚士と十二の召喚石【大和撫子の悪魔】
すみません、けっこう遅れました。
昼下がり、悠は屋上で一人で弁当を食べていた。ジンは”あの”転校生の所にいたままだ。
そう、得体の知れない変な転校生に・・・
それは、HRの時だった。朝いつも通りに登校し、席について先生の話を聞いているだけのはずだった。
「今日は今の時期に珍しい転校生を紹介するぞー、みんな聞いとけー」
ざわっと教室が騒ぐ。男か女か、期待を寄せているのだろう。
「はい静かにー。ほら、入ってきなさい。」
教室のドアが音もなく開く。すると、みんなの顔が笑顔満開になった。
漆黒の髪がふわっとなびき、桜色の瞳は優しげに光っている。
「桜坂色葉〈さくらざかいろは〉です。みんな、よろしくおねがいしやす」
悠は一瞬、京都の子来たなー。と思った。だが、一斉に生唾飲む音がクラス全体から聞こえてきた。
男女関係なく、だ。中にはにやけ顔を押さえきれない男子が多数いる。
まぁ、まだわかるか・・・と、考えた。
色葉はまさに大和撫子、という感じがした。漆黒のつやつや髪は真っ直ぐ腰まで下ろし、(なぜか)着物は桜が咲き誇るようにちりばめられた可愛らしい模様をし、完璧なまでに美しい少女だった。が、
(なんかヤなかんじがするんだけどな・・・なんでだろう??)
妙に嫌悪感を抱くことに悠は疑問を感じていた。眼は可愛い色葉を見ているが、頭はいつの間にかナイトメアのことを考えていた。
「いや、違う。うん、そうだよね。」
((いいや、悠の方が合っておるで。あいつは人間とちゃう。))
ふいに頭の中にアクセリアの声が響いてきた。だが慣れたもので、首に掛けていた真珠の指輪のネックレスを引っ張り出した。
((やっぱりあってたの??変な感じがしたからね。))
((そうや。ほら、見てみい、他のクラスメイトを。))
ぱっと顔を上げると悠以外、そうジンまでわらわらと転校生の周りに群がっているのだ。
ムッと顔をゆがめるとまたアクセリアとの会話に戻った。
((なにか魔法を使ってるの?))
((いいや・・・たぶんわいの知り合いや。そーとー古いな。ここまで言うと分かるか?))
((・・・!!もしかして、封印した妖獣!?))
((そうや。正確には悪魔やけどな。))
悠は思わずうなずき、納得した。最近夜、アクセリアと魔法や、封印した悪魔の名前や特徴を勉強していたのだ。
((じゃあ、名前は??))
((おいおい、あいつの偽名、聞いてなかったんかい?桜坂”色”葉。だ。色とくれば??))
((アスモデウス・・・・!!色欲の悪魔!!))
( (やっとわかったようやな。あいつ、何をしようとしてるんだか・・・。昔からそういう奴やったけど、今回も何を企んでるのかさっぱりわからへんなぁ。))
((そうなん)) 「おい、悠」
はっ、と意識を戻すと、目の前にジンが仏頂面で立っていた。
「な、なに?」
「お前、色葉ちゃんに手を出すなよ。」
「へ・・・・・????」
?マークしか浮かばない悠に背を向けると、さっさと色葉(アスモデウス)の所に戻っていった。
(どういう意味よ、ジン・・・)
悠の顔には自然と哀しい表情が浮かんでいた。
・・・そして、今に至るわけである。
「おい、悠ー。あんなのアスモデウスの体質なんやから仕方ないやんけー。」
肩からひょこっと顔を出した半透明の、アクセリアが言った。
「・・・なんのこと?」
「いやぁ、あのハーフ少年がメロメロになっていることに心底怒っているやろ?」
「んなわけないじゃん。」
すると、アクセリアがにやっとした。
「へぇぇぇぇ?そぉかぁ???」
「なに。何が言いたいの?」
「別に♪」
「なんなの!!」
くすくす笑いながらふっとアクセリアは姿を消した。
そのとき、タイミングよく階段から足音が聞こえてきた。急いで弁当を片付けると、立ち上がり、階段の方を見つめた。
ぱっと扉が開き、色葉が微笑みながら近づいてきた。
「こんにちは。」
「・・・こんにちは。」
「初めて話しますよねぇ。あのときなんにも話しかけてきまへんから。」
「・・・興味、なかったから。」
「そうですか。」
少しの間、無言の時間が過ぎていった。
「悠さん。」
沈黙の時間を破るように色葉が話しかけた。
「放課後、時間ありまへんか?」
「・・・え?」
くすっ、と色葉が笑った。
「私、引っ越してきたばかりなんですよぉ。教えてもらいまへんか?」
「やだ。」
即答した。
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召喚士と十二の召喚石【大和撫子の悪魔】
頑張ります。