Love for the second time

Love for the second time

3 years ago

「俺は翔。冬木翔。」
「冬木…ね。」
「何だよ。翔で良いよ。」
「分かった、翔ね。」

四年前。

私が彼と出会った日。

長身に、整った顔。黒髪と黒い瞳が似合う。
…大和男児とでも言うべき顔。

彼と出会ったきっかけは実験のパートナーになった事。

「恵美利、翔狙ってるの?」
「まさか。でも外見は良い感じだよね。」

友達の未来が聞いて来た
多分私がぽーっと彼を見つめていたからだろう

「んー…まぁ。でもさ、翔、彼女居るみたいだよ。」
「まぁ、あの容姿ならねぇ…。」
「容姿だけじゃなくて彼、内面も良い感じだし。」
「それで居ないって言ったら余計おかしいじゃん。」
「まぁね。あはは。」

未来が席に戻るのと同時に私も席に戻った
今回のパートナーは二人一組。
そしたら私が戻る席の隣には彼が居るワケで。

「えっと、ごめん、名前聞いてないんだけど。」
「あ、言わなかった?私、滝本恵美利。」
「恵美利…?漢字は?」
「えぇっと…恵まれると美しいと、利口の利。」
「やっぱり名は体を表すんだねぇ」
「え?それどういう…」
「美に恵まれている賢い子、って意味。」
「ありがとう」

びっくりした。
男子、とは言わず人にほめられるのはいつぶりだろう
心臓が鳴りだす
未来が内面も良いって言ってたのは当たってるかも。

「実験、宜しくね。」
「うん。」

あの時私たちは15歳
…ティーン三年目の頃だった

私たちの席は一番窓側の日差しあたりが良いところだった
よく覚えている…

授業が始まり数分でのお決まり、私はすぐ眠くなった
「ふぁ…」
隣の翔に気付かれない様にあくびをする

段々まぶたは重くなって行くが、その度にパートナーに迷惑をかけるまい、と目をこするのだった

だけど15歳の私は睡魔に負け、いつの間にか寝ているのだった


_________
_______

「滝本、起きて。」

(誰かが肩を揺すってる…?)

「恵美利ー?」

(あれ、未来…ぅ?)

「滝本恵美利!」
体がびくっとなるのが自分でも分かった
背筋が硬直し、重いまぶたも水素並みに軽くなった

目をカッと見開くと、目の前には電気が消え暗くなった理科室と、三人の影が見えるだけ

影をよく見ると、左から未来、翔、橋谷先生だった

「…?」
「あとで指導だ。担任にも伝えておく。」
そういって橋本先生は理科室から出て行ってしまった

「ふぇ…?」
ワケが分からなくて意味不明な声を出す
「恵美利ぃー、アンタまた寝ちゃってたよー。冬木にも迷惑かかってるじゃんー。」
「俺は別に構わないけど、まぁ、その席でこの授業だったら眠たくもなるよな。」
「それ、言っちゃったら駄目じゃん。」
「眠ってた滝本に言われたくねぇよ」

…確かに、私が言えない。
「ごめん、寝てしまって。」
「次は俺が寝るからなー。」

そういって翔は席を立って理科室から出て行ってしまった

私と未来も教室に戻った
教室に着くと翔は皆に囲まれていて笑っていた
私の視線に気付いたのか未来が一声挙げた
「惚れないでよ?」
「何で惚れるのよ。初めて喋ったのよ、今日。」
「いやぁー…、男に興味なかった反動で好きになりそうだなぁー、と思って。」
「何ソレ。好きな人くらいはいたから。」
「え、いたの!?」
未来は目をまんまるくして口をポカーンと開けていた
「誰!?」
「秘密ー。」
そういってはは、と笑ってみせるとやっぱり未来からの質問攻めが始まった

________
未来からの質問攻めが終わり、ようやく放課後になった頃だった
窓の外を見ると雨。
「あっちゃー・・・」
周りを見渡しても誰もいない。
…少なくとも、女の子は

未来は今日部活だって行ってたし…。
いいなぁ、未来は…。
バスケ部だし、未来。
雨にぬれなくていいじゃない?
外連はともかく。

「あーぁ…。濡れて帰らなきゃならないかぁー・・・」
一人変人みたいにぽつぽつ言葉を落としながら玄関へ向かう

私たちの制服白なのに、ぬれたら透けてしまう…。
あいにく今日はタオルなんて持って来ていない

もう無理だ、と諦めて玄関を出ようとしたときだった

「滝本ーっ。」
パッと振り返る
呼んでいたのは翔だった
翔は二階からこちらに手を振っている
「わっ…。翔。」
「お前傘はーっ!?」
二階なので大声で喋る翔
「ないよーっ」
私もあっちに届く様に必死に大声を出す
…っていうか翔が居ない。
気付いたら、居ない。
わずか一瞬の出来事だ
「え…?」
私の声が小さかったのかな。

…なぁんだ。
つまんないの。

扉を開けた瞬間、とんとん、と肩を叩かれた
「さっきからな…「おい。」
後ろに居たのは翔だった。
しかも、汗だく。
「な、雨に濡れたのか、って位汗だくだよ?」
「あぁー。走って来た。お前、今帰りだろ。」
「うん、まぁ…。」
「俺も帰るわ…ってか送るわ。家何処」
「へ?は、何言って…」
「暗いから危ないだろ。それに服。透けない?」

そういって私の上半身を指す翔
「ってな…」
赤面になる私
「変態!」
「な、俺は心配してんだろ!?」

送ってやるって普通に聞いたら良い言葉なのに、その後に服が透けるから、ってどういう事!?

「っていうか、それに、一人ってお互い暇じゃね」
…意外。
翔ってこんなロマンチスト…っていうか優しいんだ。
凄い、意外。

「じゃあ…、お願いします。」

そこまで言われたら甘えないわけには行かない

「ん。」
翔が差し出して来たのは傘。
「ありがと、翔は?」
「俺は透けても別に良「その言葉次言ったらこの傘で翔殴る。」
「ひでぇー。お前そんな事言ってるとモテないよ?」
「モテたいなんて思わないし、その前に翔に言われる筋合いはない」
「俺もモテるとか別にどーでも良いんだよ」
「彼女居るくせに?」
…そう言った瞬間しまった、と思った

翔が…眉をハの字にして切なそうな顔をしたから

「ご、ごめんっ…」
「何で謝るんだよ。意味わかんね。」

そういってハハ、と笑う彼だけど目はおろか口さえも笑っていない
…聞いちゃいけない事だったんだ

Love for the second time

Love for the second time

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-06-13

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