赫く網

ちらちらと埃舞う

灰だらけの病んだ少女の伏せる

薄暗い湿った部屋に

差し込んだ新緑の光が

斜めに倒された銀色の網を

弾いて奏でた夏の初ゐ音

銀が火照り錆を溶かせば

ちりちりと紅い熱を発して

大気を焼いて渦を描いた

彼女の張り付いた瞼が思い出していた

幼い頃に母と森の奥で

ふたりで住んでいた小屋での

夕暮れの焚き火の香り

赫く網

赫く網

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-11

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