駄目人間症候群

駄目人間、夢なし金なしろくでなし

今日一日何もなかった。何もしなかった。
職が無いわけではない、生きるのに必要な金は稼いでいる。
しかしただそれだけなのだ。

志も無く機械のように働き 毎日 毎日ただ時間を埋める 日が昇れば掘り返され また埋める

こんな日々を繰り返し年を重ね、年だけが積もっていく。
今まで何をしてきたのかと振り返ろうとするが恐怖に勝てず、目を閉じる。


私にも夢はあった、ただ見ていた。
いつか誰かが私を見つけ、表舞台に立たされる。そう思っていた。
だが現実は違う 努力もせず他力本願な男がどうして表舞台に立てるのだろうか。
人生はそう甘くない。
努力をした者でさえ泥を食らい、涙を飲んでいる。
私は若いころその事実に気付かなかった。
いや、気付かないふりをしていたのだろう。周りを見渡せば努力していた者がいたはずだ。

煙草に火をつけた。
実はあまり得意ではないこの煙が、喉を通る時だけ救われる気がする。
これではいけないと何度も禁煙を試みたりもしたが、唯一心の拠り所であるこの煙からは離れられなかった。
こういった意志の弱さも今現在の私を作っていると思う。
咳き込みながら煙を吸うこの姿は他人からどう見えるのか、考えたくもない。

このまま老いるのか、何もないまま。



人は他人を求め、繋がろうとする。
結婚して子供が生まれようものなら周りは祝福し親は涙を流すだろう。
だが私は怖い、この何もない私が子に伝えるのだ。
これほど恐ろしいことがあるものか。いや、あってはいけないのだ。
私はこれ以上私のような人間が増えるのを望まない。

私はふと思い立った。

このまま生かされ朽ちるまでの間、何かするのだ。
立ち上がれ、形になんて残さなくてもいい何かするんだ。
胸を張って「生きている」と言えるように
あくまで能動的に自ら、自分で、自発的にやるんだ。
私たち人間ははそうでなければならない。

5本程煙草の入った箱を握りつぶし、何度したかわからない決意を胸に布団へ入った。

駄目人間症候群

駄目人間症候群

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-11

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