命の軽さ

初めての作品の為、不備、誤字、脱字等が多々あると思いますが、出来れば、感想とか、よろしくお願いします。

準備

 僕は自殺するつもりだった。そのため、ネットで薬を購入した。
薬の効果を強める為と、勇気(!?)を得るため、
薬を飲み下す酒の種類も決めていた。
アイスワインと言われる、1本、2万円はする甘いワインだ。
値段は高いが、それくらいの贅沢に文句を言われる筋合いは無い。

 死ぬ場所も決めていた。
自宅から少し離れた公園だ。そこだと、夜中は誰もいなくなるから、
自殺を邪魔されない。でも、朝には人通りが有るから、
自分の体が綺麗な状態で、発見されるだろう。

 そう、全ての準備は万端だった。
自殺する前にやりたい事をやっている途中までは・・・。

出会い

 自殺する前にやっておきたい事をやってる時だった。
どこにでもある話。つい最近、ネットでもニュースになった話。
いわゆる「美人局」にあってしまった。
自殺する前だし、ネットの出会い系で手軽に女性をって
考えたのがまずかった。

 待ち合わせ場所で出会った女性を見た瞬間、
神様が最後に幸運をくれたと思った。
全体的な印象は高校生。顔と身長は中学生。胸は大人。
見た目はどこかのアイドルグループに居ても、
おかしくないくらいだった。裸も20歳前後のものだった。
実年齢は40を超えてるそうだが・・・。
女性の名前は、ユサミ。ネットだけの偽名と思ったら、本名とのこと。
今さら、どうでも良い事だが。

かなり、悪質なものにひっかかった。
ホテルを出た途端、それ系の顔をした男性3名に取り囲まれてしまった。

 現金で、20万を用意しろと言われたが、
そんな金があれば、そもそも自殺なんてしない。
わずかに残ってた数万円の貯金も、自殺の準備で
全て使い切ってしまった。
財布に残ってるのは、数百円。自殺場所までの電車代だけ。

 自殺の事も含め、全てを話して財布の中身も全て見せると、
2人の男が殴ろうとしてきたが、それを1人の男が止めた。
どうも、リーダーらしい。殴るのを止める時、
冷たい目をして「使える」と一言漏らした。
そのまま、僕は男3人と中学生に見える女性に囲まれて、
車に連れ込まれた。
それを振り払えるほどの腕力も度胸も無い。
試すつもりなんてこれっぽっちも無いけど。

命令

 男と女に連れ込まれたのは、マンションの1室だった。
高そうでも安そうでもない、普通のマンションだった。
でも、連れ込まれた部屋は、ド素人が見ても、
完全な防音が施されているのが分かるほど、
分厚いじゅうたんが、壁や天井に敷き詰められていた。
それを見た瞬間、ここで殺してもらうのもありか。と思っている自分がいた。

 部屋に連れ込まれたら、すぐ、リーダーの男に質問された。
家族がいないか?本当に自殺するつもりか?
人生に悔いはないのか?
全ての答えに『イエス』と答えた。本当にその通りだったからだ。

 すると、男から1枚の写真を見させられた。
写真には、70代の男性が写っていた。遠方から写したと
思われるが、望遠のおかげか、かなり鮮明な写真だった。
男は一度だけ、ゆっくりと、静かな声でこういった。

写真の男を殺してくれ。そして、すぐに自殺してくれ。
おまえは薬物自殺を予定してるらしいが、
それは失敗する可能性が高い。
確実に自殺出来るよう、拳銃をくれてやる。
もちろん、写真の男を殺すのが条件だがな。

 そう言うと、男はおもむろに拳銃を手渡した。
まるで、水鉄砲のように、子供におもちゃを
渡すかのような渡し方だった。実弾は入って無かった。

使い方は『ユサミ』に教えてもらった。といっても、
安全装置のはずし方。狙いの付け方。それだけだった。
試し打ちなんてなかった。弾がもったいないし、
外さない距離まで近づいて撃つ計画だったから。

殺人日時は翌日の夜。写真の男の護衛が少なくなるらしい。
それ以前に、普通の人間にしか見えない僕が近づいても、
護衛は注意を払わないから、問題ないそうだが。

回想

 なんで、こんなことになったんだろ。
ふと、思ってしまった。拳銃自殺という、
確実な自殺の手段を入手できたし、喜ぶべき所なんだろうが。

 そもそも、僕が自殺しようと思ったそもそもの原因は、
会社のパワハラが原因だった。
仕事も部下の管理もできないが、社長の親友ということで、
それなりの役職についていたやつが上司になったのが始まりだった。

 成功は上司のもの。失敗は部下の責任。
それだけなら、慣れたものだったのだが、
会社にとって失敗どころか、どうでもよいことすら、
失敗扱いにされて、毎日怒鳴られていた。
2年間、もったが、さすがに限界だった。
 
 会社に行けなくなり、病院で『うつ』と診断された。
疾病手当金というのが1年半の間、給料の6割が出たが、
その前に会社の規則とやらで、1年でクビになった。
病気は治らず、発病してから2年たった今も働けない。

 障害者手帳は貰ったが、障害者年金はもらえなかった。
外出できるだけで、年金はもらえないらしい。働けなくても。
病気で働けないと、雇用保険がもらえない。
ハローワークでそういう仕組みだと言われた。

 最後の砦と思って、生活保護を申請したが、ダメだった。
家賃がもったいなくて、ネカフェで生活してたが、
住所が無い場合は生活保護を受けれないとのこと。
いまさら、家を借りれるわけもなく、八方ふさがりで、
自殺しようとおもったんだった。

 で、自殺する前に、高級フランス料理屋で食い逃げ。
ネットの出会い系でナンパ。。。それだけして、
自殺するつもりが、殺人が追加になった。
まぁ、それだけのことだ。それだけのこと。

殺人実行

 僕を連れ去った男が、静かな声を出した。
『そろそろ時間だ』その声でもう2人の男と
女が立ち上がった。それにつられるように僕も立ち上がった。

 僕が連れ込まれる時に使った車で移動した。
移動中、拳銃の弾を2発、手渡された。
1発は、写真の男を殺すためのもの。
もう1発は自殺するためのもの。
正直、ホッとした。1発しか手渡されなかったら、
自殺出来なくて、どうしようかと思ってたからだ。

 車が止まった。リーダー格の男が道端で待ち合わせをしている
男を指差した。以前に見せ付けられた写真の男だ。
写真よりも、やくざっぽい顔つきだったが、写真と同じ人物だ。
護衛役の人間も、それ系の服装、顔つきだ。

 僕は車を降り、拳銃を手にかかえて普通に歩きながら、
写真の男に近づいて行った。チラリと車を
見ると、車はそのままの場所に止まってた。
車の窓にはスモークが張られてたので、中の様子は分からなかったが、
僕がちゃんと殺せるか。そして、自殺するか、確認するつもりなのだろう。

 写真の男まで1メートルの位置まで近づくと、
さすがに、脂汗がにじみ出た。だが、歩みは止めない。
そして、すれ違いざま、写真の男に発砲した。
見事に頭に命中した。きっと、即死だろう。

 次は自分の番だ。目は拳銃だけを見ているつもりだったが、
目の端に、護衛役のやくざが驚いた顔をしたと同時に、
こちらに手を伸ばしてくるのが見えた。
その手が届く前に僕は僕に向けて拳銃の引き金を引いた。
後悔は無い。いや、殺人という、普通では体験できない
出来事を体験できた。普通の人生よりも有意義だったのかも知れない。

結局

 2発目の拳銃が発砲される音を確かに聞いたのだが、
結局、死ねなかった。安物の拳銃だったから、
2発目の発射に耐えられず、暴発してしまったのだ。
その結果、僕の両手は血まみれになった。
幸いというか不幸というか、弾の威力が弱くて、
骨折の一つもせずに済んでしまった。
もちろん、その場から逃げだす力は無くて、護衛役のやくざに
捕まってしまった。

 僕を殺人に駆り立てた男達も暴発するとは思っておらず、
あわてふためいたらしく、
やくざ連中に感づかれ、捕えられたらしい。
彼らのその後のことは僕は知らない。
拷問を受けただけか、その後に海に沈められたか。

 僕は、やくざには殴るけるの暴行を受けながら、
少しづつ、状況が分かってきた。殺した男はやくざの組長らしい。
殺人を命令した男はその組長の隠し子で、
親子間の確執が有ったらしい。既に親子の縁は切れているらしく、
お互いが命を狙っている状態だったらしい。
これまた、よくある話だ・・・。あくまで、小説の中だけの場合だが。

 僕は、やくざに復讐で殺されると思ってたのだが、
警察とやくざの間で取引があり、僕は警察病院へ移され、殺人で逮捕された。

 やくざは、僕に殺人を命じた男達が主犯ということで、
そいつらに復讐したことで、メンツは保てたし、
警察は実行犯の僕を逮捕することで、メンツを保ったらしい。

 僕は今、警察病院で入院している。
生活費の心配は無くなったが、入院費用の心配が出てきた。
いや、犯罪者として逮捕されているはずだから、
ここの治療費は無料、、、というか、税金でまかなってくれるだろう。
税金で延命できるのは大銀行か大企業だけだと思ってたが、
僕もそこに仲間入り出来たらしい。喜ぶべきか悲しむべきか。

命の軽さ

小説というより、独り語りになってしまいました。
小説を実際に書くのは、全然違いますね。
これから、さらに経験を積んでいきたいと思ってます。

命の軽さ

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • アクション
  • サスペンス
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-08

CC BY-NC
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CC BY-NC
  1. 準備
  2. 出会い
  3. 命令
  4. 回想
  5. 殺人実行
  6. 結局