タイムトラブル~あなたに恋してる~
概要にも書いておりますが、この作品は以前モバゲーで書いていたものを
移植・修正したものになります。
舞台となるアメリカの知識については皆無です。
登場キャラの仕事についても正しい知識はありません。
よって、作者の想像ないし知っている範囲での執筆となります。
※作者の都合上英語は日本語仕様になっております。
金銭面の影響でロケハンは無理そうです(ーー;)
結果的に誰とくっつくんだとか、矛盾してるとか、パラレルワールドはありえないとか思う方は
バック推奨
プロローグ それまでの日々
学校の終わりを告げるチャイムが鳴った。
退屈な授業を終えて、真っ先に家の自分の部屋へと向かった少女
柊 雪遥<ひいらぎ ゆきか>
なんの取り柄もない少女だ。
「ただいま」
返ってくる声はない。
母親はいるようだが、テレビで連ドラの再放送を見ているようだ。
雪遥は階段を上がり自室へ入ると鍵をかけた。
雪遥は普通の少女だった。
しかし、小学校に上がる頃からそのあまりのダメさ加減に
正確には能力の無さに家族は呆れはじめていた。
やがて、頭のいい姉と世渡り上手な兄と比較され始め
今では、会話さえほとんど無い状態
両親にとって自分はいなくてもいい存在
必要のない存在だと感じはじめていた時、ある海外ドラマを見た。
当然ながら作り物のため現実ではありえない内容だったのだが、
それまで、何者にも興味を示さなかった少女が
はじめて興味を示した作品でもあった。
プロローグ2 きっかけは
最初は、ほんの些細なこと。
そのドラマが好きになって、登場人物たちもどんどん好きになって
気付けば彼を好きになっていた。
雪遥の初恋の人でもある彼―――――――――――――ニーディ・コリンズ
アメリカの俳優である。
きっかけとなった海外ドラマは
【エンジェルマジック】
ニーディがこのドラマに登場したのはシーズン2を見始めた頃だった。
そもそもこのドラマは
怪物退治を生業としていた青年のもとに天使が現れ、二人で協力して悪魔退治や怪物退治をしていくという物語である。
そしてニーディの役はクソ真面目な天使 カストル。
通称キャルの役だ。
最初にキャルを見たときは雪遥は衝撃を受けた。
この当時、天使はいいものだという意見が多かった為、
天使の役であるキャルが人々から命を奪ったり、そうでなくとも人を顧みないという役は斬新だった。
最初はキャルを好きになったのだと思っていた。
でも違うのだと気づいたのは、インターネットで、エンジェルマジック(愛称はエンマジだが)について調べていたとき
登場人物の俳優陣にインタビューしている記事があった。
そして、そこでニーディにインタビューしている記事が写真付きであったのだが、
カストルのイメージとは似ても似つかなかった。
それも衝撃だったのだろう。
しかし、同時にこうも思ったのである。
もっと彼のことが知りたいと
やがて、苦手だった英語を勉強しファンレターを送るようになった。
彼が結婚していたのは知っていたし、子供がいるのも知っていたから、失恋は免れないけれど、それでも好きだったから
”頑張ってください。”と彼女なりに気持ちを伝えた。
3~4週間もした頃初めてファンレターの返信(サイン入りの写真)が返ってきて雪遥は嬉しくなった。
それからだ、ニーディと雪遥の、ファンと俳優の手紙のやり取りが始まったのは
手紙の内容はとりとめのないものだった。
今日は日本でエンマジのシーズン2の何話を放映した。
だとか、エンマジのおかげでクラスメートと話す回数が増えただとか。
その度にニーディは丁寧な返信を書いてくれた。
雪遥にはそれだけで充分だったのだ。
既にその恋は叶わないと知っていたから
プロローグ3 私が留学!?
そんな手紙のやり取りが続いたある日のこと
雪遥の両親が宝くじを当てた。
すごい確率だと思うが、当の雪遥はそれどころではなかった。
宝くじがあたった日の夜
両親から呼び出された雪遥。
「雪遥、アンタ、アメリカに行きな。」
実の母親の口から飛び出てきたのはそんな突拍子もない一言だ。
高校生でしかも英語の成績は3とお世辞でも得意とは言えない言語の国に
いきなり行けと?
エンマジの舞台だから行ってみたいとは思っていた。
しかしあまりにも唐突すぎる。
「はぁ?! ちょっと待てよ! アメリカに行けるなら行きたいけど突然すぎるでしょ!!」
「確かにいきなりだけど、アンタ。前から海外ドラマか何かの舞台だから行きたいってぼやいてたじゃん」
それは確かに、食事などする際いやでも、家族と一緒に摂ることになるので、呟いたつもりでも
聞こえていたりはするのだが、
基本的には彼女の家族は小学校のあの頃から雪遥に対して興味がないはずだった。
「そうだけど……ってなんで知ってんの?」
ファンレターか何かの返信が来てたみたいだからと姉はニーディからの封筒を投げて寄越した。
なんとかキャッチに成功する。
「……」
「それに、最近アンタ英語の成績だけはいいんだって? ならアメリカでも平気っしょ」
それは、ファンレターを書くために必死に勉強したからである。
努力のたまものというやつだ。が
イマイチ腑に落ちなかった。
ましてや、雪遥は高2という来年には受験や就職が関わってくる時期に
外国へと言われても困惑気味の雪遥に兄がソファー越し応える。
「ホントは姉さんと同じオーストラリアとかにするかって話してたのに、父さんがアメリカにしてあげなさいって言うから
アメリカになったんだぞ? 感謝してやれよな」
「父さんが?」
雪遥の父は仕事に忙しい人だった。
恐らくここに居る3人以上に会話は少なかったはずだ。
それでも彼女がアメリカの俳優が好きだと気づくと
今回の件をアメリカにしてやってくれないと
母さんに相談したらしい。
もちろん、宝くじが当たるとかは全然知らなかったが、彼女の留学は決めていたようだ。
プロローグ4 出発前夜
「とりあえず、留学ってことで学校には前々から話してあったし、アメリカでは母さんの昔の同僚がホームステイ先になってくれる手はずになってるから」
もう決定事項なようで雪遥は抵抗を諦めた。
同時に今日の帰り際の先生の
「向こうへ行っても頑張りなさい」
と励ますように肩を叩かれた意味を理解したのであった。
「出発は……」
その先は今の流れからして聞かなくてもわかっていた。
明日。まだ何の準備もしていないのに
「飛行機は明日の朝 ほらよ搭乗券。9時37分のだから、乗り忘れんなよ」
こういう時だけは準備がいい兄が2枚のチケットを渡した。
ひとつは日本からサンフランシスコまでの分
もう一つはボストンまでの分のようだ。
「え? 2枚?」
「さっき話した母さんの同僚の人 ボストンに住んでるらしいけど、飛行機乗り継がなきゃいけないんだって」
乗り過ごしたらどうするんだろうとか、ビザやパスポートは?とかいろいろ疑問はあった。
「あと、あんたもう帰ってこなくていいから」
それがその日一番の衝撃だった。
確かに、家族らしいことを何一つしていないし、日本に戻る意味はない。
が、仮にもまだ家族である自分にここまで冷たく言えるものだろうか?
「え、じゃあ卒業式は? 就職は?」
当然向こうで探しなさいよと目で言われたが、まず暮らしていけるかも不安な土地で
もはや留学ではなく編入レベルのことをさらりと言われた。
学校は退屈だったが、それなりにクラスメートとも楽しく過ごしていたのに勝手だと思う。
「お前の能力じゃ日本で就職は無理、外国ならまだ低賃金でも働き手があるだろう」
つまり、東南アジアとかみたいな物価が安いところで苦労して暮らせ的なノリのようだ。
そうなるとスラム街か
ボストンにそんなところあっただろうか?
しかし、ボストンならニーディの出身地でもある。
街中で偶然会えるかもしれないという期待もあり、結果的には酷いことを言われ、ちゃんとした準備はできなかったものの
翌朝、雪遥はサンフランシスコ行きの飛行機に乗ったのであった。
プロローグ5 いよいよアメリカへ
翌朝 機内――――――――――――――――
「え~っと……サンフランシスコまで10時間ちょっとかかって?それからボストンまで6時間か。
んでボストンの空港には母さんの知り合いが迎えに来てるはず……とてつもなく不安だ」
時間を確認して、とりあえずサンフランシスコ行きの飛行機に乗った雪遥。
しかし、あまり飛行機に乗ったことがない上に、モテる職業というイメージがあるCAがいる訳で
雪遥にとってはこの上なく居心地が悪かった。
昼食と夕食のオーダーの為にCAのお姉さんたちが来るとビクッと反応して
苦笑されたり、機内上映の映画を見ながらなんとか時間を潰していたら。
夜の19時ぐらいにサンフランシスコに着いていた。
ボストン行きの飛行機は20時40分
搭乗時間を待つ間、雪遥はこんなことを考えていた。
ニーディの現住所も確かボストンだし、こっちに来たってこと伝えようかな?
会えないけど、こっちに来ても応援してるよって
手紙を書こう! よし!
意気込みを新たに、一抹の不安を抱えつつ雪遥は決意を新たにした。
サンフランシスコからボストンまでは6時間ほどかかる
張り切っていた雪遥も、さすがに疲れたのか
ボストン行きの飛行機の中で浅い眠りに落ちていった。
翌日
肩を揺すられて目を覚ました雪遥。
どうやら、もうすぐ着陸する為にベルトをしてくださいね? ということだった。
時刻は朝の8時。
時差ボケも心配されるが、それよりも英語が通じる通じないの問題が気になった。
母の知り合いであるなら、ステイ先の人は多少日本語が分かるかもしれないけれど……。
飛行機が無事着陸して、空港に着いたが、やけに騒がしい。
何事かと荷物を受け取ったあと人だかりの中を見ると――――――――
目の前には信じられない人がいた。
第1話 Welcome to Boston
そこには、なんとニーディ・コリンズがいた。
間違えるはずはなかった。
「に、ニーディ!? なんでここに??」
そしてこの騒動の原因が彼であることも同時に理解した。
そっか、アメリカで人気のニーディがこんなところにいるのだから騒ぎにもなるわけだ。
人間、本当に会いたかった人に偶然でも出会えると、案外冷静になれるものだなと雪遥は思っていた。
いや、周りが大騒ぎをしているから、反って冷静でいられるのかもしれない。
そんなことを思っていたら、ニーディがどんどん雪遥の方へと近づいてくる。
え? え? と混乱している間に気づけば彼は目の前に来ていた。
ファンの子たちの視線が突き刺さる。
「やぁ、君は確かユキカだよね?」
「え、あぁ、うん。」
しかも声をかけられるなんて、着いたら書こうと思っていた手紙のことなんてすっかり忘れていた。
「実は日本から知り合いの娘さんが来ることになっているんだけど見なかったかい?」
「え、日本人は私だけだったと思うよ?」
しどろもどろになりながらも応える雪遥
「そうか、じゃあ、君かな? 雪乃の娘さんっていうのは」
「雪乃……母さんと同じ名前だ。」
「もしかして、ユキカのファミリーネームはヒイラギ?」
「うん」
何故、ニーディが雪遥の苗字を知らなかったかというと
家族と折り合いの悪かった雪遥は
ファミリーネームをHNで書いていた。
名前はそのままに自分の写真を同封していた為、顔と名前は覚えていてもらえたようだが。
「でも、手紙の名前は違ったよね?」
悪意がないからこその純粋な疑問に
「う……」
逆に言葉が詰まってしまった。
「まぁ、いいや。君が本当に雪乃の娘さんのユキカ・ヒイラギなら問題はない訳だし」
「え、私に用だったの?」
深くは聞いてこないニーディにほっと安心したのも束の間、一体人気俳優が自分に何の用だろうか?
「うん。 ホームステイ先は僕の家なんだ。」
ニーディはさらっと言った。
第2話 まさかのステイ先
「え……えぇ!?」
雪遥が大声を上げて驚いた。
それこそ、アニメなどで主人公が大げさに驚いたかのようなリアクションで
「びっくりしたな……あれ? 雪乃から聞いていないのかい?」
「聞いてない」
母さんの知り合いがまさかニーディだったなんて……しかも、ステイ先ってこれかなり奇跡的な展開なんじゃないだろうか?
もはや、先程までの冷静さはどこへやら、雪遥は完全に浮かれていた。
「そっか、相変わらずイタズラが好きなのかな? まぁ、そういうわけだからよろしくねユキカ」
イタズラとかそんなお茶目な次元の話ではないと思うのだが、ニーディはおおらかというか、人がいいというか。
悪意がない為に余計にタチが悪い。
「と、とりあえず宜しくね」
我に返り、挨拶しておく。
これからお世話になるのだから、浮かれている訳にはいかない。
「それじゃあ、行こうか?」
「うん。」
「荷物貸して? 持ってあげるよ」
「い、いいよ。自分で持つよ」
これからお世話になる身分でなどと説得を試みる雪遥だったが、女の子なんだからこれくらいは遠慮しないでとのニーディの申し出にちょっと申し訳なく思いながら、じゃあ、お願いします。
と荷物を持ってもらったのだった。
――――――――――――――――――――――――――――
アメリカのファンの子達の視線が痛い中、私とニーディは空港のロビーを歩く。
「あ、そうだ。ニーディ・・・・・・さんのことはどう呼べばいいかな?」
「君の呼びやすいようで構わないよ」
「えっと、じゃあニーディって呼んでも大丈夫?」
「もちろん、手紙でもそう呼んでただろ?」
「う、そうだけど・・・・・・・」
それを言われると言い返せない雪遥は、気まずさを誤魔化すように空港の出口を通った。
少し離れたところに立派な車。
「車はあそこだね。おーい、クリス~」
赤いスポーツカーのような感じで、屋根が開くタイプのようだ。
ニーディが手を振りながら呼んだのは、ニーディ自慢の美人な奥様クリスティーナさん
「ハロー、貴女が雪遥ちゃんね? 私はクリスティーナ、クリスって呼んでね」
「は、はじめましてクリスさん! これからお世話になります」
「ふふふ、そんなに固くならなくても大丈夫よ、確かに可愛いらしいお嬢さんね? ニーディ」
「そうだろう? クリス」
「あ、ありがとうございます」
クリスさんにも褒められてしまった。
なんか恥ずかしいな。
――――――――――――――――――――――――――――
「いえいえ……さぁ、荷物を積んで? 我が家まで案内するわ?」
「あ、はい。ニーディごめんね、積むのも手伝ってもらって」
「構わないよ」
そう言いながら、
ニーディに手伝ってもらい、トランクに荷物を積み終えると、運転席にはクリス、助手席にニーディ。
後ろに雪遥が乗った。
「よろしくお願いします」
雪遥がそう言って挨拶するとクリスは車を発進させた。
「雪遥ちゃんはニーディって呼ぶのね、てっきり叔父さんとかそんな風に呼ぶと思っていたわ」
「あ、私ニーディのファンで……」
「空港で会った時に名前で呼んでいいか聞かれたからいいよって僕が答えたんだよ」
ニーディがフォローする。
「そうだったの。ごめんなさいね?私ったら嫉妬深いのよ」
「いえ、旦那さんのことを呼び捨てにさせているんですからしょうがないですよ」
「理解のある子で助かるわ」
「いえ……」
――――――――――――――
理解のある子なんて初めて言われた。
アメリカに来てから何度か褒められたけど、もしかして私。
最初っからアメリカに産まれてれば良かったんじゃないか!?
こうして雪遥とニーディ夫妻は自宅へと向けて空港を出たのであった。
第3話 ニーディ宅へ~Longfellow Bridgeのジンクス~
しばらく走っていたら、ボストンの町並みが夕焼けに染まっていた。
「綺麗だな……」
「日本の夕焼けもこんな感じかい?」
「はい、風景っていうか景色はもっと田舎っぽいけど、夕焼けや朝日はどこで見ても綺麗ですね」
「この橋にはね、ジンクスがあるのよ?」
運転しながら、クリスさんがそう話し始めた。
「ジンクス?」
「この橋で恋人同士になったカップルは必ず結ばれるって言うね」
そんなジンクスが……。
「へぇ~、素敵ですね。ニーディとクリスさんもここで?」
「えぇ、私から猛アタックをかけたの」
「意外、ニーディが猛アタックしたんだと思ってました」
だって……ニーディ、クリスさんにベタ惚れしてるんですよ?
私が美人だったら、ニーディもちょっとは意識してくれてたかなぁ、なんて悩んでる自分が惨めになるくらいに・・・・・・。
「あはは、僕はその時別の女の子を追いかけていたからね」
「別の女の子?」
「不思議な女の子だったよ、雪遥にそっくりだった」
意外だ。
愛妻家のニーディが別の女の子にアプローチをかけていたなんて……。
しかも私に似ていた?
っていやいや、ダメダメ仮に私がその子に似てて、希望があってもニーディにはクリスさんがいるんだからね。
「私も一度は諦めかけたのよ? そしたらその女の子、急に消えちゃったらしいのよ」
「消えたってどういうことですか?」
「そのままの意味だよ。霧のように現れて、霧のように消えてしまったんだ。まだ、名前も聞いていなかったのにね」
「え? じゃあ、告白する暇もなかったんですか?」
ニーディは苦笑気味にこう答えた。
「うん。その時ようやく、クリスが真剣に僕のことが好きだって気付いたんだ」
「もし、あの時あのまま彼女がニーディと付き合っていたら、私とは無縁だったかもしれないわね」
――――――――――――――――――――――――――――
「へぇ~、わからないものですね。……あ、私の母さんとはどこで知り合ったんですか?」
「そうだね。……あぁ、ホワイトハウスだよ」
「ホワイトハウス!? ってあの、大統領とかがいる!?」
「うん、僕がホワイトハウスで働いてたのは知ってるよね?」
クリスさんの視線がちょっと痛い中
「は、はい。ウィ○ペ○ィアってサイトで見たので知ってます。」
「君のお母さんもホワイトハウスで働いていたんだよ、そこで知り合ったんだ」
「え? じゃあ、俳優になる前に知り合ってたんですか?」
「僕が俳優に転職する辺りに彼女も日本に帰ってたから、知っているかはわからないけど、連絡が来たところを見るとまだ元気そうだね」
「はい、めちゃくちゃ元気ですよ……もしかしてニーディとクリスさんが会った謎の少女って母さんじゃ……」
「それはないと思うわ、私も貴女のお母さんにあったことあるけど、雰囲気が違うのよ、どっちかって言うと貴女に近いわ」
「え? 私ですか!?」
「でも、それは無理だよね、雪遥はまだ産まれてもいないはずだから」
――――――――――――――――――――――――――――
そうだよ、タイムトラベルでもしない限り不可能だ。
っと言うことであり得ない展開は考えない。
でも、人間って高いとこから落ちたりすると記憶喪失になったりするし、あり得なくもないのかな?
第4話 ケビンと雪遥
「さぁ、着いたわよ」
そんなことを考えていたら、ニーディの家に着いたらしい。
「ここが……私の今日から住む家か……」
予想以上にでかい。
これは私、迷うかも……。
――――――――――――――――――――――――――――
「さぁ、荷物を君の部屋に運ぼう」
肩をぽんっと叩かれて、我に返った雪遥。
「あ、うん。……って私の部屋!? 客間とかで良かったのに」
危うく荷物を落としそうになった。
「年頃の女の子を客間になんか泊められないわよ。家には息子も一人いるし」
「え? 息子さん?」
「あら、聞いてなかった?」
「お子さんがいるのは知ってましたけど……」
「なら、驚くことはないと思うけど……」
「まぁ、そうですよね」
いや、驚いてる訳じゃないんですよクリスさん。
「クラスも貴女と同じみたいだから、色々聞くといいわ」
「マジですか……」
もはやノーコメントだ。こっちが女の子だって勘違いしてたのがいけないんだし。
――――――――――――――――――――――――――――
「あら、もしかして男の子苦手なの?」
「は、はい。同年代はちょっと」
「大丈夫よ! ケビンはいい子だから」
「は、はぁ」
思わずクリスさんの迫力に押される雪遥。
「二人とも、ちゃんと荷物運んでるかい?」
「あ、ごめんニーディ」
優しくたしなめるニーディに一言謝り。
「どこに運べばいい?」
荷物運び再開。
「私は車を置いてくるわね」
「あ、クリスさん。待ってください、あと一つ鞄が……」
「ごめんなさい」
苦笑してバックで戻ってくれたクリスさんに一言謝罪して、最後の鞄を出した。
――――――――――――――――――――――――――――
その後一通り荷物を運び終わった私は、休みながら荷ほどきをした。
ニーディとクリスさんは今日は休みを取っていたので、手伝ってくれるつもりみたいだったんだけど、急なお仕事が入ったらしく、
代わりに息子のケビンがもうすぐ帰ってくるらしいので手伝ってもらえとのことだった。
って言っても、テレビとDVDデッキはこっちで買うからって売ってきたし、机、椅子、ベッド、小さなテーブルはこっちで用意してくれたみたいだし、布団やカーテン、絨毯の趣味も良い。
全部クリスさんが用意してくれたのかな?
荷物も着替えと私の宝である。
“エンマジ”グッズ
それに最低限必要なものぐらいだ。
※雪遥の場合は
ノートパソコン、ケータイ、歯磨き・洗顔セット、バスタオルなどのお風呂用品等
――――――――――――――――――――――――――――
とりあえず、エンマジグッズで机の辺りをコーディネートした雪遥。
「え~っとテーブルはここにして、テレビとDVDデッキはこうでいいかな?」
雪遥が思考錯誤のうえで荷物を出す前に部屋のコーディネートを作図してから30分くらいが経った頃。
扉が開く音がした。
――――――――――――――――――――――――――――
二人かな?と私は玄関まで様子を見に行った。
しかし、そこには見知らぬ青年が一人。
顔立ちはどことなくニーディに似ているが、髪や瞳の色はクリスさんと同じだ。
「誰?」
「そっちこそ、人の家で何やってるんだ。」
威嚇された。
威嚇というか、警戒なんだろうけど
人の家と言うことは彼がケビンなのだろうか?
「ケビン?」
「……なんで俺の名前を知ってるんだ?」
尚も威嚇しているが、正体がわかれば別に怖くも何ともない。
「ニーディから聞いてない?」
「親父から?」
「日本から留学及びホームステイすることになった雪遥です。よろしく」
私は階段を降りて彼に握手を求めた。
何故だか彼は話しやすかった。
同年代の男子は苦手なはずなんだけど、ニーディに似ていたからなのかな?
第5話 ご挨拶だな
「あ、もしかして、日本の知人から頼まれたっていうのアンタのことか?」
そう言うとケビンは握手を返すことなく、そっぽを向いてしまった。
「握手」
相手が返してくれないことに虚しくなったのか、強制的にケビンの手を握った雪遥。
「……っ」
「どうしたん?」
「何でもねぇよ」
「その言い方ムカつく」
「うるせー」
不満な表情をしながらも、本来の目的を思い出した雪遥は
「あ、そうだ。荷物整理手伝ってほしいんだけど」
ケビンにそう告げた。
――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ?なんで俺がお前の荷物整理手伝わなきゃいけないんだよ?」
ケビンはめんどくさそうな視線をこちらに向けた。
この野郎、あとでシバいたろかって思ったのは内緒。
「だってニーディもクリスさんも仕事入っちゃったから、ケビンに手伝ってもらえって言ってたし、少しだけだからさ、な?」
「そこは普通、ね? っとか可愛く念押すところだろ」
そんな恥ずかしい言い方、ニーディ以外の前で出来るか!
ってか、むしろニーディの前でも無理だわ
そんなこと言ったら恥ずかしすぎて、気まずくなって普通に話せなくなるな、絶対。
「いいじゃんか、別に」
「ホントに少しなんだろうな?」
「うーん、多分ベッドの位置変えるだけだから、後はテレビとか買ったらお願いするかもしれないけど……」
「……」
「何?」
「お前、”女”だよな?」
「うん」
「良かった。さっきの"ね?" は男が言ったらちょっとと思ってな」
「自分で言ったのに……」
「うるせー……」
「着いた」
言い合いをしていたら、いつの間にか部屋に着いていた。
まだ、この家の間取りとかわかんないから、部屋のドア開けといて正解だったな。
「んで? ベッドをどこに移動するって?」
手伝ってくれる気満々じゃないか、素直じゃないな。
もしかして、ケビンってツンデレなんだろうか?
「窓の近くに縦に置きたいんだ」
さっき書いておいた簡単な図をケビンに見せる。
「下手な図だな」
「悪かったな」
仮にパソコンで書いたとしても印刷できないから、と思ってすぐ出せる紙に手書きで書いといた訳だが
確かに、絵心がない私が書いたところでたかが知れてるだろけどさ
――――――――――――――――――――――数分後―――――――――――――――――――――――
「ふぅ~、サンキュー」
「おぅ、そういや、お前あの人に似てるよな」
「あの人って? ニーディが昔会ったっていう謎の少女?」
「そう、一枚だけ写真があってさ、俺もちっちゃい時に見せてもらったんだけど、なんか……」
ケビンが急に照れはじめた。
もしかして、ケビンの初恋はその子なんだろうか?
「へぇ~、初恋か」
さっきの嫌味の仕返しにからかってやろうと思ったんだが
「そういうお前だって」
「?」
「親父が初恋だろ?お前」
「!?」
「バレバレなんだよ」
逆に対抗された。
それからはお互いに赤面したまま黙りこんでしまった。
第6話 初めての夕食
「ただいま~」
そこへ救世主登場。
クリスさんご帰宅。
二人は玄関に向かった。
「あ、おかえりなさい、クリスさん」
「あ? ……おかえりお袋」
「ただいま、雪遥ちゃん、ケビン。打ち解けられたみたいね? 良かったわ」
「あ、はい。お陰様で」
「ふふふ、あ、晩御飯は食べた?」
「まだです」
途端に雪遥のお腹がぐぅ~と鳴った。
――――――――――――――――――――――――――――
(は、恥ずかしい~)
ニーディがいなくて良かった。
居たら恥ずかしくて部屋に引きこもってる。
「あらあら、今、何か作るわね?」
「す、すみません。疲れてるのに」
「そうだよお袋。俺が適当に作るからさ」
「そう? じゃあ、お願いしていいかしら?」
「え? ケビンが?」
「そんなに驚くことないわよ。大丈夫、心配しなくてもケビンは料理上手なんだから」
マジっすか……私より美味かったらどうしよ
「そういう訳だ。お袋も親父も忙しいから、自分で作ってるんだよ」
「家政婦さんとかは雇ってないんですか?」
「えぇ、ケビンが嫌がるものだからね」
「へぇ~、偉いなぁ」
「あ、ダイニングはこっちよ」
「はい」
な、何この広さ……。
家の10倍はあるけど。
私の部屋に入った時も思ったけどさ、無駄に広すぎる。
――――――――――――――――――――――――――――
「キッチンは隣ね」
「はぁ……」
「好きに使っていいから」
「私、そんなに料理できないですよ?」
「大丈夫よ。時々作ってくれれば、家賃はナシにしてあげるから」
作らなかったら家賃取るんですか!と突っ込むのを我慢した雪遥。
「味の保証はしかねますけど」
「あらあら、謙遜しちゃって」
「いえ、まだ練習中なので、食べれない程ではないですけど……」
「なら、大丈夫よ」
お茶目にウィンクしてみせるクリスさんに対して
「ま、まぁ。期待しないで待っていてください」
となんとなく話を終わらせた雪遥であった。
「できたぞ~」
「あら、今日はサラダとお肉料理なのね?」
「材料がそれしかなかったんだよ」
ケビンもクリスさんには頭が上がらないらしい。
――――――――――――――――――――――――――――
「お、美味しそう……」
負けた、こんなドラ息子に料理の腕負けた……。
くそぅ、こうなったら、修行してやるー!
日本料理もアメリカの料理もマスターしてやるこんちくしょう!
出来損ないの底力を見せてやる。
「何考えてるか知らねぇけど早く食べろよ」
「お、おぅ。……?」
あれ? 見た目程美味しくない?
むしろ普通?
「お袋は親バカだから、普通の料理も美味しいって言うんだよ」
ケビンが小声で教えてくれた。
そうかコレが属に言う親ばかフィルターか
※違います。
でもこの味なら私より少し上くらいだ。
思ってたより、勝目はありそうだな。
――――――――――――――――――――――――――――
「ごちそうさまでした」
アメリカではいただきます、ごちそうさまでしたの習慣がない。
まして、ニーディの家はキリスト教でもない為、お祈りもしない。
当然、クリスとケビンに凝視された。
「え? 何」
思わずひきつる雪遥。
「いや、日本人はそういうこと言うんだなと思っただけだ」
「え、えぇ」
二人共苦笑しながら後片付けをしにキッチンへ向かった。
(な、なんなんだよ。)
とりあえず、そうは思いながらも、手伝おうとキッチンへ向かおうとして雪遥は時計を見た。
時刻は夜の20時を回っていた。
――――――――――――――――――――――――――――
ヤバい21時からはエンマジのアメリカ版(日本ではまだレンタルが出てないシーズン4)をやる。
丁度今日から第一話だ。
「クリスさん! ケビン! ビデオの録れるテレビない?」
「え……俺の部屋にあるけど」
「頼む! 私が新しいテレビとデッキ買うまでエンマジ録らせて」
両手頼みのポーズで私はケビンにお願いした。
「仕方ねぇなー、買うまでだからな」
「おぅ! サンキュー」
「ディスクはあんのか?」
「バッチリ」
「じゃあ、さっさと洗い物終わらせないと間に合わねぞ」
「任せろ!」
そういうと雪遥は超高速かつ、キレイにグラスと食器を洗った。
「す、スゲー……」
「す、凄いわ、雪遥ちゃん……」
その早業に圧倒される二人。
私の唯一の取り柄といっても間違いない。
好きなことの為に素早く丁寧に仕事をする。
理由はもちろん、せっかく早く終わらせたのに、仕事が汚くてやり直しをさせられたら最悪だからだ。
ましてや、この記念すべき日に、やり直しなんかくらった時には、切れかねない。
「よし! ディスク取ってくるから、私の部屋の前で待っててケビン」
「お、おう」
機嫌が良さそうに部屋に向かった雪遥を見送りながらクリスとケビンは今度から後片付けは雪遥にやってもらおうと思うのであった。
第7話 エンマジを観よう。
それから雪遥の部屋の前に行ったケビン。
「お、ナイスタイミング。後5分しかないから、早く行こう」
「お、おい! 引っ張るなよ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コイツこういう時だけ可愛い顔しやがって……。
やっぱ俺じゃあ、駄目なのか?
あの人が親父の元を去ったのも、親父じゃダメだったからか?
「って私、ケビンの部屋知らないんだった。何処?」
馬鹿なやつ。
「笑うんじゃねぇよ!」
「笑ってねぇよ、ほらこっちだ」
でも自然と笑っちまうんだよな。
コイツと居ると楽しいような、不思議な感覚になるしな。
なんか、初めて会った気がしないっていうか
――――――――――――――――――ケビンの部屋――――――――――――――――――
「ヤバい、あと1分」
雪遥はケビンの部屋に入ると勝手にテレビをつけデッキに空のディスクを入れた。
「チャンネルは!?」
「ここ」
ケビンがエンマジのチャンネルに合わせてくれた。
「サンキュー」
「……ッ」
「?」
突然赤くなったケビンを不思議に思っていた雪遥だったが、エンマジのプロローグが始まるとすぐにそちらに集中し始めた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
やっぱりニーディは凄いなぁ……。
カストル……キャルは無表情で真面目なキャラなのに、こんなおどおどした表情とかできるんだ。
「でも、やっぱり英語だから聞き取りきれない」
ディスクに録っておいて正解だったな。
「そうなのか?」
「ケビンも見てたんだ」
ちょっと驚いた。
ケビンもクリスさんも見なさそうな感じだったから。
「悪かったな」
「え?」
「お袋は仕事が忙しいから親父の出てる作品なんか見てる暇がない、俺も朝は早いから見ないんだよ」
何を拗ねているんだろうケビンは?
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「へぇ~なのに今日から見せてくれるんだ。」
雪遥は少し嫌味と言うよりか皮肉っぽく言った。
「……ぐっ。そんなこと言うならもう見せてやらねぇぞ!」
「え!ちょったんま」
一触即発な雰囲気だったにも関わらず雪遥はケビンに静止を強いた。
「……」
ケビンは汗マークが流れていそうな微妙な表情をしている。
「見せてもらえないのも困るけど……今、キャル何て言った? 好きな人がいた。だと?!」
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そんな馬鹿な……。
キャルは真面目キャラなんだぞ?
融通が利かないっていうそのギャップがいいんだぞ?
そんなキャルに好きな人が居た。だ?!
いや、落ち着け私。
深呼吸、深呼吸。
で、相手は? レミエル!?
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何やってんだコイツ的な表情で雪遥を見るケビン。
怒る気を削がれた上にこの挙動不審ぶりだ。
無理もない。
ここで皆さんに何故雪遥が驚いたのか説明しておこう。
本来レミエルは天使から堕天使になったとされている。
しかしエンマジでは更にルシファーと同一視されているのだ。
いや、正確にはルシファーに見初められ道連れをくらい、堕とされた哀れな天使とされているのだ。
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何で……どうして……レミエルなんだ?
「……うわ~予想通りの展開」
やっぱりレリーには何かあると思ったけどまさか、レミエルの生まれ変わりとか……。
でもちょっと待てよ?
※雪遥さんのエンマジ復習
シーズン1の時は青年ダニーが悪魔を退治していた。
シーズン1後半でダニーは悪魔に守られている人間の少女レリーと出会う。
シーズン2キャル初登場。
まぁ、私の初恋の始まりでもある訳だけど、今は置いといて、キャルはレリーを殺す命令を神から受けて地上に来たが、
ダニーと衝突。
ダニーの必死の説得? で監視という名目で悪魔退治を手伝いながらレリーの傍にいることになる。
そこでシーズン2は終了
シーズン3はダニーが次第にキャルと仲良くなるのとレリーを好きになって行くのがメインだった。
しかも、最後にはルシファーがレリーを拐って終わったはず。
そして今――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
シーズン4の一話な訳だけど、ルシファーの元へ何故行くのかの談義の話だったのだが、ダニーはレリーが好きだからわかるんだけど、キャルが行く理由は最初ダニー1人じゃ勝てないと思ったからだと思ってた。
でも違うんだ。
キャルはレミエルの時からレリーのことが好きだったのに、伝える前に堕とされてしまったんだ。
エンマジの神って残酷だな。
まぁ、エンマジの神ってキリストなんだけどさ
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復習をして落ち着いた雪遥は冷静に判断できたようだ。
先ほどのパニック状態が嘘のようである。
そしてそんなことをしている間に夜の10時になり、エンマジシーズン4第1話は終了したのであった。
ケビンにお礼を言い、ディスクを取り出して、自分の部屋に戻った雪遥はベッドの上に寝転んだ。
明日からいよいよ、ケビンと同じ高校に通うことになる。
不安ばかりだが、幸いニーディ一家はいい人そうだ。
なんとかやっていけそうかも。と思った雪遥であった。
第1章1話 初めての登校~起床・朝食編~
翌日――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
目覚まし時計の音で目を覚ました雪遥。
「うわっ。そっか、今日からこっちの高校に通うだもんな……変な感じ。でもまぁ、私服でいいみたいだし、楽っちゃ楽か」
時差ボケなどとは無縁なようだ。
服を着替えて、ダイニングに向かうと、クリスさんが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。
「あら、おはよう雪遥ちゃん」
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やっぱりクリスさんは美人だなぁ。
朝から麗しいというか、女の私でもドキドキするというか……。
「ってかそれって私変態じゃん!」
「どうしたの?」
思わず声に出していたようだ。恥ずかしい……。
唯一の救いは日本語で言っていたことだろうか?
と、とりあえず気を取り直して……ってケビン起きてきたし。
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寝起き姿否寝癖姿で降りてきたケビン。
「クスッ」
思わず笑ってしまった雪遥を見て、不機嫌そうな表情をするケビンにクリスさんは近寄ると優しく寝癖を直したのだった。
「身だしなみは基本よ?」
「ッ、恥ずかしいな。いいよ、これくらいなら」
「仲いいな」
ニヤニヤと微笑ましそうに見る雪遥に思わず
「お前もいつまでも笑ってんじゃねぇよ!」
と恥ずかしそうに怒るケビン。
「いいじゃんか減るもんじゃないし~」
ブーイング風に口を尖らせて抗議する雪遥。
「減るっての!」
「何が?」
何がと聞かれれば答えに困るもの
ケビンも例外ではない。
「え……それはそのアレだよ。アレ……」
「だからアレって? ……さては考えてなかったな?」
馬鹿にするように笑った雪遥。
「ケビンは照れてるのよ、雪遥ちゃん。そうでしょ?」
「ち、違ぇよ」
せっかくフォローしてくれようとしたクリスさんを威嚇するように睨むと
「さっさと飯食って行くぞ。お前今日から学校だろ?」
わざとらしく話しをそらしたのであった。
「うん」
今更隠そうとしても無駄だだと思うけど……。
とでも言うかのように、内心は思いつつも雪遥はイスに座った。
今日の朝飯はトーストとサラダだった。
朝早く起きた割に家を出るのは遅かったが、雪遥とケビンは割と普通に家を出た。
第1章2話 初めての登校~通学編~
「それで……学校って遠いの?」
「あー、わりと遠い方じゃねぇか?」
家を出たのが遅かったわりには曖昧な返答だ。
ケビンは慣れてるから近く感じるのだろうか?
「ふーん、間に合うの? 結構遅く出たけど」
まして、私はまだ道知らないのに……。
「あぁ、HRが9時からだからそれまでに着けばいいし」
悠長に言うケビンに対して私は固まってしまった。
5分前行動が当たり前だし、何よりまず私は自分が通うクラスを知らないのだから、当然と言えば当然なんだけど……
「……もう8時30分だし、私は自分のクラス知らないんだけど……」
「はぁ? 馬鹿! そういうことはもっと早く言えよ」
ケビンに馬鹿呼ばわりされるとは心外だ。
「だって、聞かれなかったし、 知ってると思ってた」
なんて言い訳を言ってみる。
どうやらケビンは時計を見ない主義のようだ。
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「走るぞ」
やや遠い距離だと思っていた通学路。
しかし、雪遥の予想に反して二人が学校にたどり着いたのは50分近くだった。
その後二人はクラスに向かったのだがどうやらケビンも雪遥のクラスを知らなかったらしく、慌てて職員室に雪遥を届けると直ぐ様自分の教室へと向かって行ったのだった。
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職員室にノックをして入った雪遥。
「失礼しまーす」
入った先にいたのは中年の教師。正直おじさんである。
「ん?君は?」
「え~っと日本から転校することになってると思うんですが……」
戸惑いつつ雪遥がそう言うと
「あぁ、君がか。ちょっと待っていてくれ」
納得したように教師は別の教師に話しに行ったようだった。
「はじめまして、僕が君のクラスの担任のアルバートだ。よろしく」
私のクラスの担当らしいアルバート先生はぱっと見30代くらい、ニーディと同い年くらいだろうか?
ま、ニーディの方が断然素敵だけど……。
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「よろしくお願いします。柊です」
お互いに軽く自己紹介を終わらせるとアルバートから
「早速だけど、HRの時間だし教室に向かいたいんだけどいいかな?」
確かに時間的にはギリギリだった訳だが……。
「あの、教科書とかは……」
「あ、教科書類はおいおい渡すよ、まだ全部来ていないんだ」
とアルバートは苦笑気味に話した。
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「え~っと教室に行きながら簡単に説明しとくね」
しかし、思ったよりもっていうか、外見よりもこの学校、かなり広いかも
一回じゃ覚えずらいかな?
「ここが教室。わからなかったら他の生徒や先生に聞くといいよ。」
「あ、はい。わかりました」
こうして、雪遥のボストンでの学生生活が始まろうとしていた。
第1章3話 初めての友達
(製作中
タイムトラブル~あなたに恋してる~