DEATH GAME

話の内容はグロくないはずです。

人と人の騙しあいですかね?


――私の妄想ワールドをどうぞご堪能ください。

真夏のある日、俺に一本の電話が届いた。
『もしもし、櫻庭 佑(さくらば ゆう)様のお宅で間違いないでしょうか?』
見覚えのない番号、聞いたことのないふんわりとした女性の声。
不意に昔、おふくろに知らない人にはついていかないようにね、と言われた事を思い出した。
もう居ないのにな。
家電話の隣に置いてあるおふくろの写真に目を向けた。
「えぇ、そうですが」
俺は自分の独特な低音域で返した。
『櫻庭様、あなたにDEATH GAMEの招待状が届いております』
電話相手の一言に俺は耳を疑った。
デスゲーム?直訳して「死のゲーム」。
なんか俺、やばいモンにでも手ェ出しちまったか?
『ご安心ください、DEATH GAMEといっても大人しくしていれば命を落とすことはありません』
電話相手の女性は淡々と説明を続けていった。
全く理解できない。一体どういうことなんだ?
俺の人生に何があったんだ?
『DEATH GAMEは、25人の参加プレイヤーがゲーム主催者によって支給されるマグネットを賭けて戦うゲームです。数々の試練を乗り越えて合計25個を獲得したプレイヤーがお望みの金額、もしくはお望みのものを一つ主催者より支払われることになっています』
「お望みのもの・・・?」
『はい、例えば命。死んだものを生き返らせたり、自らを不老不死にすることも可能です』
生き返らせる、だと?
そんな技術この世界に存在するのか?
「しかし、大人しくしていたら勝てないよな?」
『はい、あくまでも命を落とさない方法です。動かなければゲームになりませんからね。つまりは、勝てば良いのです』
勝てばいい・・。
俺以外にどんなやつがいるかわかんねぇのに、勝つことができるのか?
『期限は明後日の朝方7:00までです。良きご返事をお待ちしております』
「待て、本当に勝てば命が蘇らせる事ができるんだな?」
『はい、それがあなたの望みなのであれば』
本当に命を戻すことができるのならば、俺はやらなければならない。

――あの時、事故で死んでしまった彼女に伝えないといけないことがあるから。

「櫻庭 佑、DEATH GAMEに参加します」
俺は受話器を握り締め、いつもの低音域で参加を申し込んだ。
『承知致しました。本日中に支給品をご自宅までお送りさせて頂きます。ゲーム開始は明後日の20:00。終了は参加プレイヤーが一人になるまで。御健闘をお祈りいたします。あなたの望みの為に・・・』
そういい残し、電話は切れた。
俺はとんでもないゲームに参加してしまった。
今、こんな自分を褒め称えたいよ。
とはいっても、明後日までは時間がある。
死んでしまうかもしれないんだから、やりたいことだけやっとこう。
俺は靴を履き、急いで部屋を飛び出した。
銀行の金を全部下ろそう。
日帰りでディズニー行って、明日は“アレ”を買おう。
でも、一回だけでいいからギャンブルやってみたかったんだよな・・・。
買ってから余った金で全部崩すか。
ものごとは案外計画通りに進んでいった。
ギャンブルで大負けし、すべてを無くした俺だ。
もうやり残す事はひとつしかねぇ。
彼女に溜め込んだ思いをすべて打ち明けたい。
――その後・・・。

今夜、俺は戦いに出る。
届いた支給品はマグネットと呼ばれる物体と、参加プレイヤーのプロフィール、防弾チョッキ、拳銃と弾が1ダース、それ用のポーチもあった。
そして、“俺の望み”が刻まれた腕時計だった。
腕時計の裏にはマグネットをはめ込むスペースがあり、俺はそこにマグネットをはめ込んだ。
すると、腕時計は突然光だし俺の腕に勝手にはまった。
『プレイヤー25、櫻庭 佑であることを確認いたしました。ゲームの説明に参ります』
腕時計から一昨日の電話の女性の声がしだした。
『この腕時計は使用方法が全部で幾通りあります。携帯及び通信手段、他プレイヤーのサーチ機能、それをかわすサーチ回避機能など。ただ、なにかの機能を使えば、使っていた機能は消えます。例えばサーチ回避機能を使っていたとします。その機能を使っていると他の機能は時計としてしか使えません。通信手段機能を利用すればサーチ回避機能は消え、サーチを使ったものに居場所がばれてしまいます。そのゲームは生命力、体力、知力、運が勝利の鍵となります。』
腕時計が腕時計について語っていることに妙な違和感を感じるが放っておくとして、最後の運ってなんだ?
このゲームなんでこんなに不安なのか分かったぞ。
いろいろとアバウトなんだ。
『それでは、時間となりましたのでゲームを始めたいと思います。始めは皆さんサーチ回避機能が作動されてますのでご安心を。あなたの望みの為に・・・』
プツン・・。
何かが切れる音とともに騒がしかった外の世界は一気に静まり返った。
「・・・うそ、だろ?」
思わず窓を開ける俺。そこに広がる世界は、形だけ。
人も、犬や鳥など全ての動物が消えていた。
DEATH GAMEが始まる瞬間だった。

始まってどれぐらい経っただろうか。
時間が止まってしまったかのように何も起きていない。
みんな様子を見ているのだろうか?
俺は、布団の上で耳を澄ましてみる。
すると・・・
ドカーン!!
何所からか爆発音のようなものが聞こえてきた。
・・・ピロン。
その直後に腕時計がなる。
女性の顔写真が出てきて、文字が浮かんだ。
『プレイヤー2がプレイヤー14:船越 鶫(ふなこし つぐみ)のマグネットを奪い取りました。残り24人』
腕時計はそう伝えると、またすぐにただの時計に戻る。
プレイヤーのプロフィールを見てみると、五十音順に並んだプレイヤー名が記されていた。
プレイヤー番号や顔写真は何処にもなかった。
なるほど・・・。
死ぬか自己申告しない限りプレイヤー番号や顔はわからねぇって訳か。
あまり、人と接触しないほうがいいな。
そいつがプレイヤー2だったらひとたまりもねぇ。
ピロロロロ・・・。
俺の携帯電話が鳴った。
画面には『鷲咲 嶺緒(わしざき れお)』と表示されていた。
「っ!嶺緒!!」
俺は急いで電話に出る。
「嶺緒かっ!?」
『あぁ、お前なんでDEATH GAMEに参加してやがる?』
「え?」
嶺緒の言葉の後に俺は参加者表の一番最後を見た。
そこには確かに『鷲咲 嶺緒』と書かれていた。
嶺緒は俺の幼馴染で昔から何をするのも一緒だった。
まさか、これもか・・。
「お前こそっ!」
俺は思わず声を出す。
嶺緒は落着いた声で返した。
『“望み“があるからだ。最終的には俺らも戦うことになるだろ』
「・・・・」
俺は何も返すことができなかった。
当たり前だよな。
俺だって“望み”があるから参加した。
でも、まさか嶺緒と戦うことになるとは・・。
『そこで、だ。俺らが戦わずして勝つ方法がある。正確には死者を出さずに皆で勝つ方法』
「っ?!」
不可能だろ。マグネットを25個集めないといけないんだから・・。
『俺と組んでくれ、俺はお前を殺さない』
「方法とやらを聞かせてくれ」
・・いくら幼馴染だといってもこのゲームとなると信じがたい。
嶺緒はなにやら飲み物をすすった後俺に説明を始めた。
『このゲーム、俺の親父が過去に一度参加してたんだ』
っ!!
いきなりの大暴露に俺は戸惑うしかなかった。
『プレイヤー2、こいつは親父の時にも居て姿を現さず人を殺しながらマグネットを集める奴だそうだ。親父はあいつに殺された。ゲーム後、盛られていた毒で・・・』
「毒・・」
『プレイヤー2はとにかく殺しがしたいんだ。今回も、きっとな』
「・・・そんな奴に親父さんはゲームで勝てたんだろ?」
『あぁ、親父がマグネットを25個奪った。皆無事にゲームを終わらせてくれという望みで参加して』
嶺緒の親父さんは嶺緒が高校3年生の頃、事故で死んだと聞いた。
まさか毒殺だったなんて・・。
しかもこのゲーム絡み。
『俺はこのゲームを許さない。俺の望みは皆無事でゲームを終え、このゲームの消滅だ』
「確か望みは一つだろ?」
『腕時計にはそう刻まれていた。仮に選べと言われたら消滅を選ぶ。素直にマグネットを渡した奴は生きてるだろ。多少の犠牲は仕方ない。安心しろ、俺はお前を殺さない』
俺は、思わず嶺緒に身震いをした。
殺さないとは言われたが訳せば、邪魔は消す。
俺が嶺緒に逆らえば
――間違いなく殺されるってことだ。

「お前と組むよ・・・」
俺はそういうしかなかったんだ。

俺の部屋で、嶺緒と俺は接触することになった。
携帯が使いモンにならなくなったからだ。
「佑、お前のマグネットは俺が預かる。腕時計にマグネットをかざさなければお前は失格にならない。かざすのも機能のうちに入っちまうしな」
「わかった」
俺は嶺緒にマグネットを渡した。
「プレイヤー2は常にサーチ機能を作動させている。おそらく女は腕時計をいじってて殺られた筈だ。だからプレイヤー2が動かないうちに作戦を実行したほうがいいだろう」
嶺緒は俺に説明をし始めた。
俺は無意識にそれを真剣に聞いた。

「――要はヤツの顔さえ分かればこっちのモンなんだ。つーわけで、シンプルに囮作戦でいこうと思う。俺があいつを呼び、お前が殺す。あいつがいなければあとは大丈夫だからな」
「あぁ」
・・・ちょっと待て、俺!
あぁ、じゃねぇよ!!
とんでもないヤツを俺が殺す・・?
冗談じゃねぇ!

でも、どうせ死ぬんならそっちの方が良いのかもな・・・。

「じゃあ、作戦実行しようぜ」
嶺緒はそう言うと、腕時計の通信機能(メール)を起動させ参加プレイヤーに一斉送信でメールを送った。

「大丈夫だ、佑。

――お前は俺の指示を聞くだけでいい」

東京タワー、今となっては爆発によりただの鉄くずの山となった場所に皆を集めた嶺緒。
ちゃんと24人。ここにはプレイヤー2もいる。
俺は正直、いますぐにでも逃げ出してしまいたかった。
こいつらも同じはず。
では、なぜここにきたのだろうか?
「いいか、お前ら。ここに来たからには俺にいつ殺されてもおかしくないと思えよ?ただ、安心しろ。俺は裏切り者は容赦なく殺すが従ってくれれば何もしない」
いきなり途轍もない事を吐く嶺緒に皆はざわついた。
嶺緒は舌打ちをすると拳銃を空へ発砲し黙らせる。
「身の程をわきまえろっつってんだよ。いつだってお前のこと殺せるんだぞ?」
嶺緒は追い討ちをかけるように低い声で脅す。
皆は完全にびびっていた。
満足そうに拳銃を下ろすと続けてこう告げた。
「武器を出せ。全てだ」
皆の目の前に袋を置き武器を回収した。24種類、全てある。
プレイヤー2も入れたみたいだ。
と、俺が安心していると嶺緒に耳打ちされた。
「安心するな。ヤツはおそらくもう一つ武器がある。お前、殺されるぞ?」
嶺緒に肩をポンと叩かれて、俺は一瞬倒れそうになった。
嶺緒が掛ける圧力が途轍もなく強かったからだ。

俺は嶺緒と別れて自分の家に戻ろうと歩き出していた。
すると、俺は後ろから急に肩を叩かれた。
振り向いて構えるとそこには両手を挙げて立っている女の子がいた。
「・・・やっぱり、桜庭君だよね?」
怯えながらも確認するように声を掛けてきた。
「・・・。宇賀 鳴海(うが なるみ)?」
「うん!やっと会えたね」
宇賀 成美、もてなかった俺の高校時代の元彼女。
彼女に告白されて、1年ほど付き合って俺からふった。
俺にとっては気まずい思い出だが、彼女は気にしていないようだ。
「『やっと』?」
「あ、ごめん。でも会いたくて、ずっと探していたんだ。やっと会えた!もう望み叶っちゃったなぁ」
宇賀の瞳から嬉しさが滲み出ていた。
今更、俺に会って何を・・?
「実はね、私結婚したの。櫻庭君には言っておきたかったんだ。私凄く幸せだって」
宇賀は俺に左手の薬指にある婚約指輪を見せ、笑顔で言った。
「そうか、良かったじゃないか。そいつは俺より良いヤツなんだな」
俺は宇賀に笑顔を向けつつ返した。
「・・・ズルいよ、桜庭君より良い人なんている訳がないじゃない」
先ほどとはうってかわって、悲しそうな表情でボソッと呟いた宇賀。
俺は聞き取ることができなかった・・。
「ん?悪い、なんだって?」
「ううん、なんでもない」
「そうか・・」
宇賀、さっき俺と会ったときより元気がなくなっている気がする・・。
大丈夫だろうか?

その後、嶺緒と連絡を取り宇賀にも俺たちに協力してもらうことになった。
明日、今度は3人で接触する・・・。

DEATH GAME

DEATH GAME

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-06-04

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