Java
俺は本署の刑事、名は伏せておこう
30過ぎになって付いたあだ名がとっつぁん
ルパンかい。そんな泥棒─リアルに居ねえ
子供の頃夢見たはずの正義の味方は
今では社会の矛盾の執行人
俺らが正義─でなく社会を守るためのものなんて
Java teaって自─販機で売ってたが、
Javaと言えばコーヒーだろう
高貴な理想を吐いたのは良いものの
最近─じゃ時代から取り残された感が拭えない─
社会の歯車として生きる毎日
生きるためには働かなきゃいけないんだから
上司に叱られるのだって我慢どころなんだ
誰も好きで犯罪者に生まれる訳じゃない
だからこの世にホントは─責任なんて存在しやしない
でも今日も本署のやつらは懲りもせず
「犯罪者」をしょっ引いてきている
ホントの悪がなんなのかなんて、
体制の中に居ちゃわかるわけもねえんだ─
ホントに生まれついての悪人なら
法律に引っかかることなんてやりはしない
大体悪人には年齢なんて関係ない
恐喝、暴行、誘拐、拉致、監禁なんでもござれ
警察手帳を印籠にやりたい放題
本当の犯罪者─は、俺らなのかもしれない
容疑者を尋問していたら、
カツ丼は嫌いだって言わ─れた
じゃあ、一体何を奢ればいいのだろうか
ホントは悪事なんて他人事のマスコミどもが
今日も玄関前に湧いてきている
おふくろ、おやじ、元気でいます─か。
今の俺は背中をちゃんと伸ばせている─でしょうか
銀幕の中の刑事達はこんなじゃなかったな
もっと何か─を追い求めていて、輝いてた
夢はあくまで現実じゃないけれど─
「ハードボイルド」って言葉だけ─は忘れたくない
今日も俺は机の上にコーヒーを淹れる
今日は─地区─内の見回りをしなきゃいけない
甘くて苦い、昔の記憶みたいな味が
俺の本当の気持ちに呼び掛けてくる
本音も言えずに社会の下僕と化した俺だが、
厳しい現実の中じゃ文句は言えない
でも俺だってプライドだけは捨ててないんだ──
俺はただ─、あの頃夢見たように
近所に住むおばあさんに慕われる─
情の厚い刑事─になりたい。
そう心に問い質して、
今日も─公僕─の一人として生きていくんだ
Java