誰が為に己が為に
はじめましてナズです。今作品を手掛けたのは私が中学生の頃でした。ありはしない能力、日常、事件、その全てを妄想で終わらせるのはいささかもったいない。そんな想いからこの作品の執筆が決まりました。この作品を読んでいただいたことでみなさんの感情に小さな衝撃や感動を与えられれば幸いです。
序章
いつもと変わらない日常
それは自分が今までいた世界
そして今望んでいる世界
人間は思考によって多くのものを得る
同時にいくつもの可能性を胸に秘めている
私はただ試すだけだ……
彼らの器と可能性を…
私の器を…
全てはゲームという名のテストにおいて
初時ーはつどきー
ピピピ………
(ん……もう朝か)
携帯電話の時刻は六時
(まだ大丈夫かな)
目覚ましを切りもう一度布団をかけ眠りに入ろうとするが……
「陸也!!学校間に合わないわよ!!入学式なんだから早く起きなさいっ!!」
「はいはい、分かったから朝からそんな大声出すなって。」
親は何時になっても口うるさいものだ。俺は半開きの目を擦りながら制服に着替える。
なんといっても今日から高校生だ。黒い学生ズボンに白いワイシャツ、紺のネクタイを身につける。
(まぁ、これからの高校生活が楽しみじゃないって言ったら嘘になるけど)
入学式自体はかったるいものに変わりはない。眠気が取れないまま階段を降り、リビングへ向かう
「あ、兄ちゃん起きた!?相変わらず起きるのおっそいね~ぇ。」
妹の神崎 杏奈(かみさき あんな)はもうすでに起きていたようだ
杏奈は陸也の三歳年下であり、今日は地元の公立の中学の入学式だ。小さいころからバスケをやっているだけに運動神経抜群だ。なんでも学年唯一の50m6秒前半だとか。
(まあ、頭のほうは空っぽにちかいが……)
「杏奈は相変わらず起きるのがはえーな。まぁ寝るのも早いから当然っちゃ当然か。」
おれは出来立てのトーストにかじりつく
バターのいい匂いが食卓に広がっている
「りく……今日は入学式でしょう?
お母さんは杏奈のほうに行くから、一人でちゃんといきなさいよ。」
「俺だって高校生だ、そんくらい言われなくても平気だよ。」
「お兄ちゃんは中学では成績良くて頭良かったもんね~。」
「良かったじゃあない、今もいいんだよバカ。
杏奈だってバスケばかりやってないで少しくらい勉強やれよ……ったく。」
おかずのベーコンやら目玉焼きやらをさっさと口に詰め込み
フルーツ牛乳を一気に飲みほしてしまう
「ごちそうさま。学校の支度してくる……」
「あ、食べるの早すぎるよぉ~もっとゆっくり食べればいいのに……」
かく言う杏奈も同様に一気に皿にあったものをたいらげてしまった
「ごちそーさまあ。」
(二人とも私が食べ始める前に行っちゃったわ……まあ、忙しいからだろうけど)
定期、学生証、筆箱、メモ帳、それに財布
(忘れものはない、よし行くか)
「それじゃあ行ってくる。」
「お弁当は持ったの??」
「あ………」
「まったく……ほら、持った持った!!」
ガチャ
ドアを開け、自転車に股がり自分の一番好きなバンド
"ガディアント"を流しヘッドホンを身につける
(やっぱりいい曲だ……ガディアント特有の速いリズムには自然と引き寄せられるな)
一人そんなことを思いながらペダルを漕ぐ足に力をいれる。高校は家から約束40分ほどであり家から最寄りの駅まで5分、そこから20分ほど電車で移動して学校直通バスに乗る。
駅に着き、行き先を確認しながらホームに降りていく。まわりには自分と同じように赤のネクタイをした学生が駅内にちらほら見える
(ん……?)
自分と同じ新入生の雰囲気を持った者もいるが、明らかに殺気だった者も何人かいる。
それらは襟元に色違いのバッチを付けている
(あれは……この学校のシンボルみたいなものなのか??おれは持ってないし、今日にでも配られんのかな?)
疑問に頭を抱えながらも
それにしても……すごいこっち睨んでるよな
ドア入ってすぐの四つ角の一つに背をあずける自分をそいつは睨み続けている
車内の中でも一際異様な雰囲気が二人の間に流れる
(と、とりあえず目を反らそ……)
「おい・・・・・・・・・」
(……絡まれたか)
自分でも多少声が上ずっているのがわかる
「な、なんですか?」
金髪にツンツンな髪型をした学生は自分の学生手帳を陸也に見せる
連羽 暁 (れんば あきら)
2年D組 ランクC
パートナー 千竺 和樹
「お前……ここの学校の入学式に参加するのか?」
(何を言っている??同じ制服だから同じ学校に決まっているだろうが!!)
「ええ、今日から入学するつもりです。」
「ん……やはりか。」
連羽は表情を曇らせ胸ポケットから一つのカードを取り出し、陸也に手渡す
「これを持ってろ。いいか、これからおれの言うことをよく聞け…
絶対に諦めるな。ただ可能性があるかぎり生にしがみつけ」
「………どういことです?俺には意味が分からないんですが」
「そのうち分かる……そして後悔する。
今から入学を取り消すことか出きればそれが最善だ。だがそれもできまい。
常に全力で生きろ。これが先輩から言える唯一の言葉だ。」
連羽は殺気をといて隣の車両へと移っていった
(どういうことだ??一体この学校に何がある?)
それにあの先輩の学生証のパートナーとランクってどういうことだ
それに入学の取り消しが最善だなんて……
(だめだ……頭が混乱してきた)
ヘッドホンをつけなおすにも、さっきの言葉がちらついてガディアントの音楽すら耳を突き抜けている
もらったカードを見つめ自分なりの思考をめぐらしていく
(全ては時間が解決してくれるな)
おれはそんな安易な考えを持って学校に着くまでの時間を過ごした
まだ……悪夢はきていない
入学
――新一年生は掲示板で自分のクラス、番号を確認し速やかに大講堂へ移動してください
さすがに敷地内ではマズイだろうと思いヘッドホンを取り外し、エナメルのバッグの中へとしまう
掲示板には人が集まりとても見にいけそうな状態ではなかった
たが行くあてもなく、とりあえず人混みに飛び込み自分のクラスを確認する
1ーE
16神楽俊亮
17梶沼亜依子
18片倉響也
19神崎陸也
20杉村茜
(あった……神崎で19番だなんて遅いな)
「おはような。キミはE組なん?よかったらおれといこうな?」
(変わった奴だな)
「あぁ、おれはE組の神崎だ。よろしく。」
「神崎な。おれは片倉響也(かたくら きょうや)って言うんな。それでよろしくな。」
他愛のない話をしながら、おれらは講堂内へと入り後ろの席に腰をおろし、時間がくるのをまった。
そして……時刻は九時をまわった
時刻になり壇上には白髪に長い白髭をもった老人が現れた
「みなさんこんにちは。教頭の井橋迂乃鶴(いはし うのず)と言います。
まずご入学おめでとう。きみたちは必ず社会の中心人物になる可能性を持っている
どうかそれを大事にしてほしい。話は以上だ」
(……ま、普通の何処にでもいる典型的な学長ってところか)
――続いて教務主任の挨拶です
「みなさんこんにちは、そしてご入学おめでとう。教務主任の白江 興紀 (はくえ こうき)だ。
私からはあちらの世界で話そうか。それでは………」
白江から放たれたまばゆい閃光が講堂内に広がる
(な、なんだ………意識が……遠のい……て……く)
~1stゲーム スタート~
(……ここは?……教室??)
順序よく並べられた椅子と机、窓は後ろにはられている
(どういうことだ……?)
おれは確かに講堂内にいた。そして学長が出てきて、その後教務主任が出てきて…
(何か呟いた……?)
たしか……"ゲームスタート"
(落ち着こう・・・今考えるべきなのはそんなことじゃない)
おれはとりあえず外の様子を見るべく教室のドアノブに手をかける
ガチッ
(おかしい……ドアは外側から鍵がかかっている)
――諸君……目は覚めたかな??
スピーカーから教務主任、白江の声と思われるものの声が聞こえてくる
――まずは今から5分時間をやる。黒板に書かれる内容を理解しなさい
(何を言っている……黒板には何も書かれていな……!!)
黒板に徐々に白い文字が浮かびあがってきている
~まずは入学おめでとう~
君たちは今別次元の世界に存在している。もちろん死んだわけではないし、
こちらが出す課題を誰かがクリアさえすれば元の世界に戻ることができる。
信用しなくてもいいが、これだけは言っておこう。
"この世界で死んだら現実世界での死を意味する"
では課題を出すことにしよう。
パートナーを組みなさい
クラスごとに次元は異なるため、組めるのは同じクラスの者同士だけだ
そして組み終わったら中央広場にいる黒いコートをはおった者に話しかけなさい
そうすればゲームは終わる
因みにポケットに入っている左耳用の耳かけイヤホンをかけなさい
こちらが出す情報をリアルタイムに確認、聞くことができる物だ。
二つ大事なことがある。
パートナーを組むには双方の意思が必要だ
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それでは健闘を祈る
遊戯ーゲームー
(パートナーを組む)
この事の必要性はおれには理解できないが、とりあえず一刻の猶予はないだろうな
ガチャッ
鍵が開いたドアを開け辺りを見渡す
どうやら自分は一階の端っこの教室にいたようだ。
広場はすぐに見えるから問題は言われた通りにパートナーを誰かしらと組むことだ。
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(最後に書かれていたこのキーワードが気になる……)
だがそんなことは後回しにするしかない。
おれはとりあえず唯一話したことのある片倉響也を探すことにした
(待てよ……)
確かに片倉響也と組むことが一番無難だ。しかし生死がかかっていると仮定したこの世界でパートナーを組むということは自分が考えている以上に重要視されることなんじゃ……
ジジッ
耳に付けたイヤホンから何か聞こえてくる
一組目課題クリア
(一組できたか……あまりのんびりとしていられないようだな)
この時おれは片倉響也を探して無難に組むべきだった
そうしなかったことに後で後悔する……
(とりあえず人気があるところに移動するべきだな……)
だがどこに自分は移動するべきかはわからない
命を懸けたゲームと仮定して、危険性がゼロであることはまずないだろう。
何かしらおれ達の命を脅かす存在がいると思っていたほうがいい
(……とすると無難に廊下で誰かしらとコンタクトを取るのが最善なはず)
虱潰しに部屋を探したほうが誰かしらには会えるが、
危険がせまったら袋のネズミ状態になってしまう
ジジッ
7組目クリア
(く……まずい)
おれは一階を中心に廊下を駆け巡る
………15分後
(おかしい……なぜ誰とも会わないんだ?広場に行くには一階を通らないといけないはずだ)
体は自然と広場に全力で走り出していた
やはり…………
おれの二つの推測はあたっていた
まず一つ安易に想像していたこと、二階から広場へ直通の階段があることだ
入学式の時に校舎を確認した時には確かに階段は存在しなかったが、あの白江の言葉からすると別次元に存在するのだから何かを出現させたりする非現実なことがあってもおかしくはない。
そしてもう一つは運が悪いことに最初の時点で一階にいたのは自分のみという事実だ。
こればっかりにはさすがの自分も気付くのに時間がかかった。
たまたまの偶然かそれとも作為的のかは別として一気に二階への階段を駆け上がる
ジジッ
18組クリア
(もうそんなにか………)
てことは36人がクリア、クラス全体が41人だから
(まさか……そういうことか)
最初のキーワードだったあの数字はクラス全体の数字、しかもパートナーは18組完成していて残りは5人
つまり一人だけ死者がでるのかもしれない
(しかしパートナーは2人でなくてもいいのかもしれないな)
「おい!!どうするんだよ!!!このままじゃ俺達死ぬんだぞ!?」
二階の中央廊下から野太い声が聞こえてきた
そこでは典型的なラグビー選手のような体格の男、黒眼鏡をかけた博識のありそうな男、
内向的という雰囲気を自然と醸し出している男が言い争っていた
「今ここにいるのが三人、誰か一人がこのままだと死んでしまうぞ!!」
(確かに………いや、まだいるぞあと一人が)
「おい!!どうするんだよ?命かかってんだぞ!!!」
「誰も死なずに行く方法があるだろ………」
「「誰だ!?」」
三人の視線が陸也に集まる
「おれは神崎陸也。お前たち三人が死なずにすむ方法がある。時間が惜しいからよく聞け………」
「このクラスは41人で構成されている。そして今は18組がクリア、つまり残りは5人だから誰かが必ず死ぬことになる。だがパートナーは二人組という決まりはない。つまり、お前らは三人で組め。これからのパートナーだ少しでも力があるほうがいい。」
(3人で果たして許されるのかという疑惑は残るがな)
「確かにそれなら俺たち三人組めばルール違反にはならないはずだ。だがお前はどうする?」
ラグビー体型の男は陸也の肩に手をかける
「残りの一人を捜す……何も情報がない今の状況では厳しいがやるしかない」
陸也は背を向けると三階への階段へと走りだした
(一階と二階はいない、そうなるとやはり三階と屋上しか考えられないな)
三階にたどり着きして手当たり次第教室のドアを開けていく
(どこだ………どこにいる)
19組クリア
予定通り各階にウイルス解放
(ウイルスだと?)
誰が為に己が為に