君がいた夏
ある夏のことだった。とても暑い日だった。
太陽がギラギラしている中、幼馴染の藤井 浩太がうちにやってきて突然こういった。
「俺、世界で一番の大切な人を連れて行く」
突然わけのわからないことを言い出した。なんであたしにそんなこと言うんだろうと思った。
「なんでそれをあたしに言うわけ?」
そうこのときはまだ知らなかったんだ。浩太が思ってること。やりたかったこと・・・最後にいえなかったこと。
あたしは浩太に「ありがとう」といいたかった。
それがあたしがゆういつ後悔したことだった。
夢と希望
~7月~
ある夏のこと。その日はとても暑かった。最高気温30℃だった。
この暑さはない・・・今の自分はとても子供だったんだ。
13歳の中学2年生。この季節はあたしは嫌いだ。
一番暑くて、蝉がミンミンうるさいからだ。
暑いのは苦手だけどプールに入るのは好きだ。
だけどプールはこの時期満員だから入りたくても入れない。
今夏休みだけど、もうすぐしたら学校だ。
学校は楽しくもないし楽しいわけでもない。普通だけど。
そんな中、一番元気なのは幼馴染の小田 浩太だ。
浩太とは生まれたときから一緒で、いつも恋人扱いされる。
まぁ、浩太といるとなんか楽しいんだよね。
そんなあたしだけど浩太の前だと素直になれないんだ。
あたしの親友 榊原 麻美は「絶対脈ありだよ」とかいってるけど本当なのかわからない。
麻美はすごくモテル。美人だし、性格いいし。
そんな麻美は自慢だ。
「麻美ってモテるよね^^」
「でもモテるのが一番怖いわ・・・だってストーカーみたいに追っかけてくるんだよ!」
「確かに怖いね・・」
「何の話してんだ?」
突然浩太が割り込んできた。
「いやぁ・・麻美がモテるということ」
「確かにな~毎日追いかけられてるし・・」
浩太は人ごとみたいにいう。
「こうちゃんはそうのんきでいいよね~」
麻美は何故か浩太のことこうちゃんと呼んでいる。
「はぁ・・・暇だな」
そう二人に聞こえないようにつぶやいた。
「美菜・・?」
突然浩太が私の名前をいいこういった。
「俺、世界で一番大切な人を連れて行く」
そう真剣な瞳でいった。真剣な瞳で言われたら不覚にもドキっとしてしまった。
「どこに連れて行くの?」
君がいた夏 2
そう私は聞いた。浩太は笑顔でこういった。
「それは秘密!教えたら意味ないからさ~鈍感さんにね/////」
浩太は顔が真っ赤だった。
「こうちゃんらしいな~いつか絶対教えてね」
「おう!その前に誰かさんが自分の気持ちに気づいたらな」
最後のほうは何を言っているのかわからなかった。
「美菜は鈍感だからね~簡単に気づくかな?」
「おい麻美それを言うなよ////美菜が気づいちゃうだろ」
「焦っているこうちゃんカワイ~」
そう言ったら浩太はなんだか不機嫌になった。
「え?」
不機嫌になるほどおかしなこといったかな?よくわかんないけど・・・
「美菜・・天然すぎだろ・・ったく男に可愛いとか言うなよ」
浩太はそういった後美菜の顎を持ち上げキスをした。
「ん////っ」
やばっ・・・声が////
「こうちゃん///いきなりキスなんて////」
「バーカ///お前のほうが可愛いからっ」
「あらあらお二人共ラブラブなことで」
こうちゃん可愛いなんて言わないでよね////麻美はからかって何が楽しいの?
「「からかうなよ/からかわないでよ」」
思い切って言ってみたらこうちゃんと被った。
「やっぱり両想いだね」
「「//////っ」」
浩太と美菜は顔が真っ赤になった。
両想いと友の想い
「「両想いっっ\\\?」」
「やっぱり気づいてなかったんだ…」
浩太とは両想いとは思わなかったから嬉しい…
でも告白しないとな…どうしようかな…
「美奈、いつかお前を迎えにいく…それまで待っててほしいんだ」
どーせ浩太のことだから旅に出るというんだろう…
それくらい、ずっと一緒にいたんだからわかるよ…
「待つよ…こうちゃんが帰ってくるの」
「ありがとな…でも必ず帰るから」
そういって私と浩太はキスをした。
それから10日後彼は遠い世界に旅立っていった。
「ふぅ・・やっといったかぁ~」
親友の彼女はどこか、寂しそうなまなざしで彼の背中を見送った。
「麻美はこうちゃんのライバルだったもんね。」
そういうと、彼女は不機嫌になり私に向って言う。
「美奈のそういうところ嫌だ。気づいてないふりしてそういう風に言うの。」
確かにそうかもしれない。でも、悪気があっていったわけではない。
彼女に指摘されるのは何度目だろうか。
でも、その中で今回の指摘が一番厳しかった。
彼女の言う通りである。
あたしは、麻美が浩太のことを好きだと気づいてた。
でも、そのことは言えなかった。
だって、あたしもこうちゃんが好きだから・・・・。
「ごめん。本当は気づいてたの。麻美が浩太の事好きなこと・・・。でも言えなかった。
浩太があたしから離れていく気がして・・・。だから、麻美に意地悪しちゃったの・・・ごめんなさい。」
不安でしょうがなかったことでの思いと親友に黙っていたことの罪悪感であたしの心は押しつぶされそうだった。
友と彼とあたし
「美奈は幸せ者だよ。」
と麻美は少し照れくさそうに言った。
「私もきついこといってごめん。でも、本当に嫉妬しちゃったんだ美奈に・・。」
俯きながら話し出す彼女。
「え?」
「気づいてなかったと思うけどね。浩太はね私と話してるときより、美奈と話していたときのほうが笑顔が凄い増えてたんだ。
一瞬でわかった。浩太はあんたに恋してるってね。それに嫉妬しちゃった。私に向ける笑顔よりもあんたに向ける笑顔が一番キラキラ輝いていたからさ。」
そういうと彼女は悔しいなと呟いて海を見た。
「・・・・・。」
「ほらほら、そんな暗い顔しないの。もう仲直りしたんだから。彼からメールが来てるよ」
そういわれ、スマホを見た。
【愛する美奈へ】
今何してる?俺はまだ船の中だぜ!!どこにいくか分かんないけど!!
考えごとしてる時お前の寂しそうな顔が浮かんだからメールしてみた!!
俺の気のせいだったらいいんだけどよ・・
というなんとも彼らしいメールだろうか・・・。
「どこ行くかわかんないって・・・。」
思わず笑ってしまった。
彼なりの精一杯の励ましだろうか。
後で返信しておこう。
君がいた夏
「ありがとう」
そういえず後悔したあたしだけど今だから思える。
「浩太が伝えたかったことはしっかり胸に残ってるよ。だから安心して旅立ってほしい」
そういった。そのとき浩太はやさしく微笑んで遠い世界へと歩き出したんだ。
その背中はとても男らしかった。